320話 わたしの人形はすごいんです
それやサクッと終わらせ
「よせっ! ただ破壊されるだけだぞ!」
はい?
あの駄物、イーコとネーコが行動しようとしたら、なんか大声で叫んできたんですけど。なに様なんですかね?
そりゃイーコとネーコは小さく作ってはいるので可愛さがマシマシではあるけど、それが弱いに繋がるわけないし。
そもそも最初の攻撃、駄物の機械人形は一切反応できなかったけど、イーコとネーコはわたしが指示をしないでも即座に反応し、ちゃんとわたしとアリサを守るように防御したんですけど。
そういう行動ができるって事は、破壊されるようなヨワヨワ人形じゃないと簡単に気付くはずなのに、なんなんですかね?
まぁいいや、面倒なので
「やっちゃいなさい!」
無視して行動あるのみだよー。
わたしが許可を出した直後、イーコとネーコが次弾のビームが飛んでくる前のほんの一瞬をつき、音もなくシュッと駄物の人形が相手している以外の2体の前に移動したわ。
よしよし、いい動きです。止まった瞬間に髪とスカートがふわっとなる演出も良いね。可愛いというより綺麗って感じの演出ではあるけど。
そして、目の前に移動したらやることは……もちろん敵を倒すこと!
少し屈み、そのまま両腰にある刀をイーコとネーコが同時に抜き、ズババッと一瞬で四肢を切り離し。うんうん、最初に敵の攻撃手段を封じるのは大事だよね。
イーコとネーコが速すぎたようで敵人形は何も反応できず、四肢を失った状態で落下するだけのなんとも間抜けな状態に。
そんな間抜けな状態だけど容赦はぜず、イーコとネーコは切り離した四肢もろとも今度はシュパパパパパパパっと、両手に持った刀で滅多切り。鹵獲は中央の1体で良い事を指示してあったので、一切容赦せずの滅多切りです。
その結果、敵人形は粉々どころか塵一つ残さずに完全消滅となりましたっと。
よしよし、わたしの想定通りの力をちゃんと発揮しているね。
そんじょそこらの機械人形とは違い、わたしが持っている技術をドーンと注ぎ込んだすっごい作品です。エンシェント系の魔物が相手でも、苦戦することなくやっつけることができる性能です。
「な、なぁっ!?」
へー、なんかダメダメっぽい印象が強い駄物だけど、今の動きが見えていたみたいね。
とはいえ驚いてるようだから、機械人形としては動作が速すぎ、もしくは強すぎるって印象を与えたのかもしれないけど。
そんなことはさておき、そのままイーコとネーコは次の目標、敵機体の鹵獲に入ったね。
シュパッと背後に移動すると、少し腰を落としてイーコは左から、ネーコは右からズバッと片方の刀を切り上げて、体の側面部分と腕と足をバッサリ切り離し。腕を切り離したため、腕を掴んでいた駄物の機械人形が後ろによろけたけど。
四肢を切り離したら2体が息ぴったりに切り上げていないもう片方の刀を敵の真下に差し込み、そこから刀の峰を使って打ち上げ!
ある程度の高度になったらイーコとネーコが構え、その場から術技の裂空をドババーンと放ち、滅多切りに。あえて飛び上がらずに下から追撃してなのは、念のため反撃とかがあったときに対応できるようにだね。
滅多切りが終わったら刀を払い、鞘にカチンとしまう。
しまうと同時くらいに、空中の敵機体は情報などが入ってそうな基幹部分などを残し、あっけない感じにバラバラバラーっと崩れていく。
なるほど、必要な部分は先に倒した敵を攻撃した際に全把握していたわけね。瞬時に行う分析と判断機能、期待通りの動きで良いね良いね。
あとは残した部分の回収だけど、落ちてきたのをイーコとネーコが協力して確保!
