314話 ほんとトンデモナイ存在だね!
そこそこに長いです(5000文字ほど)
それと今回はメイの視点です
おねーちゃんのお願いで会場を分担して見てきたけど、さすがに疲れたのでちょっと休憩。
会場に設置されている休憩場所に座り、見てきた内容を再度確認。
おっと、ひといきつくまえにー、なんとなく会話を聞かれるのは嫌なので、おねーちゃんから貰ったポーチから、これまたおねーちゃんが作り、会場での使用許可も脅しという名の説得をしてある防音の魔道具を取り出し、ぽちっと起動っと。これでよし!
「う~む、思ってたいじょーに展示が多いね。おねーちゃんが手分けして情報集めてもらおうとするのも納得だよ」
「会場自体広いですもんね。それでも学園の生徒や関係者以外は展示してないそうだから、まだ少ない方っぽいですよ」
「これで少ないとか、機械人形関係って人気なんだねぇ」
「種類も豊富でしたよね」
「たしかに!」
コレットと二人で見てまわってるけど、普通のでなく変わった機械も結構あったなぁ……と、思い返してしまう。
「需要の関係か人型が多いけど、獣型や虫型、無機物型もあったし」
「いろんな人が居るって事なんでしょうねぇ。とはいえ学園が主体だからか、基礎となる機体からの小改良が多いですけど」
コレットも今まで見てきた展示でもらってきた冊子とかをぺらぺらーっと見なおしてるけど、ほんとそう。
たしかに色々考えて作っているのが多いけど、おねーちゃんみたいに1から作りましたってのはほとんどない。
「技術や資金が足りない結果なんだろうけど、おねーちゃんからしたら少し残念だろうなぁ。切磋琢磨とか優れた人を追うってのが好きな人だもの」
「ですねぇ。でも姫サマ、それって姉姫サマが技術も資金もどっちもすごいって事でもありますよねー?」
「そうともいう!」
思いっきり頷いちゃうくらい、おねーちゃんがどっちもすごいという再認識になるね。
ほとんどの展示は画期的な新技術とかはない、どれもこれも再現できそうな技術止まりだから、よりいっそうだね。
「さっき見たのだけど、精霊科学を使った画期的なロボットってのも、正直そこまですごくなかったしね」
「動力に精霊力を使うとかってやつでしたねぇ。興味深く見ていた人は多かったですけど、欠点の方がボク達は気になりましたね」
コレットが話しながらその展示で貰った冊子を出してきたけど、うん、再度見てもいまいちだね!
外見は普通のヴァルキュリアに酷似しているけど、精霊力を使った動力炉というのが相当な売りのようで、冊子にデカデカと説明やら利点やらが書かれてる。
ただしその技術の結果、通常のヴァルキュリアと比較して全体的な性能が約1割減となるだけでなく、稼働時間も1時間程度というすっごいロボットとなったそうで。使えない欠陥品だよ!
まぁそれだけ精霊力を活用するってのは難しいって事らしく、そんな欠陥よりも実装した事実が凄いって評価にはなってたけど。
「あーいうの見ちゃうと、おねーちゃんってちょっとヤバいな! とも思っちゃうね」
「欠陥は無いのはもちろんのこと、性能面もガッツリ強化されたものを作ってますからねぇ」
「だけど事前配布の資料には〝ヴァルキュリアとほぼ同性能で稼働時間も同等〟って書いてあったけど、思いっきり過少報告しちゃってるよね」
「動力炉に関しても〝既存の動力炉に精霊科学の技術を応用した〟ってありましたけど、これも事実と異なってますよねー」
二人でおねーちゃんから聞いた説明を思い浮かべたけど、ほんとーに書かれてるのとは大違いのトンデモナイ性能だからなぁ。
たしか、最低でも既存のヴァルキュリアより5割は能力が向上していて、既存のヴァルキュリアでは実行する事が出来ない魔術や精霊術まで使えるトンデモナイ性能。
そんなトンデモナイ性能を発揮するため、魔石と精霊石を用いた新たな動力炉を作成し、それを複数搭載するバケモノ仕様にしているだけでなく、全力稼働状態でも補給無しで10日以上はもたせるという何でもありな機体。
さらには作成期間が数日程度という、ほんとーにトンデモナイとしか言えないわ。
そう、おねーちゃんの技術ってトンデモナイだけに、ちょっと気になっちゃう。
「それで、ほんとーにおねーちゃんの技術って問題無い物だったの?」
「そうですねぇ……」
コレットがおねーちゃんの技術をいろいろと調べた結果の資料を出してきたので、あたしも読みっと。
別におねーちゃんに疑惑があるとか、陥れたいってのじゃない。
単純に、おねーちゃんが作った物の技術がどうにもこうにも世界初ってのばかりだから、重大って対応になるかと思ってたのにそうなのにならなかったのが、やっぱり気になっちゃうんだよね。
その調査をコレットに任せていたけど、思ったよりもあっさりだったのかな? 予想に反して資料、そこまでないね。
「結論から言ってしまえば、世界初の新技術というのは無かったですよ」
「そうなの? おっかしーなぁ。家で使ってる精霊石も付与した魔道具とか、あの人形とかって新技術を使っての結果にしか思えなかったんだけど」
「確かにそう思えますねぇ」
コレットも頷いてるけど、ほんとそうなんだよ!
