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35話 これが今の全力です!

「いったぁ、さすがに耐えれずに吹き飛んだわ」


 ある程度は耐えたけど、結構吹っ飛んだかな。それに弾けた魔力の塊を完全に防げなかったようで、全身に結構傷があるわ。しかも魔衣はボロボロで、これはもう防御力の欠片もないね。まずいなぁ。

 こんな状態だからか、アリサがすっごい心配そうな顔してる。とりあえず手を振って大丈夫アピールしておこう。


 さてあいつはっと、あー向こうも同じ感じだね。向こうもボロボロだし、これで終わりになるかな?


「お互いボロボロだけど、まだ続ける?」


 お互い構えながら再度近づいたけど、こいつまだやる気っぽいんだよなぁ。引き分けにしよーよ。


「もちろん続けるさ。ダメージは負ったがお互いまだまだ動けるだろ?」

「そうだけど、一つ提案があるわ」

「あぁ俺もある」

「服だけはどうにかさせて。魔衣の再発動がダメでもそのくらいは認めてもいいと思うの」

「同意見だ。俺も自分の恰好がまずいし、それに女をそんな格好のままにさせているのもな……」


 下着が見えちゃいそうなくらいボロボロだからね。たとえ4歳児でも気にはするのです!


「で、魔衣にする? それとも普通の服?」

「そうだな、魔衣の再発動を認めよう。だがせっかくだ、俺は出し惜しみ無しで行く。天魔のための防具、真魔鎧を使いすべて出し尽くす。そして俺が勝つ!」


 うわぁ、完全に戦闘狂のノリだよ。

 でも真魔鎧かぁ。魔鎧は魔衣の鎧形態みたいな物、天魔になると魔鎧も進化して真魔鎧になるんだっけ。


 ならこっちもとっておきを出すしかないかなぁ。魔衣だとすぐに負けそうだし、なによりちょっと失礼かなって気もする。相手が全力ならこっちもそれに応えないとね。

 ほんとは使いたくなかったんだけど、しょうがないか。





「これが俺の奥の手だ! 連環魔陣展開、真魔鎧発動!」


 カイルの魔力が高まり、そして体が銀色の光に包まれる。

 しばらく見ていると光が収まり、ボロボロだった衣服は消え、銀色の軽鎧を身につけた姿に変わる。なるほど、魔力の色が銀色だから鎧も銀色ってことだね。


「へー、真魔鎧ってそういうのなんだ。うちの人ってみんな魔衣だから見たことなかったわ」

「なら先に教えておいてやる。見た目は普通の軽鎧だが魔衣よりも圧倒的に硬く、そしてこのように素早く動ける。悪く思うなよ?」


 わざわざ素振りしてまでその速さのアピールをされちゃったよ。よっぽど自身があるんだねぇ。

 でも実際、素振りの時の速度もそうだし魔力量もさっきとは段違い、これはなめてかかるとあっけなく終わっちゃうわ。


「じゃ、こっちもとっておきを見せてあげるわ。正々堂々、こっちも出し惜しみなしよ!」

「フッ、そう来なくては」

「術式展開、顕現せよ、天衣!」


 魔衣発動時よりも巨大な魔法陣が足元に現れ、魔衣の顕現時より巨大な光の玉が体を包み込む。

 やがて光は収束し、魔衣とは異なる巫女装束へと変化する。これがわたしのとっておき。


 天衣の顕現には魔衣の時より大量の魔力を使用する。でも効果は絶大で、他の防具や術具とは一線を画す圧倒的な性能を持っている。真魔鎧とかも強いとは思うけど、それでも天衣ほどの性能は持っていないかな。

 そんな天衣はただの天魔じゃ発動すらできない高難度な術具。魔力の消費量に耐えれないというのもあるけど、顕現させるための術式自体が難しいのがね。

 まぁあくまで『普通の』であって、うちの人たちはみんな使える。アリサも天魔に進化したら使えるようにがんばってもらう予定。普通の天魔になんて絶対にしません!


「な、なんなんだそれは!?」

「何って、天衣だよ? 魔衣の時のデザインを踏襲して、ちょっと豪華になったでしょ。パワーアップした巫女って感じだね!」


 装飾が増えたり、金の刺しゅうが増えるんだよね。若干追加パーツもあるけど、相変わらずの袴がミニスカートタイプの巫女なのが何とも言えない。ロングにならないのかな?


「聞いたことないぞ、そんなもの」

「そうなの? うちだと常識なんだけどなぁ」


 普段使う魔衣を強化するって誰もが考えそうな気がするんだけど。

 あーでも天衣の術式を作ったのはお母様だし、他国の人が知らないのと使えないのも当然かもしれないわ。

 しかも国家機密とかじゃないけど、門外不出の技術に近いんだったかなぁ、すっかり忘れてたよ。


「くそっ、なんなんだ、さっきとは魔力も何もかも全然違うじゃないか」

「そりゃ術装と対を成す術具だから当然よ。相乗効果ってやつかな? というか、足震えそうだけど大丈夫?」

「な、なめないでくれ!」

「ほーい、それじゃ行くよ!」


 軽く地面を蹴るだけですぐ目の前に接近、相変わらずの性能です。

 そのまま月華を切り落とす! シルバームーンで受け止めようときたけどそのまま押し切る!


