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362話 知らないとこでも技術者魂が!

少し長いです(5000文字くらい)

「準備できました~」


 中庭に到着するなり、待っていたお母様たちに向かって手を振りながらトコトコと。

 うん、少し離れたところからでもわかるくらい綺麗だね、わたしのお母様とお祖母様。二人とも着物で、柄とかはわたしが着ている着物ドレスと同じのだわ。一目で家族だってわかる共通部分、いいですね!

 ふむふむ、シズクさんはいつものメイド服だね。ルナール君は……スーツ? 着物じゃないんかーいって思ったけど、うちの直系じゃないからそうなるのかしら?


「あらぁ、予想していたよりもだいぶ可愛くなったわねぇ」

「がんばりました!」


 お母様も大満足のようでよしよし。

 まぁがんばったと言ったけど、今朝お母様に言われたとおりに着替えて少しお化粧しただけだけど。


「なるほどのぉ。サユリがユキに対して可愛さを重点的に上げようとするの、わかったわい」

「でしょう? 普段も可愛いのだけれど、少しおめかしするだけで何十倍も可愛くなる子だもの。だったらより一層可愛くしたくなるのよね」

「たしかにのぉ」


 お祖母様もうんうんって頷いてるけど、確かにそうなんだよねぇ。

 わたしはお母様のおかげで、もともとの素材もすっごく良いというちょっとズルいよねって存在。そんな状態なら、さらに可愛くしてみたいって思うのは当然なのです。

 そして、それは家族や仲の良い人だけでなくわたし自身もそう考えるようになってるので、結果として家中そういう流れにもなってるわけで。そのうち国家レベルになるんじゃって気もしないではないけれど。


「しかしじゃ、ここまでの可愛さとなると逆に心配じゃのぉ」

「母さんも悪い虫がきそうって思うわよね」

「じゃの。普段からも結構じゃったのに少しのおめかしでこうなると、なおさらじゃわ」


 おっと、今度は結構心配されちゃったよ。でもまぁその辺り、割と自覚あります。

 わたし自身もヤッバイなぁって思う事が結構あるからね。それだけお母様から受け継いだ容姿は完璧という事です!


「その為ってだけではないのだけれど、ユキちゃんが一人で行動しないように注意はしているわ」

「あぁ、幼いころにアリサを専属メイドとして付けたのもその関係じゃな?」

「ん~、アリサちゃんに関してはちょっと違う理由ねぇ」

「なんじゃと!?」


 うん、お祖母様が驚くの少し納得だよ。

 一人で行動しないように専属メイドを早いうちに付けたんですよねって考えちゃうよね。


「アリサちゃんはユキちゃんだけでなく私も気に入ったのもあるけれど、ユキちゃんのお嫁さんとしてもピッタリだったからが理由になるかしら」

「そっちの理由かーい!」

「えぇ、そういう理由よ~。仲が良い子同士は後押ししないとね」

「マジみたいじゃの……。わし、今更ながら娘の性格をぜんぜん把握できておらんかった気がしてきたわい……」

「うふふ」


 あらあらまぁまぁ、お祖母様にとっては結構衝撃的な事実だったみたいね。わたしからすると、お母様ってこういう考えの人だよね~ってなるんだけど。

 お祖母様、もっときてお母様と交流しないとダメですね!





 そんな話をしていたところで、そろそろ時間みたいだね。


「それじゃ起動するわね」


 そう言ってお母様が亜空間を開き、中から金色の鍵を取り出したわ。魔道具かしら?

 その鍵を前方に向けると、5メートルくらい先かな? そこが光り出し、だんだんと門の形になってきたわ。


「お母様、それって?」

「これは今日行く世界に繋がる転移門を作り出す鍵よ」

「ほへー」


 専用の鍵を使わないといけない場所って事かぁ。

 だけど、う~ん?


「なんとなーくですけど、複雑な機能使ってない感じが」

「ふふっ、すぐに気が付いたわね。その通りで、この転移門は普段私達が使う転移門のご先祖様になるのよ」

「とゆーことは、機能が結構しょぼいって事です?」

「そうなるわねぇ。詳しくは行った先で話してあげるわね」

「は~い」


 ここで説明していたら時間だけドンドン経っちゃうからだね。

 それじゃサクッと行ってみましょー。


 お母様たちの後に続き、出来上がった転移門ぐぐっとくぐる。

 ん~、普段の転移門と違って抵抗感が強いかな。安全性はあるようだけど、快適性はイマイチね。

 そんな事を考えながらくぐりぬけると、少し暗い質素な部屋についたわ。

 牢屋とかじゃないようだけど、足元とか見える範囲の壁はコンクリート製っぽい感じ。机とか椅子とかはあるけど窓は無いね。


「ここってなんなんですか?」

「ここはこの先の世界に行く前に、体を環境に慣らすための部屋になるわ」

「気圧とかの調整みたいなの?」

「そうよ~」


 なるほどなるほど。

 たしかにここに到着したらすぐに気付いたけど、大気の成分が若干違うのと重力とかも違う感じだわ。慣らすための準備部屋ってことだから、おそらくだんだんこれが強くなるんだろうね。


