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287話 呪いってやーねー

少し長いです

なお、シリアスっぽいの続いてますが、バッドエンドまっしぐらとかは無いです

 二人の斬り合いが1分くらい続いてるけど、なんかもう何時間もやってる気がするわ。それだけ緊張感も凄いって事なんだろうけど。


 にしても次元が違うってのはこういう事なんだね。

 お母様、天衣どころか魔衣も顕現していない状態なのに、動きを目で追うのがやっとな速さになってるし、斬り合った時に出る衝撃波で展開した結界がすぐに不安定になるから展開し直さなきゃダメな状況だし。ほんと敵わないなぁ。

 まぁ今の状態でもこうだから、魔衣や天衣、精霊神衣を顕現したら相当ヤバくなる。

 だけど、そうなったら近くに居るわたし達も無事では済まないので、お母様は全力を出せないって事でもあるわけで。なかなかうまくいかないね。


 しっかしこのオッサン、結構ヤバいね。

 全力ではないとはいえ、今のお母様ってわたしよりも超強く、戦っても瞬殺になっちゃう。なのにオッサンは戦えてるとか、ちょっとショック。

 だって、オッサンに挑まれてもわたしじゃ倒せない可能性が高いって事だもん。今までも胡坐かいてたわけじゃないけど、もっともーっと修行して強くならないとダメだねぇ。


 そんな考察をわたしがしてたら、何かあったのかオッサンが急に距離を取ったわ。

 ふ~む、見て分かるくらい汗をかいてるし、息も乱れてる。これはもう限界ってとこかな? お母様は汗一つかいてないけど!


「これ以上は危険だな。ならば」

「何かするつもりみたいだけど、私が何もしないと思っているのかしら?」

「なにもできんさ、これを見たらな」


 そう言ってオッサンが左手を天に掲げると、ゴーンっていう鐘のような音が急に鳴ったわ。いったいどこから?

 疑問を持ったのも束の間、オッサンの後ろに見たことが無い文字、呪文の一種かな? それが現れると同時に、何かを形成していく。召喚術か何かかしら?


「これがオレとアイツとの差だ!」


 掲げていた手をぐっと握ると同時に、またゴーンって鐘のような音が。そしてその瞬間、オッサンの後ろに巨大な門が顕現したわ。

 なんだろ? 転移門に近い感じだけど、どことなく違和感があるわ。


「……罰当たりな奴ね」

「お母様?」

「ふっ、やはりお前は気付いたか。そう、これこそ古の時代に存在した次元を超越する扉、境界神魔門だ!」


 ババーンと自慢するようにオッサンが叫ぶのとは対照的に、お母様がすっごい苛立ってる。相当マズい物なのかな?


「あ、あの」

「あの門はね、この世界にあってはいけない物なの。転移門とは違い、人が関わってはいけない物でもあるわ」

「ずいぶん否定的だな。この門の素晴らしさ、お前には分かると思っていたんだがな」

「馬鹿な事を言うわね。転移門と同等の機能だけならまだしも、世界の敵となっていた神や悪魔を封じ込めている空間に繋がってしまい、現世へ解き放つ危険がある門だと以前にも言ったはずだけど、忘れたのかしら」

「馬鹿なのはお前だ。毒も使い方次第で薬となる、神や悪魔も使役すれば世界の益となる。更に、転生せずとも神や悪魔の力を手に入れる事も可能なのだぞ? その可能性を無視するなど、お前にもできないだろうが!」

「無視も何も、神や悪魔の力に興味ないわよ」


 うへぇ、聞く限りあの門は本当にヤバい物って事ね。

 とゆーか神とか悪魔とかを呼びだすとか力を手に入れるとか、存在しちゃダメダメだよ。お母様が完全否定するのも当然です。





 そんなやり取りをしていたら、ギギギって重い音をたてながら扉が開き、執事服の様なのを着た男が一人出てきたわ。

 てかあの男、いつぞやの仮面の悪魔じゃない!? 同一人物かは分かんないけど、関係者なのは確かっぽい。こりゃもうこのオッサンと悪魔は完全にお仲間ってことだね。


「御館様、お迎えに上がりました」

「ご苦労。という訳だ、そろそろ退散させていただこう」

「逃がすわけないでしょ!」

「ふむ、門は破壊せずオレを狙って来るか」


 転移門同様の危険性も持っているのか、お母様が門の破壊はしないでオッサンの方を狙いに行ったね。

 確かに転移門と同じなら、破壊すると反動でトンデモナイ爆発とか次元の亀裂が発生とか、いろいろとヤバい自体が起こるからね。


「だが、そんな暇はあるのか?」

「どういう意味かしらね」


 バッチ―ンと大きな音をたて、お母様の攻撃をオッサンが薙刀で受け止めたけど、なんでかオッサンがにやけてるわ。余裕で受け止めたって感じじゃないのに。

 いったいどういう……あれ?


