363話 知りたいことがどんどんよ
ちょっとした工作が終わったので、次に行ってみましょー。
「ねーねーお母様、さっきのなんですけど」
「ふふっ、ずいぶんとはしゃいじゃってるわねぇ」
「だって気になっちゃいますし?」
技術者状態がもりもり出ちゃってるからね、しょうがないのです。
「壊れやすいから少し注意してね」
「は~い」
お母様がポンッとわたしの手にさっき使った鍵を渡してくれたので、じーっくり見ていきましょー。
ぱっと見はオリハルコンっぽいのだけれど、お母様が言ったようにちょっと脆そうな鍵だわ。オリハルコンじゃないのかな?
チャキっと解析するための眼鏡型魔道具をつけて、その構造をじーくり見ていく。
ふ~む、素材の構造はオリハルコンに似ているけど、よくわからない素材、言ってしまえば未知の物質が幾つも混ざり合ってるわ。
「これって他の世界で作られた物なんですか?」
「そうよ~。その鍵はね、この世界の素材で作られた物なの」
「ほへぇ」
未知の物質ってのはそういう事ですか。
たしかにここってわたしたちの住んでいる世界と違う感じだから、魔素や霊素だけでなく鉱物とかも違うってのがあるわけだね。
でもそのせいか、耐久面だけでなく質量とか光沢とかが普通のオリハルコンより劣ってる感じだけど。ちょっとダメダメっぽい感じのオリハルコンって思えちゃうわ。
さてさて、素材に突っ込むのはこのくらいにして機能とかの方を突っついていきましょう。
ふ~むふむ……ん~? 解析して出てきた術式とかを見ているけど、なんか雑というか中途半端だなぁ。
転移機能は確かにあるけど、どこにでも行けるのではなく起動した場所に戻る場合には同じ鍵を使わないと駄目とか、使い勝手悪い仕様だし。座標変更できないとかダメダメです。
安全機能もあるにはあるのだけど、転移中に妨害があったら転移者の状態保存するとか、元の場所に戻すとかの機能も無い。より安全ってのが一切無いのでこっちもダメダメです。
「ふふっ、ダメ出ししてる感じねぇ」
「そうなんです! ダメダメなんです」
おっと、バンッ! って机を少し叩いちゃったくらい、ダメダメなのを発してしまったわ。
「作った人に文句言ってやりたいんですけど」
「う~ん、残念だけれどそれは無理ねぇ」
「そうなんですか? ダメって事は、とーっても偉い人とかでダメとかの?」
「そうではないのよねぇ」
お母様が苦笑いしながら、お祖母様を手招きしだしたわ。お祖母様が話を聞きながらも、わたしがさっき改良したランプに夢中だからですね。
「おっと、わしの出番なわけじゃな」
「そうよ? ユキちゃんの技術に感心するのは良いのだけれど、もう少し話しにも参加してもらいたいわねぇ」
「わ、わかってるんじゃよ? でものぉ、この技術を見てしまうとのぉ」
「はいはい」
あらまぁ。これはあれだね、お母様と違いお祖母様ってわたしの技術関連を今まで見て来なかったから、その反動ですね。
「それで技術者じゃったの」
「そーなんです。ちょっと文句、じゃなかった、どうしてこの程度なのかツッコみたくて」
「それは同じような意味も気がするがのぉ……。まぁ残念じゃが、その技術者は既にこの世に居ないのじゃよ」
「え? てことはこれ、失われたとか遺産の技術的なのなんですか?」
「そういうのなのじゃよ」
なんとまぁ、そんな技術だったのか。
てことはダメダメなのは当時の技術がダメダメだったって事なのかな。
「わしが生まれる遥か前に滅んでるそうじゃからのぉ」
「うへぇ」
お祖母様の生まれる前とか、いったい何億、何兆、ともかくとんでもない昔って事じゃん。そんな昔に転移の技術を作ったのはすごいのだけれど。
「なので残念じゃが、その鍵の説明を聞くとか複製するとか、改良とかも無理なのじゃよ」
「え? でもでも複製と改良って、この内容だったら簡単なんじゃ?」
オリハルコンっぽい素材はともかく、それ以外は簡単に複製も出来るだろうし、改良も出来そうなんだけど。
「それがのぉ、ここに来るためにはその鍵でなければ不可能になるよう、セキュリティ的なのがあるのじゃよ」
「転移鍵であるけど認証鍵でもあるって事ですか?」
「そういうことなのじゃよ」
「なるほど~」
たしかに理由があるなら専用鍵とするのは納得ね。
でもなぁ
「そんな鍵、だれが何のために用意したんですか?」
「それは分からんのじゃよ。ただ、はるか昔の人々がここに来る者を選別していた、という事実があるだけじゃの」
「選別? でもその鍵って」
「あーそうか、まずはそこの説明が抜けておったわ。実はじゃな、この鍵は世界中に散らばっておるんじゃ」
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
ちょっとびっくりですよ。
だって流れからして、お母様の持っている鍵はお祖母様が持っていた予備とかなんだろうって思ってたのに、散らばってるってどういうことですか!?
