87話 予想外だけど予想通りなのかも
それにしてもフルーレ先生って、なんとなくだけどこの感じは
「もしかしてフルーレ先生はお母様のお弟子さんなんですか?」
「正解! 忙しくて最近はお会いできてないけどね。だから精霊に限らず魔法や魔術、術式なんかも全部教えることができるよ」
詳しく聞くと、フローラさんもフルーレ先生もお母様のお弟子さんで、シズクさんの後輩だったわ。
しかもわたしがもっと小さい頃、ちょくちょく会っていたみたい。まぁ子供故に寝てることが多かったせいで、起きてるときに会うのは今日が初めてだったと。
もちろん天魔に進化済みなので超強い。
それだけでなく、フルーレ先生は精霊神の顕現ができるすごい人。精霊神を顕現させるのってほんと―に難しいからねぇ。
精霊神の顕現は才能だけでなく、精霊神にふさわしい精霊力を生み出せるかが重要。とゆーか、精霊神に近い精霊力を生み出せないとダメなんだったかな。
さらに厄介なのが、顕現させるには種族によって難易度が変わってくるところ。
スーパーメイドのシズクさんですら精霊神の顕現は難しい。精霊との仲は申し分ないんだけど、猫族という種族が精霊寄りではないから難しくなる。
狐族も本来はそうなんだけど、わたしとお母様は特殊だからなぁ。
精霊寄りな種族も当然存在する、それがフルーレ先生のようなエルフだね。
まぁ精霊寄りの種族とそうでない種族の差は大きいけど、実際の影響は小さい。精霊神を顕現させるのが難しくなるだけで、小精霊と大精霊には関係ないところ。
「ということは、フルーレ先生に精霊術以外の魔法とか魔術とか、そういったものも教えてもらうことはできるの?」
「もちろん! むしろ私が教えないで誰が教えるの? って感じかな。この学園に来たせいで弱くなったりしたら、私がお師匠様に怒られちゃうよ」
すごくなっとく。
うちに居ればほぼ毎日レグラス最高峰の授業を受けれるのに、低レベルの授業を受けてダメダメになったら問題になるだろうねぇ。
だけどフルーレ先生ならうちと同じ内容の授業ができると。
しかも魔法や術だけでなく、国語や数学といった一般的なものもバッチリ。これはもう決まりですね!
「といっても毎日は無理だから、週2日くらいになるかな。でも教えることができる日は丸々1日をユキちゃんたちに充てるからね」
「そんなことしちゃっていいの? なんとなくわたしたちだけ特別扱いするように思えちゃうんだけど」
「教える子を絞っているから大丈夫だよ。それに最近は私が教えたいって思う子、あまりいなくてね。ユキちゃんたちを最後に、私も姉さんの手伝いしようかな~って考えてるの」
おっと凄いことを言ってますよこのエルフさん。笑顔でさらっと言うことじゃないと思うんだけど。
でもまぁ気持ちはわかるかな。昨日の精霊科の人ごみ見たけど、見込みのありそうな人って皆無だったから。精霊にとって嫌悪の対象となる奴すらいたし。
「あとはそうだね、私の転移門を使ってルアスに送ってあげることもできるよ。なので、週の始めと終わりを私の授業にすれば休みは自宅で過ごせるようにできるけど、どうかな?」
「是非お願いします!」
「りょうかーい。それじゃ授業は週始めと週終わりの2日ね」
これは思いがけないほどの好条件、やっぱりお家に帰りたいからね。毎日は無理でも月に一回くらいは帰りたかったからほんとよかった。
それにわたしだけじゃなくノエルにも利点だしね。1週間ごとの派遣もこれですんなりできるわ。
それからフルーレ先生に授業内容などを軽く聞いたけど、うちの延長になる感じでよかった。
少し変わっているのはフルーレ先生の授業時間は変動制で、ひどいときは10分も無かったことがあるらしい。
逆に長いときは1日中になることもあるそうで、すべては生徒次第で長くも短くもなるとのこと。
もっとも、わたしたちが参加する授業は別格、何があっても1日中教えてくれるみたい。
まぁフルーレ先生いわく、1日で足りるかわからないくらいワクワクしてるとのこと。わたしが居るのが原因っぽいけど、悪いことじゃないから気にしない。
「こんなところかな。最初の授業は今週の終わりから、時間はいつでもいいけど、早めに来てくれると私もうれしいかな」
「はーい。それと先生に一個質問」
「何でも聞いて! うふふ、お師匠様の娘様に頼られるって、なんかすごい感動」
うん、その反応は何度も見たことがあるわ。うちに居るお弟子さんもそうだし、パパ様やママ様、フローラさんもそんな感じの反応だよね。いつもこの反応を見るとこそばゆくなるけど。
「えっと、精霊科以外に受けたほうがよさそうな学科ってあるのかなって。機工科はちょっとがっかりだったけど」
「だったら冒険科がいいんじゃないかな。はっきり言っちゃうと、ユキちゃんたちの勉学は私以外には荷が重いと思うの。となると勉学以外になるわけだけど、冒険科はその名の通り冒険をする学科。ダンジョンに籠ったりするんだよ」
ダンジョンに籠れるですって!?
