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32話 過去を乗り越えます

今回はアリサの視点です

それと少し長いです

 どうしたのでしょうか、先ほどまで感じていた恐怖が、今では感じません。お嬢様のおかげ、ですね。

 やはり私にとって勇者様というのはお嬢様ですね。これでまたお返ししたい御恩が増えてしまいました。でも必ずお返しします。


「ふふっ、なんだか今のお嬢様、ちょっと女神様みたいですね」

「そっかなぁ。なーんか時々変わるんだよねー、自覚ないけど」


 先ほどの凛々しいお嬢様も好きですが、やはり私はこの明るい感じのお嬢様が一番好きです。口調どころか雰囲気すら変わるのは、ほんと不思議な事ではあるのですが。


 以前サユリ様が仰っていましたが、お嬢様は感情の切り替えが極端なため、性格や雰囲気すら変わるとのことでしたね。前世の能力か何かが原因ではないかと推測もされていましたか。


「でもお嬢様、いきなりは、その」

「だってーアリサがウジウジしてたんだもん。どうにかするってのがわたしってものです!」


 可愛く胸を張られて、ほんとこの方は、もう。変な男が寄り付かないように私がしっかりとお守りしないとダメですね。


「んで、アリサ、もうだいじょーぶ?」

「はい、ご心配をおかけしました。もう大丈夫です」

「おっけー、んじゃサクッとあいつ倒してきてね。たぶんそのまま突っ込むと劣勢になるけど、ちゃんと動き見たりすればすぐに打開できるよ」

「わかりました、やってきます!」

「よしよしその意気だよ! んじゃ結界解除するねー」


 お嬢様が指を鳴らすと同時に結界は解除されました。


 あの人は、あ、倒れました。叩きつけようとした壁が無くなったらそうなりますよね。

 さてと、ここからは私の番です。





「お見苦しいところをお見せしていまい申し訳ありません」


 こんな相手ですが礼儀は別です、非は私にあるので頭を下げます。


「ったく、急に落ち着きやがって。なんだ? そっちの狐の嬢ちゃんとイチャイチャしたら吹っ切れたってことか?」

「はい、お嬢様のおかげで吹っ切れました」

「てめぇ、馬鹿にしてんのか!」

「いいえ、いたって真面目ですが」


 イチャイチャしていたと人に言われると恥ずかしいのですが、ここは我慢です。


「アリサ~頑張ってね~」

「あ、ありがとうございます」


 あぅ、お嬢様、そんな一生懸命手を振られて。

 落ち着くのです、お嬢様が可愛いからってここで悶えたら隙になります。


「気に食わねぇ、なんだその顔は! あの狐に声かけられるのがそんなにうれしいのか!」

「はい、控えめに言って最高です」

「くそが!」


 やれやれ、お嬢様の可愛さがわからないとは、何て残念な方なのでしょうか。

 助けられたなどのいろいろな思いもありますが、それを差し引いても


「さぁお前たち、一緒にアリサを応援するんだよ!」


 これですよ。ウサギやリス、犬や猫など小動物を召喚して応援してくださるのですよ。これが可愛くないと思う者が何処にいますやら。

 っと、このままでは私も危ないですね。頭を切り替えましょう。


「えっと仕切り直しと行きたいのですが、一つお願いがあります」

「なんだ? あの狐が心配で命乞いか? 俺様のものになるってんなら、狐も助けてやってもいいぜ」

「下種ですね、ただ少し当たっています。これは私とあなたとの戦いです、お嬢様には攻撃しないでください」

「フン、まぁいいだろう。狐には手を出すなと俺様も言われてるしな」


 手を出すなと言われている? 他にも共犯がいるのでしょうか。倒した後に問いただした方がいいかもしれませんね。


「さて、それじゃ行くぜぇぇぇぇぇぇぇ! フレイムゥゥゥゥゥゥ」

「それは見切っています! 術技、烈震!」


 大太刀を地面に叩き付ける。

 すると叩き付けた先から振動が起き、相手の足元を崩しながら衝撃を与える。地面に両足をついている相手には有効な技です。


「な、ぐ、ぐは。てめぇ、よくもやりやがったな!」

「攻撃されないとでも思っていたのですか? では、こちらからも行きます!」


 あまり接近するのは得策ではないですね、まだ技を隠している可能性もありますし。まずは他に技があるか探ってみましょう。


「術式展開、疾風装! そしてそのまま空に!」


 風を纏った状態で思い切り地面を蹴り、空へ飛びあがる。お嬢様の様に飛行術を使ってもよいのですが、様子見程度ならこれで十分です。

 まずはこの位置からの攻撃に対応できるか、それを確かめます!


