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295話 説明よりもモフモフ

 何ともドタバタな感じになってきたけど、どうするんだろこれ?

 特にメイがキレそうなんだけど、大丈夫かなぁ。


 って思っていたのも束の間、やっぱり


「なんであんた達が居るのよ!」


 と、ぶちギレて大声上げちゃったわ。仲が良い感じも皆無だし、本当に嫌がってるんだなぁ。


「婚約者に対してその物言いは無いだろ? オレも傷つくぞ?」

「そうよ子狐チャン。婚約者同士、もっと歓迎しなさいよ」

「はぁぁぁぁ? あたしがあんた達と仲良くとか、絶対に無理だしありえない!」


 メイはむっきーって感じだけど、二人はだいぶ落ち着いてるなぁ。よくある光景なのかしら?

 とゆーか婚約者ってナニ? 聞いてないんですけどー?


「お前達、ここでそういった口論は」

「それはすまないな。だが、少し時間をくれないか? もちろん只とは言わない」

「おいおい、賄賂で物事を解決しようと……は?」


 ん~? 豪華な男がマクレン先生に宝石と何かの紙を渡したけど、その紙を見て先生が固まったわ。

 買収されたのではなく、その内容に驚いてるみたいだなぁ。


「確認だが、ここに書いてあるのは事実なのか?」

「事実だとも。オレ達の国はこの国にとって有益だからな」

「有益な国の王子と王女であるアタシ達を、この学園が只の生徒として扱うとか、ありえないわよね? それなりの特権は付与されて当然よ」

「そ、そうなのか……。しかし、この特権内容は」


 そう言って先生がチラッとわたしの方を見たけど、はて? 複雑というか難しいというか、そんな表情をしてるけど。


「なんとなく重い感じがしてきましたわねぇ。それに先生の表情を見る限り、ユキさんと同じ特権が付与されている気がしますわ」

「あーそういう事かぁ。となると、割と自由気ままというか」

「やりたい放題もできちゃいますわね」

「だよねぇ。う~む、わたしはある程度自重してるけど、そういうのしなさそうな奴に特権与えちゃうとか、大丈夫なのかねぇ」


 エレンも少し心配してる感じだけど、わたしに付与されてる特権ってちょっとヤバいからなぁ。

 学業の単位がだいぶ削減されているのはもちろんだし、出席日数も無いって言っても良いくらい少ない。

 しかもなぁ、単位関連だけでなく、やろうと思えば特定の生徒を退学に追い込むとか、専属教師を指名しちゃうとか、普通は無理でしょって事もできちゃうからなぁ。

 まぁそこまでヤバい特権付けてでも、この学園はわたしを招きたかったって事なんだけど。


「上の者に確認が必要だな。とりあえずメイとコレットは席に戻ってくれ」

「えー? 先生はあたしよりも二人を優先する気? だとしたら」

「いや、優先はしないぞ。あくまで公平にだ」

「はっはっは、公平と言いつつオレを優先して」

「今言ったが、お前達を優先するというわけじゃないぞ。これが本物か、記載内容が本当か、念のため学園の上層部に確認しないとマズイだけだ。正直、偽物であってくれた方が良いくらいだからな……」

「面倒な事を。仕方あるまい、確認している間はオレ達の自己紹介時間に割り当てるか」

「ほんと面倒ね、こんな扱い、アタシも初めてよ」


 あらまぁ、先生が見てわかるくらい項垂れながら抑え込んでるわ。

 メイはもちろんだけど、二人も少しムッとした感じか。優先されて当たり前って思ってたのかしら? 結構ヤバい性格してるなぁ。





 メイがイライラを抱えたまま戻ってきて、わたしの隣にドカッと座るのと同時に、思いっきり抱きついてきたわ。相当だなぁ……。


「まったく、意味が分かんない!」

「意味と言いますと、あの二人の事ですの?」

「そうだよ! あたしの邪魔する気なんだよきっと!」

「だそうですわよ?」

「そこでわたしに振るのね……」


 まぁエレンの気持ちもわかるよ。あの二人は何者なのかとか、婚約者はどういうことなのかとか、聞きたい事がいっぱいあるからね。

 わたしに振ったのは、メイに直接聞いても揉め事にならず、平和的に聞き出せるからなんだろうけど。でも、こういうのはちょっと苦手なんですよ?


