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282話 下準備っと

少し長いです

 ルミィのお父さん達を特殊な召喚の術式を使って救出することになったけど、上手くいくのかな?


「ところでミルゥちゃん、ひとつ確認したいのだけれど」

『何かしら?』

「召喚する人達に共通している特徴とか無いかしら? 同じ魔力を持っているとか、特別な道具を持っているとか」

『そうねぇ……』


 お母様の質問にルミィのお母さんが腕を組んで考えだしたけど、考えるって事は何かありそうだね。

 召喚するにあたって、共通している何かがあれば召喚対象の選別がしやすくなる。無くてもできそうだけど、あった方が色々と手間が省けるハズ。


『あぁ、アレがあったわ』


 そう言ってルミィのお母さんが指をパチンと鳴らし、別のメイドさんを呼び出したわ。

 そしてメイドさんに何かを話すと、そのメイドさんがどこかに行ったね。何か取りに行くのかな?


 そこからだいたい2分くらいかな? メイドさんが少し大きめな箱を持ってきたわ。何が入ってるんだろ?


『お待たせいたしました。こちらがご指示のあったものです』

『ありがとう。さて、この中身だけど……まぁ見てもらった方が早いかしら』


 ルミィのお母さんが受け取った箱の蓋をゆっくり開けて中を見せてくれたけど、はて?


「同じ宝石が大量でぎっしり?」

「私も見たことが無い物ね。もしかして魔道具かしら?」

『そうね、魔道具に近いけど少し異なる物かしら。これは力を改変したり付与したりする道具で、二個一組で使うわ』

「へぇ、少し変わった使い方をするのね」

『変わったと言うより、それしか方法が無かったと言うべきかしら。少し厄介なのだけど、実は夫の様な吸血鬼族は日光に弱い特性があるのよ』


 へー、日光に弱いのかー。

 てかそれって


「吸血鬼の定番じゃん」

「ファンタジーに出てくる吸血鬼の定番、かな?」

『そうなのですか? あとは銀製品に弱いとか、聖なる攻撃に弱いというのがありますけど、マスター達はそれも知っているのですか?』

「それも定番だねぇ」

『定番って……マスター達の居た世界って、一体どうなっていたのですか……』


 わたしとミツキの反応にルミィが頭を抱えたけど、そうなるのかねぇ。

 前世は地球って惑星の只人ですって説明済みだけど、吸血鬼関係のせいで誤解が生まれてそうだわ。あくまでファンタジー、架空の定番なだけなんだけど、実在してたんじゃ? って考えそう。





『妾も少し気になるけど、まぁ説明を続けるわ。さっき二個一組で使うと言ったのだけれど、ここにある宝石の対となる宝石は夫達の体内に埋め込んであるのよ』

「埋め込むとは、凄い事をしているのねぇ。もしくは、それしか方法が無かった、という事かしら?」

『その通りよ。残念だけど、これは身に着けるだけでは効果を発揮できない欠陥品になるわ』


 ルミィのお母さんの様子から、やりたくないけどしょうがなく、ってとこみたいね。


『とはいえ、体内に埋め込んでまで使いたくなる機能がこれにはあるわ。その機能というのは、さっき娘達が言っていた吸血鬼特有の弱点を克服してくれる効果よ』

「あら、それはちょっと凄いわね。種族特性を緩和するのは、並大抵の事じゃできないはずだもの」

『そうね、この道具の開発には長い事、それこそ何代もかけて研究し、改良してきた物。それでも欠陥部分だけはどうにもならなかったのだけれど、それ以外の機能に関してはほぼ完璧な仕上がりになっているわ』


 ルミィのお母さんが少し誇らしげになってるわ。ご先祖様から代々研究をしてきた成果ってわけだから当然ね。

 にしても良いなぁ、何代も続くとか。わたしはそういうの一切無いから、ちょっとだけ憧れるわ。

 わたしの場合って何代もとかじゃなく、お母様やお父様達が作って改良してきた、だからねぇ。まぁこっちはこっちで自慢できるから良いんだけど。


「差し支えなければ、どうやって使うのか教えてもらえるかしら?」

『構わないわ。使い方は単純で、弱点となる効果と真逆の状態を作り出し、その中に宝石を配置しておくだけ』

「もしかして、ここにある宝石の状態が対となる宝石側に反映される、ということかしら?」

『そういうこと。日光が弱ければ闇夜を、聖なる攻撃に弱ければ魔や邪といった反対の力を、予め片方の宝石に当てておく。そうする事で、対となる宝石は弱点となる攻撃を相殺できる特殊防具になるわけ』


