第八章:金を繋ぎ、玉を囲え
これはAIが書いたものです
戦の上手を名乗るなら、己の身を守ることも知っていなければならない。
敵が飛車や角を走らせてくる前に、玉将――すなわち己の命運を、堅牢に守る。
そのために使うのが、「金」。
金将は、前にも横にも後ろにも動く守りの要だ。
小田氏治は、まず「金」を“繋ぐ”ことから始めた。
「井口周斎、結城殿との縁組の話、どうなった?」
「まとまりました。結城の姫を、殿の養女として迎えることで、小田との縁戚を結ぶとのこと」
「よし。“金の連結”は盤上だけでなく、血筋と領地でもつなぐのが常道だ」
氏治は着々と、周辺国人衆との縁を作っていった。
・那珂氏には、軍馬の供給と引き換えに塩の交易を約束。
・下妻の長塚氏には、城の修繕費を肩代わりする代わりに、軍役を負わせた。
・太田庄の名主たちには、税を軽くする代わりに、農兵訓練を義務づけた。
これらをつなぐのは、政繁率いる「調略役」。
戦なき戦を、文と言葉と策で制する者たちだ。
――そして、最後に残るは、自身の「囲い」だ。
「俺の身が討たれれば、すべて水泡に帰す。囲いを作る。いや、“生き残るための軍”を」
そう言って氏治が立ち上げたのが――
**“黒備え(くろぞなえ)”**という名の精鋭部隊だった。
これはいわば、“移動する囲い”。
常に氏治のそばに付き従い、万が一の戦でも必ず主を逃がす。選りすぐりの百騎、すべて黒鎧に黒鉢巻き。その中心には、かの太市がいる。
「お前の仕事は、俺を守ることではない。俺の“戦”を完遂させることだ」
「……わかった。殿が死にたくても、死なせねぇ。たとえ腕がもげても、脚がちぎれても、殿だけは生かす」
この誓いは、のちに戦国関東中に響く伝説となる。
そして、すべての囲いが整ったその夜――
氏治はひとり、囲碁の碁盤を眺めていた。
「将棋の囲いは、堅くて壊れぬほどに価値がある。だが、固すぎる囲いは“動けない”。……これでいい。“動ける囲い”こそ、乱世を勝ち抜く」
その視線の先には、北条、佐竹、そして関東を狙う織田の影――。
「……金を繋ぎ、玉を囲った。あとは、火を入れるだけだ」