292話 メイは心配し過ぎかも
「へー、ここがおねーちゃんが通う学園なんだね」
「そうだけど……ずいぶんとべったりだねぇ」
「むふー」
監視とか言ってたからか、結局メイが学園にまでついてきたけど、すっごい甘えて来てる。腕をギューッとするのはもちろんだし、手も俗にいう恋人繋ぎをしながらニギニギしてるし。
いつも通りフルーレ先生に転移門を開けてもらい、こっちに来るまではここまでじゃなかった。ただ、そのフルーレ先生が一足先に学園内に入っちゃったら、このありさまになったわけで。猫かぶりというかなんというかだなぁ。
「でもさぁ、もうちょっと抑えない?」
「えー? もしかして、おねーちゃんはあたしとイチャイチャするの、嫌なの?」
「いやそういうのは一切ないんだけど、その、ねぇ……」
助けを求めるように、隣に居るエレンを見たけど
「わたくしもやるべきかもしれませんわね」
「ちょっ!?」
「あたしの反対側どーぞ」
「では失礼して……ちょっと恥ずかしいですけど、これはこれでいいですわね」
「だよねー! ん? おねーちゃん、顔真っ赤だよ? どうしたのかな~?」
「この子、わかりきってるのに煽ってきてるよ……」
わたし、攻めるのは割と余裕だけど、責められるのは弱いんです!
しかもメイとエレンに挟まれてるわけで、理性もヤバくなりそうなんですけど。
とゆーか、抑えるのが無理なら場所を考えてもらいたい。だって、今は学園の入り口で人も大勢居るわけで。
そんな場所でこれとか、さすがのわたしでも恥ずかしいですよ?
にしても場所を問わずこんなになるって事は、それだけメイはわたしに飢えてたって事かな? エレンの方は悪乗り感がちょっとありそうだけど。
「お嬢樣、メイ様、エレン様、そろそろ教室へ向かわれたほうが良いかと。このままですと」
「余計な者まで来ますよねー? さすがに先輩とレイジ君と私、それとコレットさんの4人でも大変ですよー?」
「そうですよ姫サマ。それに、ボクとしては公衆の面前でなく密室で」
「願望が漏れてるとか、コレットもブレないなぁ……」
おっと、従者メンバーズが若干呆れているね。アリサ、レイジ、ノエルの3人だけでなく、メイの従者でもあるコレットちゃんもいるのがちょっと目新しい感じだけど。
「そういえばアリサ、ミツキとルミィはいつぐらいに合流できるの?」
「えっと、ミツキ様はお友達のコータ様達と一緒で編入試験に合格してからとなりますので、10日もかからないかと」
「え? そんなにかかるの? てっきり1日2日だと思ってたよ」
「かかりますね。理由ですが、お嬢様はお忘れかもしれませんが、ミツキ様達は異世界の住人です。この世界の方とは少し立場が異なります」
「あー、もしかして、こっちの一般常識とかの試験もあるって事?」
「その通りです。とはいえ基本的な事はシズク様を筆頭に、当家のメイドや執事が説明兼教育を行いましたので、常識不足による失格の可能性はありませんよ。ですけど試験範囲が幅広いため、どうしても試験と判定の時間がかかる、となっていますね」
「な~る」
すんなり編入できないだろうなとは思っていたけど、異世界人だとヤッパリ手間が増えるってことかぁ。厄介だけどしょうがない事って感じかな。
「次にルミィ様ですが、今の段階ではアルネイアの学園に通う予定はございません」
「そうなの?」
「ルミィ様とそのご家族の場合、体質などの関係から順応とでも言いますか、こちら側の人と同様に過ごせるようレグラスで生活してもらいながら、少しずつ体質改善をしていく予定になっています」
「あーそっか、ルミィ達って霊素が無い世界に居ただけでなく、発声方法もちょっと違ってたね」
「です。全てが完了するには年単位の時間がかかるそうなので、それまでルミィ樣はレグラスの学園に通う、となりました。ちなみに完了次第、こちらに合流の予定ですよ」
アリサが手帳を見ながら説明してくれたけど、なるほどねぇ。
まぁアルネイアの学園に通わなくても、うちの教育で十分と言えば十分ではあるけど。
そのまま教室に向かってしばし歩いてるけど、う~む、いつもよりもだいぶ目立ってる。