おねーちゃんはすっごく簡単に魔石と精霊石の両方を搭載し、正常動作どころか臨機応変に出力元を変えたり合わせたりする道具とか作ってるんだもの!
「新技術ではなく、既存の技術や理論を組み合わせたり、応用したりしたものだそうですよ」
「えー? なんかそれだと、すでに誰かしら同じのを作ってそうなんだけど」
「えぇ、それは〝同じ事ができれば〟という注釈が付くからですねぇ。例えばコレ」
そう言ってコレットが資料の一つを指差したけど……ほほぅ?
「この魔石と精霊石の出力を合わせるって機能ですけど、普通は専用の魔道具でないと無理ですよね」
「無理無理、ぜーったいに無理! しかも専用の魔道具って言っても大型だし、実用ではなく計測とか実験用だよ!」
なので、家にある小さな魔道具にすら組み込んじゃったおねーちゃんにポカーンとしちゃったわけで。
「それを小型化するだけでなく、安定動作どころか強化までしちゃってますよね、姉姫サマって」
「ほんとーにね!」
「それでその技術ですけどー、使っているのは特殊な精霊石、この場合は魔石との相性が良い感じの精霊石が重要になってるんですけど」
「精霊に作ってもらったってやつだね!」
「あの時はそれで流れたんですけど、実際はその先もあったようで」
続きが書かれている資料をコレットが出してきたけど……はい?
「精霊石に魔道具に必要となる魔科学の式や術式を直接取り込ませる?」
「それどころか、形状の変化やら必要な部品やらも取り込んでるみたいですよー」
「はいぃぃぃぃぃ!?」
クワッ! って目を開いちゃうくらい、ちょっとマジ!? って思っちゃう。
「それってつまり、出来上がった精霊石を〝物理的に加工〟するのでなく、存在自体を〝変化〟させてるってこと?」
「そうなりますねぇ……」
「そうなるって、いやいや待って? 結晶化前の精霊石にいろいろ付与して作るならナントナクできそうって思えるけど、結晶化済みな精霊石に対してそんなことできるって、人には無理だよ!? できるのは精霊くらいだよ!? それこそ、おねーちゃんは精霊神と同じような精霊になったってこと!?」
「アハハ、ちょっとありえないですよね……」
すっごい苦笑いしてるけど、ほんとそうだよ!
そもそも、おねーちゃんはあたしと同じで半精霊な狐族のはずで、そんな精霊ですって存在じゃないはずなんだけど!?
「あ、まって、そういえばあの時、確かおねーちゃんのママもできるって言ってたような」
「えぇ、できるっぽいです。技術はあったけど試してはいなかった、だけど技術内容はある程度の人には教えていたってものらしく、姉姫サマが作った道具などを出してきても既に知っていた技術なので大ごとにならなかった、ってのに繋がるようです」
「それはそれでトンデモナイね! まぁ国家機密の技術を、過去の文献やら技術、おそらく空想なんかもだけど、そういった資料や文献を基に、なんとなくやって再現しちゃうおねーちゃんもおねーちゃんなんだけど……」
ぜーったいに出来る出来ないを考えずに、とりあえずやってみましょーでやって成功しちゃったんだよね。それがあたしのおねーちゃん!