やばい、ちょっとというかすっごい興味出てきた!
「冒険科、いいかも。って、暗にほかの先生を貶してるよね?」
「ユキちゃんたちがお師匠様たちに教わってることって非常にレベルが高いことなの。なんたってこの国アルネイアの王族以上の内容だからね。同等なのはレグラスの王族くらいだけど、これも基はお師匠様たちだから。なので同等レベルとなるとどうしてもね」
そういえばそうだよね、うちの教育ってとんでもないレベルだよね。
実際、うちに来た当初はエレンもレイジもちんぷんかんぷんだったっけ。でも教えるのがお母様やお父様、シズクさんといった凄い人だから、いつの間にかわたしと同程度になったけど。
「それじゃ冒険科のほうも行ってみまーす」
「迷わないように気を付けてね。それと禿げた男の人が一番偉い先生だから注意してね、禿げてるけど!」
なぜ笑顔で禿を二回言ったし。
いやまぁ重要だと思うよ、うん。わかりやすい特徴は知っておくべきだと思うよ。でも強調しないほうがいいと思う。
精霊科を後にして冒険科へ向かう。
それにしても精霊科が当たりだとは思わなかったなぁ。ダメダメな予想しかなかっただけに、ちょっと嬉しい。
「優しそうな先生でよかったですわ。それでいて隠していてもわかるあの魔力の高さ、すごかったですわ」
「だね。たぶんわたしとエレンが全力で行っても勝てないよ。近接はシズクさんのほうが上な気がするけど、遠距離というか術関係はシズクさんよりも強そう」
「そんな感じですわね。ふふ、わたくしたちよりも強い方が知り合いに大勢いるとか、現実味がないですわ」
エレンが笑いながらそう言うけど、気持ちはすっごいわかる。
わたしとエレンは化け物の中の化け物、最近その化け物の中にレイジも片足つっこんできてるけど。
化け物なので並大抵の天魔じゃ戦いにすらならないくらい強く、同年代はおろかわたしたちの親世代にも十分通用する力を持っている。
なのにどういうわけか、わたしの周りにはわたしよりも強い人が多い。
強いどころかわたしたちじゃどう足掻いても敵わない相手がたーくさんいる。
しかも同等くらいに下げたら、レグラスに仕えてる騎士たちの半分近くが該当するというのがね。ほんとうちの国って異常。
でもそのおかげか、わたしたちは力があっても自惚れたりしないからいいんだけど。天狗になろうものなら、速攻でその鼻を折られるのが目に見えてるしねぇ。
「それにしても禿げた先生、ねぇ」
「お嬢様、何か気になることでもありましたか?」
「まさかお嬢様はハゲたオッサンが好きなんですか!? 先輩、これは重大事件ですよ。お嬢様の好みが変わるとか前代未聞です!」
「……エレン、ちょっとだけノエル借りるね」
「いいですけど、何をしますの?」
うん、この狼娘にはちょっとお仕置きが必要だね。
そもそもわたしが男の人を好きになるわけない……のか? って、それは問題じゃない、なんでわたしが禿げたオッサン好きになるのよ。どう考えてもお父様とかお兄様みたいなイケメンに決まってるだろうに。
「あ、あの、お嬢様、なんかすっごーく嫌な予感がするんですけどー」
「ノエル、覚悟はいいよね?」
「あ、いや、ちょっとした勢いで言っただけで、せ、先輩助けて!?」
「無理ですね。ノエル、骨は拾いますよ」
「おしおきたーいむ!」
ノエルの尻尾をバシッと掴む。そして慣れた手つきで怪しくモフモフする。
「お、おじょうさまっ、そ、それいじょうは」
「観念しなさい!」
「だ、だめですってぇぇぇぇぇぇ!?」
時間にして10分少々、思い切り尻尾をモフモフしてやったわ。
ノエルは、うん、結構すごい状態だね。気を利かせてアリサがレイジの目と耳をふさいだのはいい判断だったよ。大人向けな声をあげたりしてたからなぁ。
そもそも獣人の尻尾は触られると大きく分けて四種類の反応がある。
一つ目は無反応。
触られても何も感じない人がこれ。尻尾に触覚や痛覚がない獣人もこれ。
二つ目は嫌悪感。
気に入らない人に肌を触られるようなものなので、嫌な感情しかない。
三つめは幸福感。
これは逆に仲が良い相手に触られるとなる。強い好意があるとただのスキンシップ以上になるけど。
四つ目が問題で、それは発情。
触ってくる相手に対し好意があるとなる可能性がある。ちょっと触る程度ならまだしも、思いっきりモフモフするとやばい。わたしもたまにやばくなるけど、何とか耐えられる。
でもノエルにやったのはわたしも耐えられないくらいのモフリ方、撃沈するのも仕方がないよね。
まぁちょっとやりすぎたけど……。
とりあえずアリサに頼んで、化粧室でノエルを着替えさせる必要があるなぁ。
やったのは獣耳と尻尾のモフモフだけです、えっちぃことはしてませんよ




