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313話 超高級人形ですから!

少し長いです

 二人には用意しておいた冊子を渡し、そこから順に説明っと。

 さすがに来る人全員にそんなことはしない予定だけど、知り合いなのと最初のお客さんだからね、しっかりやっちゃいます。


「名称は〝従者型補助機械人形〟か。なんていうか、仮っぽい名称なんだな」


 カイルが真っ先に気になったのは名称のようね。

 まぁ確かに、他の人形ってヴァルキュリアのように既存の魔物や異世界の偉人とかの名称をもじってるのが多いからねぇ。わたしが付けた名称は珍しいというか、ちょっと変って印象にはなるよね。


「えっと、ぽいというか、ほんとーに仮名称にしてあるんだ。正式名称は国の方で決めるだろうし」

「作者であるユキが決めないでか?」

「うん。販売が決まったら、この2体をそのまま量産するのではなく、機能を限定したり素材の質を落としたりして、もっと安価に買える人形が主になると思うんだ」


 さすがにこの2体そのままとか無理だからなぁ。

 素材だけでもトンデモナイ額なのはもちろんだけど、動作周りもわたしの趣味全開なのもあって、お金を投資してまで全部実装する必要は無いですって言う機能がほんともりだくさんだもの。


「なるほどなぁ。そういえばこの2体、個体名称はあるのか? 名称でなく番号呼びにしている者も多いが」

「もちろんあるよ。こっちの犬族型のが〝イーコ〟で、こっちの猫族型のが〝ネーコ〟にしているわ」


 わたしが名前を呼ぶと、それぞれ手を挙げてちゃんと反応。よしよし、これも想定通りの良い動きです。

 普通に手を挙げるのではなく、かわいい感じに腕を上げてなのが完璧だね。


「些細な動作まで手が込んでるなぁ。安価になる予定とはいえ、こりゃぁ購入費用が相当になりそうだな」

「かかるようになっちゃうかなぁ。外装と同じくらい、こういった動作にはお金がかかるからね。まぁ予算に合わして機能の取捨選択はできるようにはするとは思うけど、お金があってもこの2体と全く同じ人形を注文するのは厳しいと思うなぁ」

