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307話 嫌いだけど作業は早いなガーディアン

少し長いです

 ガーディアンの機能を使ってサクサクと情報を集めだしたけど……うん、ほんとさっきまでの手間というか準備は何だったのかなぁ。

 今までの行動履歴に現在の状態、暴走につながる要因があるかの確認と情報を列挙するように命令したら、わたしが何か操作することも無くズラズラっと映像に表示していくんだもん。

 まったく、ガーディアンの部品使ってますって説明書なり仕様書に書いておいてもらいたかったわ。まぁわたしの自己都合というか希望ではあるけど……。


「なんていうか、全自動だね!」

「それだけガーディアンって優れてるってことではあるんだけどね。大雑把な命令でもちゃんと認識し、一番の結果に繋がるように動けちゃうのだから」


 ガーディアン自体は好きでもないし存在すら嫌って思う所はあるけれど、優れているとこは結構あるからなぁ。

 同じ物をこの世界でも作ろうと思えば作れるけど、それを技術者も素材も劣っているあの世界で作っちゃうとか、ちょっと恐ろしいわ。


「それでいっぱい出てるけど、何が書いてあるの?」

「え~っと、今表示しているのは来歴だね。機能が完全に停止していた期間はさすがに無いようだけど、それでもあらかたは出てるかな」


 表示されている映像に手を伸ばし、指でちょいちょいっと操作して表示を切り替えたりしてるけど、思ってた以上に細かく出てるなぁ。

 破損がほとんどなかったようで機能停止状態はさすがに無理だったようだけど、それ以外の情報がちゃんとでてる。それに外部装置使わなくても画面操作もできるあたり、ガーディアンの基幹機能とかは完全に生きてるってことか。


「どうやら新しい転移門を作ったらしく、ガーディアンの部隊が転移してきたみたい」

「侵攻しに?」

「そそ。ほんとーにしつこ過ぎだわ、あの世界の奴ら。ただまぁわたし達からすると運がよく、向こうからすると運が悪かったようで、転移した先にはこの世界の冒険者が大勢待ち構えてて、あっさり殲滅されたみたい」


 待ち伏せされてたとかちょっと情けないです。

 まぁ、おそらく転移先の確認とかで何度か試験転移してたけど、それを目撃されてたとかなんだろうなぁ。偶然いましたって状況は少し考えられないし。


「ガーディアンの危険性は世界中に通達済みだから、それなりに強い冒険者が居たんだろうね。未熟な冒険者とかだと、ガーディアンにあっさり負けちゃうだろうし」

「負けない状況を作ってたってわけだね! でもそうなると、ガーディアンの機械を持ってきたのって」

「おそらくその冒険者自身か、冒険者から買い取りを行った業者かなぁ。うちの国や冒険者ギルドと提携している業者ならば、ガーディアンの部品を世の中に流すってことはしないんだけどねぇ」


 ガーディアンの部品って危険な面がけっこうある。

 只人以外を殲滅するのを前提にし過ぎてるからか、ガーディアンの機能が命令無視して独断で動作する状態になると、暴走したり殲滅兵器と化したりで、ほんとヤバい物。

 そんな部品とは知らず無警戒に使うと……


「エレンが報告してくれた暴走の原因は、このガーディアンのせいかなぁ。どういう理由で使ったのかは分からないけど、新しく組み込んだ機能の影響でガーディアンの機能まで復活」

「その結果が暴走ってこと? う~ん、それだとちょっと予想外だなぁ」

「予想外って?」


 メイがちょっと真面目な顔してそんなこと言ってるけど、どういうことだろ?

 もしかして原因まで予知してたけど、それとは違う事態ってことなのかな?


「あいつらが自身の評価を上げるため、あらかじめ暴走が起きるようにしてるはずだったのにぃ」

「えっ? そうなの?」

「そうなんだよ!」


 メイの表情をじーっと見るけど、うん、冗談とかで言ってる感じじゃないね。となると、やっぱ予知してたってことかな?

 にしてもあの二人がどうやって暴走の原因を仕組んだのか、かなり気になっちゃうね。そっちも調べることできるかなぁ。


「暴走する時間も違ったのはこのせいかなぁ」

「時間って……、だからすぐに帰ろうとしなかったの?」

「そうだよ! 良い機会でもあったから、あいつらの悪だくみを利用して、おねーちゃんがバシーンとかっこよく阻止するのを期待してたんだ!」

「お、おぅ」


 にこやかな顔してそんなこと言うけど、わたし、そういうキャラじゃないですよ? カッコいいヒーローとか絶対にやりませんよ?





