第二章:初手・兵の配置
これはAIが書いたものです
転生から三日が過ぎた。
小田氏治――いや、元将棋棋士の神谷誠は、まず己の置かれた「盤面」を把握することから始めた。
領地は常陸国(現在の茨城県)。城は小田城。だが、すでに常陸南部では佐竹氏が勢力を広げ、周囲の国人衆たちも風向きを見極めている最中。要するに、どこから攻められてもおかしくない「詰み寸前」の状態だった。
「……これ、マジで詰んでるやつじゃないか……?」
本能的に、かつて自分が指した負け将棋を思い出した。だが違う。将棋と違って、戦国の乱世には「持ち駒」がある。失っても、もう一度奪い返せばいい。
「この戦、諦めなければ終わらん。終局を握るのは、俺だ」
まずは情報戦。将棋では盤面の読みがすべてだ。敵の配置、味方の士気、裏切りの可能性――全ての駒の動きを読む必要がある。
「殿、お身体はもう……?」
現れたのは重臣・大道寺政繁。原史実では氏治を支え続けた忠臣である。神谷は彼の目を見て言った。
「政繁。今すぐ、常陸中の国人衆と連絡を取れ。佐竹の動きも探れ。兵は動かすな、まずは見極める。俺はまだ『序盤』を指しているだけだ」
政繁は驚いた顔をした。これまでの氏治とはまるで違う。慎重でありながら、どこか盤上を見通す目をしている。
「……承知。すぐに動きまする」
こうして氏治は、開戦ではなく「観察」と「配置」から始めた。主力を温存し、周囲の勢力との関係性を再構築する――いわば、将棋の序盤における「囲い」だ。
「戦は読み合いだ。盤面に罠を張り、誘導し、相手の狙いを外させる」
そして次に氏治が動かしたのは、意外にも「学問所」の再建だった。
「は……学問所、でございますか?」
「そうだ。戦だけでは民は動かん。読み書きを教え、算術を与えよ。百姓の数こそが我が『歩』であり、歩が進めば敵将の足元も揺らぐ」
学問所の再建は民心をつかみ、国人衆の信用をも得る布石となる。将棋で言えば、歩の突き出しにこそ意味があるのだ。
その夜、氏治は一人、地図を見ながら呟いた。
「将棋に負けた俺が、戦で勝てるか試してみようじゃないか……。最弱から、名人戦のような大戦へ。これは千日手じゃない……勝つか、潰れるかの勝負だ」