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352話 お金の鑑定は簡単・・・のはず

 さてと、阻止する前に気になるのでちょっと聞いてみようか。


「えーっと、そちらさんが代金かわりに支払う言ってるけど、何か要求するんじゃないんですか?」

「おや、そちらはそこが気になりますが」

「わたしだけじゃないですけどね」


 わたしとアリサはもちろんだけど、店員さんもそうだし、代金かわりに払ってくれると提案されたこの女の子も少し怪しむというか、どういう事かなって感じだもの。


「先ほども言いましたが、あくまで投資です。何かを強制するとかはありません」

「へー」

「疑っているようですが事実です。とはいえ投資なことは事実、少々私どもと交流していただければと考えてはいますが」

「交流ねぇ」

「私どもの配下になれとは言いません。知ってもらい共感してもらう、を目指しているだけです」


 ニコニコした顔でそんなこと言ってるけど、よけい怪しいわ!

 これもう詐欺とか一派に強制加入させるとか、そういうのでしょ。そうとしか思えない雰囲気だよ。

 コイツに対して嫌悪感は出てないけど、警戒とか拒否とかそういうのもどんどん出てきてる。こりゃぁ今は敵じゃないけど、将来敵になる可能性もある危ない奴って事か。やっばいなぁ。


 な・の・で~


「抵抗とかあるようなら、わたしが両替しましょうか?」


 と、一応選択肢がもう一個あります風で女の子に進言。

 まぁ選択肢があるではなく、怪しい関係構築はよした方が良いですよって言った方がほんとはいいのだけれど、犯罪をしている状態じゃないのでそれはちょっと無理。

 しかも他国の人だと、どれが違法でどれが違法じゃないって線引きが違ったりもするので、こっちの考えを全て押し通すのもまた大変。

 もっと明確な犯罪行為とかならまだ良いんだけど、あくまで事前行為ですって言われたら、ほんとねぇ……。


「ほぉ、両替もできるんじゃな!」

「え、えぇ、まぁ」


 女の子がずずいっと寄ってきたけど、口調隠すみたいなのはどこ行ったんですかね?


「両替してくれる人呼んでも良いんですけど、それだと時間がかかりそうだし」

「混んでるからじゃな?」

「うん。他国の人もいっぱいいるので、出張をお願いしてもすぐは無理」


 なんだかんだで他国の通貨の両替とか、ダンジョンから出土した古銭の換金とかって、結構ひっきりなしになっちゃうお仕事だからなぁ。

 まぁわたしがお願いすれば待ち時間とかも後日対応とかは無くすぐに対応してくれちゃったりもするのだけれど、そこは一旦おいておきましょう。

 アリサも察したようで何も言わない。ほんとよくできた子です。


「ただ、わたしが両替するとけっこう手数料かかっちゃいますけど」

「そうなのかえ?」

「えっと、両替するのは金銭関係の資格が必要なのと、今回は鑑定もするのでそっちの資格もいります。んで、鑑定と両替を仕事として依頼した場合は手数料が当然発生します」

「当然じゃな」

「お仕事ですからね。それでその手数料の算出方法ですけど、資格者が所持している認定級によって変わっちゃいます」


 そう説明しながらギルドカードを取り出して、資格情報の記載状態に変更する。

 ホント便利だよね、このカード。住所とか連絡先だけでなく、自分の持っている資格や貴族間の立ち位置なんかの情報も全部入ってる。

 情報満載なのでなくしたら危ないけど、他人が拾っても重要な部分は表示できないとか、偽造などの悪用ができないよう対策もバッチリでほんとすごいです。


「これがわたしの級ですけど、だいーぶ高いです。なので、アリサ」

「こちらですね」


 アリサがスッと1枚の紙を出してくれる。ほんと優秀です。

 そこには級と行う作業によって発生する手数料の基本額と、資格保持者が請求可能な最小と最大の手数料がずらーっと書かれてる。


「ここに書かれているよう、わたしだと結構な額になっちゃうわけです。最小の手数料でも結構な額なので」

「それを不満に思うなら別の者、もしくは向こうの提案を受けるべき、というわけじゃな」

「そーゆーことです」


 こういう事はしっかりと説明です。

 でもまぁほんと手数料が高いから、多少は悩むんじゃな


「じゃぁ頼むの」

「はい? えっと?」

「拍子抜けして、どうしたんじゃ?」

「いやだって、ねぇ?」

「ですよね……」


 アリサと見合っちゃったけど、少しも悩まず即決とは予想外です。

 もしかして、わたしの好感度を稼ごうとか? って、そういう感じは一切ないなぁ。まぁいっか。

 それじゃぁ


「おっと、振られてしまいました。ところで少しお聞きしたいのですが」

「はぁ、聞きたいことですか」


 鑑定しようとしたら、今度は男が声かけてきたわ。もう諦めて去ってくれていいんですよ? って状態なのに。


「ここで鑑定をするのですかな?」

「そりゃぁ出張みたいなものなので、ここでしますけど」

「でしたらその鑑定、我々も見学してよろしいですかな?」

「見学、ですか? まぁいいですけど」

「おぉ! それは感謝です」


 なんか随分と喜んでるけど、どういう事ですかね? 他国の鑑定を見たいから、って事かしら?

