357話 お祖父さまはハーレム願望持ち?
少し長いです
シズクさんが迎えに行ってる間、せっかくなのでさらにいろいろ聞いたけど、ナントモカントモ。
まず、予想はしていたけどお祖父様はすでに亡くなってるようで、会うことはできないと。ただ予想していたとはいえ、わたし自身お祖父樣に会いたかったとかそういう気持ちが出ないので、そっちの方に少し驚いちゃったけど。
もしかしたらこれも、お母様の要素をガッツリ受け継いでるからなのなぁ。お母様、お祖父樣のことは嫌ってはいなかったようだけど、お祖母様に対する親愛とかそういうのがお祖父様に向けてはだいぶ薄めだもの。
「嫌いでは無かったのだけれど、歳の差が有りすぎてどうもねぇ」
「歳の差が気になるって、それって外見がヨボヨボだったとかですか?」
「ヨボヨボでは無かったのだけれど、私が幼い頃からだいぶ老いていたのは確かねぇ」
そう、そして次に分かったのが、お祖父樣は結構老化していたって事。まぁわたしのお祖父様なので当たり前なのだけれど、お母様が子供の頃から老いていたってのがね。
わたしたち家族だけでなく親しい人ってほぼ全員不老不死なので、見た目が若いまま良い感じに歳を重ねてる人だらけだからちょっと意外です。
「不老不死じゃなかったからのぉ。知っての通り、わしらのような存在は妊娠期間が普通の者とは違い数百年から数千年単位じゃから、サユリが生まれるまでにも結構老いてしまってたのじゃよ」
お祖母様の言葉にお母様も頷いてるけど、そういえばそういうのもあったね。
これは不老不死な人がポンポン生まれないように世界が調整でもしているのか、妊娠の確率が低いだけでなく産まれるまでの期間まで異常に長いようで。
他にもいくつか不老不死限定でなく狐族であるわたしたち特有なのもあるけれど、お祖母様が老いたお祖父さまに萌えたとかそういうのではないのはそれでハッキリわかりました!
「老いてたって事は、寿命も普通だったんですか?」
「いんやぁ、普通よりかは長かったの。廊下が少し遅めで長寿だったと言っても良いかの」
「私たちみたいな不老不死とは違ってただの長寿だから、最後は老衰でになってるわ」
「ほへぇ」
わたし達の家系で老衰とか絶対にありえないような単語なので、ちょっと驚いちゃうわ。
とゆーか
「お祖母様が狐族のアレで不老不死にしてあげるとかしなかったんですか?」
「それがのぉ、わしが不老不死にする前にあのバカは別の嫁と契約をしておっての」
「契約っていうと?」
「普通の人よりも老いが遅くなり、長寿になるってものじゃ。そして厄介なことに、その契約のせいでわしが何かをするのは無理だったわけじゃ」
「狐族のアレができない契約ってなると」
「うむ、察しておる通りその嫁も狐族での、そ奴がやってしまったわけじゃ。まったく、わし程では無いがもっと長寿な狐族な嫁もおったのに、最初の妻だからとほざいておったあのバカ女が契約しおって」
そして3番目のがこれで、どうやらお祖父様のお嫁さんは全員狐族だったようで。わたしのお祖父様は狐娘のハーレムがご希望だったと。結構大勢お嫁さんもいたようで、ほんと頑張って構築してたわけだねぇ。
「まぁそんな嫁同士じゃったが、わしよりも強い者も可愛い者もおらんかったがの」
「おぉー」
「確か不老不死の人も居なかったわよね?」
「居なかったのぉ。一番長く生きていた奴でも、こっちの時間で言うと1000年か2000年くらい前に亡くなっておるのじゃ」
「ずいぶんと長生きだったのは確かだけどね。もっとも、相当老いが進んでいたようだけど」
「そりゃそうじゃろなぁ。わしと違い、あ奴らには不老は無かったからの」
かっかっかと笑いながらお祖母様がそんなこと言っちゃってるけど、たしかにそうだよね。わたし達の周りには多いだけで、普通は不老不死な人は少ないんだもの。
少ないからこそ、余計に狙われるって状態もあるんだけど、それはそれです。
そんな話をしていたら、どうやら来たみたいね。
「サユリ様、お連れしました」
「ありがとうシズク」
シズクさんが会釈した後、一人を通してきたけど……ほほう。
「久しぶりですね、サユリ叔母さん」
「久しぶりねルナール君」
そう挨拶しながら入ってきた男性、わたしたちよりも少しツンとした狐耳と、ぱっと見でもわかる10本の尻尾を持った狐族さんですね。
体系はお兄様と同じくらいかしら。180センチくらいはありそうなので結構大きい印象です。
髪はツンツンした部分がいくつかあるけど短め、色は金色ですね。ただ、わたし達の金色とは違い少し白っぽい、プラチナブロンドって感じかしら?
