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79話 昼食が平和に終わるわけないよね

 案の定、わたしたちは後日再測定だそうで。悪ノリしすぎたわ。


 まぁ武力の測定だけじゃなく、技力と魔力でも同じような事してたらそりゃそうなるよね。割と問題児的な行動していたのは認めます。

 でも他にも測定できなかった人もいるらしいから、わたしたちだけじゃないのが救いだわ。





「ほほー、カイルが言ってた通り、ちょっとお高いけど美味しい」

「ですわね。種類も豊富のようですし、これでしたら文句はないですわ」


 測定も一応終わったので、貴族向けの学食で本日のおすすめセットを注文したけど、なかなかのお味。そりゃうちで食べるのと比べたらダメだけど、美味しいのは間違いない。


 貴族向けということもあり値段が少し心配だったけど、法外な値段じゃなかった。一般の人向けの学食は1食銀貨5枚だけど、貴族向けは銀貨30枚。

 でも高級なレストランで同じのを頼んだら、だいたい銀貨50枚くらいだから割安ではあるね。


 欠点は洋食系ばかりってとこかなぁ。

 種類が限られるのはちょっと嫌なんだね。もしも一般の方にも和食や中華といった洋食以外の料理がなかったら、たまにお弁当を持ってくるのもアリかな。


「でもこれ、お代わり注文するのがちょっと大変だね」

「ですね。注文は入り口で一括なのでしょうがないのですけど」

「しかも単品が不可でしたっけ。セットかコースでないと駄目というのは、貴族向けの欠点ですわね」


 予想はできていたけど、わたしたちにとってこの一人前は一人前にあらず。これだと軽食よりも少ない量なんだよねぇ。

 なのでそれなりに注文したいわけだけど、いちいち入り口に行くのが本当に面倒。場合によっては並ばないと駄目だし。

 まぁ量については最初に大量注文すればいいだけなので、そこまで問題じゃないけど。


 問題なのはセットかコースでの注文しかないってこと。

 セットやコースだと大量だと困るものも当然あるわけで、コーヒーだけ何百杯も飲むとかむーりー。

 一般の方だと単品注文できるそうなので、明日からは一般の方にしようかなぁ。





「むー、なんか視線をいっぱい感じるんだけど」

「それはお嬢様が居るので当然かと」

「ですわね、ユキさんが居ますものね」


 げせん。

 わたしが居るとこうなるって、どういうことなのかな? ちゃんと尻尾は2本隠してるから、ぱっと見は普通の狐族としか見えないと思うんだけど。


「ユキ様、向こうに居る狐族の女性見ればわかるよ」

「どういうこと?」

「すぐは無理でも、見ていれば違いがわかると思うよ。専属でない僕ですら気が付いたから」


 ん~?

 上級生と思われる狐族の人で年齢は10代かな? 身長が高くスラっとしたモデル体型、ちょっとカッコイイですね。

 顔も整ってて綺麗、毛色は赤みがかかった黄色だね。しっかり手入れをしているようで綺麗だけど、普通の……あれ?


「髪、キラキラ光ってないね」

「駄狐も光ってませんよ。キラキラ光っているように見えたり、周囲に光の粒子のような物が溢れ出ているのは、お嬢様とサユリ様だけですね」

「それに銀色の狐族は珍しいとはいえ複数存在しますが、金色なのはユキさんとサユリ様だけですわね」


 うそん!?

 というかなんでわたしよりもわたしのこと知ってるんですかね? たしかに普通の狐族には会ったことが無いから、本に書かれてる内容しか知らないけど。

 カイルの髪が光ってないのをすっかり忘れてたのは置いておこう。


 しっかしキラキラ光って見えるのは魔力のせいじゃないってことかな? 漏れ出た魔力が粒子になって光るオモシロ現象だと思ってたのに。


「何よりお嬢様の方が圧倒的に可愛いですから!」

「ですわね!」

「確かに、比べたらちょっとかわいそうかな」

「やーめーてー」


 三人とも真顔でそんなこと言うとか、こっちが恥ずかしいわ! というかそんなにかよ!

 でも、わたしとしてはアリサやエレンの方が可愛いと思うんだけどなぁ。





「他の狐族の人かぁ、ちょっとお話してみたいなぁ」

「お嬢様、大変申し訳ないのですがそれはおやめください」

「へ?」


 なんかアリサがすごい真面目な顔で止めてきたんだけど、どういうこと?

