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85話 快適な家っていいよね

 契約はすんなり終わった。

 まぁいきなりポンと白金貨150枚出したら驚かれたけど気にしない。

 予想外だったのは保証が30年と長期だったことだね。何があっても対応してくれるのはうれしいわ。


 さてと、家を買ったから次はお引越し。

 いったん寮の部屋に戻り、家具とかすべてポーチにしまい込む。まだ家具を増やしていなかったのですんなり終了。

 次に空間拡張の術式とかを全部解除し、最後に元の鍵に戻す。

 ここまで5分という驚きの速さ! さすがわたし、自画自賛しちゃう。


 そういえば寮は年単位の契約なので、1年はこの部屋ってわたしの所有のままになるんだっけ。使うことがないからちょっともったいないけど、まぁいいか。


 片付け終わったので今度は購入した屋敷に向かう。

 道中、食材などの買い出しをしながら屋敷周辺に向かう人の流れも確認したけど、静かなところを希望しただけあってあまり多くないね。

 そういえば屋敷には防音の魔道具も設置されてるって説明受けたっけ。これはなかなか快適に過ごせそうな予感!





 そんなこんなで屋敷に到着。

 とりあえずお庭は明日以降で、まずは外敵用に防御結界を構築していく。屋敷に備え付けのやつもあるんだけど、ちょっと信用性に欠けるんだよね。

 屋敷備え付けの結界はこの国で一番の代物なのはわかるんだ。ただ、うちの国というかお父様が作った結界とじゃ雲泥の差。


 そもそも多くの国で使用されている防御結界には大きな欠陥があり、ある術式で強制解除することができる。

 そのことを知っている術者は多くないけど皆無じゃない。なによりわたしどころかアリサも使える簡単な術式なんだよねぇ。


 でもお父様の作った結界は異なり、強制解除はほぼ不可能。お父様やお母様はできると思うけど、わたしやアリサじゃ無理。

 それに、既存の結界にあった脆弱性や課題をすべて解消してあるすごい結界。正直過剰な性能ではあるけど、知っている欠陥が無いほうが安心だし。


 結界の構築が終わったので、次は内装に手を入れていく。といってもベッドの交換と、クローゼットを追加する程度なのであまり手間じゃない。備え付けの家具の出来が良い証拠だね。

 まぁベッドだけは備え付けのだと小さいから交換必須だったけど。どうして一人用のベッドばかり置くんですかね?


「こんなとこかな? あとは気が向いたら家具の追加くらいかも」

「ですね。それではお夕食を作ってきますので、お嬢様は少し休んでいてください」

「ほーい」


 アリサが台所に向かう姿を見たけど、なかなかテンション高い感じだね。動きがちょっと軽やかになってるよ。寮の時とは全然違うし、やっぱり気になってたんだろうなぁ。

 それに、わたしも周囲を気にしなくて済むから、隠していた尻尾を出すことができる! ずっと隠してるとなんか疲れるので、これは超重要です。


 さてと、ただぐてーってしてるのもなんかあれだし、お風呂の準備をしておこうかな。食べたらすぐ入りたい可能性もあるしねぇ。





 お風呂場に来たけど、掃除という掃除がないことに気が付いた。

 最新鋭のお掃除ゴーレムが配備されてるので、お風呂だけでなく屋敷全体の掃除は自動で行われる。しかも最新型なので従来よりも綺麗になり、そして早い。さらに魔力の補給も1年に1回程度という高効率、至れり尽くせりだよ。


 浴槽はヒノキでできてる。見た目は和風旅館のお風呂で浴槽も結構大きく、10人は余裕で入れるね。

 しかも浴槽には状態保存の魔道具が組み込まれているので、耐久面もしっかり考慮されている。ヒノキの浴槽って手入れが大変だけど、そういう心配がないのは素晴らしい。


 それに普段は露天風呂の状態だけど、魔道具を操作すれば壁もできる新設設計。大きな屋根があるので多少の雨なら平気だけど、嵐になったらさすがに無理だからね。

 もちろん壁がない状態でも認識阻害の設定があるので、外から覗かれることもない。認識阻害は解除もできるそうだけど、解除する意味ないよね。


 とりあえず浴槽に温泉を入れてみる。うん、思ってた以上に勢いよく注がれてるね。浴槽が大きいから時間を気にしてたけど、これなら10分程度でいっぱいになるわ。急に入りたくなっても大丈夫なのはいいね。

