351話 ここでもトラブルっぽいかなぁ
少し長いです
ゲテモノ的なお店は避けて、区画の中を進みましょう。
と、その前に~
「ちょっと飲み物を買おうか」
「確かに、今日は少し暑いですしねぇ」
「だよねぇ」
そう言いながら空を見上げると、太陽さんが思いっきり頑張ってる感じにギラギラ光ってる。
季節はまだ夏じゃないけれど、今日はちょっと初夏みたいな気温になっているわ。
「うちの衣服と魔道具で温度調整はできるけど、日差しからの暑さはどうにもならないわ」
「ですね。もっとも、その暑さまで完封も出来なくは無いのですけど」
「それしちゃうと温度も場所も季節とか関係ない、何とも言えない感じになっちゃうからねぇ」
思いっきり暑い中の戦闘とか、逆にめちゃくちゃ寒い中での作業とかは当然ある。であるならば、当然その対策用の便利道具もいっぱいあるわけで。
なのでやり過ぎってくらいの対策も出来るけど、そこまでするのは戦闘時とか作業時くらいなのでやりません。
それにわたし、こういう季節の変化を体感するのも好きだもの。
さてさて、それじゃおいしそうな飲み物を売っているお店を探しましょー。
珍しいのも良いけど定番のも捨てがたいし、複数の素材を混ぜたのも良いけど素材一つで勝負しているのもいい。そういった具合にいろんなお店があるので、ほんと悩んじゃう。
「とりあえず長蛇の列になっていないところにしようか」
「確かに混んでいる店舗は避けたいですねぇ。他国から来て駐在している方が多いのか、普段よりも混んでいる店舗も多いですし」
「そうなんだよねぇ。回転が速い店舗でも結構並んでいるとこもあるし」
よく買いに来ているお店なんかも、ずらーっと人が並んでいたり店員さんもてんてこまいだったりするので、ちょっとまいっちゃうね。
「とはいえ、混んでないお店の方がすくな……おや?」
区画内をトコトコ歩きながらお店を捜していたけど、混んでいない店舗を発見。
混んでいないのは不味いからとかではない。それどころか、よく行くお店の系列店なので味は素晴らしいのが分かっちゃうお店。いっつも行列ができてたかな?
だけど混んでいない状態。
「何かあったのかな?」
「かもしれませんね。お客と思われる方と店員の方が話してるようですし」
アリサが言うように、商品の受け渡しが終わったあたりかな? 受け取ったまま何か話しているわ。
そしてその話がすんなり終わらないのか、一旦営業を止めるような状態になってるみたい。
「どうしますか? 事件ではないようですけど」
「そうだなぁ……」
腕を組んでうーんと少し考える。
まず、事件ならもっと違う状態になっているとか、警備の人が来ているはずなんだけどそれは無い。
となると、わたしが行って何かをしなければならないって状況ではまず無い。そもそもわたしが行かなくちゃって状況自体ほとんどないけれど。
ただ、あのお店は何度も利用しているお店の一つなので、問題とかを見ちゃったらサクッと解決したいなっていう考えも出ちゃう。
なので~
「とりあえず行ってみようか」
「悩むまでも無かったですね」
「まぁわたしだしねぇ」
こうなるだろうなってアリサも予想していたと。まぁわたしの性格、すっごく理解しているのもあるものね。
とりあえずトコトコとお店に向かって移動。
どうやらお客さんは背の小さい女の子ですね。わたしと同じくらいかしら? となると子供だね!
「わかりませんよ?」
「ちょっとアリサ、さらっとわたしの脳内読まないで?」
「そんな事はしていませんよ~。ただ、こういう場面でお嬢様が考えることはすべてわかっちゃうだけです」
「むぅ。で、わかららないってどういう事かな?」
「それはだって、お嬢様自身がそうじゃないですか」
「あー……まぁそうね」
わたしみたいに何らかの理由があって成長が遅いって人、確かにいるだろうね。
だけど、だけど!
「わたしは子供だって方に掛けるわ!」
「必死ですねぇ」
「だって~」
最近、うちに来るお客さんにも子供が結構いるのだけれど、どういうわけかわたしよりもみんな身長が大きいんだもの! わたしより年下なのにだいーぶ大きいんだもの!
