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83話 高速メイド便みたいな

少し長いです

 精霊科も試験結果は後日とのことなので、今日は退散。

 まぁ精霊を出しすぎて周りがうるさくなったから逃げ出したんだけど。


「ひどい目にあったわ」

「精霊との交流がほとんど無いからでしょうね。精霊に対して間違った認識をする方も多かったですし」


 アリサが言うように間違った考えの人ばかりだった。精霊は頼めば何かをしてくれる存在みたいな考えをする奴までいた。

 最初からこれだと心配だなぁ、精霊科の先生がまともなのを祈るわ。


「さてと、そのうちあの子が来ると思うから、校門のところに行こうか」

「わかりましたわ。よかったですわねレイジ」

「エレン様、それは間違ってるからね?」


 エレンの中ではレイジがあの子のことが好きで確定なんだろうね。

 冷静に考えると違うのはわかるんだけど、そうなっても良いんじゃないかなぁとも思う。結構お似合いだしね。






「あら、もう来てたよ。おーいノエルー」

「あっ! おじょうさまー」


 校門にはうちのメイド服を着た狼族の女の子、ノエルが既に待っていた。

 歳はアリサと同じでわたしの3歳上、身長もアリサとほぼ同じかな? 綺麗な青い髪をポニーテールにしている可愛い子です。


 いつも通りに手を振りながら声を掛けたら、ちゃんと手を振り返してくれたわ。尻尾もすごい振れてるけど。


 ただ、場所を考えるべきだった。何事? って感じに思いっきり視線集めちゃったよ。しっぱいしっぱい。


「いつ来たの? 時間指定しなかったんだけど」

「5分前にです。シズク様が『お嬢様が多分この時間に来ると思うので』って指示してくれましたので!」


 さすがうちのメイド長、わたしの行動を全部予測してるよ。だけどね、普通はありえないからね? ほんとーに偶然今の時間なんですよ?


 ノエルと合流できたので、細かい話をするために近くの喫茶店に入る。

 店内はおしゃれな感じでいいね。学園の近くのせいか学生さんも多いわ。

 ですが! カップルが多いとか、やってられませんね! 対抗してこっちもイチャイチャしてやろうかしら?


「とりあえずアリサ、全員分のケーキと紅茶の注文お願いね」

「任せてください。ではちょっと行ってきますね」


 席についてメニューをざっと見たけど、まぁ全部だねという結論になったわけで。1個や2個でわたしたちが満足するわけがない!

