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360話 お祖母様だって気になるんですね

「さぁサユリよ、すべて話してもらおうか!」

「あらあら」


 と、お祖母様が腕を組んでお母様を問いただす形になっちゃったわ。


 模擬戦はルナール君を天井にぶつけたところで終了となった。どちらが上か徹底的に戦うとかでは無かったので割と納得だけど、ちょっと変な終わり方になっちゃったなとも思っちゃうわけで。

 そして終了するやいなや、お祖母様が手招きしたのでトコトコと。魔晶精霊衣を解除しようかな? って思ってたら、解除しなくて良いって言われた。

 どういう事だろ? とも思ってたら、こんな形になっちゃったわけで……。

 いったいどうしてこうなった? お母様はニコニコしてて、お祖母様はジトーって感じに睨んでる程度なので、険悪って雰囲気は無いから安心はできるけど。


「母さんが気にしてるのってユキちゃんの力の事よね?」

「へ? わたしのですか?」

「えぇそうよ~」


 あっさり肯定されちゃったけど、わたしの力ってはてさて。魔晶精霊衣を顕現すると尻尾が9本になる事とかかなぁ。


「まずはそうね、母さんとしてはユキちゃんの実力、もっと低いと思っていたのよね?」

「その通りじゃ。ユキが強いのはわしも嬉しいのじゃが、今のルナールに圧勝というのはどうにも納得できんのじゃ!」

「そういえばメイちゃんの6割と互角になったと言っていたわね。それで、ルナール君は実際どう思ったのかしら?」

「そうですね……」


 模擬戦後、ルナール君は気を失っておらずサクッと着地し、少し乱れていた服装とかを直してから合流したけど、それなりにダメージはあったみたいなんだよねぇ。少し回復の術式使ってるもの。

 そんなルナール君だけど、じーっとわたしを見て……うん? 苦笑いしたわ。


「正直言って、メイ君よりも圧倒的に強かった、としか思えないです」

「な、なんじゃと!?」

「あらあら、それはちょっと予想外ねぇ」


 お祖母様はすごく驚いた顔したのに対し、お母様は満面の笑みって感じで対照的だわ。

 てかまって? メイよりも圧倒的に強かったって?


「ねーねー、お母様。わたしがメイよりも強いとか、無いと思うんですけど」

「あら、そんなことは無いわよ?」

「そうなんですか?」

「確かに普段はメイちゃんの方が強いのだけれど、それはメイちゃんが既に九尾になっているから。対するユキちゃんは五尾だから、その差はどうしても出ちゃっているのよ」

「あーそれは確かに」


 わたしたち狐族は尻尾の数でだいーぶ力が変わるからね。しかもメイはわたしと同じ一族なわけだから、メイの方が圧倒的に成長してるよねって状態なわけでして。


「だけど、魔晶精霊衣を顕現した状態なら少し違うのよ」

「それって、わたしの尻尾が一時的に9本になってるからですか?」

「そのとおりよ~。仮とはいえ九尾のなった状態なのだから、体に関してはメイちゃんとほぼ同程度に強化されているの。となると違いは保有する魔力と精霊力になるのだけれど、この二つはユキちゃんの方が高いのよ」

「ほへー」


 ちょっと意外な答えを聞いちゃいましたよ。

 魔晶精霊衣の状態でもメイの方が上だよなぁって思ってたのに、そうでもないとはね。

 あれ? そーいえば魔晶精霊衣を顕現したとき、メイがちょっと驚いてもいたっけ。もしかして、自分の力との差が見えちゃったからとかかしら?


「いやいやまてまてまつのじゃ!」

「あら母さん、少し驚きすぎじゃない?」

「驚くわい! そもそもユキの魔力と精霊力がそこまで高いとか、聞いておらんかったぞ!」

「ふふっ、確かにそうねぇ」

「ぬっ、ぬぬっ、サユリ、まさかあえて黙っておったのじゃな?」

「どうかしらね~」

「ぬがー! 本当に隠しておったのじゃなぁぁぁぁぁ!!!」


 お祖母様がぷんすこって感じだけど、お母様イタズラ成功みたいな顔しちゃってますよ?

