336話 ヤバいジジイ再び!?
さてさてどうしようかな。
わたしとしては完全な敵って思ってるので消滅させたいのだけれど、謎の悪魔化どころか天使化とかいうのになった存在だからなぁ。情報収集とかのためには確保しといた方がよさそうなんだよねぇ。
だけどやーっぱり消し飛ばしたいし、う~ん……。
そんなことを悩んでいたら、完全に心は折れて無かったようね。
「まだだ、まだ終われない!」
「おっと危ない」
ドンッと地面を叩いたと思ったら、さっきよりも強い悪魔のモヤモヤがぶわーっと噴き出してきたので、ひょいっと後ろに下がってしまったわ。
このモヤモヤ、たとえダメージにならなくても気持ち悪いので触れたくないのです。
「体への負荷など考えない! 天使の力、限界突破だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うわぁ、無理やり力引き出そうとしてる」
よろよろしながら立ち上がたら、ムンッて構えて更にモヤモヤーが増えてで、なんかの演出みたいですね。
まぁ強化されるって事なんだろうけど
「ゲームとかじゃないんだから、何もせずそれを見ているわけないでしょうが」
月華をぎゅっと握り直して、タンッと駆けだし。
一瞬で接近したら、そのまま一気に~
「ぶったぎる!」
「な、なにぃ!?」
片腕をズバッと斬るように斬りかかったけど、ガッキーンって音がして防がれたわ。
というか、何なんですかこの展開は?
「やれやれ、これはどちらも想定外ではないか」
「げ、ゲンザブロウ殿!? どうしてここに!?」
そう、そのゲンザブロウとかいう奴が割り込む様に突如現れて、刀でわたしの月華を防ぐだけでなく、もう片手で糞男を押さえつけてモヤモヤの変身っぽいのを中断したわ。
う~む、気配を一切感じられなかったし月華も難なく受け止めてもいるし、結構すごい奴かもしれないわね。
とりあえずヒョイッと下がって安全確保っと。
「判断が早いな。さすが我の獲物だ」
「うげぇ、なんかすっごい嫌な感じなんですけど」
ニタァって感じの笑みでこっち舐めるように見て来てて、結構気持ち悪いです!
しっかしこいつも悪魔、しかも糞男と同じで天使化とかいうのになっているのか。ぱっと見は鬼族の角とかが生えて筋肉ムキムキなジジイが侍っぽい姿をしてるだけど、背中に赤い鳥の羽っぽいのは2枚生えてるわ。
色が違うのは属性とかがあるのかしら? ちょっと調べたいとこだけど、それよりもまずは時間を稼がないと。
さっき受けとめられてた感じから、おそらくこのジジイは今のわたしよりもだいーぶ強い。でなければあんな簡単に止められないもの。
ただ、全然押し込めなかったって感じはしなかったので、おそらく10分、もしくは20分くらいかな? そのくらい経てば絶対安全ってくらい差ができるはず。
問題はその時間が稼げるか、だけど……。
「しかしディアム殿、これはどういう事だ? 状況確認だけのはずだったろうが」
「それは、ワタシもすまないと思っている。だが! 目の前にあの獣が居たんだ! ワタシの、ワタシのミツキをたぶらかす悪党が!」
おっと、なんかすっごい睨まれて、さらに叫ばれてますね。
だけどこれはちょっと運が良いわ。時間稼ぎ、勝手にしてくれるってことだから。まぁ逃げられたらお終いなので、隙を見て攻撃はする予定だけど。
「なるほどな。我もあの狐に対しては思うところがあるからな、挑みたくもなる」
「なに!? そうなのか!?」
「以前は圧倒的な力の差で、敵うことはとうていできない存在だったからな。しかし、今の我は天使化している! であれば、その力の差もとうに埋まっていると見て間違いなかろう!」
……はい? ちょっと意味が分からないこと叫んでるよあのジジイ。
なんで強くなったらわたしとの差が埋まってるになるのかしら? とゆーか、わたしとの差があるとかなんとか言ってるけど、どこかで会いました?