顔はイケメンよりだけど、お兄様ほどじゃないなぁ。とゆーか、お兄様の方が断然上です!
能力に関してはまだ分からないけど、少し探った感じソコソコの強さは持ってるね。おそらく魔衣や精霊衣の状態のわたしと互角くらいかなぁ。
あとは服装が軽鎧みたいな感じの少し装飾類が少ない鎧を着てるね。着物じゃないあたりに、やっぱりわたし達とは違うねぇ。
「ユキちゃん、挨拶する前から魔力を用いた分析までするのは駄目よ?」
「は~い。えーっと、はじめまして?」
「初めましてだね。ぼくはルナール、遠い親戚みたいなものだよ」
そう明るい感じで挨拶を返してくれたけど、ふむ、嫌な感じはしませんね。お母様に指摘されたとおり敵に対する分析みたいなこともしちゃってたのに、なかなか大人ですねぇ。
あと、お母様の説明でなんとなくダメな人印象を持っちゃってた気がするけど、そういう感じもないわ。
「軽く説明しておくかの。このルナールじゃが、今はわしのもとで修業しておるんじゃ」
「お祖母様が直接なんですか?」
「うむ。こやつはわしらとは違う狐族なのじゃが、見ての通り尻尾が10本ある逸材での。今の家族や親戚だけじゃ訓練どころかこの先どうしたらいいのかも分からなかったようで、そこを助けてやってるのじゃ」
「結構長い間お世話になってるけどね。ぼくの幼少期からだから、もう1000年近いかな」
「1000年って、わたしよりもだいぶ年上って事ですかぁ」
改めてルナール君をじーっと見るけど……うん、ぱっと見は20代前半くらいの若さだわ、
とゆーことは?
「不老不死でもあるんですか?」
「その通り、あるんじゃよ。あの娘の一族なのに、ずいぶんと変わった存在でなかなか楽しい奴なんじゃ」
「あの娘って言うと、お祖父様の他のお嫁さんのことです?」
「うむ。何番目かは忘れたが、まぁ簡単に言ってしまうと見かけはまぁまぁなだけの平凡な狐族じゃったわ。特殊な力も無かったゆえ、その子孫も微妙ばかりじゃったんだが、このルナールだけはすごくての~」
お祖母様がニコニコしてそんなこと言ってるわ。どうやら相当気に入ってるみたい、想定外の力を持っていたからの興味からかしら?
対するお母様はそういうのは無く、遠い親戚が来ました程度の軽い感じだね。
簡単な自己紹介の後、ルナール君も席に着いたけど……ちょっとアリサさん? すっごく警戒してませんか?
「いえ、そんなことは無いですよ」
「うっそだぁ」
だってアリサ、飲み物とかの配膳をする際に、こう、ジトーって感じに睨んでたもの。
「アリサちゃんは警戒し過ぎねぇ。ユキちゃんが普段、警戒心がそこまで高くない影響なんだろうけど」
「えー? わたし、それなりに警戒心もってますよ?」
「どうかしらねぇ」
ニコニコしてるお母様に指摘されたけど、ちゃんとしてると思うけどなぁ。さっきだってルナール君を分析しちゃったくらいだし?
