348話 いまさらだけどこの星はデカい
少し長いです
「とゆーわけで、今日は地理についてのお勉強をしまっす!」
ミツキたちとの模擬戦を見た翌日、みんなを集めてちょっとしたお勉強会をしてみましょーに。
当然お勉強会なので、ちょっと学園の教室みたいなのが良いなぁとも思っちゃったので、うちの敷地内で空いてる場所にサクッと小さな学術教室みたいなのを建てちゃいました。
うん、内容もだけどそんな教室にいきなり通されたのもあって、ポカーンとしている人ばかりだね。
今回、こちら側の知識があまりないミツキたちはもちろんのこと、説明とかもまだ途中なルミィたち、おまけで学園での授業がまだ進んでいないショージ君たちを集めてのちょっとした基礎学習の場を設けたわけだけど、唐突過ぎたかしら?
全員が顔見知りってことは無く知らない人同士ってのもあるからか、多少ぎくしゃくもしているかな?
「急にだけど、それって需要な、こと?」
「ん~、重要と言えば重要なんだけど、そうでもないと言えばそうでもないかなぁ」
「でも知っておい方が良い、こと?」
「だね。こっちの世界で住んでいると、たまーに関連した話題が出るからね」
ミツキが代表して質問する形になってたけど、今ので全員納得したみたい。まぁ納得しないような人は居ない面子ではあるのだけどねぇ。
「とゆーかユキ、あんたその恰好は」
「かわいいでしょ?」
「確かに可愛いけど、なんで異世界に日本の女学生風なブレザーがあるのよ!?」
「そりゃーもちろん、昨日急いで注文しました!」
ドヤァ。
うん、質問してきたマナミだけでなく、数人ちょっと唖然としてるわね。でもね? こういう所にもこだわるのがわたしですから!
やっぱね、お勉強するなら学生、学生と言ったら学生服なわけですよ。で、女の子だったらブレザーとかも良いと思うわけなんですよ。
だとしたらもう答えは簡単、わたしも昔から利用している呉服屋さんに注文するっきゃないわけですよ。
あとはね、やっぱこういう時ってちょっとできる頭の良い子っぽい雰囲気も出したいんです。
なので~、これまた昔から通っているアクセサリー屋さんに行って、可愛いけどデキル女っぽい雰囲気も出る伊達眼鏡を購入し、チャキっと装備! 完璧です。
「ちなみに一番の売りはね、この短めのスカートとハイソックスがもたらす絶対領域が」
「良いよな、絶対領域!」
「わかる、わかるぞ! 俺も同意見だ!」
うん、トースケの熱い思いがショージ君にも伝わったようで、がっちり握手しちゃったわ。
それを「ボクは無関係です」って感じに目を背けるコータも居るけど、わかってるんだよ? コータもこっち側だっていうのを。
「あの、マスター、そのですね」
「うん、今日は保護者参観日も兼ねてるからね~」
「参観日って!?」
ルミィがちょっと慌てながら聞いてきたけど、そう、ルミィのお母さん達も当然参加しています。
ただ、教室の奥の方で、こう、いかにも保護者の参観日ですって感じで見守ってる状態なわけで。お母様に確認していたけど、ルミィのお母さんを含む一部の人は既に学んでいたようなので、安心して娘の活躍が見られますって状態になっちゃってるわけなのです。
でもまぁ
「ユキちゃ~ん、そこでくるっと少し回ってくれるかしら~」
「は~い」
お母様にお願いされたので、その場でくるっと回る。ちゃんとスカートが捲れすぎないよう、うまいこと調整して回る。
そう、保護者参観にはわたしのお母様も参加しているのだけれど、わたしの参観というか見学会っぽい感じだねぇ。シズクさんを筆頭に、うちのメイドさん執事さんも結構参加していて、みんな録画用の魔道具を使ってパシャパシャ撮っているもの。みんなに渡すんだろうなぁ。
「後日販売もするようですよ」
「やっぱり? う~む、わたしの写真集とか動画とか、毎回購入しているお客さんって結構大変そうだわ」
「月にどちらも最低1回は発売されますからねぇ。もちろん毎回完売が確実で、再販待ちとなるのが当然と言った状態ですけど」
「すごいな、わたしの人気」
隣で説明用の道具を用意してくれるアリサとそんな話をしたけど、ほーんと、わたし関連の商品って結構な頻度で出ているのに完売ばかりって、割とすごいことです。しかもそれなりのお値段するのもあるってのに、ほんとよくだわ。
まぁ売り上げの一部はわたしのお小遣いとしても入ってきてるので、やめろとはナカナカ言えません。そもそもだけど、お母様たちがちゃーんと確認してから外部にだしているので、ちょっと出したらマズいとかも無いので安全なのだしねぇ。
さてさて、準備もバッチリできたので始めましょーか。
「それじゃ最初にだけど、これを見てもらいましょー」
