319話 人形対決の始まりかな
それじゃ面倒事をさっさと終わらすために、イーコとネーコに指示を
「おいオマエ!」
「え? わたし?」
目の前の機械人形も面倒だけど、同じくらい面倒でアリサが駄物って言うくらいの男が、どういうわけか大声でわたしにもの申すって感じなんだけど、なに?
「この場はオレに譲れ!」
「譲れって、どういうことですかー?」
「決まっている! オレのグランディウスを不意打ちから破壊したエネミー、許すわけがない!」
すっごい大声でそんなこと言ってるけど、不意打ちでの破壊ねぇ。
たしかに不意打ち気味に現れてビームをどぱーんと撃っては来たけど、対応できないって程の時間じゃなかったと思うんだよねぇ。
わたしとアリサはもちろん反応できる時間だったけど、イーコとネーコも警戒重視の設定でなくても対応できてたし。まぁヴァルキュリアくらいの能力だと厳しいかもだけど。
「まぁそんな大声出すなら、勝手にしたらいいんじゃないですかー?」
「ずいぶんと上から目線だが、まぁ良い」
「上から目線って、そっちの方がでしょ……」
大声で圧力掛ける感じでギャーギャー言ってるもの。
わたしは向こうに聞こえるくらいのギリギリの声の大きさに抑えてるけど、正直無視しちゃいたいって感情が強く出て来てるので、向こうとの会話自体もう終わりにしたいわけで。
ほんと、嫌って感情ばかりどんどん出てきちゃうわ。
「見せてやろう! オレの最高傑作、エクスカリオーンの凄まじい性能を!」
手をばっと横に振ると同時にそんなことを叫ぶと、後ろに控えていた全身甲冑の騎士が〝ギンッ!〟って音を立ててから前に出てきたわ。アレも機械人形だったのかぁ。
エクスカリオーンって事は、エクスカリバーあたりをもじったのかな? 騎士型なのもそういった理由とかからかねぇ。
とゆーか、さっきのグランなんたらが新しい近衛型で、こっちのエクスなんたらが最高傑作って、どっちの方が新しくて、どっちの方がすごい性能なんですかね? ってツッコミを入れたいわ。
「エクスカリオーン! 敵を殲滅しろ!」
と、腕を振り下ろしながら叫ぶと、エクスなんたらがまたギンッて音を立ててからズカズカと敵の機械人形にビームを防ぎながら迫っていくけど、武器持ってないの? 武器の召喚とかもしないようだし。
「お嬢様、武器を顕現させるとか特殊な道具袋から取り出すとかは、機械人形ですと普通は無理なんですよ」
「え? そうなの?」
「そうなんです。ヴァルキュリアなども携帯した武器を使っていますでしょ」
「そう言われると確かに。ん~む、その辺りも隠しておかないと、わたしの作った機械人形更にヤバすぎ! って思われちゃうかな」
「思われちゃうかもしれませんねぇ」
アリサが少し苦笑いしながらそんなこと言ってくれたけど、なるほどねぇ。
わたしの場合、イーコとネーコの装備は携帯型でなく、内部に設けた特殊な魔石に格納するなんちゃって術装型にしちゃったからなぁ。いっつも鞘に入れた刀を携帯するとか、ちょっとやりたくなかったし。
おまけにポーチ型の物入れも装備しているので、そっちにも大量の武器や防具、魔道具などの生活用品から食料までもりだくさんにしてるけど。
「ポーチの方はまだしも、魔石に格納の方は問題にもなりえますし」
「あー、たしかにそうかも。術装っぽいのが誰でも所持できるって思われちゃいそう」
「ですねぇ」
「古代エルフの技術と空間制御の術式とかを混ぜ混ぜしただけなんだけどなぁ」
「お嬢様は簡単にやってますけど、その混ぜる技術が実際は相当すごいことなんですけどね……」
うん、アリサが少し呆れ顔にもなってるわ。
これは相当難しい技術だったって事かな? だけどできちゃったわけでして!
ちょっと試したらできちゃったので、実はすっごい簡単な技術なんじゃってすこ~し考えてたけど、違ったわけだねぇ。さすがわたし、いろんな技術が優れてる!
