296話 尻尾は複数?
だんだんとメイの説明が主でなく、いちゃつくのが主になってきたなぁ。
まぁ想像できる状態ではあったけど……。
「そういえば、少し気になる事がありますわ」
「そうなの? わたしは特にないような気がうっすら」
「おねーちゃんだからね!」
「それはどういう事なのかな?」
ツッコんできたメイのほっぺをプニプニ。うん、わたしと同じような感触ですね!
にしてもエレンと違い、わたしってば興味ない相手に関しては情報収集とかどうでもいいって考えちゃうからか、見事に差が出ちゃったねぇ。
それをメイに指摘されるとは……ちょっとがっくりです。
「あの二人は獣人と言ってましたけど、どの種族なんですの?」
「あー、言われると確かに。わたしとメイ同様に狐族っぽい尻尾だけど、なーんかちがうっぽいし」
わたし達に似た少しふっくらした尻尾が6本かな? それが二人にも生えてるようだけど、なんか違う気がするんだよなぁ。
「んーっと、あいつらは狐族じゃないよ。とゆーかー、狐族だったら怒っちゃう!」
「メイはあの二人が相当嫌いって事だから? 同族だったらもっと嫌、みたいな」
「そうだよ! だってさー、会うたびに求愛っていうの? それしてくるんだもん。こっちは興味一切ないのにそれとか、ほんと気持ち悪いでしょ?」
「確かにそれはくるなぁ……、特にわたしって人見知り激しいから、言寄られ続けられたら鬱になっちゃいそう」
「わたくしもですわ。恋愛感情からでしたらまだしも、違う理由が見え隠れし過ぎなのが多くて、本当にウンザリですわ」
共通し過ぎてるからか、三人してプンプンって感じになってしまったわ。お嬢様あるあるなのかねぇ、こういうのって。
「えっと、それであの二人の種族って?」
「んと、たしか鼬族だよ!」
「イタチ?」
「だよ! キツネじゃないんだよ!」
メイがバッサリ言い切ってるから鼬族で確定って事ね。
それにしても尻尾が複数ある鼬族かぁ、初めて見るかも。
「尻尾が6本という事は、何か特殊な進化をしていますの?」
「んーっと、特殊と言えば特殊かな? コレット!」
「はいはーい、これですね姫サマ」
コレットちゃんが1冊の図鑑を机に置き、パパっとページを開いてくれたわ。
どらどら
「えーっと、〝種族:獣人-イタチ科〟って、あの二人の種族が載っている図鑑ね」
「そうだよ! たぶんこっちと同じ内容だとは思うけどね」
「かな? んで中身は……なるほど、基本項目を見た感じだけど、わたし達の知っている鼬族と同じみたいね」
鼬族ゆえの特殊能力とか、どろどろとした裏事情とかは特にない、普通の獣人族って感じの内容が書かれてるわ。
ただまぁ動物のイタチに近い性質も持っているのか、ちょっと好戦的になりやすいとか泳ぎが上手いとかも書かれてるね。
「それで尻尾はっと……へぇ、狐族同様のようで、種族進化に近い現象が起きると尻尾が新たに生えてくるみたいだね。まぁ、わたしは生まれつき3本あったけど」
「あたしもそうだよ! すぐに9本になったけどね!」
「それはそれですごいなぁ。同い年だけど、わたしよりもスッゴイ修行してたって事でもあるわけだしねぇ」
「むふー!」
メイの頭をなでなでしたら、すっごくニコニコしたわ。ホントかわいいやつですね!