「それは警戒でなく好奇心や興味本位だと思いますよ」
「うっ、そう言われると確かに」
「その辺りのせいねぇ」
むぅ、アリサにバッサリ指摘されるだけでなく、お母様も「しょうがない子ねぇ」って感じの顔してるわ。まいっちゃうねぇ。
とゆーか、ここまで全部考えが読まれてるとか、そっちもまいっちゃうわぁ。わたしのプライバシーさんどこ行ったんですかね?
それはさておき、アリサが警戒するのっておそらくだけど、わたしが好意を持っちゃったりなんかしたりして、旦那様になってもらおうとしたら嫌だなぁとかそういうのからだろうね。
たしかに親戚枠なので敵対心とかは無いけれど、そういった好意は出てないし出る予定も無いんだけどねぇ。親戚枠だからガードが緩くなっちゃうとかそう思ってるのかしら? 心配性だねぇ。
「くっくっく、なかなか面白くなってるのぉ」
「お祖母様、完全にからかってません?」
「どうかの~。まぁそれでじゃ、ルナールよ、偵察の結果を聞きたいんじゃが」
おっと? なんか急に真面目っぽい話になるみたいね。
ただ、そういわれたルナール君、結構苦笑いしちゃってるんだけど。
「それが申し訳ないのだけれど、ほとんど仕入れることはできなかったよ」
「なんじゃと!?」
「やっぱりそうなるわよねぇ」
あらまぁ、クワって感じに驚いたお祖母様と違い、少し呆れながらも想定通りでしたって感じのお母様、二人の反応が違ってますね。
「だから言ったでしょ、ルナール君にはそういうのは向いていないって」
「じゃ、じゃがな、しっかり教育してあるんじゃぞ?」
「教育しても向き不向きだってあるんだから、できない事はできないわよ」
「むぐぐぐ、わしの天才的教育が効果を成さないなど」
「母さんが天才でも無理な時は無理なもの、そろそろ自覚してちょうだいよ」
おやおや、悔しがるお祖母様に対し、お母様はほんとーに呆れた感じの対応で、ナカナカですね。まぁそれだけお祖母様、教育関係にも自信あったんだろうねぇ。
ただ、お母様との場数の差はあるみたいね。
お母様はうちのメイドさん執事さんだけでなく、他国の偉い人相手でも教育とかしちゃってるから、向き不向きで出来る出来ない、ここまでは誰でもいけるがこれ以上はいけないなど、結構そういうのがしっかりしてるもの。
「何でもかんでもできる子はほとんどいないのよ」
「じゃがなぁ」
「ほんと、母さんの基準は私達だからねぇ」
「そうなんじゃが、でものぉ」
「やれやれねぇ。そうそう、ちなみにだけれどユキちゃんならすぐに覚えて、即使える状態になってくれるわよ」
「おーおーそれは流石じゃな!」
「それにユキちゃんだけでなく、ここにいるシズクやアリサちゃんもできるわよ~」
「なんじゃとぉ!?」
ちょ、お祖母様がすっごい驚いてるんですけど! てか、ルナール君も今の発言にはびっくりって感じなんですけど!
「サユリよ、おぬしの集めた者たち、とんでもなくないかの?」
「そうかしら? 私は私が気に入った子たちを集めているだけよ。それに、アリサちゃんは私でなく、ユキちゃんが気に入ってお嫁さんにした子だからね」
「まじか!? こりゃぁあれじゃな、わしの娘と孫娘が相当優秀になってるって事じゃのぉ。良きかな良きかな」
満面の笑みになってるけど、その、先にルナール君をどうにかした方が良いんじゃないですかね?
アリサとシズクさんもわたし達と似た様に何でもできる人になってるの、相当衝撃だったみたいですよ? 驚いたままでポカーンとしたままになってますよ~。
血筋の差はかなり大きい世界




