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3-1

「ハァ…」


ナイトのため息がクラブ内に響き渡った。


多くのクラブが賑わうこの街。


ほとんどのクラブをナイトが経営していることからナイト町と呼ばれている。


ナイト町の奥のエリアは、老舗店舗が多く、ナイトの所有地ではない。


だが今回奥のエリアの入り口付近にあるクラブ。


そう。


チェリーブロッサムクラブを自分の物にすることができた。


残すところあと4店舗。


このクラブの経営が上手くいけば、残り4店舗もすぐに手に入るだろう。


だが上手くいかなかった場合…


老舗店舗は、彼には店を委ねない。


彼は、それについて十分すぎる程理解していた。


「なかなか良い子がいないですか?ナイトさん。」


面接休憩中にツーが話しかけてきた。


「もう皆できあがっている。他の店舗でNo.1の子たちばかりじゃないか」


「え?…その方がいいじゃないですか。即戦力ですよ!」


ツーは、ナイトの発言に拍子抜けしてしまった。


ツーは、早くにクラブの経営を立て直さなくてはならないという彼の想いを汲み取り、各クラブのエースをスカウトしていたのだった。


「それだと意味がない。俺は、原石を探しているんだ。」


「げんせき…ですか?」


ツーには、その言葉の真意が分からなかった。


「俺にしかできない俺色のクラブで頂点を取るってことだよ」


そう言って彼は、サングラスを外した。


「次が最後の1人か?」


「はい」


ツーは、最後の履歴書を手に取り、あることを思い出したのだった。


「電話の子か…」


「電話の子?」


「いえ。なんでもありません。最後の方、お入りください。」


ツーが大きな声で呼びかけると、彼女が入ってきた。


「なんだこの子は。」


ナイトは、そう呟いていた。


ボロボロの黒いTシャツに穴の空いたジーパンの女性。


「すみません。ナイトさん。電話で応募された方なんですけど、一応選考に入れていたんです。」


ツーは、怒鳴られるのではないかと怯えていた。


「斉藤さらです。現在は、ホテルの厨房で皿洗いのアルバイトをしています。」


ナイトは、テーブルにある履歴書を見つめていた。


「君、15歳から働いてるの?」


「はい。」


彼女は、元気よく返事をした。


「何故?」


「私が15歳の時に父の会社が倒産してそれからは、家族を養う為に働いています。」


ツーは、ナイトの表情を伺った。


「私、弟を高校に通わせたいんです。お願いです。働かせてください。」


彼女は、その場で土下座した。


「やめなさい。」


ナイトは、不機嫌そうに呟いた。


「自分がこの世でたった1人のレディであることを忘れてはならない。だから君は、この場でそのようなことをするに値しない人間だ。」


「ナイトさん?…」


ツーは、ナイトが彼女の側まで行き、跪いたことに驚きを隠せない。


ナイトは、彼女に手を差し出した。


「君、僕と一緒に最高の景色を見に行こう。」


「はい。」


こうして彼女は、チェリーブロッサムクラブのホステスとして働くことになった。


だがこの時は、まだ誰も分からなかったんだ。


彼女がここで働き始めた本当の理由を…

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