 相手のとの距離を調整、そのまま術装を構えなおし抜刀できる状態にする。

 あとは一気に!


「術技、烈空!」

「ちっ、あんな位置から、真空の刃か!? くそっ」


 頭上から一気に切り裂くように裂空を放ちましたが、ふむ、相殺ではなく防御しましたね。つまり相手は対空、そしておそらく遠距離での攻撃も持っていないのでしょう。

 そういえば私の足をすくませての近接攻撃ばかり仕掛けていたような……なるほど、冷静になればいろいろと見えてきました。


 ……情けない。お嬢様の言うように、私は少し強いだけの相手に怯えていたのですね。

 しかも相手は同じ只人、もしくは魔人でしょうか。勇者であること、転生者で神の祝福があること、この二つを持っているだけの人じゃないですか。特別でも何でもないじゃないですか。


 格上ではなくほぼ同等の相手だと知ってしまったら、もう無様な姿は見せられませんね。

 私はお嬢様の専属メイド、相手の土俵で戦って勝つことなど造作もないことです。ですので安心して見ていてくださいね、お嬢様。





 ある程度距離を保ちながら着地しましたが、反撃が一切がありませんでした。

 なるほど、遠距離攻撃が無いどころか、剣の長さ以上の攻撃すら無いようですね。


「どうしました? 遠距離に対する手段がないのですか?」

「卑怯だぞ! 正々堂々と戦いやがれ!」


 凄い剣幕で騒いでますが、なんといいますか。


「はぁ、命に係わる戦いに卑怯も何もないと思うのですが。私を怯えさせていた方の言うこととは思えませんね」

「なら思い出させてやる、あの地下室であっぐへっ」

「すみません、隙だらけだったのでつい」


 あまり私の過去を話されて、お嬢様が悲しまれたり不愉快になられたりしたら困りますからね。そのような口は速やかに塞ぐべきです。


 しかし不思議ですね。何となく術装の長さが変えれると思って試したのですが、本当に刃と柄の部分が伸びましたね。おかげでここから動かず、顔めがけて薙ぎ払うことが出来ました。