そのままトコトコ歩いてわたしの前に持ってきて、はいど~ぞって感じにかわいく渡してきたわ。うんうん、こういう時の動作でも期待通りで良いね~。
「よしよし、いいこいいこ」
受け取りながら自然と2体の頭をなでなで。するとイーコとネーコも喜ぶ感じのニコニコ顔に。
あー、これは……うん、ヴァルキュリアとかの機械人形は全然興味ないけど、自作しちゃったこの2体に対しては愛情がかな~り沸いてきちゃうわ。
全部わたしが想定して組み込んだ動作なのはわかっているけど、実際に動いてるのを見るとやばいね。
人に対する愛情とは違うけど、大事にしなくちゃって気持ちがかな~り出てきちゃうね。これは入れ込む人が結構いるのも納得です。
「ずいぶんとあっさりでしたね」
「だねぇ。しかも全力での対応じゃなかったのに、思っていた以上に火力も速度も出たし、反応もかなりいいし」
「となりますと、少し性能が良すぎるかもしれませんね」
「かも。火力調整の指示を一切しなかったし」
腕を組んで少し唸りながらアリサが言ってきたことを考えてみると、確かに性能良すぎるなぁ。
負けるとか苦戦するなんてのは元から一切考えていなかったけど、それにしては短時間ですっごいあっさり終わったわけで。
う~む、これは市販化の際には考えていた以上に制限設けないとダメかな。
「お嬢様の場合、自重が途中で外れて持っている技術を総動員したなど、相当入れ込んだ可能性もありますしねぇ」
「えー? そんなことは無いよ~?」
「そうですかね~? 過去の経験もあってか、私はそう思わないんですけど~?」
「そ、それはー、そのー、ねぇ?」
アリサが少し呆れ顔でそんなこと言ってるけど……うん、確かに持ってる技術をトコトン入れていたな、わたし。
言われているように昔も、わたしが使うのとかアリサ達も使う物には全力で物作りとかもしていたなぁ……。わたしの自重、もろすぎです。
しかしそうなると、少しまいったな。
わたしが自作すると愛着とかがすっごい沸いちゃうって事だから、市販する場合はわたしが関わらないで作れる状態にしないとダメそう。
市販品なのにいつもの癖がでちゃって、結果トンデモナイ性能になりましたとか笑えないわ。
まぁそういういろいろは後回し。
まずは回収したこれを分析してみましょー。次の敵が来る前にサクッと調べちゃいたいし。
それじゃ最初は
「おいっ! どうなっているんだ!」
「はい?」
分析するための魔道具を取り出して取り付けようとしたら、駄物がまーた大声で叫んで来たよ。
こう何度もだと、いいかげんどっかに行ってくれって思ってきちゃったわ。
「なぜソレはショートワープが使える!」
「しょーとわーぷ?」
なにそれ?
もしかして、一瞬でイーコとネーコが接敵したことをそう呼んでるのかな? 単純に地面を蹴って移動しただけなんだけど。
「ショートワープの装置は大型、そのような小型機に搭載できるわけがないだろ!」
「装置とか搭載とか、ずいぶんと自分の世界基準で叫んでるなぁ」
駄物の国ではそうなんだろうけど、それが当たり前って感じに叫んでていてかなーりウザいです。
そもそも自国にはないけど他国だともっとすごい物や技術ってのはあるわけで。世界って広いんですよ?
「それにそのソードは何なんだ!」
「ソードって、刀の事かな?」
「オレのエクスカリオーンのフルウェポンと同等の火力を出すなど、ふざけてるのか!」
「いや、そう怒られましても、わたしには意味が分かりません!」
なんか勝手に文句言う感じにキレてるけど、ほんとーに意味わかんないわ。
2体の刀は確かに技術と素材をたーっぷり使って作った業物ではあるけど、文句言われる理由は皆無なはずよ?
それと、駄物の機械人形は装備が整っていればイーコとネーコと同じ火力とか言ってるけど、どうなんだかねぇ。
まぁどうでもいいし調べる気もないけど。
「とりあえずこっちは調べ物したいので、黙っててくれます?」
「キサマ、オレに対して」
「あーもー、ほんとウザいんだけど」
相当な俺様性格なのか、汚い言葉に感情任せにギャーギャー騒ぐとか、ダメダメですね。
いやはやほんと、王族ってもっとマトモ人ばかりなのに、何なんですかねコイツ。わたしの大っ嫌いな要素ももりだくさんっぽいし。
「処分しましょうか?」
「おねが~いって言いたいけど、なんかそれも面倒になりそうなので、ちょっと我慢だね」
「そうですか? 私は処分したいのですけど」
そう言ってアリサが真面目な顔しながら術装を顕現させって
「ちょ、アリサ!?」
「ふふっ、冗談ですよ」
「いやいや、かなり本気だったでしょ……」
うん、ニコニコしてるけど、駄物に対する嫌悪が相当溜まってるって感じが結構するわ。
やれやれ、アリサってばほんとーに過保護というか、わたしが被害者になる対象は排除しましょーってのが強く出ちゃうね。
おそらくうちの教育の影響もあるんだろうけど……シズクさん、いったいどんな内容で教育したんですかね……。
自分が作った物に対しても愛情が結構出ちゃう狐娘




