42話 ここでもわかる技術力の高さ
少し長いです(4000文字をちょっとだけ超えてます)
お姉様に案内されて王家専用飛空艦に乗りこんだけど、ほんとひっろーい。甲板で軽く運動とかもできちゃうね。これなら馬車とかも大量に乗せることができそうだわ。
「そろそろ出発しますので、皆様艦内へどうぞ」
発進時は甲板に居たらダメなのね。飛ばされても術式で戻ってこれそうだけど、さすがにそれはダメって言われるよね。なにごとも安全第一です!
「それじゃパパ様、ママ様、行ってきま~す」
元気よく手を振る。パパ様もママ様も手を振ってこたえてくれます、よしよし。
あっ! お土産のリクエスト聞くのを忘れた! なんてこった、超重要なことを疎かにするとは。しょうがない、あとでお母様たちに相談してみよう。
二人への挨拶も済んだのでわたしも艦内に入る。
おぉー中も広いし綺麗、豪華って感じだなぁ。王家専用っていうだけあって中も相当力を入れてるんだね。
でもこんな大きいのがほんとに飛ぶのかな?
「こちらが艦橋になります。艦内の制御はここから行えるようになっています」
案内されたのは艦の操縦室、10人くらい居るのかな。
外の様子とかは魔道スクリーンに映し出されてるね。でもあれって白黒でボヤボヤだった気がするけど、色鮮やでくっきり鮮明に映ってるね。最新型なのかな?
それに変わってるのは艦の操縦は船舵とかじゃなく、ガラスのようなパネルで操作する方法になっているところ。パネルにはボタンの様な模様がいっぱいあるけど、どうなってるんだろ?
おそらくパネルには術式が組み込まれていて、触ることによって術式が起動、設定箇所が動作する仕組みだと思う。ただ、同じものをわたしが作れるかっていうと無理かなぁ、ほんとすごい技術だわ。
「皆様はこちらの席へおかけください。艦長、準備が完了次第発進してください」
「承知しました。全乗組員に通達、これよりアルネイア王国へ向け発進する。最終調整、開始!」
おー、なんかいろんな人がパネル操作している。今操作したのは動力炉なのかな? どっかで魔力が高くなっているのを感じるわ。
「ねぇシエラちゃん、もしかして新型の魔力炉でも開発したのかしら? 以前よりも魔力の流れが静かなのに、魔力の充填速度と強さがだいぶ上がってるみたいだから」
お母様もやっぱり気付いたね。しかも他の魔力炉との比較もしちゃうのがすごいです。わたしは魔力を感じただけで、前との違いはよくわからないや。
「仰る通りですサユリ様。魔力炉を従来の半分程度まで小型化することに成功しましたので、この飛空艦には実験段階であった魔力炉の複数搭載と、魔力炉同士の並列稼働機能を組み込んでいます。その結果、従来と比べ約4倍の出力を出すことが可能となりました」
「なるほどねぇ。それにカタリナちゃんの事だから、小型化もただやったとかじゃなさそうだけど」
「はい、どうやら王妃殿下は――」
お母様とお姉様がこの艦について難しいこと話してる。ほんと機密とか関係なしだねぇ。
というかママ様、やっぱ超天才だね。
この艦に搭載されている物のほとんどが世界初で、それを全部ママ様が考えたっていうんだから。しかもどれもこれも簡単には真似できない技術力、さすがです。
「艦長、各部異常なし、最終調整完了しました」
「了解した副長。王女殿下、これより本艦はアルネイア王国へ向け発進いたします」
「わかりました。お願いします」
「承知しました。アルネイア王国へ向け、全艦発進!」
おーついに発進って、衝撃と浮遊感が一切無いね。魔道スクリーンには浮かんで進んでいるとこが映ってるのに、ほんとすごいなぁ。
「ねーねーお姉様、最近の飛空艦は全部こんな感じなんですか? いつも乗っていた飛空艦も飛んでからは快適だったけど、離陸の時にはそこそこ衝撃と浮遊感かありましたし」
「他の飛空艦ではこうはいきませんよユキ様。この飛空艦のためだけに開発された新型の魔力炉や各種最新装置があってこそなのです。ちなみに現存する飛空艦の中で、衝撃と浮遊感が無いのはこの艦のみとなります」
「なーるほど。そしてそれを考え実現させたのがママ様ってことなんですね、すっごいなぁ」
そんなママ様のおかげで、うちの国には生活に便利な魔道具が広く普及しており、他国よりも圧倒的に過ごしやすい環境になっている。
しかも転生者の知恵からできた科学道具より優れものが多く、おまけに安いという素晴らしさ。わたし、この国に生まれてほんとよかったなぁ。
そういえばお姉様、さっきからずっと王女様モードだ。
むぅ、わたしの小悪魔モードが王女様モードを崩したいって叫んでるけど、さすがに怒られそうだから我慢我慢。いつもの兵士さんたちじゃないから余計にダメそうだよね。
発進してからも順調、トラブル皆無なのはすばらしい。
アルネイア王国は遠いので、いくら最新鋭の飛空艦でも1日くらいかかる。でも馬車とかなら10日くらいかかるらしいから、やっぱ早いんだねぇ。
のんびり部屋で待ってるのも良かったけど、せっかくなのでアリサと一緒に艦内探検。お母様とお姉様がちょっと難しいお話に入ったのもあるけど。
「ほんと広いなぁ、迷子になりそう」