 戦う前まではできなかったのに、お嬢様の祝福のおかげでしょうか。


「お、おみゃへ、ひょひょきゅも、おれしゃまのきゃおを!」

「思ったより重症のようですね。軽くやっただけなのですが」


 顎が砕けたのか、だいぶひしゃげてます。

 あら、お嬢様がそれを見て笑っていますね。だめですよ、そんな人の顔を笑っては。





「さて、まだ続けますか?」

「ゆ、ゆるしゃん! きゅっ、きょきょでみょーしょんをつきゅあうししゃにゃにきゃ」

「えっとポーションを使うのですか? なら早めに使ってください。その調子で続けますとお嬢様にダメージが入りますので」


 あぁもう、足をパタパタさせて、めくれて下着が見えちゃうじゃないですか。もう少し堪えてくださーい。


 おや、ポーション飲んでいるようですが凄く不味いのでしょう、吐き出すのを我慢して無理やり飲んでいるように見えます。

 この国で購入できるポーションは甘くておいしいのですが、神聖王国のはやはり違うのですね。


「ん、んんん、おっほん、あーあーあーあ、よし。なかなかやるじゃーか、この俺様にダメージを与えるとは、お前が初めてだ!」

「あの、そんな急に真面目顔で仕切りなおされましても、ああ、お嬢様、そんな思い出し笑いしないでください、見えちゃいますー」


 この男、どこまでお嬢様にダメージを与えれば気が済むのでしょうか、本当に厄介です。


「だが遊びは終わりだ! 俺様に秘められし真の力を」

「いえお嬢様、ギリギリ見えなかったのでセーフです。でも気を付けてくださいね、ここには私たち以外にも人が居るのですから」

「聞けよ!」

「あ、はい。すみません、もう一度お願いできますか?」

「くっ、急に俺様をなめやがって!」


 どうやら私がお嬢様に気を盗られていた間に何かあったようですね、すごい怒った顔をしています。こうなると相手の行動にも隙が生まれそうですね。


「いいか、俺様の秘められし」

「そういうのはいいです、手短にお願いします」

「キサマァ!」

「これ以上時間をかけてもしょうがないので、あなたの得意な距離で戦って差し上げます。よいしょっと、このくらい近ければいいですか?」


 軽く飛んで目の前に移動、向こうの剣が当たるくらいの距離ですね。明らかに向こうが有利な距離ですが、あえてこの状況で一撃も当たらずに勝って見せます!


「いい度胸だ、だが後悔するがいい! フレイムファァァァァァァング! ファーストォストラァァァァァァァァイク!」


 炎を纏った剣の突きですか、思ったより遅いですね。

 簡単に回避できますが、ここは思い切って


「受けます!」


 突きに合わせて術装を右にふるい、そのままいなす!

 このまま反撃に移りたいところですが


「セカンドォストラァァァァァァァァイク!!」


 やはり来ましたか。突きからの払い攻撃ですが、これも簡単にいなせます。

 タイミングを計り、術装を下から切り上げて弾くだけです。


 弾いたことで相手の胴はがら空きになりましたので追撃は容易、ですが恐らく


「くっ、ならばサードォストラァァァァァァァァイク!!!」


 上からの切り落とし、予想通りです。

 素早く半歩後ろに下がりながら腰を落とす、そして降りかかる剣を居合で薙ぎ払います!


「馬鹿な!? 俺様の必殺の三段だぞ! しかもそのような長い剣でなぜそこまで素早く動ける!」

「簡単なことです。この術装はお嬢様から頂いた大事な刀、それにふさわしい動きを身につけるなどメイドとして当たり前のことです」

「くそっ、意味が分からん! だが所詮は子供、その細腕では長くはもつまい!」


 私の体をなめるように見ながら言ってきますね、何とも気色悪いです。

 でも確かにそうですね、見た目は〝戦士の腕〟ではなく〝女性の腕〟のままですね。お屋敷に居る皆様も同様ですし、これは今の環境のおかげでしょうね。


「試してみますか?」

「ならば受けてみるがいい、我が最終奥義を! くらえっ最終奥義! フレイムゥゥゥゥゥゥゥゥスマァァァァァァァァァァッシュ!!!!」


 炎を纏った剣が上から迫ってきますが


「遅いです! 術技、烈氷!」


 しっかり見えています! タイミングを計り、慌てることなく静かに迎え撃つだけです!

 そして刀と剣がかち合いますが、勝負になりません。


「なにぃ!? お、俺様の剣が凍って!?」

「そのまま砕けなさい! 術技、烈震!」


 烈氷の力で凍りついた剣にそのまま烈震で振動を与える、すると剣は耐えきれずに粉々に砕けました。ずいぶんとあっけないものですね。


「な、なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 砕けた剣を前に呆然とされてますね。無理もないでしょう、聖剣だったようですから。





「終わりですね。剣を失ったあなたはこれからどうしますか? まだ戦いますか?」

「ふざけるな! 俺様は勇者、選ばれた男なんだぞ!」

「まだ諦めないようですね。気が進みませんが気絶でもしてください。術技、烈雷!」


 雷を纏わせた状態で峰打ちをします。


「あばばばばばばばばばばば」


 あら、つい過去の恨みで少し力を入れすぎました。ですがまぁ死にはしないでしょう。

 それと雷も強かったのか、髪の毛が凄いことになってますね。って、また足をばたつかせながら笑うとか、お嬢様ったらもう。

 でも笑っていただける結果でよかったです。

実際はこの程度じゃトラウマは克服できない気がしますが、

ちょっと強引ですけど今回は『好感度が高い相手の前なので頑張って克服した』としてます。

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