366話 くまの事は一旦わすれてっと
少し長いです
不気味だったくまは置いといて、マサムネおじちゃんにいろいろ聞いてっと。なにより、不気味になった印象が強すぎるくまの事は忘れたいし……。
ある程度お母様から聞いていたけど、参加するのが嫌そうなのが強くて深堀出来なかったからね。嫌そうにしているのに全部尋ねるとか、ちょっときついのです。
そのせいもあってか、ようやくいろいろと把握できたわ。
まず、今回の会議みたいなものの参加者は、大きく分けて4種類となる。
ひとつめはマサムネおじちゃんのようにうちと仲が良く、うちに来る事もでき国交も樹立している人たち。数はそこまで多くないけど、絶対に敵にならない安心感はあるね。
ふたつめはうちに来るとか国交樹立まではいってないけど、お母様との仲が比較的良好な人たち。今後さらに関係をよくしていきましょう段階で、数はそこそこ。
みっつめは良い関係を築きたいと思っているけど、まだ会話もろくにできていない人たち。仲の良い人に場を作ってもらい、関係をよくしていこうって人が多く、数も一番多いと。
よっつめは単純明快、わたし達の敵。うちの国技術とか資源を狙っていたり、お母様に対していやらしい感情を馬鹿みたいに持っていたりと、仲良くする利点が皆無な人たち。数は少ないけど、発言権とか権利とかが結構強い人と。ヤッバイね。
「とゆーことは、さっきの気配消していた変態さん達も敵の一派ってことかな?」
「気配を消していたでござるか。その者たち、外見はどのような状態でござったか?」
「えーっと、ぱっと見は普通の只人だったかな?」
「ふむ、只人風という事は賢人族でござるな」
「「賢人族?」」
わたしもアリサも知らない種族ですね。なんとなく好感が持てない名前だし!
「賢人族というのは、只人族から進化した種族、と自称している者たちでござるよ」
「え? 自称なんです? 大昔から~とか、伝説上のと~とか一切なしで?」
「そういうのは一切無いのでござるよ。笑止って感じでござるな」
ハッハッハとマサムネおじちゃん笑うけど、うん、自称の種族とか情けないというか馬鹿というか、笑っちゃうね。
「でもでも、自称でも名乗っちゃうって事は何か只人族と違っちゃったり?」
「そうでござるなぁ……、普通の只人族よりも脳の密度が高く知能指数が多少高い、くらいでござるか」
「へぇ~」
脳の密度が高いって事は、おそらく只人族と同じ密度になったら只人族よりも脳が大きいって状態なんだろうね。
そして、その大きくなった分を知識とかに回してるってことか。
でもなぁ……
「種族特性でなく、遺伝って感じがしちゃうなぁ」
「その通りでござるな。それにでござるが、脳の密度が高いとはいえどの程度高いかの資料は無いのでござるよ」
「え? もしかして、その密度まで自称?」
「笑えることに、自称でござるよ。只人族と比較したとは言ってもどのような只人族か、それこそ年齢も性別も不明な者との比較結果であり、比較した内容すら資料化されてないでござるからな」
「うへぇ。なんていうか、虚偽満載な種族に思えてきちゃった」
資料化してないって事は表に出せないって事でしょ? てことは、同じ背丈の人同士で魔力をぶつけ合ったとか、そういう比較ですらない可能性もあるって事だもの。
う~ん、只人族って言われるのが嫌で無理やり作った種族なんじゃ? って気もしてきたわ。
お母様が嫌いそうな要素、けっこう増し増しだなぁ。
いろいろ聞いてみたけど、肝心なことを聞くの忘れてたわ。
「ところでマサムネおじちゃん、あのくまモドキって何なの?」
不気味印象ありすぎて、わたしが好きになるような熊さんでは無いです。印象って大事。
「あれは食骨熊という少し変わった熊でござるよ」
「「しょくこつぐま?」」
わたしもアリサも聞いたことない名称だわ。まぁ普通の熊では無いとは思ったけど……不気味なせいで!
