夢であってほしかったけど夢じゃなかった!?
俺こと神谷紡が目を覚まして、部屋を見渡す。
夢であればどれだけいいことだろうかと思って眠りについた昨日の出来事。
その実態を確認するため、俺はとりあえず目を見開いて部屋中を見渡す。
そこには赤いずきんをかぶったガキも、二足歩行を可能とした饒舌なオオカミも、どっかの仮面の方々が追ってそうな人たちをパクったような黒いボディースーツの集団もいなかった。
「よかった。あれは夢だったのか」
バンッ
「遅いわよバカ。私を空腹で殺す気?」
ですよねぇ~
後ろを振り向くとシャワーでも浴びたのか、髪を湿らせた今話題のガキがそこにいた。
「何その目は?私に発情でもしてんの?やだ、キショい、死ね」
「なんでお前に俺はそこまで責められてるんだ。しかも、自意識過剰なお前の妄想で」
「うるさいわよ。さっさと朝ごはんを作りなさい。出ないと風穴が開くわよ」
ジャキッ
そこで登場、火縄銃。
この国はいつからこんな無法地帯になったんだろうか。
「とりあえず、朝飯の前にお前こっち来て座れ」
「なに命令してんの?バカなの?死ぬの?」
「お前こそバカか。そんな髪を濡らしたまんまでいればすぐ風邪をひいちまう。ほれ、乾かしてやるから来い」
「……………………」
なんだがとてつもなく不服そうだが、小ずきんはベッドに腰掛けた。
こうだまってりゃ可愛いただのガキなんだがな。
「ふぐっ」
「…………………」
俺の視線に気づいたのか、いきなり飛んできた拳。
鳩尾にどーん。
「な、なにしやがる」
「その目が気に食わないわ」
なんて理不尽な理由で俺は殴られたんだ。
「そんなことより早くしてよね」
それが人にものを頼む態度か。ばあさんにお前は何を習ってきた。
まぁ、そんなことを言えば殴られるのはわかりきってることだ。
俺はとりあえず、ブラシとドライアーを使って髪を乾かしながら梳かす。
「さて、できた。どうでしょう?お客様」
俺が手鏡を渡すと小ずきんは満足げな顔をして
「まぁまぁね」
と言った。
顔とセリフがあってねぇよ。このツンデレめ。
「じゃあ、飯にすっか」
「私、パンがいいわ」
「おかずはスクランブルエッグにハムなんかでいいか」
「それにかぼちゃのポタージュとサラダがつけばさらに最高ね。あとホットミルクも」
「了解」
そこまで話して俺は気づいた。
俺は何故こんな自然にこいつの朝飯を作るように話をしているんだ。
それが当たり前みたいじゃないか。
まぁ、そんなことでいちいち怒るほど俺も子供じゃないがな。
俺はぱぱっと注文通りの朝飯を作ってやり食卓についた。
「ねぇ、あんた今日の予定は?」
「あ?普通に学校だけど」
「………そう」
なんか嫌な予感が体中を走り回った。
「お前、絶対に学校に来んなよ」
「な、なな、何を言ってるの?あたりまえじゃない!」
明らかに動揺しすぎだろ。来る気満々じゃないか。
「絶対に来るなよ」
「…………美味しいわね、このポタージュ」
「不自然に話を変えるな」
「…………………………」
「目線をそらすな」
「うるさいわね!!行かなきゃいいんでしょ」
「おぉ、完全なる逆ギレだな。まぁ、こなきゃいいんだが」
とりあえずその話題はそこできれた。
だが、俺はもっと注意をするべきだったんだ。
だって、こいつはもともと………
…………常識なんて通じないんだから