325話 ドーンと進むよー
少し長いです
転移門をくぐると、目の前には機械的って言うかな? わたしの国とかにある建物とは違う建物がいっぱいある場所に来た。
「ここがそーなの?」
「うん。さすがに直接乗り込むは危険だから、ちょっと離れた場所を指定したんだけど、離しすぎちゃったかな」
メイがきょろきょろ見渡してるけど、ここはガーディアンが転移してきた場所から数キロメートル離れた場所の上空。足場は形成してるので安全に見渡せる状態にしてあるので状況把握も楽に行えるね。
「見たところいっぱいある四角い大きな建物、たぶんコンクリート製かな? それが住居みたいだね。壁に窓がいっぱいあるし、よくわからない光る機械も埋まってるし」
「ビルだね!」
「だね。道路もあるけどアスファルトかな? 馬車じゃない乗り物、とゆーか自動車だね、それも結構あるわ」
傭兵帝国の傍だからか、機械的な文化がやっぱり発展してるんだなぁ。これだと地球から召喚される人にも馴染みやすいだろうね。
「それにしてもここ、ちょっと気持ち悪いよ?」
「ん~、それはたぶん、魔素と霊素が薄いからかな。質もだいぶ劣っているから、わたし達のように待機中から魔素と霊素を大量吸収できる体質だと違和感もけっこう出ちゃうね」
メイが気持ち悪がったように、わたしも違和感というか気持ち悪い感は結構あるな。
傭兵帝国が魔力や精霊力使った技術が進んでいないのは知っていたけど、使わな過ぎて技術が廃れるどころか、それが魔素や霊素の発生にまで影響してるって事だね。よどんだ感じがあるわ。
「念のため魔素と霊素の吸収はしないようにして、体内の魔力と精霊力のみで行動ね」
「わかった! とゆーかおねーちゃん、なんだかずいぶんと慣れてない?」
「あーそれはあれだね、魔素と霊素が不安定だったりよどんでたり、どっちかが無い地域に行ったことがあるからねぇ」
うんうんって頷きながら答えたけど、よく考えるとわたしってトンデモナイ経験してるなぁ。
その経験のおかげで臨機応変な対応できるわけだけど。
さてと、それじゃ乗り込む前に周辺の確認とかをしようと思うけど……。
「ねぇメイ……」
「だよね……」
はぁって大きなため息を二人してするとやいなや
「「なんでお前が居るの!!!」」
「何を騒いでる、居て当然だろ?」
二人同時に後ろを見るなり、ちょっと大声で叫んじゃったよ。
その叫んだ先には、どういうわけかあの駄物が居るわけで。なんでこいつまで来たんだよ。さっきまでとは違い、ピカピカした甲冑というか、機械式の鎧っぽいのまで装備してるし。
しかもさも当然って顔していて、ちょっと腹立っちゃう!
「今は世界の危機なんだろ? オレの国に被害はないかもしれんが、ここで見過ごすわけにはいかんな」
「うげー、なんかマトモそうなこと言ってるけど」
「売名行為に使う気だよね! こういうのもあって、あたしコイツら嫌い!」
メイがプンプンだけど、わたしも嫌いだわ。
たしかにここで活躍すれば一気に称賛の嵐とかにはなるだろうけど、それを狙ってくるとかダメだわ。
しかもこれ以上やってると会話に無駄に入ってきそうだし、サッサと行動しよっと。
魔道具な特殊眼鏡を取り出してシャキーンと装備っと。うん、ちょっと頭の良い子っぽくなったかな?
