PV10000越え 記念小話
亀です。
みての通り祝い小話です。ここまで来れたのも日々読んでくださる読者様のお陰です、ありがとうございます!
祝い小話とありますが、亀の勝手な趣味で現代パロとなっていますのでそういうものが苦手な方は逃げてください!!
他に祝い小話で「こういう話を書いてほしい」などの要望があれば言ってくださるとできるだけ答えますのでお手軽にどうぞ!
「クリスマス?」
ディアンは本から顔をあげて怪訝な顔をした。
そうそう、と頷くのは顔を輝かせたユノだ。
今日は12月25日。世に言うキリストの誕生日である。
「でその誰かの誕生日が俺と何か関係があるというのか?」
「いいじゃない、お祭りなんだから!」
「お祭りというならその宗教に入っている者だけが祝えるものだろう。あいにく俺はどの宗教にも属してはいない」
「属してないからこそいろんな宗教のいいとこどりとかできるのよ。大みそかに除夜の鐘、そのあとの初もうでなんてあたりまえじゃない。ここはそういう国なんんだから」
むむむ、と口論を交わす二人にまあマァと仲裁の声が入った。
「こういうものにかこつけないと休むことのできない人もいマスシ、御馳走も食べられまセンヨ?」
にこやかに悟すレオンの手にあるのは豪華な料理だ。
肉が苦手なディアンのためか、メインは魚の香草蒸し。あとは温野菜やらシチューの肉なしやらベジタリアンに優しいメニューばかりがテーブルの上に並んでいる。
「おいしそう!これ全部レオンが?」
「このときのために腕をふるいマシタ!あ、ケーキもありマスヨ?それよりユノさんは今日家にいなくてもいいのデスカ?」
「・・・今家誰もいないのよねー」
どこか表情に陰をつくったユノ。ハア、とレオンは生返事をした。
「兄さんはなんでもサークルで旅行に行って、お父さんとお母さんは双子連れておばーちゃん家いったみたいで・・・。朝起きたら誰もいなくって電話したら『寂しかったらディアンさんとこに泊まればいいじゃない』って・・・」
確かにお祝いは昨日やったしプレゼント・・・はもう貰う年じゃないけど、私だけ置いてどこか行っちゃうってひどくない?と涙ながらに語るユノをレオンはなだめた。
「それは残念デシタネ・・・。さあさあ泣いてないでお料理食べまショウ? 冷めては美味しくないデスシ、せっかくのお泊りなんですから楽しい気分にならナイト」
「そうよね・・・!せっかくのクリスマスだもの、楽しまないと損よね!」
じゃあ食べよう!とニコニコしだしたユノにレオンも釣られてニコニコとした。
「ディアンー食べよー?」
「いや、俺はちょっとコンビニ行ってくるから先食ってろ」
えーとむくれるユノとレオンに手を振って素通りをするディアン。手には財布といつもの黒いニット帽とマフラーだ。誕生日に、とユノが編んだものはまだ使ってくれているらしい。
「しょうがないデスネェ・・・先に頂きマスカ」
「ん・・・もうディアン少しくらい空気読んだらいいのに・・・」
ネ?と首を傾げるレオンにむうと頬をふくらますユノ。
テーブルの上の料理はまだほかほかと湯気を立てていた。
御馳走を食べてお風呂にも入ってユノはパジャマ姿でうとうととしていた。
ジャージ姿のレオンが困ったような顔でユノに話しかける。
「ホラ、ユノさんもう寝ナイト。12時デスヨ?いつもは10時には寝てるんデショウ?」
「まだディアン帰ってないもん・・・」
「ケーキは明日でもいいデスシ、ディアンさんはちょっと遠くのコンビニまで行ってしまっただけデスッテ」
「だって・・・」
くわあと欠伸をするユノ。むずかってクッションをギュッと抱き寄せる。
「・・・ユノサン?ユーノーサーン?」