「ところで、アレはどうしますか?」
「まぁそうなるよねぇ」
完全に防御できているのもあってか、アリサとのほほんと会話してたけど、現状はそんな穏やかじゃないわけで。
「くそっ、何度も復活するロボとは、厄介すぎるぞ!」
駄物が叫んでるけど、どうやらこの敵人形は回復能力もあるみたい。
エクスなんたらがガシッと敵の腕をつかみ、力任せにバキーっと腕をもいだりメキーっと潰したりしてるけど、破損すればすぐ別機体が割り込んで距離をとらせ、ペカーっと回復の魔法か何かを当てて修復してるわ。
しかも復活って言われてるくらい、半身をドカーンと割っても直してる状態だしね。
「向こうはだいぶ劣勢ですし、そろそろ割り込みますか?」
「そうしようかな。確かに回復能力はあるみたいだけど、あの程度なら簡単に破壊できそうだし」
見ている限り、ちゃんと魔力や精霊力を乗せた攻撃なりトンデモナイ威力の攻撃とかをして、分解ではなくしっかりと破壊してやれば大丈夫そうだし。
というか、調べるようにじっくり見てみたら気が付いたというか、似すぎてるんだよなぁ……ガーディアンに。
「どうかしましたか? 少し難しい顔になってますよ」
「それがどうもねぇ。壊れた部位を回復光線みたいなの使って修復するとか、部品がガチャガチャ移動して直るのって、ガーディアンとそっくりなんだよねぇ」
「ガーディアン、ですか」
「うん。しかもわたしが知らない新型っぽいから、出所とかもしっかり調べないとまずいなぁ、とも」
前の世界でさんざん見てもう嫌って感情がべっとり貼り付いたガーディアンの系統でもないし、今の世界で見たガーディアンとも違う新型だもの。
これが旧型とかの再利用だったらよかったけど、動きの切れとか回復の速度とか、どう見ても新型っぽいんだよねぇ。
「そうなりますと」
「できれば鹵獲でなく、絶対に鹵獲になっちゃうね」
「それは結構厄介ですねぇ。見たところ、私でも簡単に破壊できそうな程度ですし」
「結構弱いからね、ガーディアン」
そう、ガーディアンは厄介ではあるけど、わたし達からするとそこまで強くないんだよ。
なので、仏の魔物を退治するみたいにドバーンと攻撃しちゃうと、鹵獲して情報分析をするとかができないくらいの破壊になっちゃうわけで。力加減って大事です!
とはいえ普通の人にとって脅威なのも事実なので、誰かに任せておけば大丈夫って状態にはならないわけで。しかも、そのダメな状況がまさに目の前で起こっているわけでして。
「見たところ、あのエクスなんたらってのは装備が無いのもあってか本来の力からだいぶ落ちた状態みたいの様で、たーだボカスカやってるだけなんだよねぇ」
「壊しては直しての繰り返しをずっとですね。ただ攻撃力と違い防御力はそれなりにあるようで、破損せずに攻撃し続けていますが」
「だね。まぁそのせいで泥沼化してるんだけど」
エクスなんたらが壊れないので、駄物が怒りとか愚痴とかをぶーたれながら攻撃し続けちゃってるわけで。これがもっと弱ければ部壊されて終了になるけど、そうなってないんだよねぇ。
まぁこっちとしては事前に情報収集できるから利点はあるにはあるんだけど、もう十分なわけで。
「なんか落ちてくる音や破壊音、それに悲鳴とかも増えてるので、そろそろこっちも終わらせた方が良いかな、と考えだしちゃったわ」
「ですねぇ。他者の防衛をする必要は無いのですが、お嬢様をこういった場所に長時間というのは問題ありですし」
「あー、やっぱそうなのね」
「そうなのです。私達にとってお嬢様の安全が最優先ですから」
「いつも通りの過保護気味だねぇ」
アリサだってわたしがトンデモナイ存在なのはわかっているけど、どうしても安全第一が来るからなぁ。
まぁ嫌ではないので、過保護ヤメテとは言わないんだけど。
さてさて、それじゃ行動しましょーか。
ギャーギャー騒いでる男がなんか言ってきそうだけど、わたし達としてはさっさと終わらせたいの意思なわけだし。
「とゆーわけで、イーコ、ネーコ、左右の敵人形は破壊し、中央のは行動不能状態にして鹵獲するんだよ」
そう言うと2体が「は~い」って感じに片手をあげたあと、腰に刀を顕現させる。よしよし、防御しながらの武装展開も大丈夫ね。
「待て! オレの邪魔をするな!」
「ずいぶんと速い反応だなぁ。周囲の確認もしっかりし続けていたのか、こっちを気にし過ぎていたのかは謎だけど」
2体が刀を顕現させたとたんに大声で怒鳴ってくるんだもの、相当だよ。
「いっそのこと、アレも排除されますか?」
「そうした気持ちもあるにはあるけど、問題起こるので今回は止めておこーかなと」
「今回は、ですね」
「うん。今回は、ね」
そう、あくまで今回だけです。
だって同じような状況がまたあった場合、きっと容赦なく敵ごと排除ってやっちゃう気がすっごいするもの。
わたし、嫌いな奴には容赦しないので!
「それじゃイーコ、ネーコ、やっちゃいなさい!」
さっくり終わらせるよー。
厄介だけど弱い言われちゃうガーディアン




