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33話 面倒事は続くもの

「お嬢様、お待たせしました」

「おつかれさまー。大丈夫? 怪我してない?」

「はい、掠ってもいませんよ」

「一応ちぇーっく、ぺたぺた」


 うん、本当に怪我してないみたいだね、よかった~。

 だけどこれは、う~ん?


「アリサちょっとここ触るねー」

「あ、はい。んっ」


 ちょっとアリサ、その反応は色っぽいです。って、それは置いといてっと。

 ん~やっぱりそうか。でもどのタイミングでだろ? 戦う前は違ったはずなんだけど、戦ってる最中? それともその前? わからん。


「あ、あの、何か問題があるのでしょうか?」

「あーえっとね、魔人に進化してるよ」

「え?」

「まぁそうなるよね。正直あいつとの戦い、もうちょっと苦戦すると思ったけどそうじゃなかったし。戦闘中かその前くらいに進化してたと思うよ」


 遠距離で戦えば余裕だとは思ってたけど、接近戦でも押してたから妙だと思ってたんだよね。だけど進化してたらなっとくだわ。


「実際に魔石見てみる?」

「できれば見てみたいです」


 期待に満ちた目だね。ならわたしもがんばっちゃうよー。


「それじゃ見せてあげるね。術式展開、幻想の光! ちょっと時間かかるからこのままね」

「は、はい」


 幻想の光、触れた物の幻を作る術。これで今触れている先のアリサの魔石の幻影を作れるけど、ちょっと調整が難しいな。魔石が別次元にいるからしょうがないけど。





 ん~何とかかな、結構時間かかった。魔石を実際に出すよりは安全だけど、結構大変だね。

 後はこのまま維持してっと


「よいしょっと。はい、これがアリサの魔石の幻影です」


 アリサから手を放すと、何もなかった手の上に一つの魔石の幻影が現れる。色は青く透き通っている、間違いなく魔人に進化した物だね。


「これが私の魔石、ですか。なんでしょう、不思議な感じです」

「でも綺麗だよ? それに大きさもわたしがあげた時よりもだいぶ大きくなってるし。進化したばかりなのにここまで透き通ってるのも珍しいかなぁ」

「そうなのですか?」

「うん。本で読んだ限り、濃い青で透明度はないはずなんだ。でもアリサの魔石はすでに結構透けてるんだよね。これなら天魔もすぐかなぁ」


 確か本だと『透明度が出てくるのに早くても10年』だったはずなんだよねぇ。わたしの魔石だったから早いのかな? まぁ悪いことじゃないからいっか。


「すぐですか?」

「そうだよー、たったの100年くらいじゃないかな?」

「あ、あの、お嬢様、100年はすぐじゃないです」

「そうかな?」


 アリサ、そんな呆れた顔しないで。

 あーでもそっか、長命な種族特有の感覚のせいで、わたしとアリサじゃ時間の感覚が結構ずれてたわ。


「それに100年となると、私が生きている間には無理そうですね……」


 あら、アリサがすごい申し訳なさそうな顔してる。これは人族の寿命を考えているせいだね。

 不老不死でない狐族の平均寿命がだいたい1000年だけど、只人族だと平均100年くらいだっけ。結構差があるねぇ。


 ん~、なら早めに言うべきかな。


「えっとね、実はアリサに謝らなければいけないことがあるの」

「なんでしょうか? 私としては身に覚えがないのですが」


 さっぱりって顔してるね。むしろ身に覚えがあったらちょっと怖いけど。何かアリサが不快に思うことを無意識にしてたってことだからねぇ、コワイコワイ。


「さっき狐の祝福とかやったでしょ? あれって雰囲気でとかノリじゃなくて本当にあるの」

「え? それってどういう?」

「簡単に説明すると―ー」


 狐の祝福、これはわたしたち狐族特有の力。

 祝福を受けた者は与えた者と同じ時を生きられるようになる。祝福を与える側が不老不死であれば、受けた側も不老不死になるというちょっとすごい能力。


 ただ、その力のせいで不老不死を欲する者たちに捕まり、強制的に祝福の力を使わされた過去がある。ほんと、この力のせいで余計に狙われやすくなるとか笑えないわ。


 そもそも狐族に限らず、どの種族でも天魔に進化する際に不老不死となる素質を得ることはできる。ただし素質を得るだけであって、その能力が開花するかは別の問題。

 どうすれば開花するのか、何をすれば開花しやすいのかなど、いまだに解明されていない進化の謎の一つでもある。わたしのように不老不死の能力が開花した状態で生まれてくる者までいるし。


 うん、なんかすごいこと説明されたって顔してるね。

 確かにこれは古文書の一部にしか書かれていない内容だから、すごいことなのはたしかだね。


「とゆーわけで、アリサはわたしが生きている限りは不老不死です。不死って言っても老衰で死なないだけで、怪我しないとか病気ならないって効果じゃないから注意ね。ちなみにわたしが死んだらそこから人族みたいに老衰していきます」