反応がないユノにレオンはどうしまショウ、と首を傾げた。ユノが泊まりに使う布団は今いるリビングの襖の向こうにある。寝いってしまったユノを動かすのはやぶさかではないが、出てしまったまま帰ってこないディアンのことも気になる。
まあ考えてもしょうがナイ、とユノを抱えようと腰を落とした時、レオンの首筋に冷たい空気がそっと触れた。がちゃ、とドアを閉める音も聞こえる。
「ア、ディアンさんお帰りなサイ」
「・・・・・・寝たのか」
「ハイ。もう12時ですシネ。そういうディアンさんはどちらニ?まさか本当にコンビニじゃありませんヨネ?」
「・・・・・・・・・・・・コンビニだ」
「さすがにその袋を隠しきれるとは思えまセンガ・・・。ちょうどヨカッタ、俺ちょっと明日の朝食の仕込みがあるのでユノさんを運んでくれまセンカ?」
「・・・了解した」
手にクリスマス仕様の袋をもったままディアンは軽々しくユノを抱き上げ、襖の向こうへ消えて行った。湯たんぽが入って暖かい布団にユノを入れて枕元にプレゼントを置くのだろう。
そのためにディアンはこの寒空の中まだやっている店を探して走ったのだろうから。
レオンはその姿を見送って自分は台所に立ってエプロンをつける。
朝食の支度なぞいつもはしないし、ディアンへのいいわけでもあったのだが、明日起きたユノを喜ばせるにはいいかと思いなおしたのだ。
ユノはいつも頑張っている。仕事が忙しい両親に代わって部活に入らずに家のことをよくやるし、双子の面倒だって、ついでに世話のかかる隣人も見ている。大学生の兄もいるが、遠い大学に行っているため滅多に帰ることはない。
まだ14歳なのにあんなにもしっかりしているのは自分が頑張らなければということもあるのだろう。
今日という日ぐらい目いっぱい甘やかせてやるべきなのだろう。昨日ユノの両親から頼まれたことでもある。
「ノクスさんには電話で脅されましたモンネ・・・」
俺の妹に手ぇ出したら深夜寝れると思うなよ?と言って切れた電話は何かと思った。
思い出し笑いをしていたレオンはひたひたと自分の後ろから足跡が聞こえてくることに気づいた。
ゆっくりと振り返るとさっき帰ってきたばかりでまだ冬のにおいを体にまとわせたままのディアンが立っていた。レオンは微笑んで問いかける。
「どうしたんデスカ、ディアンサン?」
「腹減った」
「アア、ハイ、ちゃんと取ってありマスヨー。ちょっと待ってくだサイ、今温めマス」
「と、その前にレオンにはこれ」
赤と緑の包装紙に包まれた品物を差し出すディアン。レオンは一瞬状況がわからずに首を傾げた。
ディアンが焦れたようにほら、と押しつけてくる。なんとなく受け取ってレオンは慌ててプレゼントを突き返した。
「チョ・・・、頂けまセンヨ、プレゼントナンテ!ここに家賃無しで居候させてもらってるだけで十分デスノニ!」
「いいから。子どもはプレゼントを貰うんだろ?」
「子どもじゃありまセン!」
「未成年なら子どもだ。それに俺が貰っても困る。この寒い中探した努力が水の泡だ」
「・・・・・・ディアンさんはずるいデス・・・」
にへら、と笑ってレオンはディアンにありがとうございマス、と頭を下げた。
ディアンはああ、と頷くとくわあとあくびをした。
「シチューだけでいい。部屋に持っていく」
「ハイ。お疲れ様デス」
シチューの入った器をもって寝室に戻るディアン。
レオンも手を洗ってエプロンを外すと部屋の電気を消した。
ふとカーテンの隙間を見るとちらちらと舞う白い雪。
「メリークリスマス、デスカ。まあ今日ぐらいは便乗してもいいデショウ?」
レオンはにっこりと笑うとカーテンを閉じて自分の部屋へ向かった。