343話 お勉強の前に説明っと
少し長いです
あと説明会みたいなものです
ルミィたちにやっちゃうこと、それは~
「本日は皆様に精霊を召喚していただき、精霊との友誼を結んでいただきます」
と、さらっとシズクさんが説明したけど、ルミィたちだけでなくアリサも「え!?」って顔しながらちょっとポカーンとしてるわ。想定外だったって事だねぇ。
となると
「ねぇシズクさん、おそらく召喚できるって状態なのを実感できてないっぽいから説明要るかもだよ」
「確かにそのようですね。お嬢様がいらっしゃるので説明を少々省き、段階を少し早めた弊害ですね。それにしても、アリサまで同じ反応とは思いませんでしたが」
「え!? いえ、だって分かりませんよ!? お嬢様のことでしたらすべて把握できますけど、ルミィ様達の詳細まで把握しているというのは」
「ねぇアリサ、それはそれでちょっと違うとこだと思うよ……」
アリサが少しワタワタしながらシズクさんに答えていたけど、ちょっと違うところ入ってますよ、と。
そりゃまぁアリサってばわたしの能力やら身体関係やら、もしかしたら思考なんかも全て知ってるんじゃってくらいの反応しちゃうけどねぇ。まぁうちのメイドさん執事さんの全員がある程度知ってそうな気もしないではないのだけれど。
「お嬢様の専属メイドとしては十分育ってきていますが、まだまだ未熟ですね」
「そう言われましても!?」
「まぁアリサってば、わたしに対する従事以外はオマケって考えちゃうからなぁ」
「お嬢様!?」
「そうなのですよねぇ。専属メイドとしては問題無いのですけれど、従者のリーダー格になるのはまだまだ厳しそうで」
「リーダー格って聞いていませんよ!?」
アリサがすっごくワタワタしてきて、可愛いですね!
それにしてもシズクさん、アリサをリーダー格の一人にするっての、言っていなかったんだ。言わなかったせいでどうのこうのとかは特にないのだけれど。
「まーまー、アリサがそれだけ優秀って事だから、今後はもうちょっとがんばろっか」
「そう言われましても」
「だいじょーぶだいじょーぶ」
「そう断言する理由は?」
「わたしのアリサだからね!」
アリサが少し呆れたような顔したけど、そうとしか言えません。だってアリサ、わたしがお願いしたり希望言ったりしたら絶対に達成しちゃう子だもの。
まぁ今はリーダー格としての色々を学ぶって時期でも状況でもないので、特にどうのこうのする予定は無いのだけれど。
そもそもアリサの場合リーダー格うんぬんでなく、わたしのメイドとしてずっと居たいって方だからねぇ。
「少し脱線してしまいましたが、説明を始めます」
シズクさんが本題に入るため、魔道具を操作して画面にずらーっといろいろ表示したわ。
どらどら
「そもそもになってしまいますが、皆様は精霊の居ない世界から来たので、精霊力を持っていないと考えているかと思います」
その言葉にみんなうんうんって感じに反応してるね。
たしかにルミィたちは精霊どころか精霊力も霊素も無い世界に住んでいたので、精霊の召喚どころか精霊魔術とかも使えない存在だと考えていた。
とはいえ精霊関連の知識や技術は重要なので、うちに来てからバッチリ学んでもらっていたけど。力関係で知らない事ってのはだいぶ危ないのもあるしね。
そんなルミィたちだけど、実はちょっと体に変化が起きてるんだよね。
「ですが、こちら側で生活、特にこの屋敷で生活されていた効果で、皆様も精霊力が扱える状態へと変化しています」
「さらに付け加えちゃうと、どうやら召喚とか転移で呼ばれた人と同じような現象が起こってるみたいなんだよ。今回は召喚とかではなかったのだけれど、別世界みたいな隔たりがある移動だと同じようなことが起きるみたい」
「ですね。召喚などでこの世界に顕現した者は、召喚による付与よりも先にこの世界の魔素や霊素を体に取り込みます。その結果、魔法や術、精霊関係の能力が使えるようになると思われます」
「思う、ではなく思われるってのは、わたしたちが実際に召喚されることが無いから予測になっちゃうからなんだけどね。んで、この最初に魔素と霊素を取り込むだけど、環境によってその後の変化に差が出てくるの。シズクさん」