「名称から、骨を食べる熊という事ですか?」
「残念ながら違うでござるよ。その場合は別の名称になっていたかもしれないでござるな」
「別のって……あー、骨食熊みたいなの?」
「その通りでござる」
なるほどなるほど、確かにそれにあった名前にするよね。名前の付け方が異世界、というか地球の人っぽいのだけど。
あれ? てことは?
「この熊は食用で、人がその骨を食べるでござるよ」
「「えぇぇぇぇぇ!?」」
骨を食べるって、そんなトンデモないことなんですけど!
そりゃまぁ一部のお魚さんの骨は香ばしく焼くとかしてお煎餅などにするとか、これまた一部の鳥さんは長時間蒸すと骨も食べることができるとか、そういうちょっとした手間かけると骨も食べられますってのはあるよ。
だけど、食用の骨ですとか、聞いたことないんですけど!
「骨以外は食用では無いのですか? 見たところ、肉付きも良い感じですけど」
「食べないそうでごさるよ。肉の部分は脂肪ばかりで、とても食べることができない代物。内臓類も脂肪ばかりで、とてもとてもという性質でござるよ」
「でもでも、それなら脂肪分を活かした料理するだけで良いんじゃ?」
「ところがそうもいかないでござってな。あの熊が持つ脂肪は良質な油のため食べることは一切せず、各種油へと精油する素材となっているでござるよ」
「うへぇ」
油をとるためだけのお肉とか、ちょっと勿体ない感が出ちゃうわ。お肉は食べてこそ正義!
それにしてもあれかな、上質な熊油が入りましたーとかやってる世界もあるって事かしらね。
「だけど、骨をねぇ……」
「骨ですものねぇ……」
「うむうむ、やはりそういった反応になるでござるよな」
「だって骨ですよ? 食べるためーとは思えないのもあるけど、あんまりおいしそうな印象ないし?」
おいしい骨ですって思えないんだよね、不気味な熊だし!
「そうでござるよなぁ。ならば……おぉ、ちょうどいいタイミングでござるな」
そういうなり、マサムネおじちゃんがブンブンと手を振り出したわ。誰か見つけたのかしら?
そう思うやいなや、タタタッと少し駆け足っぽいと音が聞こえて
「ユキおねーちゃま~、アリサおねーちゃま~」
と、可愛らしい声を出しながら小さな女の子が駆けてきたわ。
おやおやまぁまぁ
「マサムネおじちゃんの娘ちゃんじゃん! おっひさー」
「おっひさー」
わたし達のとこに来ると、ぴょんぴょんと跳ねちゃって、かわいいですね!
この娘ちゃんはマサムネおじちゃんの娘ちゃんだけど、種族は阿修羅族の方ではなく奥さんの方の狼族となっている子。
外見は普通の狼族ではあるけれど父親は阿修羅族なので、魔力や精霊力とは違う力で一時的に4本の腕を背中から出すことができる種族。半阿修羅族って立場になるんだったかな?
通常の阿修羅族とは違う腕ではあるけれど性能はほぼ同じ。ただ顕現させるために力を使うので、耐久力とかが少し劣ってるって判定だったかしら。
そんな半阿修羅族だけど、大昔にはその劣っている部分をついた迫害とか差別があったとかなんとか。
だけど、それは大昔で今は一切ない。それどころか、人によっては半阿修羅族の方が良いなってのもあるそうで。常時6本腕となる阿修羅族と違い普段は2本腕なので、他国からの衣類調達がしやすいとかが大きな理由だったかしら?
まぁそういう平等にしたのは、大昔にマサムネおじちゃんの世代が結構強引に改善させたからだそうだけど。
強引でも改善させたのは単純に、お母様との関係を悪い方に向けたくなかったとかなんとか。お母様ってそういうの嫌いだから、もしもそんな差別有り状態を維持したままマサムネおじちゃんが統治し続けていたら、国交樹立どころかうちに来ることも無くなってたかもね。
しっかし
「ずいぶんでっかいだねぇ」
「いちばん大きいのえらんできたよ」
娘ちゃん、背中から4本の腕を出してはいるけど、そのすべての手にドデカイお菓子が乗った大皿を抱えてるんだもの。なかなかやりますね。
わたしの場合は大きいのを1個ドンでなく、いろんなものを持ってきちゃうかな。こういうのって性格が出ちゃうとこだね。
「もしかして、娘様が持ってこられたお菓子が?」
「うむ、先ほど言っていた食骨熊の骨を使ったお菓子でござるよ」
「あー、つまりこれって、そういうことかぁ」
骨を使ったお菓子が置いてあるで納得。
この不気味な熊は観賞用とかでなく、販売用とか展開するために置いていたって事か。危険性は無いです、だけどおいしい骨が取れますなどなど。品質の良い油もあります、とかもやってそうだなぁ。
「はいっ、ユキおねーちゃま」
不気味な熊への考察とかはさておき、娘ちゃんがお菓子を渡してくれ……デカイナ!? そしてヤバいくらい重いな!?
