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353話 興味が無い分野だと少し厄介なのです

少し長いです

 引き続き金貨を鑑定とかしているけど、どうしようかなぁ。

 同じ年代の金貨に関する基準価格なんて当然無い。一番古くても1000年くらい前の金貨が昔あったくらいで、その時は収集家がすごい額で買ったとかだったわけで。

 となると、この金貨もおそらく同じような流れになり、価格もそれ相応になるんだろうけど、1億年前だからなぁ……。しかもとんでもなく状態の良い金貨なわけだし。


 そんな鑑定しながらも「う~ん、う~ん」と考えていたわたしを見てか、男どもが小声で何かしゃべってるわね。

 ちょっと気になるので、すこーし耳を傾けちゃいますか。ん~っと?


『――つまり、特別な道具では無いのか?』

『高度な機能を持っているようですが、特別な物ではないようです』

『なるほどな。しかし道具に頼らなければならないという事は』

『勇者ではない、という事ですね。想定外でもありますが』

『噂に聞く金狐の娘であるならば勇者であると推測していたが、それが違うという事になるからな』

『ですが、これは喜ぶべき事実ですね。勇者でないという事は、こちらの提案に乗る可能性もあるという事ですから』


 ふぁい!?

 思わず声に出しそうになったけど、勇者って何よ勇者って!? いつからわたし、勇者に思われてたのよ!?

 しっかし今の会話ですこーし判断できたけど、どうやら勇者じゃない人物との交流というか協定というか、そういうのを狙ってるみたいね。

 と言っても勇者じゃない人なんてこの世界じゃほとんどの人がそうなわけだから、本格的な交渉とか勧誘をする人は絞るとかしそうな気はするけど。


 まぁいいや、とりあえず鑑定とかは終わったので次に進みましょう。


「えっと、両替の方なんですけど、二つあります」

「ほぅ?」


 うん、二つってどういう事なのって顔してますねぇ、女の子だけでなく店員さんや男たちも。

 だけどアリサはちゃんとわかってるようで、次に必要な契約書とかの準備をしてくれてるわ。さすがです。


「まずこの金貨ですけど通常の両替は無理なので、わたしが買い取っての換金になります。だけど、すっごい古いのに状態が良すぎる金貨の取り扱いは過去一度もないので、基準となる相場も参考となる価格もありません」

「ほぅほぅ」

「なので、市場に出た金貨の中で一番古かった金貨についた換金額の2割増しで買い取りとなります」


 そう言いながら、魔道具をちょいちょいっと操作して過去の価格と2割増した価格の画面をポンっと表示する。こういう場合はちゃんと提示するのです。


「結構な額になるんじゃなぁ」

「金貨などの硬貨は何年経っても価値は変わらず不変なんですけど、一部欲しがる人が居るのでその分上乗せした価格になってます。出品が少ないものほど高くもなってます」


 画面を更にちょいちょいと操作して、過去換金された金貨や銀貨の相場をずらずらっと表示。もっとも、状態保存の関係から増えるでなく逆に下がる場合もあるので、その価格もずらーっと表示。

 さすがに劣化が激しい硬貨を欲しがる人も少ないのもあるし、本来無償で同等交換なる両替でも手数料が入っちゃうので、劣化の状態はかなーり重要。状態保存の関係から、無償交換できるのは直近100年くらいだったかしら?


「ただ、今回はもう一つの方をとった方が良いというか、お勧めです」

「ふむ? それは両替じゃないのかの?」

「両替じゃなく、オークションになります。とゆーのも、こういった古い金貨って一部のマニアさんは欲しがって、値段を吊り上げちゃうからなんです。マニアさん以外からすると、金貨は何年経っても同価格の金貨って扱いなんだけど」


 過去の硬貨をずらーっとコレクションする人とか、古い物が好きで好きでしょうがないって人とか、いろいろいる。美術館の人も欲しがるかな。

 逆に資料館とかの人は欲しがらない。

 それは現物をすでに持っていることが多いのと、資料だけあれば当時の素材と技術そのままで再生産できるっていう物ばかりだから。

 特に世界に出回っている硬貨に関しては再生産が簡単なのもあって、現物でなく当時と同じ技術と素材を使った精巧な模造品を作り、それを資料としているとこがほとんどなわけで。

 そういうのもあってか、マニアさん以外は欲しがらないって品の一つになってるんだよねぇ。


「オークションの場合、さっきの提示額が開始価格になるんじゃないかなって」

「それはまたトンデモない額になるそうじゃの」

「うん。ただオークションの場合、最高額がどのくらいになるのかは全く不明なのと、入札自体無い可能性もあります。それに次の開始日が一〇日ほど後なので、そこまでは待つことになります。さらに付け加えになっちゃうけど、両替とは別の手数料も発生します」

「時間も経費も、そして確実性も無いって事じゃな」

「ちなみにですけど、オークションをわたしに依頼する場合、最初に一時金みたいな形で金貨1枚をお渡しします。そしてオークションの結果が出たら、後日そこから手数料を引いた全額をお渡しするって形になります」


 これはオークション出品でよくある代理出品の方法。結構ガチガチな契約書も必要になるけど、これが一番な気はするんだよねぇ。

 まぁわたしが昔の金貨とかに興味があれば、今すぐドカンとオークションでつくであろう最高額をさくっと支払い買い取るような形に出来るんだけど、興味がぜーんぜんないからなぁ。

 そのせいか、最高額がいくらになるのかぜーんぜんわかんないわ。


「とゆーわけなので、どっちか選んでもらうんですけど」

「いろいろあるがオークションの方が高くなるのでお勧めなわけじゃな」

「そゆことです。まぁ悩む時間はそれなりにあ」

「それじゃぁオークションで頼むわの」

「即決!?」

「うむ。こういうのは即断即決じゃよ」


 くっくっくと笑ってるけど、いやいやそんなすぐに決めちゃえるものなの?