「こちらの資料ですね」
そう言って画面をぱっと切り替えてくれたけど、うん、みんなちょっとポカーンとしだしてるね。突然の内容ばかりで驚いてそうだなぁ。
まぁアリサには軽く話してあった内容なので、今度は驚いてないで冷静っぽい感じだけど。
「こちらの資料にある通り、魔素の多い地域で一定期間過ごした者は魔力がとても強い存在へと変化しますが、魔素が存在しない、もしくは極小な地域ですと魔力が低くなり、魔法や術も使えない存在になってしまいます」
「傭兵帝国の人が召喚繰り返しても魔法が使えないって人ばかりになるのがこれにあたるわけね」
こないだ行ったけど、ほんとーに魔素も霊素も少なかったからなぁ。しかもあまり気持ちの良いものでなかったし。
「そしてこの変化ですが、召喚された者が何度も変化するのではなく、一定期間の間に1度だけ発生します。残念ながら正確な期間は不明ですが」
シズクさんが資料を指差しながら説明してくれてるけど、そうなんだよなぁ。
召喚された人がこの世界に馴染んで術や魔法が使えるってのはそういうカラクリもあったわけだけど、より理想の場所へ行って理想の状態にするってのはどうも難しそうなのがね。変化が何度も起きるとか、変化までの時間がすっごく長ければそれもできたんだろうけど。
「そこで戻りますが、皆様はこの屋敷、つまり高品質な霊素が豊富に存在する場所に居られます。ということは」
「さっき言ってた変化が起こったときに、うちの霊素を思いっきり取り込んじゃったわけ。な・の・で~」
「皆様の体は霊素に適応し、精霊力も豊富な体へと変化した、という事になります」
ばーんとまとめたけど、あらあら、さっきよりもポカーンとしちゃってるよ。
これはあれだなぁ、無意識の変化で、なおかつすっごい精霊力使えますになっちゃってる状態だからだね。
しばしみんなが落ち着くのを待ちながらも、補足説明をちらほらと。
なんか、すっごく学校の授業っぽくて良いね。
「それでは精霊を召喚するための手順の説明を始めますね」
そう言って今度は精霊力の認識方法や制御方法、そして召喚方法の説明が始まったわ。
さすがにすぐにできるとは思わないけど、遅くても1ヶ月程度もあればバッチリじゃないかな?
「どの子を召喚するか楽しみだなぁ」
「無理や不可能って予想は無いんですね?」
「無いねぇ。だってほら、既に精霊さんが興味津々になってるし」
「たしかに」
そうアリサと話ながら部屋をよーく見ると、小精霊と大精霊が見に来ているからね。さすがに精霊神までは来てないけど。
「もしかして、お嬢様が居た方がというのは」
「こういう効果だね。わたしが不機嫌でなくニコニコしながら居れば精霊さんも安心というか、この人たちは大丈夫な人って印象が強くなるからね」
まぁわたしが精霊に「召喚に応じてあげて」ってお願いすればもっと確実ではあるけど、それは友誼でなく義務とか業務みたいな関係での召喚になっちゃうからダメなんだよねぇ。わたしもそういう方法は最終手段としておきたいし。
「なるほど。ですけど、なんとなく少し勇み足になっている気がするのですけど」
「あーそれね。実はそっちにも理由があって」
チラッと説明しているシズクさんを見るとこくんと頷いてくれたので、これもアリサに説明して大丈夫って事だね。
「えーっとね、実は厄介なことに、ルミィたちって悪魔化する危険性があったの」
「悪魔化ですか!?」
「うん。といっても自然に悪魔になるとかじゃなくて、悪魔に誘惑されたらコロッといっちゃう状態だったの」
ほんとーにコロッといっちゃう状態だったのがナントモカントモ。
「どうしてですか?」
「それはね、さっき説明していた内容に繋がるんだけど、今のルミィたちは環境によって能力の付与ができちゃう状態のせいで、もしも悪魔の力が豊富な環境に連れていかれたら、悪魔の力がバッチリ身に宿っちゃう状態なんだよ」
「それってものすごくマズいじゃないですか」
「そうなんだよね。悪魔がぽこじゃが来るとかうちに侵入するってのは無いだろうけど、確実じゃないからねぇ」