「どのくらいかかるんですか?」

「そうねぇ、今日はユキちゃんとアリサちゃん、それにルナール君が居るから1時間くらいかけてになるかしら」

「サユリとシズクは何度か来てるから早々時間かからんのじゃが、ユキたちは初めてじゃからのぉ」

「とゆーことは、お祖母様も何度も来ているんですか?」

「んー、ここへはあまり来ないのじゃが、わしが普段過ごしている世界がここと同じ環境なのじゃよ」


 ほほう? それは初めて聞いたわ。

 お祖母様のいる世界というか空間は結構とんでもないとこって少し聞いたけど、ここみたいな環境なのかぁ。


「とりあえず明るくするわね。シズクはアリサちゃんと一緒に紅茶とお菓子の用意をしてくれるかしら」

「畏まりました」


 そうお母様言って、術式でポンと明るくしてくれ、シズクさんはアリサと一緒にテキパキと机や椅子を綺麗にし、紅茶とお菓子を用意してくれてるけど、あっれ~?


「ねーねーお母様、壁に掛かってる明かり用の魔道具は使わないんですか?」


 明るくしてくれたのではっきり見えるようになって気付いたけど、壁にはランプみたいな形をした魔道具がずらーっと並んでる。

 そして、その魔道具を起動するっぽいスイッチも壁にあるのに、どうして術式でなんだろ?


「あの魔道具は、全部使えないのよ」

「使えないって、壊れてるんですか?」

「壊れちゃってるわねぇ」

「実際に見た方が分かりやすいかもしれぬの」


 そう言いながらお祖母様がルナール君に指示を出し、壁にあるランプ型の魔道具を取り外して持ってきてくれたわ。ルナール君、身長が結構あるから高い所に手が届いて、ちょっとうらやましいです。

 わたしはその魔道具を受け取り、空いてる机に上にポンと置く。さすがにシズクさんとアリサが綺麗にしてくれた机の上にはおけません!


「分解せずともすぐに気付いたじゃろ?」

「はい、まっくろです」


 魔道具に使われている魔石部分が真っ黒に黒ずんでいて、魔石としての機能が一切動作しないような状態になってるわ。


「魔力を流しすぎて焼き切れたみたいに見えるんですけど」

「おー、そういうのも分かるんじゃな。これは魔力で焼き切れたのではなくての、この大気中にある他の力がいろいろ付与された結果、元の魔石が侵食されて朽ちた状態なのじゃよ」

「侵食されて朽ちる?」

「なのじゃよ。魔素や霊素と違い、あまり存在がよろしくない素もあるからのぉ」

「ほへー」


 ランプの魔石をポンッと取り出してまじまじと見るけど、なるほど、確かにいろんなものが付与された後みたいなのがあるわ。

 たぶんよくない素ってのが原因なんだろうけど、お母様とお祖母様が、その素がたっぷり付与された魔石をいじるのを止めないって事は、ここに来るまでの対策とかで十分緩和できるって事なんだろうね。





 お母様たちは紅茶とお菓子で時間経過待ちの休憩状態になったけど、わたしはついつい気になったのでそのままランプを分解。

 ふむふむ、特別珍しい魔道具ではないみたいね。

 ん? 普通の魔道具って、あれ?


「でもでも、それならこの魔道具でなくここの空気とかに合った魔道具にしないんですか?」

「それは難しいわねぇ」

「難しいのぉ」

「二人そろって完全否定!?」


 冗談とかでなくマジでそうっぽいなぁ。


「魔素だけを取り入れようとしても他の力まで勝手に付与されちゃうのよ」

「それって、魔素以外の吸収を止めるとか除去とかってできない状態って事ですか?」

「できないそうよ。なら魔素以外の力も魔力に変換する機構を入れたら大丈夫かと思うでしょ?」

「おもいます!」

「でもね、その変換だと効率が悪いだけでなく、魔力への変換ができない力まであったそうなのよ」

「うげぇ、それは厄介」


 魔力に変換しにくい力で典型的なのは呪素とかだなぁ。魔素を使って呪いの力にするとかはできるくせに、厄介な力です。


「その関係で、わしが居る空間でも魔道具による効率化とかができないんじゃよなぁ」

「そうなのよねぇ。魔道具での自動化ができれば、母さんもあの世界に普段はいなくて済むのにね」

「じゃなぁ。ほんと厄介な空間じゃよ」


 ふ~む、どうやら結構深刻みたいな問題に思えてきたわ。


「そもそもじゃが。魔素と霊素の両使用すら無理じゃしなぁ」

「そうねぇ、今までは無理だったわねぇ」


 ……ん? それってつまり、そういう事?