「ユキちゃん!?」

「ようやくか」


 急に全身の力が抜け、立ってるのもきつくなって倒れそうになったんだけど、なんで?

 倒れる前に、お母様が急いで戻ってきて受け止めてくれたけど。


「お前には通じないが、娘の方ならば通じる事がこれで判明したな」

「私のユキちゃんに何をしたの!」

「説明する義務は無いがオレとお前の仲だ、特別に教えてやろう。これはお前のような精霊に属する存在を対象とした新種の呪式でな、五感や身体だけでなく精神をも侵食し、存在全てを破壊する特別な呪いだ。まぁお前ならば完全に無効化できただろうが、その娘は所詮劣等種、無効化できずに呪いが発症したわけだ」


 オッサンが懐から一枚の術札、呪いだから呪札かな? それを取り出し見せながら喋ってたけど、はて? いったいどこで攻撃を受けたんだろ? 攻撃っぽい攻撃は一切受けて無いはずなんだけど、う~む。


「良いぞ良いぞ、その苛立ちが強い表情、どうやらお前も気付けなかったようだな。だが言っただろ? 察知されぬよう対策をしてきたと。いくらお前であろうと、交戦前にオレが展開した呪人形を察知することは不可能だったわけだ」

「境界神魔門だけでなく呪人形まで持ち出すとか、本当にふざけた奴ね。そっちがその気ならいいわ、ここで全て終わらせる。シズク! 結界を設置型に変えたらすぐに」

「おっと、オレは退散すると言ったはずだ、邪魔をするなよ?」

「終わらせると言ったはずよ!」

「まぁ邪魔をしたいのならばすればいい。だがな、この呪式はただ呪いを付与するだけではない。発症したが最後、いかようにも操作できる。例えば……このようにな!」


 オッサンが気合を込めながら呪札を宙に投げ、次に薙刀でバッサリ縦に斬ったわ。すると斬られた呪札の右側が一気に黒ずみ、ボロボロと崩れていったね。

 何かの儀式? なーんて推察してたら、ピリッと一瞬体がしびれて……え?


「お母様、その、ちょっとヤバいです」

「どうしたの!?」

「えと、右半身が動かないどころか、右の視力と聴覚も無くなってます」


 どうやらあの呪札、わたしと紐づいてたわけね。呪札みたいにボロボロと崩れるは無いけど、半身の機能を封印することは出来るってわけね。

 うん、お母様が不安と必死が入り乱れた感じにわたしの顔を見たり、体中を調べたりしてくれてるわ。なんか当事者のわたしよりも心配してくれてる感じだねぇ。まぁわたしも逆の立場ならそうなってそうだけど。


「分かったか? オレの邪魔をするとどうなるか。しかし、劣等種とは言えお前の血を継いでるだけはあるな、呪いが不完全だ。半身を完全に奪い去るはずが、機能の封印止まりになってしまうとはな」

「本当にふざけた奴ね。封印でなく奪い去ろうとするなんて、呪いの域を超えてるわ」

「素晴らしいだろ? 余興ついでに教えてやるが、これは封印されし神と悪魔を解析し、そこで得た力の一端だ。この快挙、お前なら共感し理解できるはずだ」

「するわけないわよ」


 オッサンがなんともいやらしい笑みを浮かべながら喋ってるけど、どんどん気持ち悪くなってる感じだなぁ。

 しかもなんとなくお母様に意見を求めるというか、興味を引こうとしてるというか。逃げる言ってるくせに説明までしだすし、行動が奇怪すぎだよ。


 ひょっとして、お母様を口説こうとしてこじらせた末路がこの性格で、それが影響しているとかなのかな? お母様が少しでも気になる状況を作り出せたら、それをきっかけに色々と広げようとしちゃう、みたいな。

