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53話 余興の始まりですか

 足をぷらぷらさせて待っているけど、まだかなぁ。さっきよりも多くの人に見られているみたいで、ちょっと嫌なんだよね。


 それにアリサが居なくなったからか


「――というわけで、私は親衛隊に所属する救護兵の親戚なのだよ。なので私の妃になれば」

「いやいや、僕の方こそふさわしい。僕の父上は外務次官の下で働いている大物なんだぞ、親衛隊よりも偉いんだぞ」

「これだから男はわかってないわね。アタシのパパは王都で宝石商をしているのよ。もちろん貴族との繋がりだってある有名な人なんだから」

「君たちはまだまだだな。ボクのママは連合の――」


 小物が寄ってたかってアピールしてるんだよねぇ。いずれも歳はわたしより上みたいだけど。

 というか、家族や親戚がすごく偉いって自慢されても、本人がその立場に無いんじゃ話にならない。そこのところわかってないのかな?


 まぁそれ以前に、こいつらのわたしを見る目がすっごく気持ち悪い。

 欲にまみれてるというか、他者を蹴り落してでも上に行こうとしてるというか。こういう考えの人って嫌いなんだよね。


 はぁ、早くアリサ戻ってこないかなぁ。





「ちょっと通してもらいますね。お嬢様、おそくな」

「ありさぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 アリサがこっちに来るのを見た瞬間、つい飛びついちゃったよ。

 5分くらいかな? ずっと変なアピール聞いてたせいで、頭が変になってきたからしょうがないよね。


 はふぅ、アリサに抱き着くとすっごい癒される。さすがわたし専属メイドだね!


「あ、あの、お嬢様、その、人が大勢いますので」


 抱き着いたらすっごい照れちゃって、やっぱ可愛いなぁ。


「わたしは気にしないからいいの。それで、お母様たちにはちゃんと伝えたの?」

「詳細も含めてきっちり伝えておきました。今は先ほどの貴族がサユリ様へ謝罪していますが、どうにもならなそうですね」


 きっつい処罰が下っちゃうのは回避不可能なんだろうねぇ、自業自得だから同情しないけど。なによりアリサを怒らせた時点で終わってたわ。


「それとお嬢様、そろそろ出番となりそうですので、会場の方へ向かいましょうか」

「やっぱいかないとダメ?」

「可愛く拒否してもダメです。ただ、すぐに決闘にはならなそうですよ」


 可愛く首をかしげたけど無理だったかー。でもすぐに決闘にならないって、どういうことなんだろ?


「お嬢様との決闘の前に、なにやら余興を複数挟むそうです」

「余興ねぇ。どんなのかわかる?」

「サユリ様の予想になりますが、二つあります」


 そう言ってアリサが控えめに指を2本立てるけど、ちょっとそのポーズはあざと可愛いよ? ほら、周りの人たちも鼻の下伸ばすようにデレっとしだしたし。

 アリサは自分がすっごく可愛いということをもっと自覚すべきだね。このまま成長していくと、間違いなく同性でもコロッといっちゃうくらいだからね!