 とりあえず来歴の調査はおいておきましょう。わたし原因じゃないだろうし、情報まとめておくだけでいいかなぁ。細かい調査は国のそういう人たちに任せた方が良いってのもあるし。

 となると、今調べておきたいのは暴走を引き起こした機能が何なのか、くらいかな。今は安定してるっぽいけど、この2体も暴走する可能性があるにはあるし。


「ん~っと、怪しそうな機能は……どうしたの?」


 表示を切り替えながらふとメイの顔を見たら、何となく難しいというか、もにょもにょしてるって顔してるわ。


「あたし、おねーちゃんに言いたいことがあります」

「急に真面目だね。それで言いたいことって?」


 冗談っぽい感じはない、真面目って感じ。

 もしかしたら、わたしは気付けなかったけど、表示内容で気になるところでも発見したのかな?


「文字が分かんない!」

「あっ、そういうこと」


 バシーンと真面目に答えたけど、そういえばそっかぁ。

 ガーディアンなんだから、機能に使っている言語は当然あの世界の物。表示されている文字や記号もそれ基準なわけで。


 ……うっかりしていたな、これ。

 見直すと、最初の方の表示はこっちの言語だったけど、ガーディアンとしての機能を使ったあたりから、表示されている文字が異なっていたね。こっちの世界で作られた部品の機能を呼び出してたのかしら?

 いやはや、わたしはどっちも読めちゃったせいで、メイが読めないかもっていう考えが浮かばず、そのまま進めちゃってたなぁ。ほんと失敗です。

 メイにとっては未知の世界の言語、知っているわけがなかったのに。


「となると、た~しかここに」


 身につけているポーチに手を入れてガサゴソと。

 いくつか持っていたような……あったあった、表示されている言語を自動翻訳してくれる魔道具仕様の眼鏡が。


「それじゃこれをメイにかけ……いや、にやけないでいいからね」

「えー?」


 眼鏡をかけてあげようとしただけなんですけど。抱きつこうとしたわけじゃないんですよ?

 そもそもこの状態で抱きつくとか、たぶんやらないよ?


 それはさておき、メイに眼鏡を装着っと。

 ほほぅ、これはこれは


「良い感じかも」

「にあう~?」

「似合ってるね。ちょっと文才って感じもあるかな」


 メイが眼鏡をくぃっとやったので、ついそんな感想が出てしまったわ。

 わたしが眼鏡をかけると文才とかでなく、ちょっと背伸びをした子供って印象がけっこう出ちゃうけど、メイはそういうの無いね。やはり身長とかの差かしら?


「それでえっと、普通の魔道具と同じように起動すれば、目の前に映っている文字とかを自動翻訳してくれるはずだよ」

「おー、こういう事だね! うん、べんり!」

「不自然な表示がでないよう、細かい処理部分までこだわってるからねぇ、その眼鏡」


 元の文字の下に翻訳表示だけでなく、元の文字を非表示にして翻訳だけを映すって機能まであるからね。よくできた魔道具です。

 しかも言語は後から追加することも可能なので、未知の言語がでてきたら買い直しとかせずに使い続けることができる優れた物。使い手側の要望を重視し過ぎてて大丈夫なの? って気持ちはあるけど。


「でもおねーちゃん、なんでこの眼鏡あるの?」

「えっと?」

「おねーちゃんは翻訳の魔道具要らないよね?」

「あーそゆこと」


 不思議な顔して聞かれたけど、そう言われたら確かにそうだわ。

 わたしって翻訳の魔道具は一切使わず、発音するのは難しくても読み書きはできるよう、しっかり勉強しちゃうからねぇ。

 なので、翻訳のためにこの魔道具を使う機会はほとんどないんだよねぇ。


 ただ


「メイはさ、前世の言語ってまだはっきりと覚えてる?」

「んー、ちょっと怪しくなってきたかな? だって使わないもん!」

「だよね。わたしも怪しくなるので、ときおり復習してるもの」

「復習って、がんばりすぎ!」

「そうかなぁ? それで、もしも自分が忘れたときの保険も兼ねて一応持っているのと、忘れないための復習として、この魔道具に覚えている言語を全部再登録とかしているんだ」

