328話 ヒトガタはすっごいの
いろいろと計画がずれてきたけど、さてさてどうしたものか。
ガーディアンもろともみんなドーンとぶっ倒すがこれで完全にできなくなったどころか、誤射しちゃいましたーで倒すのも無理。
さらにここいらに居るガーディアンを無視して中枢部に行き、ガーディアンに指令を出している機体、もしくは装置を破壊しようって作戦も無理そうなんだよなぁ。
はぁ……ちょっと嫌だけど、ガーディアンを全部倒していきますか。
異世界から来た勇者の様なバカバカしい正義の味方みたいなこと、やりたくなかったんだけどなぁ。
ほーんとやれやれです。
「どーするの?」
「そうだなぁ……ガーディアンの数もそうなんだけど、戦闘している兵の数もかなり多くて、しかもごちゃごちゃしてるからなぁ」
ぐるーっと見渡す限り、ガーディアンと戦闘中なのがわんさかわんさか。
これだと広範囲を攻撃できる術式を使って、ある程度数を減らしていきましょーって方法も難しいわ。
「くそっ、オレの殲滅用ウェポンがあれば」
「ん? なに駄物、作戦でもあったの?」
「おいおい、馬鹿にしないでもらえるか? このような殲滅戦、オレが作戦を練れないわけがないだろ」
ドヤリながら反論してきたけど、そうなんですかね?
そのわりに広範囲攻撃できる装備を持ってこなかった状態みたいだけど。敵が大量に居るっていう想定、できていなかったって事なんじゃないですかね~?
「今できないのに実はできたみたいな感じ、嫌だね~」
「ほんとにね~。まぁそれはおいといて、それじゃやりますか」
さてさて、まずはポーチからヒトガタを取り出してっと。
ん~、50体も居れば十分かな? まずはヒトガタ10体をわたしの周囲に配置っと。
「これってヒトガタだよね?」
「そだよ~」
「10体だけ?」
「ふっふっふ、それはね~」
手を叩いてパンッって音鳴らすと、ヒトガタの上下左右に光の塊が現れ、すぐにその光がヒトガタへと変化していく。
それが10体のヒトガタ全部で起こるので、合計50体に!
「っと、こうなるわけ」
「おぉー、すごく手品っぽい!」
「まぁねぇ。50体取り出すよりも随分と速く済むから、こっちの手順の方がわたしは大好き」
50体取り出すってのもできるけど、それだと何度もポーチから取り出さないとダメだからなぁ。
しかもわたし、まだ手も小さいので一度につかめるのも少ないため、どうしたって取り出す回数が増えてしまうし。
「それじゃ10体は残って、40体は行きなさいっと」
そう言うと、40体がシュパパパパッと飛び、それぞれがどんどんガーディアンに接近し、そのままサクッと魔力による圧縮や切断や殴打をしてどんどん倒していく。
よしよし、ガーディアンが魔力に弱い状態のもあってドンドン片付いていくね。
「んじゃわたし達はこのまま先にって、どうしたの?」
傭兵帝国の兵士と駄物がしどろもどろというか、なにが起こってるんですかって言う慌てぶりになったのもそうだけど、メイまでポカーンとしちゃったよ。
「お、おねーちゃん」
「な~に?」
「な、なんでそんなケロッとしてるの?」
「へ?」
「だってあのヒトガタ、相当な魔力使ってるよね!」
「あーまぁそうかも?」
メイがガーディアンをバシバシ倒してるヒトガタを指差しながらそんなこと言ってるけど、確かにそれなりの魔力を纏ってるね。エンシェント級の魔物なんて一発よ~ってくらいは余裕であるよね。
「なのにおねーちゃん、どうして魔力減った感じがしないの!?」
「なんでって……あーそういうことか」
メイがポカーンとしたのも納得納得。
たしかにヒトガタの様な使役する物が魔力を使う場合は、術者が発動に合わせて魔力を随時供給するか、事前にドカッと付与するなどの手順が必要だからね。
だけど、今のわたしはそのどっちもしていない。そのため魔力の変化も無いので、メイもちょっと驚いたわけだね。
「それはね、このヒトガタを使ってるからなの」
ポーチからヒトガタを1体取り出し、それをメイに手渡す。
うん、持った瞬間に「マジ!?」って顔したね。
「これ、魔力とか纏ってない!?」
「そうだよ~。普通のヒトガタと違って、わたしが使っているのはちょっと特別製なんだ」
「すごいってこと?」
「そうなるかも? 大きな違いは使い捨てではなく何度も使用できる耐久性があるのと、事前に魔力と精霊力を思いっきり込めて作っておけるの。欲に魔力と精霊力を事前に込めておけるのは便利で、起動後にすぐ使えるっていう利点と、再付与してさらに強化するってのもできるんだよ」
