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きらきら森のたぬきさん

作者: こぐま
掲載日:2025/12/22

人里離れた森の奥に、いつもみんなの注目を浴びる、うさぎさんがいました。

うさぎさんは走れば風のように速く、どんな難しい問題もすぐに解いてしまう、とても賢いうさぎです。そのためいつも森の人気者でした。


朝日を浴びるたび、ふわふわの白い毛はやさしく光り、まるでキラキラ輝いているようでした。

森の仲間たちは口々に言います。

「うさぎさんってすごいな」

「あんなふうになれたらいいのに」


そして、そんなうさぎさんに、誰よりも強く憧れていたのが、たぬきくんでした。


たぬきくんは走るのが遅く、動きものんびりしています。

茶色い毛は森になじみすぎていて、目立つことはありません。

みんなの輪の端で、たぬきくんはいつも、キラキラしているうさぎさんを見つめていました。


ある日、たぬきくんは思いきって、うさぎさんに声をかけました。


「ねえ、うさぎさん。

どうしたら僕も、うさぎさんみたいに足が速くて、頭が良くて、白い毛がキラキラした人気者になれるの?」


うさぎさんは、少し驚いたように目を丸くしてから、やさしく微笑みました。


「たぬきくん。キラキラってね、みんな同じじゃないんだ。ひとりひとり、色も形も違うんだよ」


「きみは、ぼくと同じじゃなくていいんだ」


たぬきくんは首をかしげました。

その言葉の意味が、まだよくわかりません。


すると、うさぎさんは続けました。


「たぬきくん、自分だけのキラキラを探してごらん。

必ず、きみの中にもあるから」


たぬきくんは、その日から森を歩きながら考えました。

自分にできることは、なんだろう。


歩いているうちに、たぬきくんはいくつかのことに気づきました。

茶色い毛のおかげで、森の中ではすっと景色に溶け込めること。

幼いころからこの森で遊んできたから、どんな入り組んだ道でも迷わず歩けること。


試しに、仲間たちと遊んでみました。

かくれんぼをすると、誰にも見つかりません。

道に迷った小鳥の子を巣まで案内すると、まるで魔法みたいに、すぐにたどり着けました。


「ありがとう!たぬきくんはすごいね!」


そう言われたとき、たぬきくんの胸の奥が、ぽうっと温かくなりました。

こんなふうに、誰かの役に立てたのは初めてです。



「僕は、うさぎさんみたいに速くも賢くもなれないけど、森の中では、誰よりも上手に隠れられるし、道だって、迷わずに案内できる。それが、僕のキラキラなんだ」


その言葉を聞いて、うさぎさんはとても嬉しそうにうなずきました。


「たぬきくん、ほらね。やっぱり、きみだけのキラキラは、ちゃんとあったでしょう」


それから森では、動物たちがそれぞれ自分の得意なことを見つけ、困っている仲間を助け合うようになりました。


速く走れる者も、

遠くが見える者も、

静かに支える者も。


みんなのキラキラが集まって、

森は前よりもずっと、あたたかくなりました。


やがてその森は、

「キラキラの森」

と呼ばれるようになりました。


キラキラとは、誰かと比べるものではありません。

キラキラとは、誰かみたいになることでもありません。


自分にしかできないことを、大切にすること。それが1番大きくて綺麗なキラキラなのです。


その夜、森にはやさしい風が吹いていました。

たぬきくんは、小さな丘の上に座り、森を見渡しました。

遠くでは、うさぎさんが仲間たちと楽しそうに話しています。

その白い毛は、月の光を受けて、やっぱりきれいでした。


でも、もう胸は、ちくりとしません。


たぬきくんは、自分の足元に伸びる影を見つめました。

丸くて、少し不格好な影。

けれど、それは確かに、ここにいる自分の形でした。


「これが僕なんだ」


そうつぶやくと、胸の奥で小さな光が、そっと瞬きました。

誰かに見せるためじゃない。

比べるためでもない。


森は静かに眠り、キラキラは、今夜もそれぞれの場所で、音もなく、やさしく輝いていました。




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