悪魔の転移関係っていまだに謎なので、完全に防止できないのが痛いわ。
「でも、それと精霊力はどうつながるんですか?」
「んとね、悪魔って精霊関係との相性がすごく悪いのは知ってるよね」
「相当悪いとは教わりました。相対したことは無いので推測にはなってしまいますけど」
「会わないのが一番だけどねぇ。んで、相性が悪いって事は対抗力っていうか、あがなう力が存在するの。そのおかげで、悪魔の力に汚染されても悪魔化しないで済むんだ」
まさに、嫌いな者同士は仲良くしません、変わりませんって状態なのです。
「という事は、ルミィ様達に対しても」
「うん、悪魔にならないよう精霊力をしっかり保持し、力も使えるようになってもらうんだ。変化が収まる期間が分からないから、先に精霊力を使えるようにしておきましょうって方法ではあるんだけどね」
悪魔化しないための方法なのです。アリサも納得って顔してるね。
「なるほどわかりました。それで、お嬢様の本心は?」
「え、えーっと?」
「私が見抜けないと思っていますか~」
「あぅ」
そう言いながらアリサがわたしのぽっぺをフニフニしてきて、こう、ちゃんと話しましょうねって顔をしてるんだけど。
むぅ、これは逃げられないわね。
「ま、まぁ、ちょっとした実験をね」
「実験ですか?」
「いや、わたしが主導してじゃないよ? ただ、お母様とシズクさんにちょーっと言っちゃって」
「はぁ……またやっちゃったんですか」
「てへ」
すっごく呆れた顔しながらもフニフニしてますねアリサさん。
「だって気になるでしょ? あの世界の魔王の力を宿す人たちがこっちの精霊力も扱えるようになるとか」
「それは、まぁ」
「両方使えるって事は、さらに別の力が顕現する可能性もあるって事だからね」
「可能性は低そうですけど、確かにあり得ますね」
「だよねだよね。どうしてもそういうのが分かっちゃうと、やっぱ見てみたいとか試してみたいって思っちゃうんだよねぇ」
うんうんって頷いちゃうけど、冷静に考えるとヤバい科学者みたいな考えしてるな、わたし。悪いことはしてないから問題にはなってないけど。
「それにほら、お母様とシズクさん、ルミィも含めた全員をうちの従者にしたそうだからね。その後押しをしたくなっちゃったんだ」
そう、お母様とシズクさんの魂胆をわたしはバッチリと知っているのだ!
「後押しって」
「うん、アリサの考えている通り。うちの快適性とかにどっぷりにするだけでなく、うちでしか使えない技術とか力を習得してもらって、他には行きたくないなぁって感情にしちゃおう大作戦だよ」
ルミィたちの今後はまだ未確定だったから、だったらうちで囲える状態にしちゃおうって考えてるからね。
「となると、他国が何か言ってきそうですねぇ」
「そこはねぇ。なのでその対策として、わたしが作った機械人形を貸し出すって方法も考えてはいるんだけどね」
「イーコとネーコみたいな機械人形をですか?」
「少し性能を落としたものにはなるけどね。ママ様が良い感じに性能落としたのを作ってくれるそうだから、それを渡すになるかな」
イーコとネーコと同性能はかなーり問題だからなぁ。うちや王城で使うのは大丈夫だけど、他の家や他国に売る場合はかなーり問題。多少性能落とせば量産化できるって考えてたけど、これでなんで量産化できると思っていたんだよってくらいの超高性能だったようだし。
だけどしょうがないのです。物を作る時ってわたしに存在する研究者魂が「妥協はいかんぜ?」って訴えちゃうから!
「なるほど。それにしても、そこで機械人形がつながるとは思ってませんでしたよ」
「わたしも思っていなかったよ。販売したらうちの国の目玉が増えるかなぁ程度に思ってたのが、それ以上だったようだし」
実際に見せたとき、ママ様もちょっと驚いてたなぁ。怒られるとかは一切なかったので問題はなかったけど。
「ほんと、さすがお嬢様ですねぇ」
「ん? どういうことかな~?」
「内緒です」
「ちょっとぉ!?」
明らかに今の、技術力があるとかそういう意味でじゃ無いよね?
ちょっとアリサさん? わたしのほっぺフニフニしながら何を思ったんですか?
隙あらば軽いイチャイチャ




