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44話 街を見学しましょう

少し長いです

 どうやらわたしの事が気に食わない一族がスタンピード起こす可能性があるそうで、はた迷惑な連中だねぇ。そこまでしてどうするんだかって思うわ。


 そんなことはさておき、部屋は豪華で満足のいくものだったわ。ご飯はお魚中心の和食でおいしかったなぁ、さすが高級宿って感じ。

 だけど一番は温泉だね。景色のいい露天風呂で素晴らしかったなぁ。うちのと違って赤っぽかったけど湯加減が最高でした。混浴にしてお兄様も一緒に入ればよかったのに、恥ずかしがって断固拒否されたのがちょっと残念だったわ。


 宿なので当然朝食もでる。夕飯の内容からちょっと予想してたけど、思った通り朝食も豪華。だけど夕飯が和食だったからか洋食になってる。

 これは同じような料理を出し続けて、お客が飽きたりしないようにするためだね。こういう気配りをしてくれる宿、わたしは大好きです。


「じゃぁ今日は私とシエラちゃんは王城に行かないと駄目ってことなのね」

「そうなりますね。でも母上、間違ってもいきなり殴ったりしないでくださいよ?」


 そんな豪華な朝食中、お母様たちが何やら真面目な話をしだした。

 話を聞いていて分かったのは、今日は王城に行く用事があるということ。だけどわたしは狙われていることもあり、どうやらお留守番らしい。

 つまんないなー、やけ食いしちゃおうかなー。あ、このソーセージ美味しい。


「サユリ様、今後を見据えてアリサも連れて行きたいのですが、よろしいでしょうか」

「あら、もうそこまで進んでいたのね。さすがアリサちゃんねぇ、ユキちゃんの専属として順調に成長していて私もうれしいわ」


 シズクさんがお母様に何やら提案してるね。お母様もそれを聞いて笑顔だから、たぶん専属メイドとして良い事っぽいけど。

 でもなんでアリサも連れて行くんだろ、何か関係するお仕事でもあるのかな?


「ねーねーお母様、アリサもってどういうことなんですか?」

「それはね、今後はアリサちゃんがユキちゃんと貴族の人とかの間に入って橋渡しするの。これは私とシズクの関係と同じね」

「私の場合はリョウ様が間に入ってるんだよ。タツミ様はうちの国の防衛大臣という立場だから、間に入るのは部下の人とかだね」


 貴族にあるやつだねぇ。お姉様はそういうのがあるとは思ってたけど、お母様やお父様もそうなんだね。


「ということは、今までシズクさんがわたしの分もやってたの?」

「その通りです。私はサユリ様とお嬢様のお二方を担当しています。このまま私がお二方を担当し続けても良いのですが、アリサはお嬢様の担当を強く希望していまして。もちろん必要なことはすべて習得済みですよ」


 なるほどねぇ。

 そしてアリサはその務めができる状態になってるので、そろそろわたしの担当にしてあげようってことかぁ。


 あれ? ということは


「もしかして例のわたしに来てる求婚だかも、今後は全部アリサが対処するようになるの?」

「そうですよ。今は外交官経由ですが来年からお嬢様は留学、となると直接言い寄る輩も当然出てきます。アリサにはその様な輩に対しても間に入ります。お嬢様には申し訳ないのですが、これは貴族との付き合いでどうしても必要な事なのです」


 シズクさんに説明してもらったけど、どうやら貴族にはメンツがあるので、わたしがいきなりお断りすると問題が出るってことなのね。

 そのため最初はアリサがお断りを通知、それでも来たらわたしからっていう流れになると。なんともめんどいなぁ。


 でもアリサが間に入るのかぁ。


「ねーねーアリサ、わたしの勘だけど、男が寄って着たら調べもせずに即お断り言うんじゃない?」

「そ、そんなこと、あ、あ、あるわけないじゃないですか」


 その焦りっぷり、絶対やるでしょ。まぁいいけど。


「つまり、今日アリサを連れて行くのはそれ関係ってこと?」

「その通りです。今後お嬢様とお話がしたい場合、まずアリサを通してくださいと伝えてきます。それと合わせて、私が普段サユリ様とお嬢様への橋渡しをどうやっているのか実際に見せようと考えています」

「なるほどー。んじゃアリサ、シズクさんにちゃんと教わってきてねー」

「任せてください! お嬢様に変な虫が付かないようにしっかり学んできますから」


 いやいや、可愛く両手握って気合入れてるけど、今の発言は何か違う気がするよ、可愛いけど。大事なことだから何度でも言うけど!