さてさて、そしたら次に望遠と透視機能を使って……おっと、衣服は透過しないよう設定しておかないと。見たくない物が見える結果とか嫌すぎるし。
それじゃあらためて……うげぇ
「ガーディアンと兵士が多国籍軍って状態となって戦ってるけど、あきらかーに傭兵帝国の正規軍も参加してるなぁ……。少数でなく、まさに大群って状態で思いっきり戦闘してるし」
「そーなの? でもその帝国って敵なんだし、まとめてぶっ飛ばせるね!」
「いやいや、逆にぶっ飛ばせなくなるだからね? たしかにぶっ飛ばせた方が楽だったんだけど」
距離とったのも、遠くから一撃でドカンと終わらせようって考えもあったわけだしなぁ。
「えっと、傭兵帝国が送り込んだ兵士が少数だったら見落としましたーって感じにぶっ飛ばせば白銀級の権限使って何とかうやむやにできるとは思うんだけど、少数でなく大群、しかも正規軍が相手だとちょっと難しいのよ」
「どう言いくるめても宣戦布告になるから?」
「そゆこと。しかも多国籍軍状態だから、他の国からもいろいろと言われる可能性もあるし」
そう言いながら望遠距離を調整しながらぐるっと見ていくと、ほんとーに超大部隊って規模なんだよねぇ。
これはおそらく、傭兵帝国を含めたこっち側の多くの国にもガーディアンが攻めてきたんだろうね。
たぶんこの土地は転移先として早々に侵略されたとは思うけど、それに伴い各方面に助けてくださいーって救助要請したんだろうなぁ。じゃないとガーディアンを転移させているここに部隊送り込むなんて無理だろうし。
「この状況はしょうがない、少し面倒だけど乗り込むしかないかな」
「どこから?」
「ん~、わたしとメイの二人だけなら空を飛んでいくのが一番楽なんだけど」
チラッと駄物を見て……うん、嫌っていう感情がほんと出てくるわ。
「アレも来るからそれは無理なんだよねぇ」
「そうなの?」
「うん。空を飛ぶ術式と索敵からバレないようにする術式を併用する場合、わたしに触れていないと範囲外になってどちらかの術が途中で切れちゃうの」
「あーそれだとダメだね!」
「そゆこと」
メイもすっごく納得してるけど、駄物が触れるとか絶対に無理です。
わたし、そういうところもひじょーに気にする子なので!
「なので~」
「なので~?」
「正面から行っちゃいます!」
正門っぽい場所を指でバーンとさしながらバシッと断言。
側面とか裏側から行くって方法もあるだろうけど、駄物という想定外の付属品が居るので、ここはもうバシッと堂々と行っちゃうのです。
「認識疎外させる術式なら、わたしの半径5メートルくらいまでなら適応できるので、戦闘に参加してまーすって感じに突っ込んでいけばバレないと思うんだ」
「味方の兵士だって思わせるわけだね!」
「そ-ゆーこと。まぁ装備が違うけど、乱戦状態だからいけると思うんだ」
魔道具で見た感じ、こっち側の兵士は機械化された装備を使うのが標準だったから、わたし達のように魔力と精霊力を用いた術や、高性能な魔道具を使いますってのは結構目立つかもしれない。
だけど現在はガーディアンとの戦闘真っ盛りなので、一人で大量殲滅とかしない限りたぶん大丈夫でしょう。
渋々というか少し嫌々だけど、駄物にも軽く説明。特に5メートルを超えた位置に動くなとかなーり強めに説明。
う~む、5メートル超えてバレたらどうしようかなぁ、生贄にしちゃおうかしら? まぁその時に考えるでいっか。
「それじゃ行くよー」
「うん!」
そう言ってメイがガシッとわたしに引っ付いてきたけど、引っ付かなくても大丈夫なんですよ?
まぁ嫌じゃないのでこのままいくけど。
術札を取り出し、さらさらっと術式を書いてっと
「んじゃ術式展開っと」
サクッと認識疎外の術式を起動。よし、これで大丈夫。
ではでは目標となる位置を見定め……いざ出撃っと。
時間短縮のため、ぴょーんぴょーんと被害が少ないビルの屋根を足場に駆けているけど、下を見ると結構戦闘痕があるな。
破壊されたガーディアンの残骸と、兵士の死体が結構大量に。
「う~ん……」
「どうしたの?」
「んとね、会場で見た限り、ガーディアンってそこまで強くなかったと思うんだ」
「確かに雑魚だったね!」
「うん。だけど下を見た感じ結構ギリギリ、というより劣勢みたいなんだよ」
進めば進むほど、残骸よりも死体の数が増えていってる状態。相当厳しい戦闘だったんだろうなって状態だわ。
「じゃぁ強い機体ばかりになったとか?」
「それが魔道具で見たのと下の残骸を見るかぎり、どうも同じ機体なんだよね」
「あの雑魚のままってこと?」
「そうなるかな。だからちょっと謎なんだよねぇ」
傭兵帝国はうちの国と正面から戦争できるくらいヤバい国。
魔法や術に関する技術は全然だけど、それ以外の技術が相当進んでいて、その結果兵力とかはうちの国と対等できるくらいって聞いてたけど、戦闘結果を見るとそうは思えないんだよなぁ。
う~ん……謎!