「な、ぐがっ。ば、ばかな!?」

「立って受け止めることが無理みたいね、もう膝ついてるよ?」

「ぐ、押し返せ、ない」


 押し返そうと必死になってるのはわかるけど、びくともしないね。

 ん~、やっぱこうなると勝負にならなくなっちゃうなぁ。敵を倒すだけなら気にしないけど、純粋な力比べだと申し訳なく思っちゃう。


 このままいけばあっさり終わりそうだし、先に言っておくべきかな。たぶん追い打ちに近いことになるけど、嘘はつきたくないから。


「えっとね、実はあなたに謝らないといけないことがあるんだ」

「こんな時になにを」

「わたし、今って魔石が元の大きさの3割くらいしかないんだ。あそこにいるアリサのために7割くらい魔石あげちゃったの。その影響で今は最大でも元の3割程度の力しかないんだ」

「な、なんだと!?」


 あーすっごい驚いた顔するね。

 わたしも全力全開で戦っていると思ってたんだろうねぇ、ほんとごめんね。


「普段ほとんどの魔力は魔石の修復に使ってるんだけど、天衣を着た状態は全魔力が戦闘用に回されるの。なので、これが今のわたしの全魔力、元の3割だけど本気の力ってわけね」

「し、しかし俺も天魔狐、しかもすでに尻尾が2本あるんだぞ! ここまで大きな差は!」


 必死に押し返そうとしてるけど、びくともしないね。力をぜんぜん入れてないのにこれだからなぁ。

 お母様やシズクさん相手だと、ありったけの魔力と全開状態の術装に天衣を使っても全然歯が立たないけど、普通はこうなっちゃうんだねぇ。


「たぶんあなたは強いと思うよ。でもね、わたしの方が強かった、それだけだよ。それにね」


 偽装解除っと、これでわかるでしょ。


「あなたと同じように、わたしも尻尾が複数あるの。もっとも、わたしは3本だけどね」

「3本、だと!? まさかそこまで成長していたとは、な」

「そういうこと。じゃ少し力の差を見せるね」


 押し付けていた月華を緩め、一気に体勢を低くする。

 そのまま地面を蹴って背後に回り込み、がら空きの背中めがけて蹴り上げる!


「ぐはっ」


 防御結界のようなのを張ったみたいだけどお構いなし、カイルは勢いよく上空へ飛ばされる。


「まだまだ行くよ!」


 地面を蹴って一気にジャンプ、そのまま空中に蹴り上げたカイルのさらに上空まで飛ぶ。

 そして勢いよく下降し、飛ばされて上昇してくるカイルのお腹に踵落とし!


「げふぅ」


 どっごーんってすごい音しながら落ちたね、あークレーターもできちゃった。

 それに真魔鎧、もうお腹と背中の部分壊れてボロボロだね。


「ま、まさか、たったの二発で、真魔鎧をここまで、壊すとは、な、ぐふっ」

「内臓までいってないと思うけど結構ダメージあると思うよ、それ。まぁその目を見るとまだやる気みたいだけど」


 ひょいっと地面に着地して様子を見てたけど、ほんとすごいねぇ、そこまでして戦いたいとは恐れ入ったよ。





「なぁ、頼みがある」

「なに? 言っとくけど殺せとかは面倒だから嫌だよ」

「戦いで死ぬのは本望だが、さすがに今は死ねん。正直今のダメージがでかすぎて立つのもきつい。だが、俺にも譲れない物が在る。そこで頼みたい事だが、次の一撃、全力で来てくれないか?」


 最後まで悔いのない戦いをしたいって目をしてるね。

 ふーん、そういう真面目な顔もできるんだ。その感じで魅了使ってたら、ひょっとしたらかかってた可能性もあったかもね。


「いいよー。じゃ、そっちから来て。受けて立ってあげる」

「恩に着る。シルバームーン、Typeサラマンダー!」

「ならこっちはわかりやすく、月華、玄武!」


 カイルの炎でわたしの氷が溶けるかってとこだね。さて、死なない程度に魔力を込めてっと。


「それじゃ決着をつけましょ」

「行かせてもらう! シルバームーン、Codeインフェルノ、イグニッション!!」


 真魔鎧の効果か、速いし威力も高そう。それに纏った炎がさっきのより断然すごい。


 でも、


「その炎、凍らせるから! 月華、神氷開放!」


 上段と下段から挟み込むようにシルバームーンが迫ってくる。

 こっちは神氷開放により氷を纏った月華を左右に交差させ、シルバームーンが体に触れるぎりぎりで左右に払い切る!


 互いの術装が一瞬だけ触れる。


 そして


「くっ、そ、通じない、か」


 カイルはがっくりと膝をついた。

 払い抜けた月華は氷を纏ったまま、対するシルバームーンは炎が消え、月華に払われた影響で凍り付いているわ。それに、どうやらカイルの腕まで凍り付いたみたいね。


「どう、満足した?」

「俺の完敗、だな。はは、手も足も出ないとは。こんな結果になるとは、思ってすらいなかったぜ」

「でも、あなたも十分強いよ。ただ相手がわたしという、とんでもない化け物だっただけだよ」


 そう言ってカイルの顔を覗き込むけど、なんか晴れやかね。出し切ってすっきりしたのかな、最初会った時の感じとは違うね。


 やれやれ、これでやっと終わったかな。今日はもう終りでいいよね。

最初から全力じゃなかったのは、今回は力比べだったので相手に合わせたからになります。

じらしプレイをしたわけじゃないです。

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