 まぁお母様はオッサンの方は完全無視して、わたしの事を最優先してるけど。今は解呪方法を探してるみたいね。





「そもそもおかしいと思わないのか? なぜ精霊の力は認め、神や悪魔の力は認めないのかを」

「さっきからウダウダと、興味ないわよ。ユキちゃん、もう少しだけ我慢するのよ。お母さんがすぐに治すからね」

「は~い」


 いかんなぁ、お母様なら絶対に治してくれるっていう安心感が出ちゃうからか、どうにも緊張感が無くなっちゃう。

 だけどお母様は必死な感じになってるから、ちょっと申し訳ない気持ちも出ちゃうわ。


「……お前、どういうつもりだ?」

「はぁ、ほんと煩いわね。今はユキちゃんの解呪が大事だから、逃げたければ勝手に逃げなさい」

「なるほどな。先ほどから妙だとは思っていたが、弱くなったな。強大な敵であるオレを無視し、そのような劣等種にうつつを抜かすなど、オレが知っている強者であり冷酷無残なお前とは」

「……煩いと言ったはずよ」


 うはぁ、やっぱお母様すっごい。

 冷たい感じでオッサンを睨むや否や、一瞬でヒトガタを大量に展開し、オッサンと悪魔を取り囲んだ状態にしちゃったわ。しかも、いつでも攻撃できますよーってのが目で見てハッキリとわかるくらい、魔力と精霊力を纏った状態だわ。

 う~む、展開から包囲までの時間が速すぎて、わたしはもとよりオッサンと仮面も反応できなかったね。ちらっと後ろを見ると、おやまぁシズクさんも驚いてるわ。こりゃぁお母様、マジギレの本気状態かもしれない。


「このまま殺る事もできるのだけど」

「殺らないという事は、その劣等種の為か? 甘いな。オレを倒すには絶好の機会だというのに、それをみすみす逃すとは」

「本当に煩いわね。自分が死んだら発動する呪いも付与しているくせに、よく言うわ」

「ほう、勘づいたか。やれやれ、これではオレに付与した事前蘇生も無駄になってしまったな。まぁいい、お前のような精霊に属する存在に対象を絞った呪式のデータは取れたからな」


 オッサンがニタニタしてるけど、そういう事ですか。

 わたし達のような存在に対する専用の呪いと、自身が死んだときに発動する呪い、それと蘇生による身体への影響確認、この三つの実験を行っていたわけか。まぁ本来の目的は勇者連中の進化だったようだけど。


「御館様、これ以上は」


 おや? 仮面が少し震えながらオッサンに声をかけてるね。時間切れのせいっていうより、お母様のヒトガタに相当ビビったせいってとこかな?


「そうだな、オレも年甲斐もなくはしゃいでしまったわ。あぁ、アレはどうなった」

「回収済みです。あの者達も御館様の転移と同時に回収可能です」

「よくやった。という訳で時間切れだ、残念だったな」


 オッサンがなんか勝ち誇った感じに宣言してるけど、そもそもルミィのお父さん達を倒しての勇者連中を進化させるっていう目標が達成できてないあたり、勝ちでなく負けなんじゃないですかねぇ。

 そしてお母様に宛ててだったようだけど、そのお母様は完全に無視して解呪の方法を探ってるけど。


「だが覚えておくがいい、次に会う時は」

「いいからさっさと消えなさい。煩いだけで邪魔なのよ」

「つれないな。ではな」


 お母様の一蹴にたじろぎながらも、オッサンと仮面は門をくくって消えていったわ。

 ふ~ん、あの勇者達も連れて帰るわけね。オッサンが消えたすぐ後に、今度は門から小型のデーモンっぽいモンスターが出てきて、勇者達を担いいで門の先へと連れて行ったわ。

 勇者達も消えたあたりで、またゴーンっていう鐘のような音が鳴ると同時に扉がギギギって音を立てながら閉まり、門自体がズズズズって感じで地面に埋もれていったわ。芝居がかった変な消え方だねぇ。


「ねーねーお母様」

「そうね、解呪が終わったらお話しかしらね。ユキちゃんも詳細、知りたいものね?」

「です!」


 ビシッと右手……はあがんないので左手あげて元気よく! うん、さっきまで必死感が強かったお母様も、ニコニコしながら撫でてくれますね。

 やっぱね、ピリピリとか必死とか、そういうのよりもニコニコしてた方が良いのです! まぁお母様が居るので、わたし自身は元々ピリピリも悲観もしてなかったけど、それはそれなのです。

オッサンの正体とかは次話あたりに

ちなみにオッサンは仲間入りとかの予定は無いです

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― 新着の感想 ―
[一言]  なんとなくだけど、ユキがあの爺さんより強くなることがない気がする……モヤモヤするな。
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