 う~ん、道具を用いた鑑定は特定の国による違いってほとんどないのだけれど、何かあるのかなぁ。ちょっと警戒しちゃうわ。





 何はともあれ、ちゃちゃっと鑑定しちゃいましょう。

 ポーチから少し高いけど専用の魔道具店で購入できる鑑定と分析機能内蔵型魔道具メガネを取り出し、チャキっと装備。よし、ちょっと真面目っぽい感じになった!


「今日はそのメガネにするんですか?」

「うん、〝確実に〟鑑定しときたいからね」

「〝確実に〟ですね」


 アリサが鑑定用の台とかを取り出しながら納得してくれたけど、うん、ちゃーんと意図が分かってるようでさすがです。

 そう、鑑定するだけなら魔道具でなく、鑑定用の術式を書いたお札でちゃちゃっと鑑定することもできる。

 だけどその方法はうちの国、というかうちだけの特別な方法なので、他国の人にはあまり見せたくない。説明求められるとか、手順を教えてくれって言われると面倒だもの。

 なので、よく使われる魔道具を用いた鑑定にするのです。余計な面倒事は避けたいものね。


「ではではっと」


 金貨を台に乗せ、まずは構造の分析を開始。

 ふ~むふむ、偽造とかではなく普通の金貨ですね。使っている各材質の内訳もずらーっと出てきたので、今使われている金貨と比較してるけど、結構似ているとこが多いわ。

 次に製造年月日の分析を……はい?


「んん~?」

「何か問題ですか?」

「問題っていうか、これはちょっと」


 メガネを外し、心配してきたアリサにチャキッとかけてあげ、結果を見せる。

 すると


「え、えーっと、これは……」

「やっぱそうなるよねぇ……」


 案の定、アリサも少し困惑してるわ。

 だってこれ、今から1億年近く前の金貨なんだもん! 超が何個も付くくらいの古銭だよ、これ。

 なのに金貨自体の劣化はほぼ無く、今流通しているものですって言われてもおかしくないくらいしっかりした状態。

 こんな金貨、どこで手に入れたのよ……。


 まぁそれを聞くのは後にして、どのくらいの価値があるか鑑定しましょう。

 アリサからメガネを返してもらい、今度は鑑定機能を使ってっと。

 とりあえず同じ金貨が過去に出回ったかを調べてみますか。とはいえ1億年前のとか古すぎて、ここまで質の良い金貨が過去出回ったとかはまず無いだ……はい? え? ちょ、ま?


「お、お嬢様!?」

「ごめん、ちょっと現実がヤバくて項垂れただけだから」


 思わず頭を抱えて項垂れちゃったからね……。アリサだけでなく、ここに居る全員少しギョッとしたけど、そのくらいになっちゃいます。

 だってこれ


「1億年前に使われていたこの世界の共通金貨だったよ……」

「共通金貨って、え? それって」

「うん、わたし達の使っている金貨のご先祖様」

「でも1億年前って……」

「そう、すっごいご先祖様過ぎて、現存する金貨が1枚もない状態になってるんだよね……」


 この世界の硬貨には状態保存とかの術式とかはそれなりにかかってるけど、さすがに1億年も維持するとかは無理。状態保存の効果が切れ、どうしても劣化が始まっていく。

 なので、だいたい100年単位で各種硬貨の入れ替えが発生している。偽造対策もあるけど、状態保存がしっかりした状態の硬貨にするため、どうしても交換があるんだよねぇ。


「資料として作られた同等品は見たことあるけど、実物は初めてなのでさすがに驚いたわ」

「予想外すぎですね……」

「ほんとにね……。いったいどこで手に入れたとかだけでなく、どうしてここまで状態が良いのかなど、色々あって頭が痛くなってきたよ……」


 歴史的な発見みたいな状態ではあるけど、こういうので発見はほんと困ります。

 こういうのだとただ換金すれば良いってわけじゃないから厄介すぎだってのに、今はメンドそうな他国の男まで居るわけで。どうしたものやら。

 いっそ見なかったことに……は当然無理だし、ほんとーにどうしましょ。

1億年経っているのにピカピカな金貨

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