326話 突っ込むしかないのかもしれない
さてと、それじゃ軽く倒しながら進もうかしら。
ただなぁ
「もうちょっと先を見ると思いっきり戦闘してるんだよなぁ」
「大量だよね!」
「ほんとーにね。ガーディアンに押されているのもあってか、1体倒すまでの戦闘が長引いてるのからなんだろうけど」
先を見れば見る程、兵士とガーディアンがすっごい大量なんだよねぇ。目の前にも結構いるけど。
「こうなると、軽く倒すでなくガッツリと戦闘することになっちゃうかなぁ。でもそうなると認識疎外の術が意味なくなっちゃうから、どうやって進むべきか困っちゃうわ」
「認識疎外の術って、道端にある石ころみたいに、どうでもいい存在に思わせるのだっけ?」
「そそ。一度認識されたらダメだけど、それまでは気にすることが無い存在、みたいな状態になるね。まぁ完全に隠れるとか認識できないようにする術もあるけど、今回は使えなかったからねぇ」
目の前で大声出してもバレない術もあるけど、それはわたし個人に付与するのだからなぁ。今回みたいな状況だと使えないのが残念だわ。
「まぁ完全認識にはまだなっていないから、移動速度をさらに上げつつ戦闘をできるだけ避けてていけば、バレにくい状態を維持して進めるかなぁ」
「はっ、随分とふざけた事を言っているな」
「はい?」
駄物が歩きながら、なんか話に割り込んできたんだけど。
「目の前で助けを求める物が大勢居るのに、何を迷う」
「助けを求めるって、ただの劣勢なだけじゃ」
「それを助けようと思うのが普通だろ!」
「普通って言われても、ねぇ……」
コイツの言う普通って、いわゆるなんちゃって正義感とか英雄になりたい願望とかのじゃないかなぁって思っちゃう。
そもそもだけど、わたしとメイは国家間の問題とかに発展しなければ、全部まとめて消滅させちゃいたいって思っているわけで。そして、その考えの方が普通って考えちゃったりもするわけで。
コイツとは考えとかがまるっきり違うんだよなぁ。
「……おねーちゃんの邪魔をするなら……殺すよ?」
「邪魔などしないさ。オレがもっと効率よく、そして利益のあるよう導いてやるだけだ!」
「それが邪魔なんだけど……」
「殺っちゃう?」
「うんって思い切り賛同したくなったけど、ダメだからね?」
駄物の国がどういう対応してくるのか全く分からない以上、あっさりと始末はできません。
すっごく邪魔だけど、始末できません!
「とりあえず駄物、それ以上進むのは止めなさい。認識疎外の効果が薄まる」
「くだらんな」
「はい?」
「お前が認識疎外をするのは戦闘を避けるためなんだろ?」
「それ以外にないでしょ」
なんかドヤリ気味になってるけど、何が言いたいんだコイツ。
「だが、その理由が戦闘による消費を抑えるためでなく、ただ見つからないようにするなど、おかしいだろ!」
「おかしいって、いやいや、わたしの立場とか環境、聞いたでしょ?」
面倒だったけど、今回はちょっとフクザツなので、ここに来るまでに軽く説明してきた。
嫌いな奴に説明とかすっごい気持ち悪くなるけど、今回はすっごく我慢してやったんですけど。
「それが間違っている! なぜお前は力を隠す!」
「隠すって、だーかーらー」
「力があるなら惜しみなく使い、彼らを助ければすべて解決だろ!」
「解決って、なにその危機的現場に駆け付ける正義の味方的な考えは」
ずいぶんと大声になってきたけど、ほんとなんなんですかね。そういう正義の味方ごっこがしたいお年頃なんですかね?
「だがオレは違う!」
「違うってまた大声で、いいかげんに」
「悪しきものを倒し、弱者を守る、それがオレの使命だ!」
そう叫びながら地面に片膝着き、左腕の機械部分に右手を乗せだしたけど、いやホントいいかげんに
「アタッチメントマインドカバー、起動しろ!」
またまた大声でそんなことを叫んだら、ぶわーっと全身の鎧っぽいのが青く光り、どわーっと魔力が上がってるのが分かるわ。
魔力をあげる機能って事なのかな?
とゆーか、さっきまで全然魔力が無い感じだったのに、かなーり高いような。
ってそんなことよりも
「お前、いいかげんに」
「行くぞ!!!」
「ちょっ!?」
バゴンって大きな音がするくらい地面を蹴って、駄物が突っ込んでいったわ。
そしてガーディアンに接近して
「砕けろぉぉぉぉぉぉ!!!」
右手を突き出しながら突撃したわ。
どうやら相当魔力が高くなってるようで、弾かれずにガーディアンのお腹部分を粉砕してるわ。
って、いやいやまてまて
「ねぇメイ、駄物ってもしかして」
「うん、嫌な奴だけど結構強いよ。あたしもよくは知らないんだけど、装備との相性とかが良いらしく、魔力とかもかなり高くなるみたいだよ」
「それであれか……」
駄物がそのままバッコンバッコンとガーディアンを蹴散らしてるんだもん。
たしかに魔力に対する強化は無いガーディアンだけど、それにしたって随分と倒すのが早い状態。
なるほど、メイの婚約者と自称するだけあって、装備によるのかもしれないけどそれなりに強い存在ってことか。
とゆーかー
「それよりも、どうしよう」
「あいつじゃなく、あたし達をジッと見る人がなんか多いよね」
「だよねぇ……はぁ……」
あきらかーに、駄物が突っ込んだ時くらいに認識疎外の効果が完全に無効化され、わたし達の存在がバッチリと気付かれる状態になっちゃったわけで。
認識疎外の術の欠点はこれもあるんだよなぁ。
範囲内で術者以外が強い力を出すと無効化されるってのと、無効化されたら再度術を展開しても阻害できず、バレバレの状態になっちゃう。
「こっち側でもわたしの存在、結構流れてるからなぁ。しかも」
「あたしも居るからね!」
「そゆこと。はぁ……ちょっとほんとーにあの駄物、邪魔すぎるんですけど」
ここまで存在がバレちゃったってなると、傭兵帝国の奴らを意図的に巻き込んで終わらせるとかが絶対に出来なくなったよ。
認識疎外のままだったら、わたしがやったという証拠がなければ白銀級の権限もうまく使って有耶無耶にできたけど、存在がバッチリな状態だとそれも難しいわけで。
しっかも存在がバレたって事は、わたしの行動が思いっきりうちの国の見解にも繋がっちゃうので、巻き込んで倒すどころか助ける行動をしていかないといけない感じになるわけで。
あの駄物、ほんとーに邪魔だよ!
「しょうがない、少し急いで先に進もうか」
「ゆっくりだとゴミが助けて言ってくるからだね!」
「そうなんだよね。のんびり行って敵を全部倒してとかやる宣伝行為、したくないし」
傭兵帝国との仲を改善しましょうって仕事があるなら頑張るけど、今回は無いからね。
だったらできるだけ避ける方向に行きたいのです。
「それじゃメイ、行くよー」
「うん!」
そう言ってガシッと抱きついてきたんだけど……しかもちょっと、その、手つきやらしくないですか?
まぁそれでも戦えるから良いんだけど、完全にこの子は戦いなんかしないでわたしとイチャイチャしようって考えになってるねぇ。
こうなったらしょうがない、少しだけわたしが頑張りますか。
見たところガーディアンはさして強くないけど、いきなり強い機体が出てくるって事態もあり得るしね。