そんな日常だと、なんとなくわたしよりも小さい子供を見たくなっちゃうのです。
そんなこんなはさておき、お店の前に到着。
うん、遠目で見た通りやっぱりわたしと同じくらいの身長ですね。
それはさておきっと
「なにかあったんですか~?」
「何やら問題があるのですかな?」
「「!?」」
わたしが声かけるのと同時に、反対側の方から男の声がしたんだけど。
何事!? って思いそっち見たら、向こうもこっち見た様で目があってしまったわ。うげぇ、なんか嫌です、知らない男と目を合わせるとか。
「気をつけてください。この男たち、存在を消して近づいてきてました」
「うそん!?」
アリサが小声で教えてくれたけど、声をかけた男とその周囲にいる男2人、どうやら他人に察知されないように行動していたみたいで、わたしもアリサも気が付かなかったようね。
まぁ戦闘時とかなら多少存在を消してこようがバッチリと分かるけど、街の中でまで戦闘時と同じくらい注意しながらの行動はしてないわよ。
殺気とかがあれば警戒はするけど、そういうのも無かったからなおさらだわ。
「失礼、私はある国の神官ですが、観光途中にこちらの様子が気になりまして、つい声をかけたのですよ」
「はぁ、そーですか」
「その様子、気にならない、いや、気にしない方ですかな」
……この男、わかってるわね。
下心からわたしを見てるってのは無いようだけど、なんか分析するって感じで見ては来ている。
だからか、わたしが男に対し拒否反応が結構出てきちゃって、それがきょーみないって反応に見えてきちゃってるの、わかったみたいね。
しっかしどこかの神官ねぇ。
見たところ20~30代くらいで少し痩せ型、そしてみたことが無い着物だわね。
うちにある着物とは違い黄色が主体となっていて、肩がずいぶんとでかくなっている変わった形だわ。まぁわたしが変わってると思うだけで、この男たちにとっては普通なんだろうけど。
って、着物?
そういえばこないだミスト君が言っていた内容にも居たなぁ、着物の人。
まさか同一人物、もしくは同門の……なわけないか。そんな偶然の一致とか要らないです。
「そちらの侍女の方は警戒心が強いようですが、まぁ良いでしょう。それで美しい御店主に可憐なレディ、どのような問題があるのですかな?」
うげぇ、なんかかっこつけ感出していていけ好かない感じだわ。
普通に店員さんとお客さん扱いで良いだろうに、嫌だねぇ。
「ダメですよ、殺気まで出しては」
「だ、だしてないよ!? 今はまだだけど」
アリサに注意されちゃったけど、うん、結構苦手というか拒否したい感が強い相手にどんどんなってきてるので、つい殺っちゃいそうになっちゃったわ。
「これはお気遣いありがとうございます。ですが」
「そう気にしないでください。こちらにも目的があっての事ですから」
「は、はぁ……」
店員さんが戸惑ってるけど、確かにそうなるよね。怪しさもどんどん増してるし。
そんな店員さんだけど、わたしの方を見て「どうしましょうか?」って顔をして訴えてきちゃったわ。確かに、これもそうなるよねぇ。困った状況に遭遇しちゃったら、わたしを含めたうちの人たちに助けてもらいたい気持ちが出るの、すっごいわかります。
「えーっと、わたしも気になるからどういう状態なのか教えてくれます?」
「分かりました。正直、私達も困っていまして」
そう言いながら、店員さんがスッと指をさしたけど、ほぅ?
「見たことが無い金貨?」
「はい。お支払用に、こちらのお客様が」
店員さんが指したのは、受付に1枚置かれている見たことが無い金貨。
今使われている金貨より掘られている模様が簡易的だし、大きさも少し違うように見える。じゃっかん大きめかな? 偽造防止に使われている術式や素材なんかも違うだろうけど、そっちは見ただけじゃわからないわ。
でも、う~ん……。見たことが無いって思ったけど、じーっとよく見ていたらなーんか見たことがあるような気が。だいーぶ謎な金貨ですね。
そんな金貨をこの女の子が支払いに出したと。
なーるほど、そりゃ困るわ。
「んっと、お嬢さんはこの金貨をどこで持ってきたんですか?」
「これはじゃ……これはですね、家族が持たせてくれたものなのです。ここでの支払いに使うように、と」
「ほほー。となると、その家族が居ればいいんだけど」
なんか言い直したよこの子。もしかしてノジャロリなのかしら?