「ぱっと見、わたしの頭くらいある大きさのクッキーなんですけど!? 重さも下手するとわたしの体重くらいあるとんでもなく重いのなんですけど!?」
「アリサおねーちゃまも、はいっ」
「ありがとうございま……こ、こっちのもだいぶ大きくて重いのですけど……」
「受け取るとさらに痛感しちゃうよね」
唖然としちゃうくらい、バカでかくてバカ重いよね……。
「もっと大きな物もあったのではござらんか?」
「あったけど、もてなかったので、あきらめちゃった」
「持てなかったって、この大きさのを合計6個持ってきたのも相当だと思うんだけど……」
両手だけでなく背中の4本の手の全部に乗せてくるとか、とんでもない娘ちゃんです。力はもう通常時のわたし以上かしら?
「そういえば娘ちゃんって今何歳だっけ?」
「いまはー、みっちゅ!」
指を3本立てて、かわいいですね!
「とゆーことは、命名は2年後?」
「その通りでござるよ。まだ2年というより、もう2年しかでござるけど」
マサムネおじちゃんが少し苦笑いした後、娘ちゃんをヒョイッと抱っこしたわ。やっぱり阿修羅族だからか力がすごいねぇ。
そんな阿修羅族だけど、少し変わった風習がある。
それは命名の儀式というもので、名前を持つのが5歳の誕生日というちょっと不思議な風習。それまではだれだれの娘や息子という呼び方になってるそうで。変わってるねぇ。
「候補とかは出来たんです?」
「いくつかあるでござるよ。その中で一番気にいった名前を選ばせる予定でござる」
「えらぶんだー」
「とゆーことは、マサムネおじちゃんみたいなのは」
「ないでござるなぁ。無くて良かった、でござるが」
またまた苦笑いしてるけど、そう、マサムネおじちゃんの世代は伝統というか過去の著名人の名前を親が選び、それを与えるってなってたそうで。親が名前を選んで付けるは普通だけど、親が考えた名前じゃないってのがダメダメだね。
しっかもなぁ、マサムネおじちゃんの名前もそうだけど、どーにもこーにも地球の日本に居た有名人の名前ばかりってのがねぇ。どんだけ転生してきたんですかね、地球の日本から。日本以外が多い国もあるだろうけど、それにしても地球からの転生者多すぎ!
「おとーちゃま、なまえはかわいいのがいいです」
「うむうむ、任せるでござるよ。お母さんと一緒に、最高に可愛い名前を用意するでござるよ」
「あいっ!」
うんうん、微笑ましい感じで良いですねぇ。
こういう親子の仲が良い光景、大好きです。うちもそうだけど、やっぱ家族の仲が良いってほんと良いよねぇ。
「お嬢様、軽く現実逃避しようとしてません?」
「き、気のせいじゃないかな~?」
はいっ、このドデカイクッキーをどうしようって絶賛悩んでます。
大丈夫なのはわかってる、わかってるんだ。
だけど、これは不気味な熊モドキの骨で出来てるという抵抗感と、バカみたいにデカくて重いという圧迫感で、こう、ちょっとね……。
でもでも娘ちゃんが持ってきてくれたので食べないわけには……でもなぁ……う~ん……。
「覚悟、決めるべきかもしれませんね……」
「だね……」
ガンバレわたし、不気味な熊に負けるな! ……やっぱ負けそう……。
不気味なモノにはだいぶ駄目になる狐娘




