306話 調査ってほんと大変、いろんな意味で
少し長いです
脱線気味な感じだけど、機械人形をどんどんばらしてきましょー、バラバラと。
とはいえ珍しいとか未知とか、そういう面白そうなのは出なさそうだなぁ。
「外装だけでなく内装もだけど、完全新規の特別仕様ではないなぁ。専門店に行けば買える物ばかりだわ」
胸部から腹部の装甲板をパカッと外して内部構造まじまじと見てるけど、知っている物ばかりでほんと興味がわかない。
まぁこれを一般向けとして売るなら正しい選択かもだけど、特別感ある人形の方がわたしは好きなのです。
「でもこれ、新型って言ってなかった? 新型は実はウソ発言?」
「ウソってことは無いとは思うけど、新技術を思いっきり満載したって物じゃないのは事実かなぁ。既存の機械人形の改修型って言った方が正しい感じはするけど」
「やっぱり新型じゃないじゃーん」
「結局そうなっちゃうんだよねぇ」
胸部にある立方体でふぉーんって音とともに光っている制御装置を、メイと一緒に指でつんつんしながらバッサリと結論出しちゃったわ。ほんと、新型発言はどういう事って思っちゃうね。
「いくつかの細かい部品は既存の物とは違うようだけど、それもやっぱり買える物。新規作成した装置はなさそうだわ」
「誰でも改造できますよってことなのかな?」
「それもあるかなぁ。たしかこれは基礎となる機体だから、あえて新型の装置をつけていないとかだね。あとは」
「新型が作れないダメな人たちってことかもだね!」
「ハッキリいうとそうなっちゃうねぇ。そんな人たちでも評価とか実績の為には新型は必要だった、とかかなぁ」
人形の腕を曲げ曲げして関節部分の動きも見てるけど、ここも新しい構造とかではない。強度確保のためか少し硬めの鉱石を素材にしているようだけど、まさかこれがスゴイ改良点ってことになるのかな?
う~む、メイがハッキリ言っちゃったけど、この程度の変化で新型呼びを堂々としちゃってるとなると、やっぱりダメな人たちの可能性がけっこう高くなってきちゃったわ。
しばらく人形をばらばらと分解してるけど……うん
「ちょっとメイさんや、明らかに調べる対象がこの人形でなく、わたしになってるよね?」
「むふー」
「いや、ドヤることじゃないからね?」
面白味がない人形だからか、完全にメイの行動がいちゃつき重視になってるんだもの。
わたしが人形の部品を外してると、メイがわたしの尻尾をモフってきたり狐耳をフニフニしてきたりと、完全に妨害してるよね?
まぁその程度の妨害で、掴んでいる部品を落とすほどヨワヨワじゃな……ちょ、まって、耳と尻尾の同時攻撃は無理あるから! ふにゃけて部品落としそうになるから!
