とりあえずここからはじまる
「……。では、魔王の座は我が子に譲る。皆、これからは息子を魔王として扱うように」
『イエス、マイ、ロード!』
それからしばらく。
「めっちゃ暇!」元、魔王は暇でした。
「人間でも滅ぼして遊ぶか!」
「ダメよアナタ」制止させたのは魔王の奥さん。
「なぜだ! あの種は勝手に増えるだろ?」
「アナタが魔王業をしていたからよ! アナタが直接滅ぼしに行ったら人間種なんて一日持たないわ!」
「そういうものか……」
「魔王軍の実戦相手してあげれば?」
「それは引退した身としては息子に責任があるだろ」
数分迷い。
「いや、それもいいか! 我が息子の為になる!」
と。言う事で魔王軍幹部を集めた。
「なぁに、そんな気を張るな! 私は隠居した身だ。力も大分衰えたしな」
「しかし、魔王様、いや、元魔王様、かかって来いと言われましても、我々では瞬殺されるかと」
参謀の【ドーナット】がおそるおそる聞く。
「ならば制限として、私は魔法を使わない。これでどうだ?」
顔を見合う魔王軍幹部。
「そうなりますと、腕力のある【魔獣幹部、オトソノコノ】が唯一こちらの頼りですが、元魔王様は片手で伏せたことがいつしかあった気がしますが……」
ドーナットは閃いた。
「元魔王様、人間は食べるものを作っているそうです。なんでも『のうぎょう』とか。どうでしょう?」
「おお、それはいいかも知れん! 要するに食べるモノを増やすだな?」
「はい!」
「ぬぬぬぬ……」元魔王が手をグーにして念じる。そして地面に手を突っ込み「はっ!」と、何かした。
すると、地面からボコボコと野菜の芽が出て、苗になり、実がなり、朽ちていく……。
「のうぎょうは難しいな、もっと簡単なモノはないのか?」
「ゲートボールなどとうですじゃ?」
幹部で元魔王より長生きしている【ジャナ】が言った。
「なんだそれは?」
「簡単に言いますと、予め決めたスペースにボールを転がすってことですじゃ」
レクチャーすること百年。元魔王は苦戦していた。そのストレスで山を一つ潰した事もある。
「お見事ですじゃ!」
「やった! 遂にゲートボールを極めた! よし!これよりゲートボール大会を行なう!」