 でもほんと大丈夫かしら……。





 朝食後、みんな出かけちゃったのでわたし一人。


 さてどうしようかなぁ。

 少し治安の悪い地下街には行っちゃダメって言われたけど、外出自体は許可してもらったんだよね。たぶん護衛の人が隠れて付くとは思うけど。


 なら中心街にある国立図書館にでも行ってみようかなぁ、新しい発見あるかもだし。期待外れで何もなかったとしても、暇つぶしにはなるはずだしね。


 でも、この格好で行くの~?

 着ているのは昨日と違い、色が薄いピンクから薄い青になったドレス、これはこれで可愛いですね。しかもすごい似合ってると自画自賛しちゃうくらいだよ。


 だけどひじょーに動きにくい、これで戦闘とかほんと無理。

 でもお母様が『ここに居る間はドレス姿で生活してみましょうか』って言うんだもん、まいっちゃうわ。


 まぁ愚痴ってもしょうがないし、さっさと行こうっと。まだ見ぬ禁書がわたしを待っているはず!





 街に出てきたけど、結構賑やかだねぇ。

 貴族っぽい人が多いけど、これってお披露目のせいなのかな? そう考えるとこの格好の方が目立ちにくいかも。


 よく見ると服装もうちの国とは違うね。大体の人が長袖長ズボン、もしくはロングスカート。うちの国より涼しい気候だから、自然と露出控えめな服装になるのかも。


 あとはペンダントつけてる人が多いね。あれって確か精霊崇拝の証だったかな? どっかの本で見た記憶。

 自分が崇拝する精霊神を掘ったメダル付きのペンダントだけど、あれって精霊神には評判悪いんだよねぇ。実際に見たことが無い人が作ってるので、本人とは全く違う姿のばかりとかなんとか。精霊神を呼び出せる人って本当に少ないからしょうがないとは思うけど。





 少し歩いたら露店がいっぱいある通りに来ちゃった。

 なにか面白いものあるかな~? ぱっと見はいろいろだけど、どれどれ。


「どうだいお嬢ちゃん、これは精霊石を使ったネックレスだよ。他にはない一品ものさ」

「へー。ちなみに何の精霊力が宿っているの?」


 店主が少し高いネックレスを勧めてきたけど、おそらく水色の石だから水の精霊力が宿っているとか言うんだろうなぁ。確かに綺麗なんだけど、これって精霊石じゃないんだよなぁ。わたしの知らない新種の精霊石なら大発見だけど、違うだろうなぁ。