アリサが設置してくれた球状の魔道具にポンと手を乗せて起動っと。すると目の前に大きな画面が表示され、わたしたちの住んでいる国が載っている地図がバーンと表示される。
「これがこの大陸の地図になります」
「大陸って……海が結構ないか?」
「確かにすべてが繋がっているのではなく、島国っていうのかな? 海に囲われた国も多いようだけど」
うんうん、思った通りの良い反応です。
ショージ君が指摘したとおり、地図には海が結構載っているし、コータが言うように島国もかなーりある。なのにわたしが〝大陸〟って言ったから、どうい事? ってみんなしてなっているね。
「二人が言うように、1個のでっかい島が全部の国をまとめてるってわけじゃないんだ。だけど大陸っていうのは~」
魔道具をちょいちょいっと操作。すると拡縮が変更され、わたしたちの住んでいる大陸からだいぶ離れたところも表示される。
そこには~
「この右側に出てきた大陸は、あの傭兵帝国とかがある国になります」
「ずいぶんと離れてますすけど、どのくらいの距離なんですか?」
「ん~と、たしか40億キロメートルだったかな」
『40……億!?』
「うん、40億のキロメートル」
とんでもない距離だったからか、みーんなポカーンとしちゃったわ。特に元地球人だった子らが相当ですね。そういえば地球って1周約4万キロメートルだったっけ? たしかにそこから比較するととんでもない距離ってなるねぇ。
「そもそもだけど、わたしたちが住んでいる大陸ってそーとー広いの。直線距離にしたらそれこそ何千億とかって長さね」
「それって、地球何個……いや、何万個も入りそうだな……」
「うん、コータが思っている通り思いっきり入るだろうねぇ。ちなみにだけど、ルミィたちのいた世界は全体でこの大陸の約半分の大きさだよ」
「こちらは相当広いんですね」
「そうなるねぇ。まぁ広いぶん色々あるのだけれど、それは気が向いたときに」
ルミィたちに余計なこと伝えて、こちら側の印象悪くなったら嫌だしね。
とはいえ単純に、広いぶん国の数も相当あるのと各国の力関係も結構出ちゃうからか、うちの国みたいな強い国はすっごく安定してるけど、弱い国同士は発展や領土拡大とかの気持ちが強いようで、戦争一歩手前とかがよくあるってだけなんだけど。
「でまぁ先から言っている〝大陸〟って言葉なんだけど、実はこれって〝元別世界〟って言葉を使わないために生まれた歴史があるの」
「元別世界、って?」
「えとね、この星ってとんでもなくデカいのはもちろんだけど、実はいくつもの世界が合体している星なの。ルミィたちの居た世界もそうだし、メイの居る世界とかもそうなの」
「一緒の星、なのに?」
「うん。同じ星なんだけど、実は世界ごとに結界が貼られていて交わっていないの。そのために転移門を使って移動しようって技術が生まれたような面もあるんだけどね」
ほんと大昔の人は凄いわ。結界に覆われた別世界を発見したら、そこを行き来できるような技術を作りましょうってやりだしちゃったんだもの。
とはいえ技術はまだまだ発展途上、メイの行き来が大変なのもそのためだねぇ。
「あれ? でもユキくん、さっき〝元別世界〟って」
「そう、そこなのよ。この結界なんだけど、同じ空間とでも言うべきかな? 共存できる状態になったら結界が自然と消え、乗り物とかで自由自在に行き来できる状態になるの。なので〝元別世界〟になるんだ」
どうして結界がそうなるのかは不明だけど、そういうものとわたしも学んだ。この星特有の何かって事なんだろうけど、いつか解明したいものです。
「そこで厄介になってくるのが呼び方なんだ」
「あっ、それって」
「うん、〝元別世界〟とか言っちゃうと排除というか、一緒に仲良くしていきましょーとは思えない雰囲気がどうしてもあったそうなの。なので、行き来できるようになったらその世界をひとまとめに〝大陸〟って呼ぶようになったんだ」
「この世界特有の考え方、だね」
「そそ。まぁこんないくつもの世界が合体しているだけでなく、すごい時は1年で何回も新規に現れるなり合体しちゃうような世界だからねぇ」
新大陸出現! がほんと多い世界です。おかげで地図とか売っている業者さんは大忙し。
しかも厄介なのは、新大陸が合体しました! とかもあるからなぁ。実際は出現していたのが一部だけで、残りがあとから出現しましたってのだけれど。
そこからしばらく大陸の出現方法とか、星の規模とかをかるーく説明。ときどき伊達眼鏡をクイッとあげたりもしちゃったけど。やっぱりやりたくなっちゃうんです、こういう仕草。
「とまぁだいたいこんなところだけど、他に質問あるかな?」
かるーくとはいえ、わかりやすく丁寧に教えたので問題ないともうけど。
お? トースケが手を上げましたよ?