 まぁお風呂は源泉かけ流しなので、掃除のとき以外は常にお湯が張っている状態になるんだけど。


 お湯は無色透明、温度は熱すぎず温すぎずの適温。寮の温泉とにおいが違うから、別の源泉から引いてるみたいね。

 とりあえずお風呂はこんなとこで大丈夫かな。





 この屋敷の良いところの一つに大きな暖炉がある。少し寒い地域なのと、わたし自身寒さに弱いからこういうのはほんとありがたい。夏場以外はつけっぱなしになりそうな気もするなぁ。

 寒さ対策なら魔道具のストーブを使ったほうが手入れは楽なんだろうけど、暖炉の火は見てるだけでホッとする魅力がある。それにこの大きさなら焼き芋だってでき……さすがに無理か。


「おじょうさま~、できましたよ~」

「わかったー」


 そんな暖炉の前でぬくぬくしてたらアリサに呼ばれた。どうやらもうできたみたいだね。さてさて、今日のご飯はなんだろな~。


「おー和風ハンバーグ定食! ポテトサラダに野菜スープもあって、至れり尽くせりだね!」

「調理用の魔道具も問題なかったので、お屋敷と同じ感じで作れました!」


 やっぱり調理器具がしっかりしているのと、そうでないのだと違うからねぇ。

 まぁ今の発言を逆にとると、寮での調理はいつもと感じが違ったせいで作りにくかったっていう答えになるんだけど。アリサに悪いことしてたなぁ。


 気持ちを切り替え、まずはハンバーグから。

 おぉーちゃんとお箸で切れる! しかも当然のように肉汁がじゅわーっと出てきて、もう我慢できません!


「それじゃいっただきまーす。あーむっ」


 もぐもぐ


 やばい、すっごいおいしいんですけど! じわっと出るうま味の詰まった肉汁と、硬すぎず柔らかすぎずの絶妙な歯ごたえ。

 なによりこの和風ソースが素晴らしい。大根おろしとソースのバランスが完璧、ハンバーグとの相性も計算しつくされてる。それにさっぱりするけど、物足りない感は全然ない完璧な味付け。


 ハンバーグを堪能した次はポテトサラダをぱくり。これも完成度が高いね!

 ニンジンやキュウリ、コーンや魚肉ソーセージ、さらにゆで卵まで入ってる贅沢仕上げ。個人的にポテトサラダに魚肉ソーセージとゆで卵が入ってるとテンション上がっちゃう!


 ちょっと落ち着くために野菜スープをずずっと。うん、もうだめだわ、頬が緩みっぱなしになっちゃう。

 和風ハンバーグに合わせて野菜を活かした優しい感じのスープになってる。具材はジャガイモやニンジン、キャベツにベーコンなど盛りだくさん。


 サラダもスープもこれだけでメインのおかずになれる完成度なのに、あくまでハンバーグの付け合わせっていうのがすごいねぇ。


 ハンバーグもサラダもスープも全部完璧。互いを引き立てるような味付けなので、お箸がどんどん進んじゃう。

 やばいなぁ、これは絶対に食べ過ぎておなかポッコリコースだよ。少しは自重……うん、絶対に無理。ここは潔く、ご飯とスープのお代わりちょーだい!





「はふぅ、おいしくて食べすぎちゃったわ。もう動けない」

「ふふ、少し休んだらお風呂に行きましょうか」


 いくら食べても太らないからって、ほんと食べ過ぎたわ。うちに居る時はいつもやっちゃうけど、安心しちゃうとおなかポッコリするくらい食べちゃうんだよなぁ。おかげでいっつも食後は動けなくなるけど。

 食べ過ぎで動けないとか、淑女のかけらもなくて問題だと自覚はしてる。だけど、まぁそのうち治そう。


 しっかし食べ過ぎるのを見越した量を準備してあったとかさすがだよ。スープの残りすら出ないとか、完璧すぎるわ。


 それにしてもこのお屋敷、貴族向けとしては変わってるね。

 貴族向けだと料理は別室で行い、完成したものを食卓へと運ぶ形が一般的。エレンの家もそういう形になってるらしい。うちのお屋敷は人数が多いから、食堂のような形になっててまた別だけど。


 でもこのお屋敷は珍しいことに、対面式のカウンターキッチンを使用している。

 物件屋さんが貴族の人以外に売ろうとしてたのか、それともたまたまなのかはわからない。でもわたしはこの形のほうが好きだからいいけどね。


 だって暖炉の前でぐでーっとしても、料理や洗い物中のアリサを見ることができるもの。逆もまたしかりだけど。

 やっぱね、こう、気に入ってる子の姿を見るのは癒されるのです。何より見てても邪魔されないのがいい! この家を即断即決して、ほんと正解だったわ。

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