「この案内表示が無ければ迷いますね。巨大な船内をさらに空間拡張の術式で広げたとのご説明がありましたが、これは小さな町が全部入るくらいの規模になってそうです」
案内表示は壁に手を当て少し魔力を流せば現在地の地図が表示され、さらに目的地を指定すれば視覚と音声の両方で案内が開始されるという便利な物。
まぁこんだけ広い飛空艦じゃ、案内がなければ絶対に迷う人が大勢になるね。しかも階層もいっぱいだし、もしかしたら艦長さんでも迷うんじゃないかなぁ。
「そういえばお姉様が言ってたね、いざって時の退避場所を想定してるから、この広さにしたとかなんとか」
「王都の住民を全員収容できるようですし、すごすぎですね」
「だねぇ。しかも2番艦や3番艦も近いうちに完成予定、さらにこれよりもすごい新型も建造中って話だもんね。すごすぎることばっかりだわ」
災害対策も兼ねてるらしいけど、自衛の意味もありそうだね。
うちの国って資源は豊富、術や魔法、魔道具なんかの技術は最高峰、天魔に進化した住民も多いという、他国が欲しがる要素盛りだくさんだからしょうがないのだけれど。
ただ、他国と違って勇者召喚は1回もしてないんだよね。誰も望んでないってのもあるけど。
「おーここが遊戯室ね、いっぱいあるなぁ」
目的地である遊戯室に到着したけど、ほんと遊び道具がいっぱいだわ。
というかあれって確かボーリングだよね、それにこっちはエアホッケーだっけ。あっちはビリヤードで、そっちにダーツとか、転生者がもたらした娯楽まで盛りだくさん。
「お嬢様、あれって……」
「スロット、だね……。隣にルーレットもあるし、あっちのはたぶんポーカー用かな」
遊戯室はカジノも兼ねていました……いや分かるよ、そういうのが楽しいのはわかるよ。
しかもこの世界のカジノって身元がしっかりしてれば年齢関係なく遊べるから、わたしもたまに行って遊んだりするし。
だけど、まさか本格的な設備を飛空艦に搭載するとか、さすがに予想外だよ……。
「しかもこれ、店員や参加者が不足している場合、専用のゴーレムを召喚して補うことが可能ってここに書いてあるよ」
「徹底してますね……」
一人で時間潰すのも可能というのは良いね。至れり尽くせりではあるけど、それがカジノって言うのが何とも言えないけど。
「ん~、せっかくだしちょっとやっていこっか。というわけでアリサ、勝負だよ!」
「やはりそうなりましたか。わかりました、お付き合いします」
「んじゃ最初はメダル100枚、1時間後にメダルの多い方が勝ち、勝った方が負けた方に1回命令できるにしよ。それじゃ始めるよー」
ふっふっふ、カジノで出禁になるギリギリまで稼げるわたしの腕と幸運を見せてあげようじゃないか。アリサが相手でも勝負は勝負、手を抜きません!
「……あえりえない」
1時間ほどメダルを稼いだけど、まじでどういうことよ。
目の前にあるメダルの山を何度も計数機で確認したくなるくらい、ちょっと異常な状態なんですけど。
「どうしたのですか?」
「わたし、結構ガチで稼いだはずなんだけど」
「みたいですね、危なかったです」
そう言う割に涼しい顔してるよね。この子、結構余裕あったんじゃ……。
「なんでわたしと全く同じ枚数なのかがね、ひっじょーにおかしいなぁと思うのですが!」
「私はお嬢様専属のメイドですから、これくらいできて当然です」
「ソウデスカ」
メイドって何だろうね……。
明らかに普通のカジノなら出禁になるくらい稼いだのに、1枚の誤差もなく同じってとんでもないわよ。
やっぱりアリサってわたしと同じような力に目覚めだしてるんじゃ……。魔石の影響かなぁ? 悪い事じゃないからいいんだけど。
「まぁいいや。んじゃ次は何やろっか」
「色々あって目移りしちゃいますね」
「だねぇ。そうだなぁ……」
カジノ以外の娯楽もたくさんで、ほんと目移りしちゃう。王家専用艦、娯楽にも本気ですね。
「みてみてアリサ、すっごい高いよ! わたしの飛行術でもここまで上がるのは結構大変かも」
「お、お嬢様、わかったのでそんな甲板の淵に立つのは危ないのでやめてください」
遊戯室で遊んだ後、甲板に来た。
せっかくなので端っこに立ってどのくらいの高さなのか見てたわけだけど、相変わらず心配性だなぁ。このくらいの速度と高さなら落ちても何とか戻ってこれるし、そもそも落ちないのになぁ。
「でも不思議だよね、結構速度が出てるのに揺れないどころか風も当たらないなんて」
「結界の応用でしたっけ。艦全体に張り巡らせるとか、ほんと凄いですよね」
お姉様の説明で知ったけど、お父様の結界を参考にしてるから防御力も相当な気がするんだよねぇ。こんな飛空艦で攻められたら、あっという間に敗北しちゃう国多そうだなぁ。
「おや? なんでしょうか。お嬢様、ちょっと失礼しますね」
艦内に居るメイドさんが何かアリサに話しかけてるね。
つい比較しちゃうけど、やっぱ王家のメイドさんはレベルが高いねぇ。と言ってもうちのメイドさんも負けず劣らずだけど。
「わかりました、ありがとうございます。お嬢様、そろそろ昼食のお時間のようです」
「もうそんな時間なんだ。んじゃ食堂に行こっか」
お昼は何かなー。旅行って感じがするからか、余計に楽しみだな~。
カジノと言うか、ほぼゲームセンター