「おねーちゃん?」

「あーなんでもないよ。んっと、とりあえずあの二人のこと教えてくれる?」

「あたしが? あいつら自己紹介するみたいだけど?」

「そうなんだけど、わたし達はメイから聞きたいな~って」

「ふ~ん、そうなんだぁ……むふー!」


 そう言ってメイがさらにギューッとしてきたけど、うん、これは完全に甘えんぼとかの方になったね。

 これはあれだね、メイってわたしにお願いされるとかが結構好きなのもあって、イライラ状態が簡単に吹き飛んだって事だねぇ。


「しょうがないなぁ、簡単に教えてあげるけど、あの二人はあたしの国の隣にある大国、バルバレウス帝国の王子と王女なの」

「大国って、メイの国であるエリュシオンよりも大きいの?」

「ん~、産業や軍事、経済なんかはほぼ同じだけど、土地は倍くらいあるかな? 人口も向こうのが多いよー」


 メイがわたしの尻尾をモフモフしながら教えてくれるけど、ほぼ同等となる国の子供って事かぁ。


「仲は悪くないけど、同盟国って感じじゃないんだ。そういう話はいっぱいあるけどね!」

「同盟国になってないのに、あの二人、もしくはどちらかはメイの婚約者なの?」

「元候補だよ! 現じゃないし正式でもないんだよ! あたしのお嫁さんはおねーちゃんなんだよ!」

「ちょ、わかってるから! だから、そんなにモフって、うにゅぅ」


 顔をズイッと寄せてくるだけでなく、尻尾を思い切りモフってきて、なかなかヤバいです。このままだと、完全ふにゃけ状態になっちゃいそうだわ。


「そ、それで、元婚約者候補っていうのは?」

「んーっと、最初に言っておくと、あの国の技術はうちの国とは違うの。あたし達は魔力が基礎になっている魔科学が主でしょ?」

「そ、そうだね。っていうか、モフモフをそろそろ……はぅ」

「むふー! やっぱりおねーちゃんはかわいい!」

「わかったから、モフモフ少し抑えて? ほんとね、やばくなるから」


 ニコニコしながら更にモフってくるんだもん、さすがに止めたくなります。

 しかもふにゃぁとなる部分を的確にモフってくるとか、わたしをどうする気なんですかね? ほんとーにふにゃけちゃうよ?


「んっと、話を戻すとね、あの国は普通の科学技術っていうのかな? そっちが基礎なんだよ! 現象は同じなんだけど、ちょっと構造が違うのばかりだよ」

「へぇ、魔科学でなく普通の科学を使っているのかぁ」


 そういった国があるとは思っていたけど、まさかメイの国と同等な国が普通科学を使ってるとはねぇ。ちょっと意外って感じだわ。


「基礎を作った人が機械文明の発達した転生者だったのもあるみたいだけど、一番は国が管理しているダンジョンの影響かな? 機械の魔物がいっぱいなんだよ!」

「土壌もそっち方面って事なのかぁ。にしても、魔科学と同じことができる普通科学とか、ちょっとヤバい気がするわ」


 普通科学の道具って割と複製しやすいからなぁ。おそらく高性能な兵器まで簡単に複製できるだろうし。

 しかも複製しやすいって事はその分費用も浮く。となると、魔科学よりも低価格で大量生産でき、その結果魔科学製の生産や開発は縮小や廃止となり、普通科学の道具を国民全員所持とか必須化する、って状況もあり得る。

 う~む、考えれば考えるほどヤバヤバな気がしてきたわ。


「それでね、元婚約者うんぬんってゆーのは、向こうがうちの技術欲しいから、より関係を密にするために言い出しただけなんだよ!」

「国同士が決めたって事ではなく、向こうが一方的に宣言していただけって事?」

「そうなんだよ! しかもね、あたしが生まれる前から言ってたみたいなんだよ!」

「徹底してるなぁ……」

「もちろんパパとママも反対していたから正式な婚約者としては認めず、一応候補扱いにしていたんだよ!」

「最初から完全否定したら国同士の関係に亀裂が入るからって事かな? そこまで考える必要がある国がそういう対応するのはちょっと嫌だけど……」

「だよね!」


 そう言ってメイがニコニコしながら尻尾をモフモフしてきたり、顔を埋めてきたりしてるわ。

 予想はしてたけど、完全に意識がわたしの方になってるなぁ。ムカムカ状態が完全に無くなったので良い事ではあるんだけど。

 だけどね、そろそろ尻尾のモフモフを抑え気味にしてくれても良いとおも、ちょ、その手つきは止めなさいって! 少し脱がそうとするのも止めなさいって!


 まったく、メイはわたしに対してちょっと盲目的というか好意が強すぎるから、もう少し抑えることを覚えてもらわないとダメそうね。

 ……覚えてくれるといいんだけど。

あくまで自称婚約者どまりなので、メイから王子王女への好感度は皆無です

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