歌舞伎町
東沈んでから賑わう街。歌舞伎町。
ぐるぐるに巻かれたヘヤ、首元にはキラキラに輝いた。ネックレス、指には億以上するダイヤ、手元には客からもらったであろう。ブレスレットを身に付けたホステスたち。
歌舞伎町駅買う人々にチラシを配るもの。
お客様の手を取り、タクシーまで送迎するホストたち。
現実世界に嫌気が差し、連日のように歌舞伎町に通う女たち。
1週間に1度この日のために仕事を頑張ったと言っても過言ではない。男たち。
そんな者たちが行き交う待ち。それが歌舞伎町だ。
俺はそんな街で多くの年月を費やしている。
この街にある。ほとんどのクラブは、俺が経営している。
俺は100年以上の歴史がある。この街でたったの10年でほとんどのクラブを自分のものにした。
その営業からつけられた意味は、夜の帝王ナイト。
俺に不可能なことなんてない。
夢は歌舞伎町制覇だ。
そのためならば手段は選ばない。
愛なんていらない。
そう思っていた。
彼女に出会うまでは。
「ナイトさん、今週の売上が出ました。」
僕の右腕であるナイトが、今週の売り上げ表の紙を持ちながら、僕のもとまで走ってやってきた。
僕は、その髪を注意深く目を通した。
売り上げ表の最も下に掲載されている。名前。キャサリンと書かれていることに僕は気づいた。
「キャサリンは、3ヶ月連続で最下位だな?」
目の前にいたキャサリンは静かにうなずく。そして金髪の髪を自分の手で触りながら、必死に童謡を隠している様子だった。彼女は僕に怯えているのだ。僕に朝礼で名前を呼ばれた人は、クビになる。そんな噂がクラブ内で広がっているからだろう。僕は彼女の期待に応えるように、静かにその2文字を口にしたのだった。
「クビだ。」
その言葉を聞いたキャサリンは、その場に泣き崩れた。俺のクラブで働くものは、他の仕事では政権を立てられず、生活のために始めたものが多い。首がどのようなことを意味するのか、僕はわかっているつもりではあった。でもこれはビジネスだ。利益の出ないものを店に置いて置くほど、僕もお一人ではない。
「ナイトさん。キャサリンは、入ったばかりです。伸びしろがあります。」
テンが今にも泣き出しそうな表情を浮かべていた。この短い研修期間の間にも、はキャサリンに引かれていたのだろう。それに彼は惚れっぽい性格だ。新しく入ってきた新人に常に感情移入してしまう。今回も見事にキャサリンに恋をしてしまったようだ。
「これはビジネスなんだ。3ヶ月で結果の出せないやつはいらない。クビだ。」
そんな彼の思いを無視し、僕は言い放った。そんな僕を見た。彼は、僕を睨みつけた。かなり落ち込んだ様子だった。
だが、僕は大丈夫であることを知っている。
彼はまた3ヶ月経つと、あなたな好きな人を見つける。
新たな新人が入ってきたら、その子を育てているうちに、すぐ好きになる。そして立ち直る。その繰り返しなのだ。
やはり愛なんてそういうものなんだ。
僕は彼を見て改めてそう感じることができている。
僕が立ち去るとキャサリンは、その場で崩れ落ちた。
キャサリンの鳴き声が聞こえていたが、僕はそんなことなどを気に留めない。
何度も言うが、これはビジネスだ。
俺には歌舞伎町制覇と言う夢が残されている。
その夢を果たすためには、手段を選ばない。
僕は、タブレットを持ちながら次の予定を確認した。
素早く歩く。僕に必死についてくる。左腕のイレブン。
「ナイトさん。こないだ買収することになっていたクラブクラウディアですが、直前になってママが売却しないと言い出しました。」
クラブクラウディア…
僕が次に買収しようと計画している50年以上も歴史のある老舗クラブだ。
歌舞伎町の7割のクラブは、僕の所有物だ。
歌舞伎町の奥にあるエリアだけは、自分のものにすることができていなかったのだった。
何故かと言うと、奥のエリアは、50年以上の歴史もある老舗クラブばかりが集っている。
10年前にこの街にデビューした俺なんかが手を出せるようなエリアではない。
何とも言えない。暗黙の了解があるような、そんな気がしているのだ。
だが、僕の夢は、歌舞伎町制覇だ。
そのためには、なんとしても、今回のクラブCloudの買収計画を成功しなければならない。
もし失敗することになるとすると、歌舞伎町制覇と言う夢が水の泡になってしまう。
「なんだと?何故そんなことになるんだ?」
僕は焦りからイブンに怒鳴ってしまう。
僕の大きな声にイレブンが萎縮してしまった。
「50年以上歴史があるクラブを売り渡すことはできないそうです…」
消えるような声で、イレブンが僕に伝えた。
「それをなんとかするのがお前の仕事じゃないのか?なんとかするんだ!分かったか?」
僕は彼を睨みつけた。
「でも…」
彼は困ったようだった。
「いつも言ってるだろ?手段は選ばなくて良いんだ。」
僕は最後の手段である。この紙をイレブンに渡した。
「ママの過去の情報だ。これで彼女を脅すんだ。分かったな?」
彼はその紙を開いて、中身を確認した。確認した後、静かに返事をし、どこかへと向かっていった。