ただなぁ、メイがそこまで強いのって一応事情もあるから、褒め切っていいのかちょっと難しいって考えちゃう自分も居るわけで。
メイの場合、強くないと何だっけ、あの自称兄を名乗ってた奴。まぁアレが襲ってくる可能性もあったとか、技術の差もあってか自宅への侵入者が絶対無いという状況でもなかったとか、いろいろと危険があったようで。
その結果、自衛の意味も兼ねて思いっきり強くなっておくって必要があったそうな。
強くなること自体は良い事だけど、理由を考えるとちょっとフクザツです。
今はうちの技術をバシバシ受け入れる土台ができたらしく、そういった危険はどんどん下がってるって聞いた。危険のままとかじゃなくてホント良かったわ。
とゆーか、他所の家庭事情とかを考えると、実際はうちが安全すぎるだけじゃ? って思えてきちゃったわ。
とはいえ嫌なとことかは一切無いので、物申すとかはしないのです。
「あら? 狐族と違い、尻尾は6本までなのですわね」
「みたいだねぇ。まぁ狐族も9本より上も生えるっぽいけど」
「ママ達が9本なので、あたし達も9本までなんだよ!」
「とゆーわけ。お母様も似たようなこと言ってたから、たぶんわたしも9本までじゃないかなぁ」
尻尾が10本の狐族も居るようだけど、小さい頃にお母様が「私達は普通の狐族とは違うから、10本は無理ねぇ」って言ってたから、多分そうなんだろうなぁ。
もっとも、まだ5本しか生えていないわたしからすると、9本はいつなれるのかなぁって感じだけど。
今も5本あるので十分モフモフではあるんだけど、9本になってもっとモフモフになりたいのです。お母様と同じになりたいのです。
「なるほどですわ。それにしても、尻尾が増えると強くなる種族が多いのですわね」
「そういえばそうだねぇ。狐族はもちろんだけど、今見ていた鼬族もそうだし、犬族や猫族などの獣人系種族はもちろんのこと、魚族や蛇族といった尻尾のある種族のほとんどは強くなれるんだったかな。ただ、狐族以外は尻尾を増やさずに強くなることもできるみたいだけど」
うちの最強メイド長であるシズクさんも尻尾増やしてないからなぁ。
たーしか進化の際に尻尾が増えちゃっても、進化の調整とか統廃合とか最適化とかの何かが起って、複数だった尻尾が結合して1本の強い尻尾になるとかって聞いた記憶。
だけど想いが強いとか複数あった方が良い環境の場合は、尻尾の統合は行われずに複数になるとかなんとか。
よくできてるというか、ちょっとゲームっぽいねぇ。
さてさて、他には何が書いてあるかなぁっと。
「へぇ、図鑑の内容からすると、鼬族は進化の際に自分で決めることができるみたいね。ということは、あの二人が増やしてるのは」
「あたしが居るからだろうねぇ。こう、好きな子に似せたい! みたいな? あたしは嫌いだけど!」
「そういうことだろうねぇ。本当にぞっこ……うん、何でもないから、睨まないで?」
やれやれ、これ以上の話題は避けさせたいようで、メイがじーっと睨んできちゃったわ。本当に二人が嫌いなんだねぇ。
だけどね、その、睨みながらわたしの尻尾モフモフも強くするのはどういうことなのかな? 表情と行動が一致していません!
「となると、わたくしも尻尾を増やした方が良いのかしら?」
「「なんで!?」」
「あらあら、お二人とも息がピッタリですわ」
エレンはニコニコしてるけど、わたしとメイだけでなく、アリサ達もちょっとドギマギしちゃったよ。突然すぎる発言は心臓に悪いです。
「たしかに尻尾を増やせば強くなるかもだけど、エレンって普段は只人状態だよね?」
「ですわね。あっ、となると、普段から竜装を」
「まぁそれもあるけど、わたしとしては今のままの方が好きなわけでして。こう、普段はかわいい只人状態なのに、戦闘時には竜化するすごい人ってのもあるし」
「あたしもそう思う! それに、複尾の竜だと複頭って印象もあるので、1本が良い!」
「あら、そうキッパリ言われてしまいますと、増やすのはダメに思えてきましたわ」
「「でしょ!」」
うん、わたしとメイの説得で、どうにかエレンの尻尾複数計画は回避できそうだわ。
やっぱね、可愛い子はより可愛く! が良いのです。カッコよくする必要は無いのです。
そう言っといて、たまーにカッコイイ路線を目指すわたしも居るけど、それはそれです!




