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「ナイトさん!ナイトさん!」
「待ってくださいよぉ!ナイトさん!」
ナイトの秘書たちが彼の背中を追いかける。
「ナイトさぁん!あれほどママさぁんにはケンカうらないでクダサイネっていったじゃないデスカ!」
ナイトの右腕である中国出身のワンが困った表情を浮かべている。
「俺は、真実を述べただけだ。あのクラブは、このままでは潰れてしまう」
「ナイトさん。何故あのクラブにこだわるんですか?…正直言って廃業寸前のましてはホステスクラブなんて…ナイトさんは、もう少しでドラゴングループの帝王になれるはずだった。なのに何故このタイミングでホステスクラブを経営するんですか?」
ナイトの左腕であるツーがワンと目配せをしながら、彼に尋ねた。
「そうだな…このままでは帝王になれないと悟ったからだな。」
「え?ナイトさんが?」
2人は、目を見開いた。
「まぁそれだけではないよ。とにかく上手くいけばドラゴングループの帝王への道も近くなるってことだよ。ワン。ツー。オーディションの日程と場所を決定した。宣伝活動を頼んだぞ」
「ハイッ!」
2人は、元気よく返事をした。
それからしばらくして新人ホステス募集広告がクラブ前、クラブ周辺の駅、商業施設など様々な所へ貼り出された。
もちろん私が働くホテルにも掲載された。
「チェリーブロッサムクラブ採用面接のお知らせ…」
私は、私服から制服へと着替え、お手洗いへと向かう途中にその広告を目にした。
「20歳から25歳までの女性…月収50万円」
私は、そのチラシを二度見した。
私の脳内には弟や妹、両親の顔が思い浮かんだ。
もちろん彼へ復讐するために申し込もうと思ってはいたが、
それだけの想いでは一歩を踏み出せずにいた。
でも今の仕事で家族を養っていくことができないことは、分かっていた。
私は、ようやく決心が着いたようだった。
気づくと、そのチラシに書いてあった番号に電話していたのだった。
「プルルルルルプルルルルル」
「ガチャッ。こちらチェリーブロッサムクラブです。」
「私の名前は、斉藤さらです。オーディションに応募します。」
気づくと、私は、夜の世界へと一歩踏み出していたのだった。