 そりゃぁオークションの方が高くなるだろうけど、安全な方を選ぶなら両替の方が良いかもって少しは悩むと思ったんだけど。

 まぁそんなこと思っているけど、わたしもサクッと即決しちゃいそうだなぁとも思っちゃったわ。





 対応について決まったので、アリサが用意してくれた特殊な契約書に内容をいろいろ書き書き。不正とかになった際の罰則とかも書き書きっと。

 罰則はかなーりキツイのにしておく。もしも契約内容に背いてオークションの手続きをしないとか、売上金の支払いとかを渋ったり騙し取ったりした場合、重罰確定で投獄もされてしまい長期間の労働とかになっちゃうかなーり厳しい契約。しかも、わたしでも回避不可能な契約です。

 その辺りも口頭で説明していたら


「なるほど、この国では全て道具を活用するのですね」


 と、見学というか偵察というか、そんな事をしていた男が話してきたけど、どうやらこの男の国だと違うって事みたいね。

 今はどこの国も大体同じで魔道具とかの活用が主なんだけど、能力を主に使うって国なのかな?

 ちょっと気になるけど、会話を続けていたら交流しやすい存在だって思われる可能性も高いので、それを避けるためにも軽く流しておきましょー。


「そうですけど。他の人も大体同じで道具を使いますよ」

「道具が必須とは、苦労される方も多いという事ですかね」

「苦労するほどじゃないような?」

「道具に頼らずとも成せる力があれば、そう考える方も多いですし」

「そうかなぁ?」

「貴女もそう思っていらっしゃる様子」

「いえまったく……」


 だんだんと話が合わなくなってきたわ。まぁ最初から合わなそうな気はしたけど。


「そこでです、我々は今回このような催しを行うのです」


 そう言ってわたしだけでなくアリサに女の子、店員さんにも冊子を渡してきたけど、その表紙がちょっとドン引きです。

 だって「勇者の力を手に入れよう会」みたいなのがドーンと書かれてるんだもん。どうやって手に入れるっていう技術関係は気になるけど、わたしは勇者が嫌いだからかドン引きしちゃうわ。

 しかも手渡してきたら、そこから何をやるのか、どういう利点があるとかをズラズラーっと語りだしたけど……うん、どうもで良いわ。技術関係の説明はしないみたいなので、ぜーんぜんです。


「では我々はこれで。お待ちしていますよ」

「はぁ、そーですか」


 目的を達成したのか、手を振りながら男どもは去っていったわ。

 やれやれ、語っていた内容に対してどんどん不快感が出てきちゃったからか、もうさっさと去れって感じがでちゃいそうだったわ。

 どうしても嫌いな者に対しては嫌いってのが出ちゃう性格してるからだろうけど、わたしもナカナカな問題児です。


 それはさておき、オークションの出品に関する契約とかもすんだのでこっちも去りますか。

 次会うのはオークションの落札額を渡すときかしら?


「それじゃわたし達も」

「あーそうじゃ、ちょっといいかの」

「なんでしょ?」


 まだ何かあったかな?

 支払いも大丈夫だし、契約書もバッチリだし、連絡先も大丈夫なはずなんだけど。


「少し街案内してもらいたいのじゃ」

「案内を? わたしに?」

「うむ」


 一切の迷いがなく頷いてるけど、う~ん……。


「ねぇアリサ、どうする?」

「そうですねぇ……」


 アリサも少し難しい顔しちゃったけど、そうなっちゃうのもしょうがないんだよね。

 わたしの場合、立場とかもあって見ず知らずの第三者からのお仕事は、基本的に冒険者への指名依頼という形でしか請けない。

 これは、誰も彼もがわたしに依頼できるって状態になっちゃったら、それを仕事にしている人たちから仕事とか権利とか、いろいろ奪うって形に陥るから。わたしに近づきたいってよからぬ考えの奴らを排除する目的もあるけど。

 ただ、身内とか仲の良い人からの依頼と、わたしから提案する場合ならば問題にはならない。それと、他に請ける人が居ない状態も大丈夫。


 で、今はどういう状況かって言うと、街には案内所が幾つもあるし、わたしからの提案でもないので、拒否するってのが正しい状態。

 なんだけど……


「あら? 今の状況ですと、大丈夫かもしれません」

「そうなの?」

「えぇ、こちらを見てください」


 ちゃんと断るためにアリサが魔道具で周辺にある案内所の利用状態を調べてくれてたけど、ちょっと予想外の状況だわね。

 表示内容には、現在案内できる人は皆無で順番待ちって状態が映されてる。マジかいな……。


「案内所の順番待ちとか祭りのなどの特別な日以外にはないのですけど、起きちゃってますね」

「起きちゃってるねぇ。それだけ他国の人が多いって事かな?」

「かもしれませんね。とまぁそういう状態ですので、お嬢様の意思次第になりますね」

「なるほどなるほど」


 う~む、これはちょっと予想外の流れです。

 いやまぁ引き受けたくないって気持ちは無いから請ける事にはなるんだけど、な~んかこうなるよう謎な力とかでいろんな要素が動いてるような気がうっすらしてきちゃったのは気のせいかしら?

 ひょっとしてこの女の子、特殊な能力持ちとか? 願ったように世界が動くみたいなちょっとヤバい力を発動しちゃってますとか?


 こりゃぁすこーし警戒した方が良い……のかな?

 でもなぁ、なんかそういうのしなくても良いってわたしのカンも働いちゃってる状態なんだよなぁ。ちょっと謎状態です。

ノジャロリの女の子は良い女の子

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