しばらく進んできたけど戦闘が悪化したようで、安全な足場になりそうなビルも無いので地上に降り、そこからタタッと駆けていく。
良いのか悪いのか、駄物も一定の距離を保ちながら着いてきてるわね。
そのまま進んできたけど、さすがに戦闘している場面に遭遇してきた。これはただ通り抜けるってのは無理かなぁ。
それにしても……
「ずいぶんと劣勢だなぁ」
どう進むかを考えるために足を止めたけど、そのおかげか前方で戦っている状況を見ることができる状態になった。
そこでバッチリ分かったのが、どうにもガーディアンに対する有効的な攻撃が無いようで、1体に対し大勢でドカドカッと攻撃して倒すっていう戦法になってる。
しかも攻撃がダメだけでなく防御回りもダメなようで、ガーディアンがちょっと攻撃したらバタンバターンと兵士が倒れて行く地獄絵図。
「すっごい情けない状態だけど、あれって特殊な機体?」
「ん~、見た感じ会場に居た機体と同型機かな。なので、もっと楽に倒せるはずなんだけど……」
攻撃している兵を見るけど、手を抜いてるとかは一切ないんだよなぁ。
機械科学に全振りはしてるけど、ぶっといビーム撃ったりでっかいロケットぶちかましたりしてる。それらは結構威力がありそうなのに、ガーディアンにはほとんどダメージが無い状態。
だけど会場の戦闘を思い出す限り、そこまで火力を乗せなくてもダメージは通るだろうし、簡単に破壊も……あれ?
「ちょっと駄物、あんたの機械人形って」
「駄物だと? ふざけるな!」
「そこはいいから! えっと、もしかして機械技術のみなの?」
「腹の立つ奴だな! まぁいい、確かにオレのエクスカリオーンは新世代の科学技能を注ぎ込んだ究極のロボだ。魔道具の様に使い手の魔力で性能が左右されるなどという欠陥は一切ない!」
「なるほどねぇ」
なんかドヤてるけど、これでいろいろと納得だわ。
たしかに会場で、わたしのイーコとネーコはガーディアンをサクッと倒せていたけど、駄物の機械人形は全然だめだったね。
「納得してるけど、どーゆーこと?」
「えとね、ガーディアンって敵に対する特攻能力があるの」
「強くなるみたいな?」
「そそ。攻撃力が上がるだけでなく、素早さや防御力も上がる厄介なものなの。その特攻が向こうの魔物、こっちだと只人以外の種族になるね。それらに対しての特攻だったんだけど、おそらく今のガーディアンはその特攻が無いみたい」
「それってつまり、特攻が切れたんだね!」
「残念だけど違って、能力が切れたんじゃなく、対象が変わってる状態なんだ」
少し先で戦っている様子を見る限り、明らかに機械装備からの攻撃を無効化、もしくは軽減してるもんなぁ、ガーディアン。
「たぶん、傭兵帝国とかがあるこっち側の侵略を重点に、機械装備や機械兵士に対する特攻になってるね」
「そーなんだ。とゆーことは、あたし達にとっては」
「すっごい雑魚になるねぇ。確かにガーディアン自体の性能は高いけど、特攻が無ければちょっと強いゴーレムと同程度だし」
ガーディアンが厄介になる理由って特攻能力なのもあるからなぁ。
魔物特攻状態だと、向こうの世界には無かった精霊力を使った術にまで対応してきた、ほんとーに厄介な能力だし。
「なのでー、駄物」
「オレの事を」
「それはいいから! あんた、魔力が使える状態にしないと、死ぬよ」
「なっ!?」
すっごいビビった顔したけど、ほんとーにそうなわけで。
機械に対する特攻が魔力を這わせるだけで緩和できるかは分からないけど、何もしなければ攻撃ちょっと貰うだけで沈むだろうなぁ。
やれやれ、駄物はほんとーにお邪魔虫ですね。
残念扱いされやすいガーディアンくん