 不死になれば無敵になるってわけじゃないからねぇ。

 それに不死の者だって消滅させられたら死んじゃうし、不死の者だけに効果がある毒や魔法まである。しかも魔石が砕かれたら不老不死の力も失っちゃうしなぁ。


「さっきのあれで、ですか」

「そそ。正確にはあの時ちょっとした術と魔力をアリサに流し込んだって、顔真っ赤だよ? 思い出してまた意識しちゃったのかな、乙女だねぇ」

「だ、だってですね!」


 あらあら、さらに真っ赤になっちゃって、ほんとかわいいなぁ。


「はい落ち着いてー落ち着いてー。というわけでわたしのせいで、アリサはわたしと同じ時間を生きることになったわけです。ある程度体が成長したらそこで老化も止まるよー」

「な、なるほど。でもそれなら問題ありませんね。もともと私はお嬢様に一生涯尽くすつもりでしたので、私の方が先に居なくなることが無くなったので安心しました」


 そう言ってアリサはニコニコしてる、かなりポジティブだね。

 でもアリサ、それってつまり旦那さんも不老不死な人探さないといけなくなるんだけど、わかってるのかなぁ……。いっそのことわたしが貰っちゃう? って何バカなこと考えてるんだか。





「さてと、んじゃアリサはここで休んでてねー」


 アリサを物質創造で作ったソファに座らせようとするけど。


「あの、何かされるのですか?」

「あー、うん、これはわたしの問題かな。だからアリサはちょっと待っていてね」


 心配そうな顔してるね。そんな顔されると困るし、う~ん、とりあえず抱き着いとこうか。ぎゅーっと


「あ、あの、お嬢様? その、いつも言っていますが急にですと、その」

「心配しなくても大丈夫だよ。ちょっとめんどくさい奴とお話しするだけだから。ただね、もしもアリサが傷ついたら嫌だからここに居てもらうの。ここには結界張っておくから大丈夫。それにすぐそこでお話しするだけだから、ね?」


 戦わずに話し合いだけで終わればいいんだけど、たぶん戦いは避けれないと思うからなぁ。


「……わかりました。でも、もしお嬢様が」

「危険でもちょっと手は出さないでね。これはわたしからのお願いなの。だから出来たら破らないでもらいたいなー」


 絶対アリサ、飛び出すからね。こうでも言わないとダメそうだし、今だって複雑な顔してるしねぇ。


「そう言われますと、でも本当に危ない時は出ますからね」

「は~い。んじゃちょっと待っててね~」


 最後にもっかいぎゅーっと。まんぞくまんぞく、女の子同士でじゃれるとか前世にない特権だね!

 それじゃ気持ちを切り替えていきますか。





 アリサからすこし離れて、えっと、なんていったっけこの勇者。まぁこいつのいるとこまでくればいいか。


「いい加減に出てきたら? ずーっとわたしたちの事みてたでしょ? それともただのストーカーの変態さん?」


 ちょっと大きな声で叫ぶ。さて、どこから来るかな。

 って、あら、案外すぐそばから出てきたね。ふーん、光学迷彩の術に気配遮断、それと結界で匂いも消してたわけね。


「よく気が付いたな。さすがは金色のってとこか」


 はぁ、まさかここでこいつと会うことになるとは。運命とか宿命とか、そんな感じなのかね。


 最初からおかしかったんだよね、この勇者が偶然ではなく意図してわたしたちと遭遇するとかありえないことだもの。


 そもそもダンジョンは無数に存在しているし、階層だって相当ある。おまけに休憩スペースは同じ階層内でも複数あるから、それなりの探知能力が無ければ無理。

 だけどこの勇者にはそんな能力は無いし、探知用の魔道具すら所持してない。偶然遭遇だとしたら相当の強運の持ち主だけど、その線は非常に薄い。


 でもまぁコイツが手を貸していたのであれば納得。

 認めたくないけど、おそらくコイツはわたしに近い存在だもの。


 だって、


「そういうあなたは銀色のって言うべきかな? 初めて見たよ、家族以外の狐族って」


 出てきたのは銀色の毛を持つ狐族の男、身長からたぶん18歳くらいかな。そして尻尾が2本ね。


「せっかくなので自己紹介しよう。俺の名前はカイル、天狐の里の次期種族長だ」


 ドヤァって感じですね。

 なんか手の平こっちに向けてポーズとってるし、あのロリコン勇者を彷彿とさせるなぁ。


 しかし天狐の里ねぇ。他の狐族の里より力に優れた者が多く、狐族のリーダー的なところだっけ。

 お母様も昔住んでいたらしいけど、過去になにかあったらしく里を去ったって聞いたなぁ。


「あ、そうなんですね。わたしはユキって言います。うちの神社で巫女さんやってます!」

「なるほど、ユキというのか。しかし、ふむ、なるほどな」

「ちょっとそのいやらしい目でじろじろ見ないでくれます?」


 あれはこっちの魔力とか調べてる顔だね、いやらしいのは間違いないけど。

 なんかひじょーに面倒なことになりそうだなぁ。

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