 そう言って宝石を幾つか並べてくれたけど、なるほど、どれも真っ黒で少し毒々しい感じがするわ。聖なる攻撃や浄化との真逆の魔法や術を当てておいたって事ね。


『それでどうかしら? 使えるかしら』

「そうね……これなら術式を少し改良すれば大丈夫そうね。対象者と宝石を別々に召喚しないよう、新たな補助式を組み込む必要があるけれど、だいたい5分くらいでそれもできるわ」


 お母様が宝石手に取った後にさらっとそんなこと言ったけど、マジですか!?

 さっき見せてもらった術式、かなーり複雑だったんだけど。手を加えるの、わたしだったら1時間もかかっちゃうわ。


『なら悪いのだけれど、さっそくお願いできるかしら。どうにも時間が無さそうなのよ』

「いつ処刑されるか分からないものね。それじゃ少し広い場所に案内お願いできるかしら? できたら隔離された空間が良いのだけれど」

『それならあるわ。じゃぁついてきてくれるかしら』


 ルミィのお母さんがメイドさんに指示した後、部屋を出たのでぞろぞろとついていく。

 はてさて、どんな空間なんだろ。





 案内されること数分、ここは地下3階かな? ちょっと広めの空間に来たわ。


『ここは妾と同等かそれ以上の者が挑んできた際、戦闘によって城の内部に被害が出ないように作った特殊空間よ』

「なるほど……壁全体に防御魔法、こっちだとテクニックと言ったかしら? それを4重に付与しているのね」

『一目で分かるとか、妾以上の素質持っているわね』

「そうねぇ、ミルゥちゃんの何千倍も生きているから、これも年の功というものかしらねぇ」


 お母様がクスクスって感じに笑いながらそう言うけど、うん、見た目と実年齢違い過ぎだよね。どう見てもお母様って十代半ばから後半くらいの外見だもの。

 そして、やはり外見同様の年齢だと思っていたのか、ルミィやルミィのお母さん達が「えっ!?」って感じにちょっと驚いてるわ。それにこの反応、どうやらこっちにはお母様やシズクさんくらいの長命な人っていないみたいね。それでも数百歳程度は居そうだけど。


『ま、まぁいいわ。それで、他に必要な物とかあるかしら?』

「他は大丈夫よ。ただ……う~ん」


 おや? お母様がわたしを見ながらちょっと考えてるけど、どうしたんだろ?


「お母様?」

「あぁ、そんなに心配な顔しなくても大丈夫よ。ユキちゃんじゃ出来ないとか、そういうのは無いからね」


 そう言って頭をなでなでしてくれるけど、どうやら無意識に不安な顔してたみたい。

 わたしのせいで失敗とか、足手まといは嫌だからなぁって、心のどこかで思ってたのが出ちゃってたのかな。


「それじゃ、何を考えてたんですか?」

「考えていたのは、ユキちゃんとお母さんの2人ではなく、ユキちゃんとミツキちゃんとルミィちゃんの3人にやってもらうのが良いかしら、って考えてたの」

「ふぇ?」


 わたし達3人でって、何か考えがあるのかな?

 ん~、ぱっと思いつくのはミツキとルミィを強化するためとか、お母様が直接手を貸したって状況を作っていちゃもん付けられないため、とかかなぁ。


 まぁ理由はよりも……


「でもお母様、さっきの術式を見ると」

「魔力と精霊力は相当必要よねぇ」

「ですよね? だとしたら、ちょっと厳しいんじゃ?」


 わたしとお母様の魔力と精霊力を合わせて乗算したら余裕そうだけど、加算だと安定し無さそうというか、余裕がちょっと無さそうなんだよねぇ。


「そこは術式をある程度省けば大丈夫かしら。もともと燃費の悪さは安全面を高くしすぎた結果でもあるから、その部分を調整すれば良さそうなのよ。上手く行けば、精霊神衣を顕現させたユキちゃん1人でも行けるかしら」

