バックでトゥーなフューチャー
「あんたはあのオオカミを絵本にかえすカギを持ってるの」
「へ?」
俺こと神谷紡は変に裏返った声を出してしまった。
不覚だ。
自称赤ずきん略して小ずきんはくすくすと笑っている。
「あんた、おもしろい声がでるのね。もう一回してみてよ」
「やなこった」
変なところ見られたくないやつに見られてしまった。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
いったん話を戻そう。
「で?鍵ってなんだ」
小ずきんは頭巾の中から一つの小箱を取り出し、俺に投げつけてきた。
「それがヒントよ。神埼せんせ」
「……………」
俺は受け取った小箱の封を開ける。
そこにはいびつな形をしたペンが一本入っていた。
「それで何か書いてみて…そうね、火縄銃とかいいかな。めちゃくちゃかっこいい火縄銃を文章で書いてみて。なるべく詳しく」
俺は言われたとおりにごつい火縄銃にふざけておもちゃの象の形をしたとか、撃つ度に可愛らしい声で『ナイスショット!!』という音声が流れるなどのオプションを付けて書いてみた。
「よし、出来た」
そうするとペンがいきなり光り出して、目の前に可愛らし象の形をしたそれが現れた。
「何よ、これ?」
「火縄銃」
「はぁ!?」
おお?小ずきんさまがお怒りのご様子だ。
でも、それを持ってるお前はマジでどっかの公園で遊ぶガキだよ。ぴったり過ぎるよ。
「バカにすんな!!」
「きゃん」
だからね、そこは弁慶さんも泣いちゃうんだって……
俺が脛を抱え、丸まっていると小ずきんは鼻を鳴らしながらも俺を足蹴にしてきやがった。
しばいたろか、こいつ。
「でも、これでわかったでしょ?このペンにはあなたの想像を力に変える力がある」
「(0ω0)」
「バカにすんな!!」
「ごぉう!!」
だめだよ…そんな連続でやったら弁慶さんも死んじゃう。
「で、でも、なんで俺なんだよ」
「あなたの文章力ならできるでしょ?神埼紡」
「その名前で呼ぶな。それに俺はもう、文章は書かない」
「なんで?良いじゃない」
「俺にはもう文書を書く資格なんてない」
俺はうつむいてそのペンを手の上で回した。
過去の過ちを思い出しながら―