そんな考えが顔に出ていたのか
「くっくっく、我の事を忘れているようだな」
「えーっと?」
「なに、釈明する必要はない。確かに当時の我では、敵どころか存在すら把握されないような虫けらだったからな」
「はぁ、そーですか」
ずいぶんと自虐してるなぁ。嫌いな相手なので、それを見て同情とかは一切しないんですけど。
「我との初見はダンジョン、アルネイアでの学園ダンジョンの時だ」
「学園のダンジョンの時? ん~?」
「我は助っ人として参加したが、覚えていないか? 貴女を喰らうと言ったのを」
そう言って懐から何かを取り出して、ガリッと食べたわ。
はて? 食べた姿だけなのに、なんともすっごい嫌なものを見た感じが出て
「ん~……ん? あー、あの魔石食べる変態ジジイか!」
気持ち悪さからか、わたしの脳内にある嫌な物リストからぴかーんと出てきたよ。嫌いなもの覚えない方だけど、相当印象にあったんだなぁ。
「あの時と違い、我と貴女との差は、わかるだろう?」
「つまり、わたしと戦いたいって事かしら?」
月華をちゃきっと構えなおしてっと。
う~む、時間はある程度稼いだけど、まだ差はあると見た方が良いわね。
となると、すこ~し安全策をとりながら攻めた方が良いか。
「そういうことだ。我と一戦、交えてもらおうか!」
「ちょ、ゲンザブロウ殿!?」
「すまんなディアム殿、我にも譲れないものがやはりあるのでなぁ!」
うん、ほんっとコイツらの会話めちゃくちゃで繋がっていませんね!
もっとこう、どうして来たのかとか帰りましょうとかの会話が出たけど決裂し、そこからわたしに挑んでくるとかの方がよくあると思うんですけど。
まぁわたしも少し挑発しちゃったけど!
「では……参る!」
そう叫んでジジイが刀を構えながら突っ込んできたけど、回り込むとか残像のせるとか、そういうからめ手はしないみたい、ただ直線で来てるわ。
ふ~む、このまま受けるか回避するか……うけてみようか。
今の差がどのくらいか、ちょっと確認だよー。
「受け止めようとするか、それも良し! ならば喰らうがいい! 鬼神奥義、鬼神炎獄表臨斬!」
そう叫びながら黒っぽい炎と魔力が混じった切り落としが来たけど、なるほど、結構ヤバめの一撃だわ。
なので~
「術技、烈破! それと術技、烈震!」
両手の月華を下から交差するようにしていって、術技を発動させながら受け止める!
わたしの術技とジジイの攻撃がバチーンとかち合った瞬間、ドガーッと衝撃波やら魔力の嵐やらが周囲に漂ったわ。これは……結構やべー威力です。
「くくっ、まさか受け止めるとは! さすが我の欲する女よ!」
「うげぇ、またまた気持ち悪いこと言ってるよ」
ニタニタァって感じに笑っているので、さらに気持ち悪いです。わたし、そういう存在への好感度は一切ありませんので!
それにしても、ちょっとこれはギリギリね。二つの術技で受け止めたけど、なんとか耐えることができたって状態。腕が結構痛いし、足がガクッて地面に着いちゃいそうだよ。
「だが、このまま耐えることができるかな!」
「げっ!?」
「鬼神奥義、鬼神炎獄裏臨斬!」
「ちょ、まっ!?」
技名に表があったから少し嫌な気はしたけど、攻撃が表と裏の2種類とかマジですか!?
さっきの攻撃は力を爆発させて拡散させるような攻撃だったけど、今度のはその爆発を剣に集約させ、さらに鋭くて重い攻撃になって襲ってきたわ。
って、ちょっとほんとーに重いんですけど!
「ぬぐぐぐぅ」
「はーはっはっは! 我との差が埋まるどころか、逆に差が付いたようだな!」
「こ、こんのぉ」
あまりの重さに膝をガクッとついちゃったけど、まさかここまでの差ができてるとは。
さっきの糞男なんて雑魚中の雑魚だったけど、このジジイはちょーっとヤバ過ぎる。今のわたしがだいぶ押されるとか、笑えないくらいのヤバさだよ。
これ、時間稼ぎするまで生き残れるかしら……。
すっごい不安になっちゃったんですけど。
ジジイとかは悪魔化の影響で、割とめちゃくちゃな状態
ちなみにジジイは103話に出てきてすぐに消えた残念な敵です