状況に合わせて時短も強化もでき、何度も使える便利な道具です。
「それって、ヒトガタって言うよりもスッゴイ魔道具じゃん!?」
「そうかも? あまり考えて無かったけどねぇ」
魔道具っていう考えでなく、ヒトガタっていう考えで使ってるからなぁ。
まぁお母様も、うちで使う術札やヒトガタは他国や他者に渡さないようにって注意してたから、技術はそうとう盛り込んでるってのはわかってたけどね。
さてさて、そんなヒトガタの活躍はおいといてっと。
「それじゃいくよー」
ヒトガタがどんどん倒して安全が確保できてきたので、トコトコ進みましょー。
「こ、これがレグラスの女王の系譜、ですか……」
「これ、どう報告すれば良いんですか……。我々が聞いていた戦力より、二段も三段も上の戦力ですよ……」
おっと、傭兵帝国の人がなんかガクガクしてますね。
まぁ前後左右至る所に居たガーディアンが、小さなヒトガタがススッと接近するなりドバーンとどんどん倒していっちゃってるからなぁ。
しかもガーディアンに苦戦していたのだから、さらにそういった反応になっちゃうわけね。
今のガーディアンの設定知ったらもうちょっと違う反応になるかもだけど、それは言わないでおきましょー。
「そういえば、何でわたしとメイを間違えなかったの?」
「え? あ、あぁ、それは貴女の情報が」
「わたしの情報?」
「年齢の割に幼い童女と聞いていたので」
「年齢の割に幼い……」
「ちょっと、おねーちゃんのダメージがすごいんだけど!?」
やっぱりわたしの情報ってそういう事かいな……。
いやまぁ別に悲観はしていませんよ?
そりゃぁメイと並んだらハッキリ差が出ちゃうけど、わたしの身長って七歳児とかそこらくらいだし、顔もそれに合わせてかまだまだ童顔だけどさー。
しかもわたし達長寿が当たり前の種族の場合、精神面とかの成長も結構遅いので、割と子供っぽくなっちゃってるけどさー。
だ・け・ど、それがわたしを判別する情報になってるって、どうなのよ……。
もうちょっと別の情報ないんですかね?
「しかし、まさか我々の知らない“姉君〟まで居たとは、想定外でした」
「え? 姉? メイが?」
「違うのですか?」
「へー……そーなんだぁ……」
「おまえら! あたしのおねーちゃんがひっじょーに落ち込んだじゃない! 死にたいのか!」
あー、うん、メイがブチ切れるのはいいんだけど、その、ねぇ……。
オカシイナ、わたしが思っている以上に外見と性格、わたしの方が幼いのかしらね……。
このままだと本当に落ち込みそうだし、あまり考えないようにしよう……。
「と、ところでおねーちゃん!」
「おっと、急にグイっと来たね」
「おねーちゃんって、技術面が相当すごくない?」
「そうかなぁ?」
メイがさっきまでの空気はさておき、結構目キラキラさせてるけど、そうなのかしら?
「だってヒトガタ50体、何も負荷なく操作しているんでしょ?」
「いやいや、今は操作とかはしていないよ」
「そうなの?」
「うん。今は操作ではなく、ほぼ自動で動いてる状態だよ。召喚獣への指示と同じ感じって言えばわかりやすいかな?」
敵をどう倒すとか何を守るとか、そういうのはヒトガタ起動時の術式にサクッと書き込んじゃったからねぇ。
書き込まず口頭で言ってもよかったけど、あまりそういった技術は傭兵帝国に見せたくないし。
口頭でも制御できるっていうの知られたら、何かの文献とかをきっかけに同等の技術を作ってくるとかもあるからねぇ。
「なのでそこまで技術は高くって、どうしたの? すっごいポカーンとしてるけど」
「そりゃするんだよ!」
「お、おぅ、ずいぶんバシッと言ってきたね」
「だってそんなこと、あたしも難しくて無理なんだよ!」
「うそん!?」
ジッとメイを見ちゃったけど、本当なんですかそれ?
「あたしも似たことはエレメントオーブっていうのを使ってできるけど、そういった制御はすっごい大変なんだよ! それだったら召喚獣使おうってなるくらいなんだよ!」
「そ、そうなのね……」
「そうなんだよ!」
まじかぁ……。
むかーしエレン達も無理って行ってた記憶があるけど、あの時はてっきり技術がまだまだ足りないからだと思てたのに、わたし以上の力とかを持っているメイも無理なのかいな……。
あれ? そういえばこの技術、同じ事できるのってお母様とお父様、それとシズクさんだけだったような……。他のメイドさんとかは再現微妙だった記憶あるなぁ。
もしかしてわたし、本当に技術面がすっごいのかしら? だとしたらちょっと嬉しいですね!
技術面は妹に勝った!