 しぶしぶって顔をしているお祖母様と違い、お母様はニコニコしてるけど、そういうこと?


 魔素と霊素の両使用、それはついこないだイーコとネーコを作る際に、わたしが実用化しちゃった技術だわね。

 とゆーことはだよ、魔素と霊素以外にもある力のぜーんぶ使えるようにしたら、色々と解決しちゃうてことだよね?

 そして、この場にはその力が漂う大気があるだけでなく、付着して固形化した魔石が手元にある。

 となると~


「な、なんじゃ? サユリよ、ユキが魔道具を開いてワチャワチャしだしたが」

「ふふっ、母さんは初めて見るかもしれないわね。あれはユキちゃんの受け継いだ力の一つよ」

「どういうことじゃ?」

「それはね、昔言ったと思うけれど、ユキちゃんは私の良い所も悪いところもすべて受け継いでいるの」

「言っておったのぉ。すっごく自慢げだったの」

「それはねぇ、リョウ君に引き継げなかった部分まで引き継いでくれたから、どうしても気が高ぶってしまうわ」


 なにやらお母様とお祖母様が話しているけど、うん、今はこっちが大事です。こういう分解とか実験とか開発とか、大好きです!


「それでだけど、受け継いだのはわたしだけでなく、タツミさんの分もそうなのよ」

「あーそういうわけじゃな。確かにタツミ坊は技術者な面が強いからの」

「そういう事なのよ。でも私の分と同じで良い部分も受け継いでいるのだけれど、悪いところも受け継いじゃっているのよ。悪い部分で分かりやすいのは、時と場を考えずに熱中しちゃうとか、自重がおろそかになるところかしらねぇ」

「まさに今がそういうわけじゃな」

「そういうことよ~」


 うん、今のはバッチリ聞こえましたよ?

 でもほら、ただ待っているだけなのも勿体ないですし? 時間もありますし? 道具はいつも持ち歩いてますし?

 なので全力全開よー





「とゆーわけで、できました!」

「ま、マジか……」

「ふふっ、できちゃったわねぇ」


 がんばること5分くらい、この空間というか世界に対応した魔道具型ランプの完成です!

 うん、お祖母様はちょっと唖然って顔してるけど、お母様はニコニコして当然よねって感じです。よくわかってますね~。

 まぁアリサとシズクさんが「本当にうちのお嬢様は……」って小声で言いながら少し呆れてるけど、気にしないでおこう。

 そしてルナール君がポカーンとしてるけど、まぁ、うん、これがわたしですから!


「材料の関係で今はこのランプだけですけど、動作もバッチリだし変換もバッチリ、搭載した簡易電池への貯蓄や過剰分の排出、それと他のランプへの配布もできる状態に……て、お祖母様?」

「あーすまぬ、正直ちょっと驚き過ぎてなんとも言えんのじゃ」

「えー?」

「えーと言うがの、ユキよ、おぬしはとんでもないものを発明したんじゃぞ?」


 お祖母様がビシッて感じに見ながら指摘してきたけど、う~ん、ちょっと違うんだよなぁ。


「んっと、これって既存技術の改良型なので、わたしの発明でなく改良品の誕生なんですよ」

「なんじゃと!?」

「むかーしの人とかが作った理論とかを混ぜ混ぜして、それを最適化した結果、って感じなんです。なので結構粗があると思うので、あとでママ様に精査してもらう必要はある状態なんです」

「と言っておるが、そうなのかの?」

「えぇユキちゃんの言っていることは事実よ。私もカタリナちゃんに説明してもらって少し驚いたけど」

「じゃろうなぁ……。わしらも相当デキル方じゃが、ユキはさらに上の天才かもしれんのぉ」


 なんかトンデモナイこと言ってるけど、そんな事ないですよ?

 わたしとしては、他の誰かが既にやってるんじゃないかなぁって思った事なわけだし。でも現実はそうでもないのがちょっと不思議です。


「お嬢様、そろそろ自覚してくださいね?」

「自覚って~?」

「お嬢様は頭も相当良いって事です」

「うん、確かに良い方だよね」

「なので」

「なので?」

「たまには自重もしてくださいね?」

「あー……うん、善処します」


 アリサがここでドスッと釘を刺してきたけど、まぁ、うん、わかってます。

 自重置いてけぼりの実験でいつも巻き込んでるからねぇ。ちょーっとだけ反省。

 まぁ、いつも自重忘れてやっちゃうんだけどね!


「お嬢様?」

「あ。はい、善処します」


 もぅ、心読まないでよ~。

自重しようとしてもいっつも自重を忘れる狐娘

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