「あの術式をわたし1人でって、どんだけ安全面盛ったんですか?」

「ん~、ありとあらゆるものを、かしら。これはユキちゃんの緊急転送の為に考えていたものだから、“もしも〟や〝万が一〟すら起こらないように組み立てたのよ」


 ニコニコしながら教えてくれるけど、うん、隣に居るシズクさんが少し呆れた感じしてるから、相当盛っちゃったって事だね。

 お母様って家族や身内の中でも、わたしに対しては特に過保護になるからねぇ。小さい頃の事件のせいか、昔よりも過保護感が増してる気もするけど。

 とはいえ、嫌じゃないから良いのです。ただ、同じく過保護なシズクさんですら呆れる程ってなると、ホントどんだけ盛ったんですかね……。


 だけど精霊神衣かぁ、う~ん……。


「えっと、今のわたしって結構精霊力使っちゃってるので」

「そうねぇ、そのままだと顕現するのは難しいわよねぇ」


 小精霊の顕現をちょっとやり過ぎたからなぁ。

 精霊神衣を顕現させるには精霊力をかなり使うのと、まだまだお子様なわたしにとって負荷が高いので長時間維持もできない奥の手みたいなもの。それでもだいぶ維持できるようになったけど、1日持たせるのはまだ出来ない。

 しかも万全な状態でソレなので、精霊力の残量が少なく補充もできないこの環境だとかなーり厳しい。顕現できなくもないけど、おそらく魔石への負荷が高くなっていろいろとマズそうなんだよなぁ。


「そこで、ユキちゃんにとっておきの物があるの」

「とっておきですか?」

「そうよ~。まだ試験段階で、数もあまりないのだけれどね」


 そう言ってお母様が亜空間を開き、円筒状で透明な瓶を取り出したけど、なんだろ? 中には液体が入ってるみたいだけど。


「ふふっ、興味津々ね。これはね、精霊力を回復してくれる飲み物なの」

「え? 精霊力をですか?」

「そうよ~。魔力回復ポーションの精霊力版、みたいなものかしら」


 お母様がニコニコしながら瓶を手渡してくれたけど、マジですか!?

 精霊力の回復って少し厄介で、魔力回復ポーションみたいな精霊力を回復してくれるポーションって存在してない。たしか精霊力は魔力よりも個人差が大きく、誰でも回復できる汎用性がある物が作れないからだったかな。

 なので、精霊力は基本的に大気中の霊素を吸収しての回復になる。あとは精霊にあらかじめ精霊力を分けておき、不足時にそれを貰うという方法と、わたしとお母様みたいなほぼ同じ精霊力を持った者同士での受け渡しくらいか。


「これはね、私とユキちゃん専用に作った物なの」

「専用ですか? んと、もしもわたし達以外が飲んだら?」

「飲んでも毒にはならないわ。ただ、精霊力が回復しない、ただの飲料になってしまうかしら」


 なるほど、あくまでわたしとお母様の精霊力に合わせた専用の回復薬ってわけなんだね。


「それに課題も多くてね。作れる数が安定していないのと、私の亜空間に入れておいても10日ほどで効果が切れちゃうの」

「まだまだ開発中って事なんですね」

「そうなの。でも回復自体はしてくれるから、今のユキちゃんなら半分も飲めば元通りになると思うわ。1本飲んでも大丈夫だけれど、余剰分は吸収されないで外に出ちゃうかしら」


 お母様が苦笑いしてるけど、外にってそゆことですか。

 にしても、お母様の亜空間収納でも10日しか持たないのかぁ。わたしのポーチとかだと1日くらいで効果が切れちゃうかな?


「試験段階とはいえ安全性は文句無しなのと、ユキちゃんも大好きなリンゴ味にしてあるから、安心して飲んでくれるかしら」

「は~い。ではでは」


 お母様がそう言うなら大丈夫だね。

 んでは瓶の蓋をポンッと外して、いざ!


 こくこく

 のみのみ


「おいしい! それに、精霊力が確かに回復してる!」

「そうよ~。即効性と回復量も問題ないから、保存性と汎用性を高めることができれば、魔力回復ポーション同様に普及もできなくはないのだけどねぇ」

「課題がいっぱいなんですね」

「そうなのよ。まぁ私としては、汎用性は捨てて特定の人専用でも良いとは思うのだけど」


 そう言ってお母様がなでなでしてくるけど、これは精霊の事を考えてなんだろなぁ。

 精霊力の回復が楽になれば、それだけ精霊を長時間こき使う人も増える可能性があるって事。精霊を召喚する人が全員良い人なら良かったのに、ってホント思っちゃうわ。

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