「再登録って、それはやり過ぎだよ!」

「えー?」


 むぅ、とんでもない事してるわコイツ! って顔で見られちゃったよ。

 メイですらそう思うってことは、もしかしてやり過ぎなのかしら? だけど、わたしからすると苦でもないし、好きな事の一つなんだけどなぁ。





 さてさて、メイも内容が分かるようなので表示をどんどん切り替えてっと。

 あー、これかな。


「どうやら新しく入れた機能、機械人形の破損や不備を自動修復するように作られてる部分があるみたいだね」


 映像にはガーディアンの機能が、追加された機能からの修復依頼の指示を受け、状態の再確認や修復に必要な物資の列挙、必要な時間などを算出したって記録が出てる。

 でもこれ、記載内容を見ると指示ではなく


「侵略って判断したみたいだね。やっぱあいつらの技術はだめってことだね!」

「それはちょっと違うような? これはたぶん、ガーディアンからすると内部に未知の機能が発生、もしくは撃ち込まれたって判断したと思うんだ」

「異物ってこと?」

「そゆこと。そんな異物からの情報なんて信じられない! ってガーディアンは判断し、ガーディアンとしての機能を少しでも早く修復して状からの退避、もしくは周囲を殲滅して安全の確保を優先したってとこだね」


 傍から見れば暴走だけど、ガーディアンからすると安全確保や生存の為って感じになるってことかぁ。

 ガーディアンだから敵にしか思えないけど、同じようなのが他の機械人形で起こったら同情とかになるかもしれないなぁ、これは。


「それでガーディアンの修復だけど、ある程度機能の修復めどがついた時点で、どうやら所有者の再登録が実行されたみたいね」

「それが実行されたとき、おねーちゃんが居たので再登録がこの2体は完了したってこと?」

「そうみたいだね。なので、あの時わたしが居なければこの2体も暴走していたかな」


 所有者が居れば、機体内にある異物は意図した物と判断して変な動作はしないけど、所有者が見つからないのに機体内に異物が存在するってなると、ガーディアンとしては危機的状況と判断し、その結果が暴走に繋がる動作になった、ってとこか。

 色々と重なった結果、起ってほしくない事態に行っちゃった感が強いわ、これ。


「なるほどだね! そういえば、これの本来の所有者とかは?」

「え~っと、見たところ、こっちの世界に来た時に倒されたのかな? 所有者死亡扱いになってるわ」


 ずいずいっと最初の方の記録を表示したけど、知った名前とかじゃなかった。

 まぁ知った名前だったらどうするとかも無い……かなぁ。


「所有者死亡後にガーディアンも倒されたようで、所有者再登録の処理が後回しになったみたいだね」

「その場で行われてたら?」

「ん~、所有者が居なければ撤収か、その場で暴れた後に自爆かなぁ」


 使い捨て感覚でガーディアンを使用とか、ちょっと考えたくないけど。

 前世の事をうっすら思いだしちゃうのもあるし、ガーディアンはうんざり感がどんどんだよ……。





「それでおねーちゃん、この2体はどうするの?」

「ん~、そうだなぁ」


 必要な情報はあらかた取り終わったのでお片付けしようかなって考え出してたけど、この2体をどうするかは決めて無かったわ。


「ガーディアンの部品は国の方に送らないとだけど、それ以外って要らないんだよなぁ」

「捨てるの? 再生とかはしない?」

「再生って……あぁ、そういう事か」


 少しキョトンとしちゃったけど、そういえばこの2体を買う際に大会みたいなのに出てくれって言われてたなぁ。ちょっと忘れそうになってたわ。


「暴走事件があったから、あの契約は無効にすることもできそうだけど、それはさすがにねぇ」


 面倒なことは拒否しちゃいたいけど、約束したものを勝手に無視とか破棄するのはなんか嫌。こういう考えはどうしても譲れないわ。

 なので人形は2体仕上げる必要は出てくるけど、この2体を再利用するのは無いかなぁ。色々とわたし好みじゃないし。

 となると作り直しになるけど、どういうのにするかなぁ。

 ん~、わたし好みに超特化したものを基本に、ちょっと凄いのを作ってみようかしら。


「おねーちゃん?」

「ん~? な~に?」

「あたしの不満買うようなのは作らないよね?」

「だ、だいじょうぶ……なハズ」

「それって、もぅ! ぶーぶー!」


 いかんいかん、メイがちょっとふくれちゃったわ。ひょっとして、顔にも出てたかな?

 でもそうね、わたし好みに超特化しちゃうと、メイだけでなくアリサ達も嫉妬しちゃうかもしれないわね。さすがにそういう状況は勘弁!


 それになぁ、いつもみたいにドガーッと暴走気味の状態で作っちゃうと、ぜーったいに感情持った人形ができました! ってことになっちゃうだろうしなぁ。

 ほんと注意して作らないとダメだね。余計な問題発生が嫌なのはもちろんだけど、みんなとの仲がぎくしゃくする原因を作るとかはすっごい嫌だもの。

機械人形の嫁化フラグが立つのを事前に折る狐娘

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