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39話 お姉様も大変です

 しっかし傭兵帝国かぁ。

 去年ダンジョンで遭遇したっきりだけど、何かやってたんだね。しかもお父様たちと同じくらい頭のいい者がいると。どんな人なんだろ?


「じゃぁこっちも話を始めたいけど、中に入ってお菓子食べながらにしましょうか。シズク、悪いけどアリサちゃんと一緒に客間のほうの準備、お願いできるかしら」

「畏まりました。ではアリサ、行きますよ」

「承知しました。お嬢様、先に行っていますね」

「は~い」


 二人が先に屋敷に戻ったけど、もう見えないわ。さすがメイド、行動が早すぎる。

 そういえばアリサもシズクさんと同じでメイド服のままで戦うに決まったんだっけ。師匠と弟子って感じだなぁ。


「それじゃ私たちも行きましょうか」

「ですね。ユキちゃんはお姉ちゃんと手を繋いでいくよー。あぁそうだ、あなたたちは数人だけきてください。残りはこの場での待機を命じます」

『承知しました』


 護衛の人たち、お姉様の一言でビシッと構えたね。洗練されてるなぁ。

 でも、こういうの見るとちょっとした小悪魔モードがうずうずと。どうやってこの真面目な人たちを崩そうか、う~ん。


「ユキちゃん、まーたうちの兵に対して何かしようとしてるでしょ。お姉ちゃんとしてそれを見過ごすことはできないなぁ」

「な、なぜわかったのです!? まだ小悪魔状態にすらなっていないのに」

「お姉ちゃんですから! さ、そんなことしてないで、ほら行くよー。サユリ様を待たせたら駄目だからね」


 お姉様に手を引かれていくわたし。くぅ、今回は無理だったけど次こそは必ず!





「ところでお姉様たちってこれが終わったらすぐに帰っちゃうんですか?」

「そうだよー。はぁ、私もほんとなら泊ってユキちゃんと遊びたかったんだけど、向こうでの仕事がいっぱいあってね。あー、こんなにも可愛い妹が居るのに帰らなきゃいけないなんて」


 ほんと残念そうな顔してるなぁ、わたしもすごい残念だけど。


 この世界は子供から青年の区切りが13歳、そこから5年経った18歳が成年になってる。

 そしてお姉様は来年13歳。青年の儀式に向けての準備とかもあるからか、今年は仕事が多いんだよね。来年はもっと忙しくなるらしいけど。

 早く仕事が落ち着いて、一緒に遊んでくれる日がもっと増えたらいいなぁ。


「そういえば、お姉様って来年になったらお兄様との婚約発表するんですか?」

「もちろんするよー。そうすればユキちゃんが心配する他国の貴族からの求婚、これがだいぶ減ると思うからね」


 笑顔でそう語ってくれるお姉様。

 実際、うんざりするほどの求婚が毎日押し寄せてるみたいだから、わたしはすっごく心配なのです。ちょっと素行がよくない貴族も居るからねぇ。


 なんたって、お姉様は王族のカリスマもあるけどエルフなだけあって超美人でしょ、発育もいいでしょ、そして天魔に進化してて超強いでしょ、しかも知識と才能も素晴らしい完璧なお姫様。まさに超優良物件なんだよね。


