表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/362

47話 目当てはお食事券!

 用意されたのは普通のブロンズゴーレムだね。防御結界とか張って妨害されると思ってたけど、何も無いとは拍子抜け。


「武器はどうしますか? ナイフからロングソード、バトルアックスなど、お望みの武器をお貸しすることはできますが」

「いらないよ」

「はい?」

「ど、どういうことかな。まさか素手で行くなんて馬鹿な事を言うんじゃ」

「そのつもりだけど?」


 あら、ホラたと思ったのか、少し馬鹿にしたように笑い出したよ。しかも周りの観客まで。

 う~ん、そんなに変な事かなぁ? 銀級の冒険者ならこの程度のゴーレム、素手で簡単に倒せるんだけど。


「す、素手とか、ぷぷっ、そ、それは凄いな」

「くくっ、だ、駄目ですよ坊ちゃん、そんな、くくくっ。いやはや、皆様、この可愛らしい挑戦者にもう一度大きな拍手を!」


 相変わらず人を馬鹿にしたように笑ってるねぇ、まーいいけど。


「ねーねー、真っ二つじゃないと駄目なの?」

「ぷぷぷ、あーすまない。ボクみたいに真っ二つでなくてもいいよ」

「ふーん、じゃぁ粉々でも良いんだね?」

「粉々だって? くっくく、で、できるならそれでもいいよ」


 よーし言質は取ったぞー。それじゃちょっとだけ魔力を込めてっと。


「いっくよー、ていっ!」


 正面から一発ぼすんと。

 おっと、ばっちーんっていうちょっと大きな音しちゃったわ、失敗失敗。でも塵一つ残さず粉砕することはできたね!


「はい、おしまい」

「な、なな、なにが!?」


 あらまぁすごい震えてるよ。お付きの人も座り込んじゃったし、観客もあんぐりして、目が飛び出るような驚きって感じかな。静かになったからいいけど。


「それじゃお食事券くーださい」

「ま、まってくれ! 今何をしたんだ?」

「何って?」

「だっておかしいだろ、何も残らないなんて!」


 今度は逆ギレですか? めんどいなぁ。

 そもそもこの程度の敵を素手で粉砕するくらい、銀級以上の冒険者なら誰でもできる簡単なこと。まぁわたしみたいに完全消滅させるのは難しいとは思うけど。


「殴った瞬間、ゴーレムの内部に圧縮した魔力を流し込んで、それを一気に爆発させただけだよ。そのままだと爆弾と同じだから、破裂しないよう外部には魔力の膜を這わして抑え込んだけど。結果、内部と外部で挟んで潰して消滅させたような感じだね」

「そんな化け物みたいなこと、でき」

「わたしの家族やメイドさん、執事さんは全員できるよ? 別にわたしだけが強いってわけじゃないから」


 アリサも鍛えた結果、ブロンズゴーレム程度なら同じことができるしね。


 おや? 周りが騒然としてきちゃったよ。この二人もヒソヒソ話だしてるし。

 ひょっとして消滅はまずかったのかなぁ、ちょっとだけがんばりすぎちゃったかも。でもでも、お食事券がかかってたしー。





「ねーねー、お食事券は?」

「ちょ、ちょっとまってくれ」

「(どうします坊ちゃん、このままでは)」

「(そ、そうだね。しかし何で普通の狐族があんなに強いんだ)」

「(おそらく天狐の里から来た名のある一族の娘なのでは?)」

「(なるほど、それなら納得できる。しかしこの状態をどうするべきか)」


 ばっちり聞こえてますよー。深刻な顔でヒソヒソしてるけど、意味ないよー。

 いっそ天狐の里の者ってことでいいから、早くお食事券をー。


「ねぇまだ?」

「も、もう少しだけ待ってくれないかな(もう一度ゴーレムを出すというのは?)」

「(そうですね、坊ちゃんが同じことをすれば良いかと)」

「(で、でもボクはあそこまでの力は)」

「(防御力を下げたゴーレムを使い、それと爆発系の魔法をこっそり仕掛けておけば)」


 だから聞こえてるんですよー。面目を保とうと画策してるようだけど、さすがに嘘はダメだよー。


 というか、だんだんイラっとしてきた。無駄に待たされてるというこの状態、ほんと嫌。

 それになーんか引っかかるんだよねぇ。ちょっとカマかけて事を進めようかな?


「まだ?」

「もう少しだけ」

「……ねぇ、あなたって本当に狐族なの? その耳と尻尾、偽物なんじゃない?」

「「なっ!?」」


 ぎょっとした顔でこっちを見たね。ということは、ほんとに偽物だったわけか。だとしたらなんで狐族だと偽ってたんだろ、チヤホヤされたかったのかな?