「おねーちゃんもまだまだだね!」
「まだまだって、今のは結構無理あると思うんだけど?」
「むふー!」
「だから、もう」
ほんとーにいちゃつくという優先度が高すぎだよもう。
まぁ嫌じゃないと思ってるわたしも居るので、完全防御とかもせずそのまま受けちゃってるので、延々と続きそうな感じがうっすらしてるけど。
ただなぁ
「あんまりやってくると、わたしの理性もですね?」
「つーまーりー、あたしを襲っちゃうんだね! えっちぃ意味で!」
「そこまではいかないけど、多少はねぇ……」
襲うはしないけど、何らかの痴態は起こしそうな気がしちゃうからなぁ。
ふにゃけすぎて更なる幼児化とか思いっきりありえそうで怖いわぁ。
「そもそもえっちぃこととか……おや?」
心臓部ともいえる装置の保護板を外してたら、なんか見覚えがある球体が出てきたわ。
ん~、何だったかなこれ。
「これも光ってるけど、機械っぽく無いね。もしかして宝石?」
「宝石、宝石……かなぁ? 謎の球体だけど、う~ん、なんか見覚えがあるなぁ」
二人して覗き込んでるけど球体は特に変化せず、装置内でくるくると回ってるわ。
重要な装置なんだろうけど、球体は装置内で固定しているのではなく箱の中に浮かび、その場で回転してるって状態。回転速度は一定で、そこまで早くないかな。
「説明書にはなんて書いてあるの?」
「え~っと……ふ~む、基幹となる装置の一つとは書かれてるけど、内部の記載とかは一切ないね。新型の装置なのかも不明だわ」
表示している機械人形の資料とかをズラズラっとみてるけど、この装置に関する記載は一切ない。
書かれてないってことは、この装置を分解して改良とか変更は想定していなかったってことだね。
まぁ分析している魔道具とかが危険を示していないあたり、万が一分解することになっても安全ですって仕組みはできてるみたいね。もしも危険だと分かったら即破壊する考えだったけど、それはなさそうだわ。
説明書などを見ても特に分からないので、とりあえず外して机の上にポンと置く。
ふむふむ、どうやら装置から外すと回転は止まるみたいね。
「壊すの?」
「いやいや、いきなり壊すは無いからね? 力押しでどんどんいこーじゃないからね?」
「えー? そうかなぁ?」
「そうなんだよ? 勘違いしないでほしいな~」
メイのほっぺをツンツンしながらそんなこと言ってたけど、わたしってそう見られる節があるのかしら?
ん~、そこまで攻撃性は出してないはずなんだけどなぁ。力ずくで押し通すことはたま~にあるけど!
「でも困ったわ。魔道具でも分析できないから、これが何なのかさっぱり状態だよ」
「すっごい装置ってことなのかな? でもおねーちゃん、あの学科のゴミがそんなすごいもの持ってるとか、ちょっと変じゃない?」
「確かに変だねぇ、さらっとゴミ表現はどうかなぁとも思っちゃったけど」
見ず知らずの人に対するメイの対応はさておき、たしかにあの学科の人が作れるとはどうしても思えないなぁ。
わたしの持っている魔道具で調べることができない装置が作れるのなら、機械人形に備わっている他の装置類ももっとすごいのとか、これぞ新技術って感じの改良がされててもいいはずなんだよねぇ。
この装置だけすごい物とか、ちょっとおかしいわ。
「調べることができないってことは、手詰まり!」
「になるかなぁ、実家においてある測定器ならわかるかもだけど。ん~、どうしたものかなぁ」
「でもこの人形ってわからないとはいえ、おねーちゃんのいう事は聞いたよね?」
「なぜか聞いちゃったねぇ」
「じゃぁ命令すれば良いだけなんじゃないのー? 情報全部出せ! みたいなので!」
「まっさかぁ」
冗談半分って顔しながら言ってるけど、ほんとそれで情報取得とかができたら楽でいいなぁ。
「命令するだけで良いなら、とりあえず基本的なとこで〝所有者情報を出せ〟とかって命令してみた……は?」
「おーおー、でちゃったね!」
「でちゃったねぇ……マジかいな」
球体の真上に画面が表示され、そこに所有者やら現在の状態やらがズラズラっと表示されちゃったよ。ほんとに命令するだけでいいとか、ちょっとモヤモヤしちゃいます。
しっかしこの表示って
「ガーディアンのだなぁ」
「ガーディアンって、あのロボットみたいなの? あたしは見たことなくて情報だけあるって状態だけど」
