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46話 たぶん大道芸です

少し長いです(4000文字をちょっとだけ超えてます)

 いやぁ無料でねぎまをいっぱい貰っちゃったよ。美味しかったら今度はちゃんとお金持って買いにこよっと。


 それにしても半分お祭りっぽいムードだからかな、周り見ると歩きながら食べてる人もいっぱいだね。フランクフルトって言ったっけ、ソーセージ刺したやつ。それを食べながら歩いてる人も見るから、ねぎまも歩きながら食べても大丈夫かな?

 ほんとはどこかに座ってから食べたいけど、座る場所が見当たらないからしょうがない。それに温かいうちに食べてあげないとね!


 ではでは、まずは塩の方を、あむっ。


 もぐもぐ


 おー、シンプルだけどすっごくおいしい。フレイムバイソンのお肉が柔らかくて肉汁たっぷり、油もしつこくないので食べやすいわ。

 そういえばフレイムバイソンって砂漠のダンジョンの中級層で見つかった新種だっけ? こんなに美味しいなら、今度ダンジョン行った時大量に確保してこようかなぁ。


 では次はタレの方を、はむっ。


 もぐもぐ


 タレはタレでまたすっごくおいしいなぁ。とろっとした甘めのタレとこのお肉は相性抜群だね。それにネギはタレの効果で塩の方よりも甘く感じる、タレ自体は照り焼きに近いかな? 他のお肉にも合いそうだなぁ。


 しっかしこんな格好で食べながら歩くとか、アリサが見たら注意されそうだなぁ。普段の格好と違うからもっと貴族みたいにとか言いそうだもん。わたしは貴族って柄じゃないんだけどなー。





 食べながら歩いてると、妙なところに人だかりができてるのを発見。お店の行列とかじゃないし、何かの見世物をやってるのかな?

 ちょっと気になるし見てみよう。押しのけなきゃいけないほどでもないから、すんなり前の方にも行けそうだし。


「さぁさぁお立合い、このお方はあの有名な狐族の血を受け継ぎし勇者、ロベール様です。今からこのロベール様が皆様にその力の一端をご披露いたします」


 気が付いたら最前列に来ちゃったけど、なるほどなるほど。これはいわゆる力自慢みたいなやつだね。

 それにどうやら、貴族さんとかが雇うかどうかの判断をする場でもあるみたい。自分を売り込むための宣伝、って意味合いが強いかな。周囲に貴族の人が多いのと、冒険者っぽい人もそれなりに居たのはこういうことか。


 そして姿を現わす狐族の男。少し灰色っぽい金髪、顔は割とイケメンってやつかな? 衣装は着流しの着物に近い状態で、腰に刀を一振り装備しているね。

 おや、刀を抜いて霞の構えをしたね。好評なのか拍手喝采だし、女性の声援っぽいのも聞こえるわ。


 それにしても有名な狐族って誰なんだろ、この国だと誰もが知っているのかな? こんなことなら名の知れた狐族が他にもいるのか聞いておけばよかったわ。


「そしてここにあるのは鉄よりも硬いブロンズゴーレム! 今からこれをロベール様が真っ二つにします。ではロベール様、どうぞ!」

「わかった。ではいくぞ! ていやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 すっごい気合入れた後に、ごっきーんて響いて、めきめきーって音しながら切り裂いているね。でも切り裂くのが遅すぎる気がするなぁ。

 というか、ブロンズゴーレムってそこまで硬くないよ? アイアンゴーレムよりちょっとだけ強いけど、防御力は同じくらいなんだけど。なのにここまで時間かかるとか、これはなんと言うか……。


「どうですか! このロベール様の華麗な一撃を皆様もご覧になったでしょう!」

「ふぅ、ボクにかかればこの程度造作もないことだ!」


 キリっとした顔でまた霞の構えしてるけど、あんなに遅かったのに恥ずかしくないのかなぁ。

 でもさっきよりも拍手が多く、黄色い声と野太い声も増えてるとか、どういうこと? 力と技術がない、おまけに魔力も使ってない、ただ刀を上から落としただけなのに。


 そういえばお姉様が言っていたっけ。アルネイア王国の上位貴族と国軍の兵はレグラス王国でも十分通用する強さを持っている、でもそれ以外の貴族や兵なんかはレグラス王国の新人冒険者にすら劣るって。


 冒険者も同じ。銀級が数人いるだけでほとんどは鉄級止まり、極端に上下の差ができちゃってるとかなんとか。つまりこれもそういうことね。





「でもよー、そのブロンズゴーレムってそんなに硬いのか? 俺も冒険者だからアイアンゴーレムはパーティで倒したことあるが、ブロンズゴーレムには会ったことすらないぞ」


 ちょっと歴戦の冒険者風なおっさんが怪しんだ顔して聞いてるね。

 だけどなぁ、たぶんこのおっさん、中級層であまり戦ってないんだろうね。半日くらい中級層に籠っていれば1度くらい遭遇するはずだけど、会ったことすらないって言うくらいだし。


 そもそもダンジョンに出現するゴーレムは層によって異なる。

 初級層だとストーンしか出ない。

 中級層ではアイアンとブロンズも出るけど、ブロンズの方はあまり出現しない。

 上級層にはブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナのゴーレムが出現する。

 その上の超級層だとミスリル、オリハルコン、アダマンタイトという素材としても超優秀なゴーレムばかりになる。


 というか、正攻法でなければゴーレムってすごい雑魚なんだけどなぁ。

 ゴーレムは魔力で動いているから、その魔力を一気に奪ってしまえば弱体化して防御力は基礎となる鉱物の硬さにまで落ちる。そうなると敵ではなく鉱物の塊と化すわけで。

 だからか、ダンジョンでゴーレムを見かけたら敵ではなく、素材が歩いてくるって考えちゃう人が多い。しかも対ゴーレム専用の魔道具も格安で売られているくらいの定番なのに、この国の冒険者は知らないのかな?


