309話 精霊石って思ってた以上にすごい?
技術のせいでちょっと予想外な反応もあったけど、被害とかも無かったのでサクッと先に進もうかな。
「なんとなくですけど、ユキさん、ケロッとし過ぎてません? 反省もあっさりな感じですわ」
「え、えーっと?」
「やっぱあれだよね! 今回のも技術者あるあるだからしょうがない! っておねーちゃん思ってそうだよねー」
「ぎくぅ」
エレンとメイにほっぺプニプニされながらツッコみを受けちゃったけど、うん、おっしゃる通りです。
なんとな~く技術者魂が出ているというか、考えがそっち寄りになってるのか、軽めのあっさりになっちゃってるわ。
それに
「わたしって考えの切り替えがけっこう早いから、悪いことはちゃんと反省するけどズルズル伸ばさず、区切りが付いたらサクッと切り替えて、どんどん先に進んじゃうからなぁ」
「今回もそういうわけですのね?」
「うん。これが見ず知らずの人とか敵対する人に対しての技術提供とか、兵器の製造ってことになっていたら、もーっと反省してるけどねぇ」
ほんとーにヤバい事態だと、こんなあっさりと頭を切り替えるはしないだろうなぁ。時と場合によるって感じでもあるかな。
「とゆーかね、わたしは言いたいの」
「なにをー? もしかしてー、あたしへの愛の告白とかー?」
「そ、それはちょっと恥ずかしいのもあるので別の機会に……」
「別の機会ならできますの? でしたらメイさんだけでなく」
「あー、まぁ、うん、そういう機会があったらという事で……」
メイとエレンがキラキラした目で見てきてるけど、今はそういうのじゃないからね?
それに、その、そういうのは結構恥ずかしいのでして……。どこでもバーンと言えるほど、わたしは強い性格じゃないのですよ。
「えーっと、言いたいのは、出来上がった人形の性能とかをバーンと自慢したいの!」
ドヤァ!
うん、全員して「やっぱりそうだよねぇ」って目で見てきたわ。
ちょっと勢い付けたのに、お見通しというか全部わかってる風の反応だと、やった身としては少し恥ずかしいです。もう少し前振りとか考えておくべきだったかなぁ、とも思ってしまったわ。
本題に入る前に何とも言えない恥ずかしさが少しあるけど、気持ちを切り替えてドーンとお披露目を
「遅くなりました」
「あっ、おかえりー……って、切り替え阻止する気!?」
「え? あの、どういう事でしょうか?」
アリサとノエルがやっていた作業が終わったらしく戻ってきたけど、ほんと切り替える直前だったからついそんなこと言ってしまったわ。二人もキョトンとするのは当然よね。
「うん、わたしがちょっとした暴走しただけだから気にしないで」
「それはそれで気になりますが……。とりあえず今回についてですが」
アリサが魔道具を操作して目録というか決まり事かな? それを映し出したけど、ちょっと真面目な感じね。まぁおふざけで出すような内容でもない気がするけど。
「まず、お嬢様が行った改良の詳細についてですが、サユリ様達はすべて把握されていました」
「やっぱりかぁ。お母様なら手に取るだけで精霊石の存在に気が付くだろうし」
「ですね。特に、今回お嬢様が使われた精霊石ですが、精霊に新規生成を依頼された物ですよね」
「だね。最初にドーンとわたしが精霊力渡して、魔道具に組み込む用の精霊石を作ってもらったよ。精霊石を作るお仕事を依頼したって状態ともいえるかな」
精霊石自体は精霊からしょっちゅう貰っているけど、それはあくまで精霊からわたしへの贈り物なので、誰でも使うような道具にはどうしても組み込みたくないからなぁ。
わたしが身につける装飾品とか装備類なら良いけど、それ以外だと抵抗あるわ。
あーでもそっか
「わたしがお仕事の材料としてドーンと精霊力を提供したから、作ってもらった精霊石にわたしの精霊力があったわけだね。んで、それをお母様は探知しちゃったと」
「ですね。若い精霊石特有の現象でもありますけど」
アリサが空間に別画面で精霊石の説明文をずらーっと表示したけど、たしかにそういう仕様があったねぇ。
出来てからの日が浅く、若い精霊石は大気中の霊素の吸収とかも全然なので、作った人の精霊力をはっきり感じることができる。
時間が経った精霊石だと大気中の霊素を吸収していたり、人から提供された精霊力を内包していたりと、いろんな精霊力が混じった状態になっているのがほとんどなので、誰が作ったかは分かりにくい状態になる。
そんな精霊石の仕様もあってか、精霊石を精霊が作ったならば、それを作った精霊が宿していた精霊力が分かる。
だけど、今回はわたしが渡した精霊力を圧縮したり加工したりして作ってもらった物なので、精霊ではなくわたしの精霊力だったと。
「また、技術に関してはカタリナ様への報告が既にお済だったとのことで、改めて技術の提出などは不要、使用に関しても問題がないそうです」
「うんうん、ちゃーんとママ様にも報告しておいた技術だからね。実現難しいって言われてたけど、なぜかあっさり実現できちゃったけど」
技術に関してなんとなーく思いついたものは、ババーッと過去の文献とかをあさって類似したのが無いか確認するのはもちろんだけど、お父様にお母様、それにママ様には報告したり相談したりしてるからね。
まぁ今回みたいに、技術の構想は報告してあっても、実物作成はまだまだ実験もまだまだな状態なのに、先走って作り出しちゃうのはあるんだけど……。
「問題はそこだそうですよ。今回の技術ですが、特定の環境、正確に言えばお嬢様やサユリ様といった特別な方以外は実現不可能な技術だそうです」
「そうなの?」
「そうなのです。それどころか、すごく危険な技術だったんですよ?」
アリサがすごく怒った、というよりも心配になったって感じの目をしてジーっと見てきたけど、そんなになの?