 多分これ、わたしが起きてる時に来ないのを少し恨むというか気にしていて、そのためあえて黙っていたとかそういうのなんだろうなぁ。





 いったん中断し、お母様がお祖母様を少しなだめた後に話を再開っと。


「でじゃ、ユキの魔力と精霊力なんじゃが」

「それねぇ。以前言ったけれど、ユキちゃんが魔石の修復に頑張った結果、魔力と精霊力の強化に繋がっているだけなのよ」

「しかしじゃ、強化と言っても短期間でそこまで上がらない物じゃろ? メイと同等になるとか、もう100年くらいはかかると思っていたわけじゃし」


 お祖母様が「ふっしぎー」って顔しながら話してるけど、確かにそうなんだよなぁ。

 わたし、前世の力関係とかを封印しすぎちゃっていたようで、どうにも体の成長とか魔力と精霊力の上昇が遅くなってるって小さい頃説明してもらってた。

 遅くても特に問題も無かったのでそこまで気にしていなかったけど、メイと会った時わたしとの差にちょっと驚いたのは確かだね。


「確かにそうだったのだけれど、ユキちゃんの頑張りはそういった予想を覆しちゃったわけなのよ」

「いやいや、頑張るだけで出来るとか」

「でも、できちゃったのよね~」

「はいっ、たぶんできちゃいました!」


 片手をばーんと挙げて肯定しちゃう。

 でもまぁできちゃった理由、ちょっとわかっちゃってたりするけど。

 たぶんなぁ、魔石をアリサにあげた事での弱体化があったわけだけど、弱体化なんてありませんでしたよってなるように訓練とかをすこーしがんばっちゃったからね。アリサが負い目を持たないように、みたいな気持ちもあったし。

 当然お母様もそのことは察しているけど、あえて口には出さないね。アリサのせいとかって変な方向にちょっとでもなるのは嫌だもんね。


「なんというか、想像を超えすぎじゃろぅ」

「でしょ~? だから言ったじゃない、ユキちゃんは可愛くて、面白い成長をしているって」

「なんとなく納得じゃが、しっかしのぉ」

「もう、母さんは深く考え過ぎよ」


 う~ん、お祖母様が細かいところを気にしているようだけど、お母様は完全に流そうとしていますね?

 これはやっぱあれかなぁ、魔晶精霊衣を使ったら尻尾が9本になるとか、ふつーにありえないとか条件が他にもあるんじゃとか、そういうのなんだろうね。


「魔晶精霊衣を顕現した場合、ユキちゃんが魔石の修復に使っていた魔力と精霊力も最大限に活かした状態になるのだから、それを受ける器、つまり体の強化も必要なわけ。そこを考慮した改良型の魔晶精霊衣をユキちゃんに覚えてもらっただけよ」

「……なぬ? サユリよ、おぬし、魔晶精霊衣を改良したじゃと!?」

「えぇ、最大限に改良したわよ。万が一権限に失敗しても安全で、魔力と精霊力が足りなくて消失してもユキちゃんへのダメージが一切無いよう、徹底的に改善したわ!」

「……はい?」

「そもそもユキちゃんが危険になるような術式、私が覚えさせるわけないでしょ?」

「そういえばサユリはそうじゃったな……」


 おやおや、お母様はドヤァって感じだけど、お祖母様は結構呆れた顔しちゃってるわ。

 でもねぇ、お母様のそういう気遣い、わたしからすると日常の事なので! 安心安全でだいーぶ優しく、そしてゆるーい感じに甘やかしてもらってるのがわたしです!


「なんかもう、色々とてんこ盛りで、ちょっと疲れるんじゃよ……」

「あらあら、それは残念ね」

「残念って……サユリ、狙っておったの?」

「ふふっ、どうかしらね?」


 うん、お母様、完全に小悪魔っぽいです。ちょっとエロい感じもしちゃってるけど。





 そんなお母様とお祖母様が会話している中、わたしはというと


「お嬢様、そこでくるっと回ってください」

「は~い」


 シズクさんに指示されたので、くるっと可愛く回る。うん、この仕草もなかなか慣れたものです。


「良いですね。アリサ、しっかり撮れましたか?」

「バッチリです! お嬢様の可愛さを余すことなく撮影できています」


 と、アリサが動画と写真の撮影をしているわけで。

 うん、こっちはこっちで完全に撮影会になってますね。魔晶精霊衣を解除しないでって理由、もしかしてこのため?


「シズク様、もう残量0です」

「思っていた以上に消費が激しいですね。これは在庫全て持ち出した方が良いかもしれませんね」

「いやいやシズクさん、それにアリサもおちつこーね? 撮影ペース落とせばいいだけでしょ?」

「「それはできません!」」

「お、おぅ……」


 二人が思いっきり真顔で宣言しちゃったよ。

 でもさぁ、ほんの数分で撮影用魔道具の残量が無くなるとか、撮影しすぎだと思うんだけど? しかも今使ってる魔道具、撮影残量をめっちゃ上げた特殊な物で、値段も結構お高い物なのに……。

 う~む、九尾化状態のわたしって、そこまで可愛いのかしら?

 だとすると……諦めるしかないのかねぇ。


「です。諦めてくださいね?」

「ちょ!?」


 アリサさん、さらっと心読まないで?

 そんなこんなしてたら、お母様とお祖母様、それにルナール君の会話が終わったようで……あー、そうですか、撮影に加わるんですか。

 これ、あとどのくらい撮影するのかしら……。


「1時間は覚悟してくださいね?」

「ちょっとぉ!?」


 さらっと読まないでっていうか、あと1時間も撮るとか、どんだけ撮るんですか!?

撮影会の方が重要になっている一家

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