「な、なにを言っているのかな」

「そうですとも、ロベール様こそ」

「こんなところに石ころはっけーん。これを~、ていっ!」


 ちょっと魔力を込めて偽狐の耳へ投げつける! 当然貫通するわけだけど。


「「ひぃっ!」」

「血も何も出ないね。野生の狐の耳をはく製にして付けたって感じかな? 尻尾も同じっぽいね」


 はく製作って偽装するとか、必死すぎでしょ。


 二人は抱き合って震えてるねぇ、恐怖で怯えちゃったのかも。

 周囲もなんかいろいろ言いだしてるなぁ。『嘘つき』とか『見損なった』とか『私のロベール様が』とか、有名人だったのかな? わたしに対して何か言っている様子はないね。


「まってくれ、これには事情があるんだ」

「んー、事情とか興味ないかも。なのでお食事券くーださい」

「は? いやそこは普通」

「くーださい」


 こいつの過去とかホント興味ないんだよねぇ。偽ってたのはこいつ自身の問題であって、わたしが関係する理由とかじゃないし。

 まぁ偽っていたせいでこの街の人たちがお仕置きとかするかもしれないけど、それは自業自得なので諦めてください。


 というわけで、早く目的のお食事券をおよこし!





「こ、これになる」

「ありがとー。んじゃばいばーい」

「まってくれ、気になるよね? ボクがどうしてこのような偽物の耳と尻尾をつけていたのか」


 なにかこう、察してくれよって顔してるね。しょうがないなぁ。


「そうだね……、うん、全く気になりません! なので安心してください!」

「そうだよね、気になってって、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 なんかまたギャーギャー言ってるけど無視無視。『壮大な使命が!』とか『やむにやまれぬ事情が』なんて言われても面倒だからねぇ。


 さてと、さっきの女の子は~、あーいたいた。


「持っててくれてありがとー。お礼に1本お裾分けするね。はいどーぞ」

「あ、はぁ、ありがとうですわ」

「それじゃぁね~」


 目的のものは手に入ったのでさっさと去るのです。

 むふー、何が食べれるのか楽しみだなぁ。









 少し歩いたけど、この辺も屋台がいっぱいだねぇ。

 えっとお食事券は~、へぇ、これって回数券なんだ。この券を出せば料理と引き換えてくれるみたい、10枚あるから10品ってことかな。屋台は10件以上あるし品数も多い、これは迷うねぇ。


 でもまずは気になったあれかな。


「ねーねーおねーさん、この券使えますか?」

「いらっしゃい。お食事券だね、大丈夫使えるよ。どれにする?」


 やったね、ちゃんと使える。

 さーてどれにしようかな~。定番も良いけどお勧めも気になるなぁ、う~ん迷っちゃう。


「それじゃこの〝店主お勧め、特製スパイシーソーセージのホットドッグ〟の一番大きいのください」

「はいよ。でもお嬢ちゃん、これって凄い大きいけど大丈夫?」

「はい、大丈夫です! わたしって結構大食いなので!」


 この国の人から見たら相当な大食いになりそう。そういえば大食いのお店ってあるのかな? お食事券使えるなら入ってみたいなぁ。


 注文を受けたお姉さんが手早く料理を開始する。

 おー、目の前でソーセージ焼いてくれるんだ。パンも少しトーストするんだね。しかもトースターでなく専用の窯で焼くとか、こだわってるなぁ。

 焼きあがってからの盛りつけも手早いのがいいね。これは期待できる!


「はいどうぞ。熱いので気を付けてね」

「ありがと~」


 できたてホカホカでいい匂い。それに結構大きいね、80センチくらいかな? 普通サイズの4倍はありそうだね。

 さてと、では持って、おや? あそこにあるのは


「ねーねーおねーさん、あそこの席で食べても良いですか?」

「大丈夫だよ。あの席は買ったものを食べるための席だからね。この辺りだとそういう席が結構あるよ」

「そうなんだ。それじゃ使わせてもらいま~す」


 やっぱ座って食べたいからね。

 周りに人が少ない席に座ってと。ではでは、いただきまーす。あむっ。


 もぐもぐ


 おぉ、ソーセージの中に香辛料が多く入ってるんだね。ちょっとピリ辛でおいしい。それに皮はパリッとしているけど硬くなく、肉汁もたっぷり。これは豚とかじゃないなぁ、何のお肉だろ。フレイムバイソンのお肉なのかな?

 ソースはケチャップに刻んだ玉ねぎとピクルスかな? それにこれはマスタードだね。やっぱこの国にもあるんだねぇ。

 パンもふわふわ、焼いてある部分も程よい食感、たまりません。


 はふぅ、食べ物に関しては今のところ外れがないわ。これなら留学してもご飯は大丈夫かも。まぁ自分で作るかアリサに作ってもらうだけでいいんだけど、外食もしたいからなぁ。


「あの子ですわ!」


 ふぁい? 美味しさにふにゃけてたら、なんか思いっきり指さされたよ。というかさっきねぎま持ってもらった子だよね?


「なるほどね、確かに目立つ」

「そんな事よりもだ、お嬢様に対してだな」

「まぁまぁ、ちょっと僕が話してくるよ」


 そう言って一人の少年がこっちに来る。

 むぅ、ゆっくりホットドッグ食べていたいのに、なんか嫌な予感マシマシだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