それはともかくこの状況からして、おそらく家族の人はすぐには来れないって状態なんだろうね。
となると、この謎の金貨での支払いをしなきゃダメになるんだけど。
「流通している金貨じゃないから受け取り出来ないってわけだね」
「そうなのです。カードでのお支払いと違い、現金の場合は現在流通している硬貨でしか受け取れませんので」
「法律があるからねぇ」
金銭に関しては世界の法律があり、そこで現金での支払いには現在流通している硬貨のみ使えるになっている。
これは硬貨を偽装されると普通のお店じゃ判断できないので、偽造対策が盛り込まれた専用の判別機械を使うのだけれど、残念ながら現在使われている硬貨でしかその判別ができないから。相当複雑な解析判定をしているからだったかな。
あとは各国独自の通貨が存在する場合、他国ではそのままでは使えないっていうのもあったか。
「となるとこの金貨を現在の価値にあった硬貨にしないとダメなわけだけど」
「異なる通貨間での両替や換金を行うには専用の店舗で、なおかつ本人が赴かないとダメでしたよね。家族の場合でも委任状が必要とかでしたっけ」
「そうなんだよねぇ」
これも偽造対策関連で、偽造した硬貨を持ち込んだら犯罪なので本人限定にしているから。
あとは誰かから奪ってきた物とかでも問題になるので、何かあったら訴えることができるよう個人情報とかを記載しなきゃいけないのもあるわけで。
「あとは両替や換金できる資格を持った人に出張してもらうになるけど」
「その人を呼ぶに呼べない状況、なわけですねぇ」
わたしとアリサがウンウンって頷いちゃったけど、人を呼べない状態ってのはほんと厄介ね。
まず、この店舗は店員さん一人で運営している。なので社員に頼むとかができない状態。
次にこのお客さんの子も一人なので、連れに頼んで呼ぶとか待っていてもらうができない状態。両方とも一人だけってのが問題ね。
これが商品の受け渡し前なら問題無いのだけれど商品を渡して支払い段階まで行っちゃってると、どちらかが抜けて呼びに行くは盗難やら窃盗やらに受け取られ、この区画の偉い人に訴えられる危険性がある。
ちょっとやりすぎじゃって気もするけど、過去になんかそういうので事件とか犯罪があったようで、その対策としてけっこう厳しいとか面倒なルールが設けられてるだったかな。
こういう時、他のお客さんとか通行人、あとは警備で巡回している人に頼めればいいのだけれど、残念ながらどっちも無理だったみたいね。
今現在ここの周囲は観光やら冒険やらで来ている他国の人ばかりなので、手助けに行くのに少し抵抗があるのか見守るだけ状態になっちゃってるのと、近くのお店は大忙しな状態てそっちに頼むもできない。そして巡回の人は時間じゃないからか見当たらない状態がこうなったわけか。
状況は分かったので、どうしようかな。
このお店と店員さんは顔馴染だし何度も利用しているくらいの間柄だから、揉め事になるような解決でなくあっさりとした解決はしておきたい。
となると、お金を代わりに払って後で返してもらうか、両替をできる人を呼ぶか。
あとは……
「では、その代金は私がお支払いいたしましょう」
「え!?」
「ここでお会いしたのも何かの縁、でしたらより良い関係へと導く第一歩として、私にお任せくださいな」
「それって、建て替えてくれるというわけなのじゃすか?」
「いえいえ、今回は建て替えではなく投資、となりますね」
ちょ、まちなさいよ!?
ぱっと思いついた方法の3つめ、無償の提供とかをコイツやるって事かいな。しかもすっごく怪しい感じだし。
投資とか言ってるあたり、なにか勧誘でもする気っぽいし。
これはちょっと止めた方が良い気がしてきたわ。
そもそもだけど、会って間もなく、しかも好感度の高い相手でもない相手に対して、金銭の無償提供とかぜーったいにありえないというか異常でしょうが。
他国では普通とか言われたらあれだけど、怪しさが強いので阻止です。
にしてもこの子、やっぱりノジャロリかしら? さっきも〝なのじゃ〟って言ってたし。口調がうまく隠せない子供って事かしらねぇ。
わたしならバッチリ隠せるのになぁ……たぶん。
相手によって自然特徴が変わる狐娘ちゃん