「それは費用だけでなく、他社に渡せない機密、それこそ国家機密もあるって事か?」

「そりゃもう、もりだくさんに」


 ドヤァ。

 うん、二人がちょっと苦笑いしましたね。アリサは少し呆れた感じだけど。

 でもしょうがないんです。機械人形自体には興味はないけれど、物作りや技術の追求とかは大好きだからね。ちょっとした新技術とかも盛り込んじゃうのも当然だからね。


「現段階で国家機密が大量にあるんじゃ、販売は相当先になるのか?」

「ん~、販売すること自体はそこまで時間は掛からないで出来るかな。技術の盗難防止みたいな機能も既にもりだくさんだから」

「技術の盗難防止って……その機能自体、すでに国家機密な気がするんだが」

「そうかもしれない」


 うん、カイルまで少し呆れ顔になったわ。国家機密なのに安易に使いすぎてるだろって状態だからねぇ。

 事実、調査や分解されたらダメな機能や装備に関しては、うちの国の機密資料や文化財とかに使う特殊な装置と術式を組み込んだからなぁ。

 起動状態では無理なので、強引な手段として半壊や全壊状態で取得しようとしても、対策をしてある機能や装備はすぐに消滅や解除不可能な封印状態になるので安心です。





 国家機密はさておき、そのまま説明をしてはいるけど、やっぱり気になるのね。


「なぁ、本当にこの2体、自意識とか感情とかは無いんだよな?」

「ないよー」

「それにしちゃ、ずいぶんと感情豊かに動いてるんだが……」


 うんうん、当然の反応ですね。

 この2体には思いつく動作をてんこ盛りにしているのもあってか、棒立ちせずにちょっと動いたり髪を少し弄ったり服を整えたりと、いろんな動作をしているからね。

 もちろん立つ動作だけでなく、声に反応するときや何かを指示した際の動作なども人っぽい動きというか、キッチリでなく無駄や無意味な仕草や動作もしているからねぇ。


「やっぱね、日常を考えると、こういかにも機械ですって感じのガッチリとした動作よりも、人みたいなゆるい感じの方が良いからね」

「その考えは理解できるが……これはやり過ぎじゃないか?」

「そこはわたしだからね、妥協は一切しません! まぁそのせいで、想定以上にお金かかったけど」

「掛け過ぎだろうなぁ、これは。着せているメイド服も相当なんだろ?」

「そりゃねぇ。うちの従者さんが着ているのとほぼ同性能にはしたから」

「マジでやり過ぎだな……」


 おっと、またもや壮大に呆れられたわ。

 でもしょうがないのです。妥協という2文字を考えない時のわたしだと、技術も素材も惜しげもなく全て注ぎ込みたくなるので。

 まぁその結果、周囲に呆れられたり外に出すためには改修が必要になったりと、ちょっともにょもにょする状態にはなっちゃうけど。


「しっかし行動もそうだが、外見をここまで人に寄せてても問題ないんだな。今は定番となっているヴァルキュリアみたいな物を見ていたからではあるんだが」

「あーそれね。わたしも作る際に色々調べたんだけど、人ソックリはダメっていう法律は無かったんだ」

「そうなのか?」

「ダメってしているのは人形を作っている各会社が設けている規約、業界ルールみたいなものだね」


 ポーチからサクッと人形に関する法律や規約をまとめた資料をドンと出し、会社側の規定のところをちゃちゃっと出す。


「ここに書かれているように、単純に人に寄せるのは止めましょうになっているんだ。だけどその理由は単純で、人に寄せすぎて体の代替、それこそ自分の体にするとか無くなった人をよみがえらせるとか、そういったことをさせないためになってるの」

「なるほどな。よりよい肉体を欲する者は当然いるからなぁ」


 カイルが腕を組んで少し思いふけってるようだけど、そういう人物に会ったことがあるのかしら?

 わたしの周りにはそういう人は一切いないけど、世の中は広いからね。そういう考えを持つ人も割と多そうだわ。


「だが注意喚起どまりな表記なんだな。明確に禁止されていないって事は」

「うん、そういう体の代替みたいなことができない仕組みをしっかり設けておけば問題無いのと、医療や介護向けだと人に寄せた方が良いので完全禁止はしてないみたいよ」

「確かに、世話をしてもらうのが見慣れぬ外見だと、休まるものも休まらないな」

「そゆこと。まぁその大体できませんっていう仕組みで、まーたお金かかっちゃってるんだけどねぇ」


 通常使う機能や動作だけでなく、安全装置やら防止機能やらもホントいっぱい機密もいっぱい。

 わたしのは少しやり過ぎではあるけれど、それでも世に出ている機械人形が高くなるのも当然だね。





 二人に説明をそのまま続けていると、徐々に人が増えてきたわ。どうやら二人が客寄せのきっかけになったみたいね。

 まぁ人がやってきてもやることはたいして変わらず、アリサが冊子を渡し、質問があればわたしが答えるって状態。人形に関係のない質問をしてくるバカも出てきてはいるけど、そういうのは無視です、ムシムシ。


 それはさておき、次のちょっと凄い技術を体験してもらおうかしら。


「人に寄せてるって言ってはいるけど、実はその中でもおっきな技術があるんだ」

「ほほう?」

「うんうん、これ以上あるのかよっていう顔してるね? でもあるんです」


 結構な自信作だからね。なので、それを展示した場所に少し移動し、誘導する。


「それは~、これです!」

「これって人の形をした銀色の物体だよな。気にはなっていたが、これって何なんだ?」

「これは作った人形と同じ外装、というより皮膚を模した人形なんだ。うちの人形へのお触りは厳禁なので、代わりにお触り可能なのを用意したってわけ」


 お触りできるよう、展示場所の一角に人の形をした銀色の人形を座らせてたからね。

 まぁ人の形はしているけど細部の造形は無くてぬぺーっとした不気味な人形になってるのと、どういった展示なのかを示す説明書きを置き忘れてけど……。


「焦らしてもしょうがないのでサクッと言っちゃうけど、わたしの作った人形、肌がわたし達のような人と同じ感じです。ぷにぷにのお肌です」

「まじかよ!?」


 おっと、カイルが相当驚いたけど、ルーヴィちゃんや他のお客さんも驚いてるね。

 だけど当然かな? 医療や介護向けの人形でも素材の関係もあるのか、人の肌とは違って固く、陶器に近い感じみたいだからね。


「ぷにぷにです」


 2体を傍に呼び、ほっぺをぷにぷに。うん、完璧なぷにぷに感です。


「なんていうか、ほんとなんでもありすぎないか?」

「だって、作ったのがわたしだからね! でまぁこのぷにぷにを体験してもらうのが、この座った銀人形なわけです。なのでさーさー」

「ずいぶんと推してるな。まぁ嘘じゃないんだろうが……これがなぁ」


 おっと、銀色の人形が不気味すぎて怪しんでますね? まぁ気持ちは分かるけど、危なくないのでどーんといきなさい!