「世界にはダンジョンがたくさんあるじゃろ」
「ありますあります、すっごいいっぱいあります」
「そのダンジョンの中にの、たまーにこの鍵が封印されておるのじゃよ」
「たまーに?」
「うむ、たまーにじゃ。最深部の宝箱にある場合と、魔物が持っている場合があるのじゃが、どこにあってどのくらいあるのかはわしらでもわからんのじゃ」
「うへぇ、なんかゲームっぽい」
鍵は貴重品だけどドロップアイテムですって感じだもの。
「じゃのぉ。何のためにそうしたのかは一切分からんのじゃが、それをわしらは活用しておるのじゃよ」
「みんなで話せる場ができたー、みたいなことですね」
「そんなとこじゃよ」
なるほどなるほど。
たしかに普通いろんな世界の人を集めるのって結構大変なのだけれど、それぞれが転移できる共通の場があれば楽になるよね。
しかも鍵の効果のせいで他の世界に転移して侵略するとかもできないから、ほんとーに集まって話すだけの場になったって事だろうねぇ。
「まぁそのようなこともあっての、ここに来る者は変動しておるのじゃ」
「鍵を新しく手に入れた人とかですね」
「うむ。あとは失った者や、奪った者とかもじゃのぉ」
「平和的じゃない!?」
「ろくでもない奴も結構おるからの。サユリが参加したくない理由の一つでもあるのじゃ」
「なーるなる」
たしかに嫌な人とかが多かったら、お母様は参加したくないってぜーったいに思っちゃうよね。
しかも強くて綺麗で可愛いから、下心持ってくる奴も多いだろうしなぁ。色々と納得です。
そんな事をしていたら、どうやら調整とかが終わったみたいね。
ガコッて音が鳴り、ドアの施錠も外れたみたい。
「三人とも、体に不調とかは無いかしら?」
「ないでーす」
「私も大丈夫です」
「ぼくもだね」
わたし、アリサ、ルナール君の状態をお母様が聞きながらシズクさんが一応チェックしてくれたけど、問題無しですね。
「それじゃぁ行きましょうか」
「くっくっく、驚くじゃろうなぁ」
「ちょっと母さん、最初からそういう態度をしたら、ユキちゃん達が不安になっちゃうでしょ」
「おっとすまぬ」
え、えーっと?
お祖母様の発言もそうだけど、お母様のその発言もだいぶ追い打ちになるんですけど。
まぁ危険地域に行くじゃないんだろうけど、ちょっと驚くような場所って事かしら?
そんな事を考えながら、お母様たちの後に続いてトコトコと。
部屋を出ると、白っぽい壁に白っぽい床、コンクリートかしら? それで出来た建物の廊下で、他にも扉がいっぱいある場所になったわ。
う~む、このコンクリートっぽい物質がどういう素材なのか気になるし、他の扉の先がどうなってるのかも気になるなぁ。扉の先は他の人の転移門の起動場所とかだとは思うけど、わたし達が居た場所と同じなのかなどなど。
「興味出てきちゃってるわねぇ」
「それはもうでちゃいます!」
「あらあら。だけど、今はダメよ? まずは受付とかがあるからね」
「は~い」
今はダメって事は後なら良いんですね!
もう研究者魂みたいなのがどんどん出ちゃうので、分析するのが楽しみになっちゃってるわ。
そんな状態のまま廊下を進むと、天井と壁が無い……いや、正確には透明な幕みたいなのが張られてる場所に来たわ。解放感すっごいけど……てぇ!?
「まっしろ! そしてまっくろ!」
「ふふっ、すごく驚いてるわねぇ」
「だ、だってお母様! ここ、なんなんですか!?」
わたしだけでなく、アリサとルナール君も驚いてちょっとポカーンとしちゃってるくらい、ちょっと異常な状態。
だって、壁から見える平原というか地面というか、ぜーんぶ真っ白なんだもん! 山とかもあるにはあるけど、ぜーんぶ真っ白! 建物とかもあるにはあるけど、科学技術のある世界にあるような四角かったり少し球状だったりと、変な形の白い建物ばかり!
そして、そこから見える空が真っ黒! 夜空って感じだけど、なんか、こう、すっごくおっきい感じの真っ黒なんだもん!
「ここはね、わたしたちの住んでいる星の周囲にある月の一つなのよ」
「お月様!?」
「そうよ~」
おいおいまてまてまて、異世界でなく月にきたとか、予想外すぎるんですけど!
「月と言っても、どの月か分からんのじゃよなぁ」
「そうなのよねぇ。もしかしたら月ではなく、他の衛星かもしれないし」
「うへぇ、なんかすっごくSF」
なんていうか、もう、色々とてんこ盛りになってきてるわ。
にしても昔の人、なんで月に生活圏っぽいの作ったんだろ? この場所って月に生活する拠点だろうからそう思えたけど、謎です。
しかも来るための資格というか権利というかを得ないとダメとか、さらにわけわかんない。
う~む、昔の人と話せたらいいんだけど無理だろうし、これは一生謎のままかなぁ。気になってしょうがないけど!
残念ながら「宇宙戦闘盛りだくさん!」とかはないです