「はいトースケ君」
「バシッと指差して、ノリノリだな! っと、単純な質問なんだけど」
「なにかな、なにかな?」
「デカい星なのはわかったんだが、どうして重力はデカくないんだ?」
「おっと、トースケらしからぬ真面目な質問」
「おいおい、一応オレ、それなりの大学行ってたんだぜ?」
「マジか!? っと、まぁそれは置いといて、実は重力とかって、この星自体が制御しちゃってるみたいなの」
「ん? だって重力てのは」
「あーそっか、地球の科学準拠になっちゃうか」
ルミィたちとアンジーさんにミスト君はそうでもなかったけど、元地球人の方々はよくわからないって反応してますね。これも当然かぁ。
「えーっと、すっごく簡単に言うと、生きてます、この星」
「死んだ星じゃないのはわかってるぞ?」
「あーそうなっちゃうか。んっとそういう意味じゃなくてね、生きてるの、生命体なの」
『はい?』
「おっと、今度は全員ですね。良いね良いね、その反応」
こういう謎にぶち当たりましたって反応、大好きです。
「この星の核に活動している魔石の様なものが存在しているらしく、それが重力とか大気とか色々制御しているみたいなの」
「活動する魔石って、それってつまり」
「うん、生命体みたいな物でしょ。だけどわたし達のような生命体でなく、もっと別っていうかなぁ、精霊さんに近いようなそんな存在みたいなんだ」
うんうん、何度目だよってくらいまたポカーンとしてきてるね。いいねいいね~。
「魔石みたいなのがあるって発見した大昔の人は、当然ではあるけど意思があるんじゃないかって色々調べたそうだけどそういうのは無く、生命体みたいな存在っていう考えになったってとこだよ」
「な、なんかすげーファンタジーだな」
「まぁねぇ。太陽が複数あるとか世界が合体とかもそうだけど、星自体が生命体かもしれないってのだからねぇ」
意思があったら怖いけどそういうのも無いので、現代の人は特に気にしないって状態にはなってるのだけれど。
そんなファンタジーっぽい話をしていたら、今度はマナミですね。
「気のせいかしら? ユキの説明の中にいくつか憶測入ってたんだけど、気のせい?」
「あら鋭い!」
「てことは?」
「うん、実はいくつか憶測入ってるよ。たとえば~」
魔道具をポンと操作し、球状の星の形にする。
「これが一応この星の模型みたいなものなんだけど、実は本当に球体なのか、大きさは本当にこのくらいなのか、現在出現している大陸はこの数なのか、などが不明なんだ」
「え? だってそれって」
「仮に地上の観測が無理でも宇宙から見れるでしょって思いましたね? ざんね~ん」
ポーチからバッテン印が描かれたプラカードを出し、ぶぶーっと。
ちょ、アリサ、その呆れた顔しないでしょ。だってコレもやりたかったんだもん、しょうがないじゃない。
「んっと、これまた簡単に言っちゃうと、実はこの世界、宇宙にちゃんと出た人は一人も居ません」
「こんだけ技術があるのに?」
「あるのに、なんだ。さっきも言ったけど星の大きさがトンデモナイから、宇宙に出るまでの方法がどうにもならないの。それこそ何日も何ヵ月も飛ばないと出れないんじゃってくらいで」
ほんと大きすぎです、この星。
「しかも結界が空にもあって、どうにも進んでもループしちゃう層があるようで、出ようにも出られない状態なんだそうよ」
「な、なんかとんでもないこと聞いている気がするんだけど……」
「そうでもないよ? 学校に行けば教えてくれる範囲だからだいじょーぶ」
こんどはポーチから丸印が描かれたプラカードを出し、それを掲げ……だからアリサさん? その呆れた目、やめよーね? わたし自身、子供っぽいなぁとは思うけど、やりたくなっちゃうんだもの。
「まー簡単にまとめちゃうと、この星はすっごくデカくて、大陸もすっごく多くて、すっごくファンタジーって事です!」
「少し強引な感じがするまとめですねぇ……あってはいますけど」
「でしょ?」
アリサが渋々って顔したけど、でもそういうまとめになっちゃうのです。
まぁこれらの知識がどこかで生きるとかはほとんど無いけれど一般常識って事なので、みんな頑張って覚えましょーね。
「うん、ユキくんがすごくかわいいのはわかった、よ!」
「だよねだよね」
「内容はもちろんですけど、私みたいにほぼマスターに見とれてた人もいますね!」
「だよねだよね!」
「お嬢様……」
「ちょ、呆れなくても良いじゃん?」
ミツキとルミィのヨイショに対し、アリサはちょっと呆れた感じを出して……うん、平常運転ですね。
でもね、わたしは知っているんだよ? この勉強会でアリサがわたしを撮影していた枚数、なにげにお母様よりもおお……あ、ちょ、バラサナイからほっぺ抓らないでぇぇぇぇぇぇ!! それがバレて恥ずかしのも分かって、あ、ごめんってばぁぁぁぁぁぁ!!!
狐娘の可愛い写真を大量に確保しちゃうのが主になっていたメイドちゃん