「柔らかい程度だとは思ってい……はぁ!? ちょっと待てよ、まじかよ!?」

「あ、あのー、これって生きている人ではないですよね?」


 腕を触ったカイルとルーヴィちゃんがすっごい驚いてるね。よしよし、いい反応してくれてます。


「確かに柔らかくするだけなら簡単だけど、わたしだからね。人肌同様の温度や触る場所での硬さ違い、骨格に近いところではその骨格が少し分かるように再現したからね」

「どんだけ技術と資材注ぎ込んだんだよ……」

「そりゃ、まぁ、そうとうに? ちなみに肌の色や硬さや柔らかさも変更できるので、自分の日常に違和感のない人形が作れるようになる予定だよ」

「違和感無さすぎだろうなぁ、これは」


 うんうん、驚愕って感じの反応してきてるね。さすがわたし、人を驚かせる物もいっぱい作っちゃう子。





 しかし、こう人に寄せると当然の意見も出てくるわけで。


「お尋ねしたいが、この人形の用途は限定されていないのですか?」


 学園に居る家族の身内か、それとも見学に来た人なのか、どこかの貴族のおばさんがそんなことを聞いてきたけど、なんか嫌な感じがしちゃうわ。


「ん~、従者の補助要員という使用は考えてますけど、何かの用途限定というのは特にないですよ。限定することもできるけど」

「となると、もし騎士団の要員として大量注文した際、騎士団での行動以外を制限することも可能ですか?」

「可能と言えば可能ですけど、大量販売はしない予定です。これは1体1体の製造が大変なのと、先に言ったとおり従者の補助要員を考えての人形なので、壊れてもいい消耗品でなく、長く使ってもらうための人形なので」


 カイルとルーヴィちゃん以外も質問しだすようになったけど、二人と違って探るって感じの質問がけっこう多い。

 それが技術者観点だけでなく、政治とか派閥とか、そういうドロドロに繋がるのも多くて、ちょっとだけ嫌になっちゃう。しょうがないことではあるけど、やっぱりやーね。


「私からも一つ、こちらの人形は他の物とは違い人に近いようですが、どこまで近いのですかな?」


 今度は少し若い男だけど、なんかこっちはやらしい感じがするなぁ。

 というか、人に近いのがどこまでって、どういうこと?


「え~っと、不要ではありますが、一応飲食も可能ですけど」

「いや、そこではなくてだな」

「ん~? となると睡眠とかは」

「いやいや、そこでもなくてだな。やはり子供相手、直接言わないと分からないか」


 ……はい?

 なんですか? 急に子ども扱いですか? さすがにちょっと怒っちゃ……うん、アリサ、ちょっとまとーね? ここでいきなり武力行使はだめだからね?


「分からないかもしれないが、夜伽はできるのか、という事だ」

「夜伽って、あー……」


 はい、いやらしい感じがバッチリ当たりました。

 たしかにそう言った利用のための人形もあるけど、わたしの人形でもそれ考えるのが出てくるとはなぁ。


「可能か不可かで言えば可能です」

「おぉ!」

「ただ、そういった行為のための装置は標準機体には装備しない予定なので、装備するためには追加費用が必要です。また、装置自体も精細な物となるので、定期的な検査や修繕が必要となり、費用がさらに膨らむこととなります」

「だが可能なわけですな」

「まぁそうですけど……なんでそこまで食いつくのかしら」


 必死な感じが出てきて、ちょっとドン引きだよ、いっそ具体的な金額だして心折った方が良いのかしら?


「まぁユキ、そう苛立つなよ」

「おっとカイル君、それは今の男に同情からかな?」

「同情って言うか、まぁ金持ちの男の典型みたいなものだからな。理想に近い物を所持できる可能性があるとなれば、相当欲が出るんだろうよ。俺も同類をよく見ているしな」

「そういうものかねぇ」


 カイルもシラーっとした目で男を見てるけど、うん、ちょっとないよね。お金で人を買うよりかはいいかもだけど……なんだかなぁ。

 そして、わたしも男のままだったら、あんな感じになってたのかなぁっていう恐怖もうっすらでて……来ないね!

 男のままでもあーはならなかったはず! きっと! おそらく!

えっちなことは出来るけど凄くお高いです仕様

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