 まぁ全部ってことは大量なので、配膳を待つよりもアリサに運んでもらったほうが早そうなので、まるっとアリサにお任せ。


「さてと、んじゃノエル、どこまで聞いてる?」

「私が聞いたのは、エレン様のメイドとしての派遣が決定ってことです。ちなみにこれが契約書の一式です」

「それじゃ一緒に確認していこうか。まずは〝週単位での派遣とする〟だね。これは1週間エレンの下でお仕事したら、翌週はうちでの訓練と休暇日にするってことだね」


 ノエルはまだ見習いメイド、勉強や訓練がもうしばらく必要だからね。天魔には進化してるので戦闘力は高いけど、メイド教育はまだまだ。





 ノエルがうちでメイドをするようになったのは1年前から、アリサの後輩だね。


 エレンのお披露目に参加する前、シズクさんがアルネイアを事前調査したときに偶然見つけ、可能性を感じてそのまま雇ったのが始まり。

 孤児院で暮らしていたようだけど居場所がなかったらしく、交渉もスムーズに済んだとも言ってた。


 居場所がない、それは孤児院にいたノエルが天魔に進化した際、一つの事件を起こしたから。


 天魔に進化する際、一気に増えた魔力のせいで自我を失い暴走する人がいる。

 対策をしておけば暴走はしないけど、ノエルのいた孤児院では対策はおろか、天魔に進化する可能性のある子を調べてすらいなかった。

 その結果、天魔に進化したノエルが自身の魔力によって暴走。死者は出なかったけど重傷者は多数、周囲の建物も半崩壊状態だったとかなんとか。


 本来は暴走を未然に防がなかった孤児院の関係者が悪いのだけれど、どういうわけかノエルが悪者になっていた。

 悪者になった理由は単純、ノエルに対する酷い嫉妬のせい。


 天魔に進化するというのはすごく大変で、進化できずに一生を終える人が圧倒的に多い。天魔どころか魔人などに進化できない人も相当いるんだったかな。

 なのに子供が労せずして天魔に進化したのが気に食わなかった、と。孤児院の関係者も同じような感情を持っていたみたいだし。


 最悪なことに孤児院にはノエルの味方が一人もおらず、すごく居心地が悪かったみたい。

 味方どころか、事件の前日までは親しかった子供たちすら距離を置くようになったとか、ほんと胸糞悪いですね。

 まぁ事件が起きてからそれほど日数が経っていない時に救い出せたので、性格が歪んだり、物理的ないじめで追い込まる前だったのがほんとよかった。


 うちに来てからはメイド教育と戦闘訓練を行っているけど、アリサに劣らず素晴らしい才能を持っている。ちょっとドジだけど。

 そんなノエルはアリサと同じくらいみんなに可愛がられてる。お母様の評価もすごく良くて、わたしの二人目の専属メイドにしようかと考えてるくらいだし。


 まぁエレンもお母様のお気に入りの一人なので、ノエルを派遣するのに好意的だからよかったわ。お母様がダメって言ったらどうにもならないことだからね。


 そういえばノエルのことがきっかけで、アルネイアでは孤児院や学園といった子供が関係する施設を徹底的に調査したって聞いたな。

 その結果、ノエルが居た孤児院みたいまろくでもない施設はすべて廃止し、まともな経営者や関係者が運営するように正したとか。頑張りましたねぇ。





 アリサが運んでくれたケーキを食べながら、契約事項を一通り確認する。

 うん、どれもノエルに最大限のメリットがある契約になってるから大丈夫だね。


「わたしとしては問題なさそうだけど、エレンはどう?」

「わたくしも問題ないのですが、このお給金は大丈夫ですの? わたくしからは1日あたり金貨1枚だけというのは少ない気がしますわ」


 エレンがちょっと心配そうな顔してるなぁ、気にしなくていいのに。

 そもそもノエルはうちからの派遣になるので、普通のメイドさんと違って給料の内訳が少し変わってくる。


 まず派遣先であるエレンから1日あたり金貨1枚。1日金貨1枚でノエルを借りますって感じだね。

 次にうちから基本給として1日あたり金貨10枚、さらに派遣手当として1日あたり金貨5枚支払われる。予想以上にきつかったら上乗せもある。


 なので1日の合計は金貨16枚、世間一般のメイドさんより高給にはなるね。

 まぁうちのメイドさんや執事さんってレベルが高いから、それに見合った額なだけなんだけど。


 それにメイド長であるシズクさんは1日あたり白金貨10枚、アリサもわたしの専属なので1日あたり大金貨10枚だったりするから、見習いであるノエルはだいぶ安いんだよね。すぐに大金貨以上にはなると思うけど。


「あくまでノエルはうちからの派遣だからね。もしもノエルを完全雇用したくなったら別途相談かな」

「なるほどですわ」


 エレンの家もなかなかのお金持ちなので、1日あたり大金貨10枚くらいなら平気みたいだから、ノエルも納得したら直接雇用することはできる。

 だけど、わたしとしてはエレンへの派遣という形のままで、ずっとうちのメイドさんとして勤めてもらいたいなぁ。うちのメイドさんじゃなくなるのを見たら、なんか寂しくなる気がするから。





「それとお嬢様、こっちがサユリ様にご依頼されていたものでーす。ちなみにご指示通り、サユリ様たちだけでなく私も含めたお屋敷のみんな装備済み、王家の方々やフローラ様といったお嬢様と関係のある全ての方々にも配布済みですよー」

「ありがとー。ではでは、おー、予想してたのよりもすっごい綺麗、さすが特別製!」


 お母様に頼んでいたのは高級感がある綺麗なブレスレット、ちりばめられた精霊石が神秘性も高める感じだね。

 当然ただのアクセサリーではない、これは最新鋭の魔道具なのだ!


 そもそもこれ、『転生者が持っているスマホにあるアプリを使ってみたいなぁ』という、わたしがちょっとぼやいたのをママ様が実現させちゃった物なんだよね。

 そんな魔道具に対し、お母様が状態異常に対する耐性などを全力で付与してくれた、ある意味国宝級のアクセサリーなのだ!


 搭載している機能はほんと盛りだくさん。

 まずは定番の通信機能。音声だけでなくカメラ付きの通話もでき、チャット機能からメール機能まである欲張りセット。もちろん留守番電話機能もあり。


 次にマップ表示。地図を買って取り込めば現在位置を自動で表示でき、行きたい場所を指定すれば案内もしてくれるナビ機能まで付いている。ゆくゆくは転移も可能にするとか。


 さらに身体情報の表示。身長体重スリーサイズはもちろん、体脂肪や心拍数に血圧、あとは毒などの状態異常になったら回復方法を指示してくれる機能付き。


 ほかにも辞書とか計算機のような便利な機能もいっぱいある。

 しかも当然のことのように、これらの機能は最新鋭の空間ディスプレイを使用しての操作というのがね。国家機密なのに惜しみなさすぎだよ。


 思っていた以上に便利なので、これの廉価版が近いうちに売り出されることになった。だけどあくまで廉価版、機能が制限されていたり劣っていたりする。

 一番の違いは、お母様が付与してくれた各種耐性が無いとこだね。


 しかも廉価版でも大金貨50枚というお値段。お金持ちの貴族か、高収入な冒険者しか購入できない物。でも便利だからあっという間に広まりそう。


「もちろん三人の分もあるよ。好きなの選んで~」


 同じデザインだけど色が違うものがいくつもあるので、その中から選んでもらうことに。

 予想していたけど、アリサとエレンはわたしと同じ色のを選ぶんだね。

 レイジは、ほほう? 偶然だけどノエルがつけてるのと同じだねぇ。そのことをあとで知ったらどんな反応するか、ちょっと楽しみー。


「使い方もそこまで難しくないよ。ここだとちょっと目立っちゃうから、二人には帰った後にノエルが教えてあげてね」

「わかりました! ちなみに、私の連絡帳からお嬢様の連絡先とかを移しちゃってもいいですかー?」

「いいよー。あーでも、わたしとお母様、あとはアリサとノエルの連絡先だけにしておいてね。ほかは一応本人の許可があったほうがいいから」

「了解でーす!」


 うん、三人とも珍しいおもちゃ貰ったような顔してるね、ワクワクしてるのがわかるよ~。

 でも遊ぶのは帰ってからだよ?

メイドさんの相場は

 一般メイド:1日あたり金貨2枚

 高給メイド:1日あたり金貨3~4枚

大体こんな感じの設定になってます。

つまり、ノエルさんはメイド見習いなのに超高給取り!

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