「この技術ですが、通常の魔道具ですと魔石と精霊石の間で力の反発、もしくは増幅が発生し続けてしまい、互いが維持できなくなり暴走してしまうそうです」
アリサが魔道具を操作し、表示内容を切り替えたけど……なるほど。昔行った実験結果とその時の映像が映し出されたけど、結構ヤバいね。
起動したとたんにドカーンと爆破とか、1分も経たずに周囲を飲み込むとんでもない現象を発生するとか、安全性皆無としか言えない技術だよ。
「ではなぜお嬢様が改良された道具は暴走もなく安全かと言いますと、今回作られた精霊石が理由なんだそうです」
「そうなの? 特に何か組み込んでは無いハズなんだけど」
「えぇ、お嬢様が意識した結果、ではありません。お嬢様の事を考えながら精霊石を作った精霊の意思の結果、となります」
「あー、そゆことか」
ウンウンと思いっきり頷いちゃったけど、すごく納得。
「精霊石を作ってもらうとき、精霊さんにどういう用途で何をどうしたいっての説明もしてたから、おそらく暴走しない特別な精霊石を作ってくれたってわけだね」
「ですね。そして、その交渉が行えるのは」
「精霊さんとすっごく仲が良い、わたしとお母さまだけって事かぁ」
わたしもお母様も、ほんと特別扱いされてるからなぁ。
それゆえに今回みたいな特殊な精霊石も、ちょっとしたお願い感覚で何事もなく作ってくれちゃったって訳だろうけど。
その後もアリサが映してくれてる内容をズラズラ―っと見たけど、問題点とかは特にないかな。
まぁわたしが精霊にお願いして作ってもらう精霊石以外だと危険なので、他の人は絶対に真似しないようにって言うのはバッチリ書かれてるけど。
「それとですが、レグラス王国としての見解、というよりも、お嬢様へのお願いがあります」
「お願いって、ずいぶんとやんわりだなぁ。まぁわたし相手だからだろうけど」
たとえ重要なことでも〝命令です!〟ってのは無いからなぁ。
まぁわたしも家族や身内、国からのお願いを受けたらほとんど拒否とかせず、さっくり承諾しちゃうんだけど。
「今回の技術ですが、当家とレグラス王家以外からの作成依頼、それと現品の提供はすべて拒否してください、とのことです」
「広めたりするなってことかな?」
「ですね。他の精霊石を使おうとするのはもちろんですが、この精霊石を他の魔道具に埋め込んだ場合でも大惨事になる可能性が高いからだそうです」
「それってつまり、わたしの改良した道具専用になってるってことかぁ」
ポーチから今回使った精霊石の予備を一個取り出し、まじまじと見直してみるけど……う~ん、普通の精霊石にしか見えないわ。
「どうやら、精霊側で何かしらの仕組みを設けたそうです。秘匿事項らしく説明いただけませんでしたが、使用者に関しても同様に働いているとの説明は受けましたよ」
「使用者って、使えない人が居るってこと?」
「そのようです。正確に言えば、精霊石の機能が使えない、だそうですけど」
「そんな機能、組み込んでないし考えてもいなかったよ……」
うちで使う人みんなが楽になればいいなーって考えありきだったから、そんな対策皆無だったわ。
いかんなぁ、技術者として抜けすぎだよ。
「使えないと言っても、お嬢様が考えられている者は全員使えるそうです。使えないのはお嬢様が知らない、もしくは仲の悪い方ですね」
「それって万能すぎ!?」
「万能すぎですねぇ。ですので、当家とレグラス王家以外からの依頼は断ってください、となりますね」
「なるほど納得だわ」
いろんな特典盛りだくさんな道具って事だもん、そりゃ制限するよ。
そして、そんなものが簡単に作れちゃうわたし……ヤバいなぁ。ますますわたしの利点というか危険度というか、いろいろ上がっちゃったよ。
ほーんと今世のわたしって、追加要素までもりだくさんって感じだわ。
なお、機械人形ちゃんはまだ最終検査中です