「それで、なんでおねーちゃんと、おねーちゃんのママがそんな能力持ってるのかは気になるところだけど、そっちは?」
「そっちですけど、さすがに国家機密らしくて情報自体全然でしたよ。な・の・でー、姉姫サマの母上サマに質問したんですけど」
「度胸あるね! まぁ悪い意味で探ってるわけじゃなく、技術好奇心みたいなものだから怒られないとは思うけど」
「はいっ、大丈夫でした! 最初はアリサチャンにシズクサマを繋いでもらって質問してたんですけど、そしたら「それならいっそ、サユリ様に直接質問された方が良いですね」ってなって、直接質問することができちゃったんですよ! それで、もらった内容ですけど」
別に資料を出してきたけど、へー?
「特殊な半精霊であれば精霊神と同様の精霊力を生み出すことができ、それを用いたこともできる、かぁ」
「みたいですよー。普通の半精霊ってのはエルフやドワーフ、他の狐族とかが進化して変化した状態、だそうですねぇ」
「そして、その普通じゃない半精霊ってのは、あたしやおねーちゃんの家系に連なる狐族と、レグラスのお姫樣みたいな特殊なエルフが該当する、ねぇ」
たしかに半精霊って存在で考えたら、あたし達は特殊だわ。
生まれながら魔石と精霊石を宿しているのはもちろんのこと、各種能力の成長がすっごいとか不老不死に自己再生能力やらと良いものいっぱい持ってるし。
「とはいえ〝できそうな人〟であって、現在できるのは姉姫サマと姉姫サマの母上サマだけだそうですよ」
「それがここに書いてある〝精霊との友好度〟になるのかぁ」
資料に書いてある部分をツンツンとしちゃうけど、なるほどねー。
半精霊ならば精霊との仲は良いけど、精霊石の加工ができる精霊力を持つのは、精霊との関係が思いっきり深まって初めて目覚める力というわけね。
そしてその関係がすっごい深い、つまり友好度がすっごい高いのはおねーちゃんと、おねーちゃんのママくらいってわけかぁ。
「う~ん、おねーちゃんママが精霊との友好度が高いのは分かるけど、おねーちゃんもってのがちょっと凄いね!」
「ですね! まだまだ子供なのに既にめっちゃ高いとか、将来が凄そうです!」
精霊との仲が良ければよいほど精霊を用いた術や装備、さらには術装の力も上がるからね。
となると……むふー! これは間違いなく、将来はおねーちゃんが最強になっちゃうってことだよね! そうなると良いだろうし、すごく楽しみ!
さーてと、休憩もしっかりとしたし、次を見てまわろうかな。
「次のはどれだっけ?」
「次は複数のロボットを合体させるって展示ですね」
「合体って、なーんか無駄な事してそうな気がー」
「費用や効率無視しての、男のロマン追及です! って感じになってそうですよねぇ」
コレットも苦笑いしてるけど、ほんとそんな感じだろうね。
複数体用意しなければ完全な1体にならないってなると、そのうち1体でも欠けたら全部おじゃんになるし、メンテナンスでも合体機構の確認という手間が増えるしで、合体させるという発想を避けた方が良い部分が出てくるわ。
その辺りを解決してるならスゴイ発表になるだろうけど、さすがに無理だろうなー。まぁおねーちゃんや、おねーちゃんに近い知能を持った存在が居るならできちゃいそうだけど!
「ま-あー、期待しないでおいた方が良いって事だね!」
「ですね! かるーく見ましょー、かるーく」
おねーちゃんのためにって考えは出ちゃうけど、かるーくながしながら見よーっと。
決まったところで、それじゃお片付け―!
「あら、こんなところに居たのね子狐チャン」
うげっ。
魔道具や資料をしまっていたら、聞きたくない声が耳に入ってきたんだけどー。しかも相変わらずうっさい感じにヒールをコンコン鳴らして寄ってきてるしー。
「視線に入ったからか、いかにも知り合いって感じに寄ってくるとか、あたしは嫌なんだけど!」
「相変わらずの言い草ね。そこはアタシに会えて喜ぶべきじゃないの?」
そう言いながら、堂々とあたしの傍によってきたイタチ女のダリアネット。ほんとーに嫌いな女だよ。
次回もメイの話です