「では冒険者のあなた、もしよろしければブロンズゴーレムに一撃与えてみませんか? 同じように真っ二つにできた場合、私どもの用意した景品を差し上げます」

「そうこないとな! さぁ用意してくれ」


 やる気満々だねぇ。

 武器はバスターソードを使うみたい。質は悪くなさそうだから、真っ二つっていうよりも潰す感じになるかな?


 それにしても景品ってなんだろ? ちょっと気になるなぁ。


「こちらのブロンズゴーレムをどうぞ。では皆様、この勇敢な冒険者に拍手を!」

「おっしゃ、いくぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 おっさんは上段に構えてから一気に振り落としたけど、やっぱり魔力とか何も使ってないなぁ。

 でも渾身の一撃だったのか、どっがーんってスッゴイ音はしたね。残念ながらちょっと凹んだだけで、潰れてすらいないけど。う~ん、ただの力任せでよく凹ませたと見るべきか、身体強化すらできないのかと見るべきか。


 でもそっかぁ、アルネイア王国の一般的な冒険者ってこのレベルなのかぁ。うちの国とは大違い。





「かってぇ、よくこんなの切れたな」

「そうでしょうそうでしょう。これぞロベール様の力! あの有名な狐族であることが皆様もおわかりいただけたでしょう!」


 サクラだったほうがまだ良かったけど、どうやらマジで行ってあの程度だったわけね。アピールになったみたいだけど。

 ん~、ほんとは景品見たかったけど、もういいかなぁ。見ていてもレベルが低いとかのツッコミばかりになりそうだし。さてと、次は図書館に行こうかな~。


「他に挑戦したい方は、おや? 皆様ご覧ください、そちらにロベール様と同じ狐族の少女がおられます」


 はい? なんか一斉に見られたんだけど。このねぎまはあげないよ!


「こんなところで同族に会うとは奇遇だね。ボクの名はロベール、君の名前を教えてくれるかな?」

「あむあむ」

「ロベール様もお尋ねですし、ぜひお名前を」

「もぐもぐ」

「あの」

「むぐ?」

「その口の中の物が食べ終わるまで待ちますので」


 やれやれ、ようやく理解してくれたね。食べてるときに話しちゃいけないって教わらなかったのか! って言いそうだったわ。

 むぅ、みんなこっち見てるよ。食べてるとこをジッと見られるとか、ちょっと恥ずかしいんだけど。





「んと、名前は教えたくないので拒否します!」

「なっ!? い、いやほら、そこは同族のよしみで」

「知らない人に名前を教えちゃいけないって、お母様に何度も言われてるので!」


 狼狽えだしてるけど知りません。だって名前を指定して術をかける道具とかあるからね。対策はしてあるけど、だからってむやみに教えて良い物でもないし。

 そういえば前世にもあったっけ、そういうお話。返事をしたらひょうたんに吸われるんだったかな?


「な、なら話を変えよう。君も見ただろ、ボクの力を」

「うん、みたね」

「それで提案なのだが、君もブロンズゴーレムを相手してくれないかな?」

「その理由は?」


 だいたい予想できるけどね。お付きの人もゴーレム準備しながらニヤニヤしてるし。


「他の狐族がどのような強さか皆さんに知ってもらいたくてね。ほら、狐族は最弱といわれているだろ? それが正しいってことを証明したくてね」


 そんなことだと思ったよ。面倒だけど、そうだなぁ。


「わたしがゴーレム相手にしたらどんな見返りあるの?」

「そうだな、見たところ君はどこかの貴族らしいから金銭じゃ頷かないだろう。だがその串焼きを見てわかったが、君は屋台の食べ物が好きなんだろう。ならばこの国の屋台で使える食事券はどうだい?」

「ほー、そんなのあるのね。ならいいよ」


 わたしが達成できないと思ってるのか、すごいニヤニヤしてるなぁ。

 でも、お金ない今の状態ではお食事券は非常に魅力的。ほんとはダンジョンで金策したかったけど、このドレス姿でダンジョン行くと目立つから難しかったし。


 ではでは、ここで間食用のお食事券を確保させてもらいましょー。





「それでは皆様、次はこちらのお嬢さんがこのゴーレムを相手にします。この可愛らしい挑戦者へ大きな拍手を!」


 さて、それじゃぁって、いっけない、このままじゃだめだわ。う~ん、どうしよう。

 そうだ!


「ねーねー、これ持っていて」


 わたしと同い年くらいかな? 貴族の女の子に手に持っていたねぎまと、残りが入っている紙袋を渡す。これで完璧。


「なんですの急に、ちょっとお待ちなさい!」

「おねがいねー」


 さてさて、お食事券が待っているので、ちょっとだけがんばっちゃうよー。

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