「これにはなんと水の精霊が宿っているんだ。力じゃない、精霊自身が宿ってるんだ。どうだい、すごいだろ」

「んー、試しに使って見せてもらうことはできるの?」

「できるぜ。ちょっと見ていてくれ」


 そう言って店主が魔力を込めたけど、うん、確かに水が出るね。でもそれって精霊石じゃなくて、ただの水の魔石ってことになるんだけど……。

 そもそも精霊石は精霊力の塊であって、精霊が宿った塊じゃないんだよねぇ。


 他にもいくつか見たけどイマイチ。しかも可愛いのとか無くて、どっちかっていうと実用的なのばかりだわ。

 たまたまこの店の品ぞろえが偏ってるだけかな? せっかくだし、他のお店も見てみよう。





「どうですかお嬢さん、このドレスはかの有名な――」


 うん、デザインが古臭いのでパス。


「さぁさぁ見てってくれ。これぞ勇者が持つといわれている――」


 わたし、勇者大嫌いなのでパス。


「この魔導書は伝説の――」


 いやその本、うちの国で普通に売ってるから。





 う~ん、どれもこれもイマイチ。お店はいっぱいあるんだけど、興味を惹かれる物が今のところ全然ない。

 もっと面白いもの……おや? なんだろあの屋台、すっごい美味しそうな匂いがするよ。ちょっと小腹もすいてきたし、行ってみよう。


「いらっしゃい可愛い狐のお嬢ちゃん、1本どうだい?」

「ねーおじさん、これって何?」


 串にお肉が刺さってるのはわかるんだけど、なんのお肉だろ? それにお肉と野菜が交互に刺さってて、なんだっけ、前世の、アレだよアレ。


「これかい? これはフレイムバイソンっていう魔物の肉とネギを交互に刺し、特製のタレをつけた〝ねぎま〟って言うんだぜ」

「へー、なんかおいしそう」


 前世だと鶏肉のを〝ねぎま〟って言ってたの、うっすら思いだしたわ。それにしても美味しそうだねぇ。


「さぁさぁどうだい?」

「んじゃかお……あー駄目だわ。アリサがわたしのポーチ持ってるんだったわ、残念」

「おや、お嬢ちゃんお金持ってこなかったのかい。あぁ身なりからしてお忍びだな、わかったわかった」


 やっぱこのドレスのせいでそう見られるのね。って、ちょっとこのおじさん、1本渡そうとしてきたんだけど。


「でもお金持ってきてないよ?」

「気にすんなって。この辺じゃ見ないから外国からだろ? なら土産話にもなるだろうし食ってみてくれや」


 むぅ、確かに好意で貰ってもいいのだけど、それだとわたしが納得できないし。

 そうだ!


「ねーねーおじさん、何か体で困ってることない?」

「そうだなぁ、ずっと立ち仕事をしているからか、腰が痛いってのはあるな。だがそれがどうかしたのかい?」


 そう言って腰をさすってるね。それなら簡単に治せそう。


「それじゃわたしがその腰が痛いの治すから、ちゃんと治ったら1本くださいな」

「お嬢ちゃんの意地ってやつだな。いいぜ、それじゃちょっと頼むわ」

「んじゃちょっと触るねー」


 後ろに回って腰をペタペタ。うん、これなら余裕だね。ではではさくっと魔力集中させて……。


「お? おお? おおお? な、なんか腰が熱くなって」

「はい完了、これで10年くらいは腰痛にならないはずだよー」

「すげー、全然痛くないぜ。いったい何をしたんだい?」


 腰をひねったりして確認してるけど、おじさん嬉しそうな顔してるね。さすがわたし、完璧。


「魔力を流し込んで腰の筋肉を活性化、あとはおじさんの魔力の流れを少しいじって最適化したってとこだよ」

「魔力ってことはお嬢ちゃん、治療ができる魔法使いなのか!? 見たところまだ子供なのに、すげーな」

「それほどでも、あるんだよ!」


 えっへん。わたし、そんじょそこらの魔法使いには負けない自信があります。


「いやぁほんとありがとうな。何年も痛くてしょうがなかっただけに、ほんと感謝するぜ。それじゃ報酬だな。可愛くてすげーお嬢ちゃんにはサービスで、今焼いているタレと塩を5本ずつ、計10本やるぜ」

「そんなにいいの?」

「おう、遠慮しないでくれ」


 出来立てほやほやの〝ねぎま〟を紙袋に入れてどんと渡されちゃった。ちょっとうれしい。


「ありがとー。あーそうだ、ちょっとこの紙と筆借りるね」

「おう」

「さらさらっと。これわたしのうちの住所だから、もしもまた痛くなったら来るといいよー。それじゃまたね~」

「こっちこそありがとうなー」


 いやぁ思わぬところで新しい食べ物を発見できるとか、街に来てよかったよかった。

 さてどっちから食べよっかな~。

次回、閑話のようなものになります

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