普段もわたしという存在が居るせいで結構視線を集めてるけど、今日はメイまで居るからなぁ。実の姉妹って言ってもいいくらい似ているし、尻尾だってわたしと違い九本ある。そりゃ目立ちますよね。
だからか
「ちょっとメイ、そんな不機嫌にならないでよ」
「だって、おねーちゃんをいやらしい目で見るクズがいっぱいなんだよ? さっきも相当だったけど、学園の中はもっとだったんだよ?」
「否定はできないけど、今日はメイのほうを見ている人が大多数じゃないかな」
「そうかなぁ? あたしとしては、おねーちゃん目当てのクズばかりにしか思えないんだけど」
視線のせいでメイが結構イライラしてるわけで。
独占欲もあるんだろうけど、交友の無い見ず知らずの他者に対しては、興味を持たないというか受け入れる許容範囲が狭いというか、わたし以上に激しい感じだからなぁ。
「姫サマ~、その調子だと先が思いやられますよ~?」
「えー? じゃぁコレット、おねーちゃんに群がってくるクズを即刻排除し」
「いやいや、そういうのも駄目って来る前に言いましたよね?」
「わ、わすれてないよ! ちょっと思っただけなんだよ!」
「ハイハイ。ほんと姫サマは、姉姫サマの前だとポンコツになるよね~?」
「そ、そんなことないよ!」
おやおや、暴走気味なメイをコレットちゃんが簡単に抑え込んじゃったよ。ズカズカっと物事を言い合える仲ならではの解決方法って気もしないではないけど。
「従者というより、お友達って感じですわね」
「そうだよー。コレットはあたしの小さい頃からずっとだからねー」
「幼少期からの遊び相手兼教育係って事だね。そういえばユキ様とアリサもそうだっけ」
「ですね。お嬢様が4歳の頃からになりますので、かれこれ7年ですね」
「長いね! そういえばボクと姫サマはフレンドリーな関係にしてるけど、姉姫サマとアリサチャンは友達というより、一緒居るのが当たり前な姉妹って感じだよね」
「しかも激甘のですねー。それに今でも先輩は、お嬢様に声をかけてもらうだけで顔がにや…むぐっ」
「ノエル、すこ~し黙っていましょうね」
あらまぁ、言いかけていたノエルがアリサに口をふさがれちゃったよ。まぁ内容はわかってるけど。
メイドだからか、嬉しくてもにやけないよう必死に抑えてるけど、割とバレバレなのです。
視線がどうしても気になるので周囲を確認してるけど、ふ~む。
「見知らぬ存在が多いなぁ。これは編入生とか留学生がどわっと増えたのかな?」
「かもしれませんわね。毎度の事ですけど、ユキさん目当ての方達な気がしますわ」
「それってどういうこと!」
おっと、エレンの一言でメイがすっごい剣幕になっちゃったよ。
「ちょっとおちつこーか?」
「おちつけない!」
「そう返せる時点で結構冷静な気もしないではないんだけど……。えっと、わたしの立場ってメイも知っての通りでしょ?」
「うん。おねーちゃんをお嫁さんにしたら世界を制覇できる! そんな立場だよね!」
「ソレハナイ。ただまぁうちの国との関係が強くなるので、国やら街やらの強化にはなるし、わたしの遺伝子的なものを取り込んだ一族がちょっとヤバい一族になるのは確かだね」
ほんとわたし一人がどっかに嫁ぐだけで、いろんな所のバランスが崩れそうなのがなぁ。
魔力と精霊力が強大な者が誕生する可能性があるだけでなく、術装に天衣に精霊神衣と、レグラスの国家機密的なものまで手に入れちゃう事になるわけだし。ほんとヤバい存在だなぁ、わたしって。
「つまり、特典満載って事だよね!」
「ぶっちゃけるとそうだねぇ。ただまぁ、それはわたし以外にも当てはまると思うけど」
「そうかも? とゆーかー、おねーちゃんが知らない奴とそうなるの、あたしは絶対に許さないからね!」
「そう睨まないでもわかってるし、そもそもそういった事を考える自体、わたしの中では皆無だよ? だから安心しなさいって」
「絶対だからね!」
そう言ってメイが更にギューッとしつつ頬ずりまでしてきたけど、これは心配にでもなったのかな?
わたしとしては絶対にアリエナイ事なんだけどなぁ。なにか思い当たる節でもあったのかしら? ちょっと気になるわ。
ちなみにメイは短期留学生として潜り込んでます