「そそ、そのロボットみたいなやつね。こっちの世界にいたガーディアンはすべて処分したはずなんだけど、新しいガーディアンが来たのか、それとも誰かがガーディアンの部品を持っていたのかなぁ」
むかーし問題になったガーディアン事件だけど、あの時に存在するガーディアンはすべて処分になった。存在がいろいろとヤバいので、保管せずに完全消滅が最終決定になったっんだっけ。
だけど同盟国以外の状況は正確じゃないので、処分せずに保管していた可能性もある。
もしくはあのバカな世界の奴らが性懲りもなく、新たな転移門を構築してまた送り込んできた可能性もある。
う~む、どっちにしても問題だなぁ、これは。
「へー、所有者がおねーちゃんになってるね! こっそり登録したの?」
「まっさかぁ。えっとね、むかーしガーディアンの情報を得るために、コレの上位機種みたいなのに仮登録したことがあるの」
画面を再度確認したけど、表示されている機体名が以前のよりも下位の機体。
たしか性能もそこまで良くない奴だったなぁ、これ。
「それでその時の情報って、ガーディアン側だけでなく、わたしの方にも少し残ってるの」
「残るって、体に支障とかは無いの?」
「特に無いねぇ。本当ならすぐに消えてる情報なんだけど、わたしの存在がガーディアンからすると想定外過ぎたのか、まだ残ってるんだ」
長くても1年くらいで消えちゃう所持記録なのにまだ残ってるとは、わたしもちょっと驚き。
とはいえ、目の前にある画面に表示されている所有者情報がけっこう歯抜けな所を見ると、ほとんど消えていたんだろうなぁ。
消えていなければ名前から年齢、血液型やら身長体重などの細かい情報まで表示されちゃうものだもの。
「でもまぁこれで一つ分かったわ。この2体の人形は所有者無し状態だったので、近くにいた適合者、この場合はわたしだね。わたしを所有者として登録し、命令を受ける状態になったんだわ」
「自動で所有者登録ってこと?」
「そゆこと。本来は戦場で所有者が戦死した場合、味方陣営の者に所有者をすぐに移行し、命令が止まらないようする機能なんだけどねぇ」
ほんと、戦闘用に色々と考えられた機体だよ、ガーディアンって。
おかげで前世はどんだけ苦労したことやら。
とりあえず画面に触れて色々と操作……うん、各機能がすべて使える状態だわ。
となると破損していないガーディアンの装置になるんだけど、それはそれで問題だなぁ。どこから来たとかいつの機体なのかとか色々あるけど、そういう確認とか調査は後回しでいいか。
「よっし、これならあとの情報はすぐにサクッとになるわ」
「そうなの? さっきまでの苦労はー?」
「苦労はしてないけど、まぁ無駄だったかな……。とりあえず、どうしてガーディアンとしての機能が動いたのかってのと、暴走になる原因は何なのかの調査かな」
ガーディアンの機能が使えるのなら、分解とかせずに口答でサクッと終わったのがすこ~しもにょもにょしちゃうです。
まぁ分解して調べるといいつつ、メイといちゃつきが8割強だった気もするので良いけど。
「調査ってすぐに終わるの?」
「すぐに終わるね。ログ情報でどういった行動したのかを見て、異常機能とかがあるのかの自己診断させ、その結果の確認だけで済むはずだから」
「なんかすごく簡単だね!」
「そう、簡単なんだよ……外部装置つけたりとか要らなかったんだよ……」
ほんと、さっきまでの作業がすべて無意味というのがもう。
「落ち込んじゃだめだよ!」
「いや、落ち込まないけどね。ただまぁ、うん、ちょっと癒してもらうね。もふもふ」
「やっぱり落ち込んでる!」
おもむろにメイの尻尾をもふもふして精神を落ちつけようとしてるけど、うん、落ち込むというか、モヤモヤしちゃったからね。
別にね、物事を成すための途中で失敗したとか、長い時間を得てからの結果が出るとかはいいんだ。
ただ、ガーディアン、お前はだめだ。
前世でも敵だったからか、コイツに無駄な時間を掛けちゃったという結果が、なんとなく嫌すぎたわけで。
ガーディアンだったら時間をかけずにちゃっちゃと終わらせたかったよ、ほんとーに。
嫌すぎたからか、心がすこーしすさんじゃった気がするので、癒さないとダメなのです。
なので、思いっきりもふもふして癒しましょー。もふもふ、もふもふ。
ガーディアン、再登場!