「お嬢様が凄いブーメランなことを考えているように見えるのですが」

「なんですと!?」

「まぁそれはさておき、一つ目ですが、お披露目の少女には兄がいます。その兄と誰かが戦う可能性が高そうです。おそらく専属メイドである私が戦うことになると思いますが」


 余興としては確かに納得だね。一族全体が強いんだってことを見せつけるには確かにもってこいな内容かもね。アリサに勝てれば、だけど。


「それでもう一つは?」

「もう一つは兄ではなく従者、もしくは近衛兵の隊長が戦う可能性です。こちらでもおそらく私が相手になるかと」


 相手が変わるだけで結局は同じだね。天魔が相手でない限り、アリサが負けるとは思えないけど。


「アリサが絶対戦わなきゃダメなのかな?」

「そうですねぇ、公平性をアピールするために希望者を募る可能性はありますが」

「戦いたい人、いるのかねぇ。まぁいいや、それじゃ行こっか」


 気乗りしないけどしょうがないわ。さっさと決闘とか終わらせて美味しいもの食べに行きたいなぁ。





 アリサと一緒に会場に戻ってきたけど、人がさっきよりも増えたかな? でも置いてある料理はさっきとあまり変わらないんだね、がっかりだなぁ。


 おや、壇上に知らないお爺さんとオッサンが上がってきた。


「お嬢様、あの老人がこの屋敷の当主のローガン様です。その隣にいる紳士はバートン様といい、お嬢様が決闘する少女の父親になります」

「へぇ。確かに二人とも黒竜族だね、角と尻尾が黒い。でも弱いのかな? 力を抑えているんだろうけど、それを加味しても魔力が低いみたい」

「さすがです。ローガン様は遥か昔にサユリ様に敗れ、その際の傷で大幅に弱体化しています。バートン様は天魔にすら進化していません」


 お母様に挑むとか、無茶するなぁ。傷で弱体化って、おそらく殺しに来たのをお母様が返り討ち、その際に魔石に深刻なダメージを負ったってとこかな。

 というか、あのお爺さんはお母様と同じくらいの歳ってこと? だけど結構な歳いってる外見だし、もしかして竜族って不老じゃないのかな。


『本日は我が孫娘のためお集まりいただけたこと、一族を代表して感謝申し上げる。孫娘も今年で6歳となり――』


 そんなお爺さんが壇上で演説しだしたわ。身振り手振りで、どんだけすごい事なのかをアピールしてる。竜の神に愛されし、とかなんかいろいろ言い出してるし。さすがに言いすぎなんじゃないのかなぁ。


 あっ! 壇上にお母様たちもきた。やっぱ綺麗だなぁ、お母様とお姉様。あれ? お兄様とシズクさんは上がらないんだ。せっかくだから一緒に上がればいいのに。

 おっとお姉様、こっちに気が付いたね。お母様よりも先に気が付くとかさすがです。手を振ってアピール! あ、振り返してくれた。ちょっとうれしい。


 にしても


『なぁあの二人の女性は誰なのだ? 後ほど紹介されるとは思うのだが』

『あれはレグラスの王女と、我が国でも伝説にもなっている金狐のサユリ殿だ』

『あの二人がそうなのか! だが、なんというか』

『あぁ、私も初めて見たが、ここまで美しいとは。私の領地にもエルフと狐族は住んでいるが、その者たちと同じ種族とはとても思えない』


 やっぱそうなるよね~。二人ともほんと綺麗でカリスマを感じる優雅さだし、羨ましいなぁ。わたしも同じようになれるといいなぁ。


『美しさもそうだが、サユリ殿はローガン殿と歳は近いはずだろ?』

『その通りだ。だがあの姿だ、おそらく肉体は常に全盛期、そしていまだ成長を続けているということだろう』

『……凄まじいの一言だな』


 やっぱりあのお爺さんってお母様と歳近いんだ。でも、お母様は17歳くらいの若々しくて瑞々しい姿、お爺さんは100歳を越えてるだろうというしわくちゃな姿、正反対だね。見た目同様に力の差も凄いんだろうなぁ。





『――というわけだ。ではバートン、続きを』

『畏まりました。それでは皆様、余興ではありますが、我が一族の力を皆様にご披露しようと思います』


 全然聞いてなかった! お母様綺麗だなぁとか、お姉様素敵だなぁとか思ってたら、話が随分進んでるね。でもこの流れ、やっぱり戦うってことだよね。


「ねぇアリサ、結局戦うのって」

「一番上のお兄さんだそうですよ。二人とも壇上に、ほら、周囲に手を振っているあの二人です」

「うげー、あれかぁ」


 筋肉ダルマと凄いデブだよ。確かに両方とも黒竜族だけど、あれはないわぁ。


 筋肉ダルマは恐らくスピードはないでしょ。そもそもあんなに筋肉つけるとか馬鹿だし、何のための魔石なのやら。

 デブの方は論外、ただのスケベ野郎にしか見えないわ。


 しっかもあの二人、お母様とお姉様をいやらしい目で見てるし。もうわたしがここからあの二人を攻撃していいかな?


『このゼーロンが皆様にその力を披露します。見ての通り逞しい体をしているので、いつも対戦相手には気の毒な事をしているのですが』

『オレがゼーロンだ。天魔への進化も近いから、相手する奴は気を付けてくれよ』


 いやいや無理無理、天魔に近いどころか真逆だよ。


 天魔に進化するにはどうしても魔石への魔力供給が重要になる。だけどアレはどう見たって魔力は低い、というかそっち方面全然鍛えてない。

 もしも魔石じゃない別の進化があるならわかるけど、そうじゃないんでしょ? というか魔石を宿してるのかすら怪しいわ。


「あの、お嬢様、もしかして私が知らないだけで、天魔になる方法に」

「ないから! あんな筋肉ダルマになれば天魔に進化するとか、絶対にないから」

「ですよね……」


 アリサもドン引きしてるね。気持ちはすっごいわかる。今だって壇上でなんか変なポーズ取ってるけど、一言で表すなら『むさくるしい』。というかあんなのと誰が戦うのよ。


『我こそはという方は名乗りだしてくれ』


 シーンとしてるね、うん、誰もやりたくな


『ボクがやろう!』


 名乗りを上げた奴がいたよ!? とんだ物好きもいるものねぇ。って、まさかこいつは!

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