 エレンとレイジもなんでだろって顔してるから、アリサだけが知っている何かってことかな。心当たりがないんだけど。


「どういうこと?」

「これはサユリ様からお聞きしたことなのですが――」


 アリサの説明だと、他の狐族からのわたしに対する感情は大まかに〝憧れ〟と〝嫉妬〟の二つみたいね。


 わたしはお母様の娘という事実だけでも影響が大きいのに、外見、能力、術装など、ほぼすべての要素を引き継いでいるという異常な存在。

 さらに初めから天魔であり尻尾も3本という、お母様がもう一人生まれたと思われてもおかしくないとかなんとか。


 お母様は生きた伝説的存在のすごい人なので、その娘なら当然だと思う一族は純粋に憧れる。カイルの一族もこれに近く、憧れの存在を自分たちのもとに招きたいという気持ちが強い。


 でもその力を妬み、消してしまいたいと思う一族もいる。しかもどす黒い感情を持つ一族の方がたくさんいるようで、同じ狐族だからって安心できないみたい。ほんと厄介だなぁ。


 この学園に在籍する狐族がどっちなのかは分からない。でもわざわざこちらから出向き、無駄なトラブルを起こすのは控えるべき、ということね。


 しっかしどす黒い感情かぁ。同じ狐族からもそういう扱いされるって、ちょっと悲しいわ。


「わたし、この学園でお友達できない気がしてきた」

「その、ほら、ユキさんにはわたくしたちが居ますから」

「それにカイルもいることだし?」

「レイジ、駄狐は外してください。あれはお嬢様の敵なので」


 アリサは相変わらずだなぁ。あの顔はマジだし、レイジも黙ってうなずくしかないね。

 でもそうだねぇ、わたしにはみんなが居るから、仮に学園で友達出来なくてもいいかなぁ。ちょっとだけ残念ではあるけど、立場を考えたらしょうがないってとこもあるしね。





 そんなこんなで食事を続けていると、入り口の方がなんか騒がしい。揉め事じゃなさそうだけど。

 う~ん、これはあれかな、パターン的に間違いないかな。だとしたらここはまず隣に座っているアリサに抱きついてっと。


「お、お嬢様!? えっと、急にどうされましたか?」

「アリサが飛び出さないようにしてるの! エレン、目標がこっちに来たら教えて!」

「もちろんですわ!」

「ほとんど臨戦態勢とか、カイル、君はいったい何をしでかしたんだよ……」


 そう、間違いなくカイルが来る。

 何となく聞こえる内容だけど、入口の騒ぎはカイルに対する黄色い声がたくさんと、アニキーとか叫んでる舎弟の雄たけびっぽいんだよね。

 ということは絶対こっちに来るわけで、来たら間違いなくアリサが飛び出すわけで。


「来ましたわ! って、速い!? なんですの、あの迷いのない動きは」

「あれは何かの能力使ってるね。舎弟っぽい人を吹き飛ばしながらこっちに向かってるし……」


 うん、予想通りだね。ほんとあのバカは冗談抜きに全力でこっち来るからなぁ。


「お嬢様、どうやら私は戦場へ向かわなければいけないようです」

「いやいや、行かなくていいからね? はいアリサ、落ち着いてー」

「しかしお嬢様、敵が迫っているとなると」

「敵だけど敵じゃないからね?」


 抱きついたせいで少し目立つような感じになっちゃったけど、さすがに気にはしてられない。

 だってこの子、こうでもして止めないと術装出して斬りかかるからねぇ。まぁアリサがこうなったのはカイルのせいでもあるけど。





「おう、やっぱり居たな。なかなかだろ、ここの食事も」


 はい問題が来ましたよっと。しかもちゃっかりわたしの隣の席に座るし。

 テーブルは4人掛け、わたしの隣にアリサが座り、正面にエレン、その隣にレイジという配置。で、たまたまなのか意図的なのか、隣のテーブルには誰も座ってなかったけど、そこにカイルが座ったと。


 うん、アリサの勢いが強くなったわ。物理的な排除に出ようとしてるけど、さすがにダメだよー。


「なぁカイル、君はいったい何をしたんだい……」

「何をってメイドにか? そりゃ決まってる、〝宣戦布告〟だ。メイドを倒さない限り、ユキをものにできないからな!」

「……付き合い方、僕も考え直すべきかな」


 うん、レイジもすごい呆れるよね。

 でも一応理由はあるんだよ。わたしを狙う場合、最初に有って最大の壁がアリサだからね。アリサが認めない限り、先に進むどころじゃないからねぇ。

 まぁ一途で全力で当たるのは良いと思うよ。それの相手がわたしじゃなければもっと良いことだと思うよ。


「てかカイル、先に言いなさいよ。ここって入り口での注文しか駄目だし、単品も無理じゃない」

「あーそういえばそうだった。すまん、説明不足だった」

「素直に謝ったので許す。なのでアリサも落ち着こうね~」

「だ、大丈夫ですから」


 おや? なんかすごく真っ赤になってるような。

 あー、はいはい。これはわたしがずっと抱きついてるから恥ずかしくなってきたとかの方ですね。照れちゃって、可愛い奴め。

隣の席が空いていたのは、4人の大食いに周囲がちょっと引いていただけです(完全に大食い集団)

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