 そんなお姉様は、すでにお兄様とラブラブな状態。

 だから他になびくことは一切ありませんので、他国の貴族さんとかは空気読んで諦めろってマジで思ってる。


 そういえば前世だとエルフさんってスレンダーのイメージが強かったっけ。

 でも知り合いのエルフさんって全員スレンダーじゃない、どちらかというと前世のダークエルフを連想する、ちょっとえっちぃ体型なんだよね。

 まぁエルフさんに限らず、わたしの周囲ってえっちぃ体型の人ばかりだけど。


 この偏りには何か秘密がありそうだけど、悪いことじゃないからまぁいっか。

 それにわたしの好みもどちらかというと……って、何バカなことを考えてるんだか。





「最近は他国の王子まで求婚してきて、ちょっと大変なんだよー」

「公の場でもお兄様が専属従者なってからは堂々とイチャイチャしてるのに、それでも言寄ってくるんですか?」

「そうなの。さすがにここまでやれば皆諦めるだろうって思ってたんだけど、全然でね。青年期になったらさっさと式あげちゃおうかなって思ってたりするよ」


 前世と違い、この世界は青年期になれば結婚できるし子供も作れる。青年っていうけど、実際は成人と同じだよね。


 そもそも、これは長命種の反対で短命種もいるからそれに合わせての結果。種族によっては20年くらいしか生きられない人もいるからねぇ。

 といっても20年でも長いって本人たちは思っているようで、悲観する者はほとんど居ないって本に書いてあったなぁ。


 青年と成年という区分けがあるのは、飲酒やタバコなどの嗜好品の摂取、それと複数の人と結婚可能とする時期を定めるため。

 一夫多妻とかはまだしも、お酒やタバコとかって依存性あるからだったかな。まぁ国によっては青年期で許可しちゃってるとこもあるけど。


「お姉様も大変ですねぇ」

「残念だけどユキちゃん、他人事みたいに言ってるけどそれは違うよ?」

「え?」

「だってユキちゃんにも既にそういうお話がいっぱい来てるんだよ。他国にユキちゃんの存在が知れ渡ったせいでね」


 まじか……。去年の騒ぎの余波がそんなところにも出ていたとか、想像すらしてなかった。

 ということはこの先……うげーほんとやらかしてたわぁ。


 お姉様の説明を聞くと、お父様とお母様の地位もさることながら、やはり生まれながらの天魔狐、そして受け継いだ天性の才能が理由みたいだね。自分の一族に加えればその子供も同じような存在に、ってことかな。


 今はまだ外交官を通してのみそういう書簡が来るので、王家の方で全部お断りしているとのこと。でも毎日3桁近く届いてるとかなんとか……5歳児に対し求婚大量とか恐ろしいわ。


「それに来年からユキちゃんはアルネイア王国へ交換留学じゃない。そしたらきっと向こうで相当言い寄られるよ」

「そういえばそうだった。留学ってわたしが生まれたときに決まったんでしたっけ? 前回は向こうの偉い人の子供が来たので、今度はこっちの番みたいな」


 アルネイア王国とは同盟関係ということもあり、親睦の意味も兼ねて王立の学園への交換留学が定期的に行われている。そして今年の交換留学生にわたしが選ばれてるとか。


「ほんとは交換留学に出したくないけど、同盟の問題や王家の繋がりのせいで飲むしかなかったそうだよ。でもやっぱり出したくない、そう思うのは私だけじゃなくタツミ様やサユリ様、王家に連なる者たち、それに国民みんなが思ってるけどね」

「おー、わたしって超愛されてる!」

「この国にとっては王家よりも大切な一族のお姫様だからね。私としては一族がどうというより、こんなにも可愛い妹なので出したくないんだけど」


 そう言ってお姉様にぎゅーっとされ、頬ずりもされるわたし。むぅ、ちょっと恥ずかしいです、照れます。だけど嫌じゃないのでどんどんやってください!


 あー今頃だけど分かった。わたしがアリサにちょっとスキンシップ過剰になるの、お姉様の影響だ。小さい頃からずっと遊んでもらってるから、性格とか似ちゃったね。





 お姉様と話しながらだったので少し遅れて客間に入る。お母様はシズクさんとアリサと何か話してるね。

 そういえば思い出したけど、後ろに護衛さん居たんだよね。新人さんも居たようで、わたしとお姉様がじゃれあってるの見てオロオロしてたわ。これは悪い事したかな?


「遅かったわねぇ。どうせなら私の命令ってことでシエラちゃんお泊りしていく?」

「うっ、ほんとはそうしたいのですけど、一応王女ですので。でも絶対来月は帰ってきますので!」

「ふふっ、その約束破ったらユキちゃんが泣いちゃうから絶対に守らないと駄目よ」


 おっとお母様、その発言はどうかと思いますよ。

 そんな来なかっただけ泣くなんて……、泣く、なんて……、うん、泣くね。ほんと、転生したわたしは豆腐メンタルだわ。


 でもちょっと異常だなぁ。家族が好きすぎたり、友達とか仲いい人に嫌われるのがすごく怖かったり、忘れた前世に何かあったのを引き継いでるのかな?


 とりあえず席に着く。しかしわたしはお姉様に抱っこされる形である、ほんと泊っていけばいいのに。

 おや? アリサのあの目はちょっと羨ましそうな目だね。ならば今度させてあげよう。


「それでシエラちゃん、もう1件の内容、教えてもらえるかしら」

「はい。といっても事前情報の補足ではあるのですが、〝竜槍〟の所持者が出たのは間違いないようです」


 所持者とかちょっと危険な感じがする単語が出てきたんですけど!?

 むぅ、面倒なことにならないといいけど。

短命といってもこの世界の1年は地球の4倍なので、そこまで短い生ではないです

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