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278話 魔王との対決…かな?

 推察をしていたら、どうやら終わりみたいね。魔王の気配がちょっと変わったわ。


『妾もそこまで気が長くないし、児戯に付き合うのも飽きてきたわ』

「なんだと! 今まで手を抜いてたとでも言うのか? ふざけるんじゃねーぞ!」

『ふざけるも何も、現状が分かってないのかしら? おめでたい奴ね』

「黙りや……がっ!?」


 ちょ、まじ!?

 魔王と勇者が話してたけど、瞬きした瞬間に魔王が勇者の後ろに立っていて、しかも何かされたのか勇者がもがきながら倒れたんだけど、どういうこと?


『今のが見えなかったの?』

「へ? もしかして、わたしに言ってる?」

『そうよ。ならそうね……今度は少し遅くするわ』


 そう言って、今度はさっきよりはゆっくり目に戦士の後ろにって、あーっ!


「肩に一瞬触れたと同時に、魔力どころか生命力までごそっと奪ってる!」

『これは見えたのね。なるほどなるほど』

「うげ、もしかしてわたしの技量、測られちゃった?」


 あの魔王、わたしにしか興味ない感じだなぁ。確かに会話中も何度かこっち見てきたけど、まさか分析されちゃうとは。

 しかもなんだろ、今の見えたのが希望通りだったのか、なんともまぁいい笑顔でこっち見ながら頷いてますね。





 さらに測ろうとしてるのか、だんだんと速度を上げながら他の面子も倒していって、てっ!?


『だけど、隙だらけね』

「なっ!? えっ!?」


 最後に聖女を倒したのが見えた瞬間、今度はわたしの目の前に来てるんですけど!?

 まてまてまって、超まって! 結界を張っているのに、なんでその結界に弾かれず、そのまま通過してきたのよ!? しかもヒトガタが一切反応できてないって、マジでなんなの!?


「ユキくん!?」

『ふむ、その子は向こうの聖女とは違う聖女ね。それに……なるほど』

「なんかもういろいろと手遅れな気がするけど、まずはヒトガタで」

『確かに手遅れね。あなたは自分の力を過信しすぎよ』

「へ? って、ちょ、ヒトガタが全部奪われてる!?」


 展開中のヒトガタで攻撃しようとしたけど、一切反応ないどころか、逆にこっちを攻撃できそうな雰囲気になるとか、どうなってるのよ!?

 自律行動も無効化し、ヒトガタの制御を完全に奪ってくるなんて、お母様やシズクさんとの模擬戦以外では一度も無かったことなんですけど!?


『それに、顔に出過ぎてる。想定外の事態に慌てるのもダメだけど、相手に筒抜けはもっとダメね』

「むぅ、身内以外にまで言われるとか、ちょっとくるわ」

『しかも力に対して色々とちぐはぐ。それにしても……ふむ』

「な、なに? そんなわたしをじーっと見て」


 まじまじと見られてるけど、よくわかんない状況です!

 とりあえず反撃するためには何かしないと……反撃? なんか変ね。確かにヒトガタの制御は奪われたんだけど、攻撃されてないよね? しかも隙だらけって言ってくる割に、何もだよね?

 とゆーかこの魔王からは敵意も無いよーな。どういうこと?


『本当に顔に出るわね。まぁいいわ、あなた、どこから来たの?』

「うひゃ!?」

『あら、狐耳が弱いのかしら? ずいぶんと反応するわね』


 そんなこと言ってくるけど、いきなり狐耳をフニフニされたら驚くに決まってます! しかもなかなかの手つきで……って!


「ちょ、やめー!」

『この可愛い顔に珍しい色をした髪と、この辺りには居ない種族よね』

「分析されてる!?」


 手で顔を触ってきたり髪を弄ってきたり、ほんと距離が近いんですけど!?

 突然すぎて二人ともアワアワしてるし、ここはわたしが冷静にって、まって! ほんとその手つきはほんとまって!





 しばしやられ放題になってるけど、このままじゃかなりマズい。貞操の危機って奴になるかもしれない。

 だけど突然の事過ぎたからか、それとも威圧でもしてるのか、二人はアワアワしてるだけで助けてくれない状態。何とかしないと。


『何か決めたようだけど……そうね、あなた、妾のモノになりなさい』

「へ? モノってまさか?」

『想像通り、妾とここで暮らすのよ。それに妾のモノになるなら、二人もここに置いてあげるわ』

「いやいや、急にそんなこと言われて、ひゃっ!?」

『良いわねぇその反応。頬を撫でると驚くだけでなく赤くなるのも、子供というよりも初心な少女という感じがしてたまらないわ』


 ニコニコしながらそんなこと言ってくるけど、手付きが完全に恋人同士のイチャコラなんですけど! 相変わらずすっごい近いし。

 だけどほんとーにマズイ。手玉に取られてるし、どうにかしたいんだけど思い浮かばない。というより、思考がごちゃまぜになってどう対応したらいいのかが分かんない! でも何とかしない……と?

 あれ? ルミィの気配が少しかわ


『もういい加減にして、お母さん!』

「「お母さん?」」


 ミツキと一緒に少しぽかんとしちゃったけど、お母さんって何?

 だってこの魔王、ルミィと髪色は違うし、顔付きだって似てないよ? まぁ外見は父親似ってのも考えられなくもないけど、内面の一つである魔力の感じもまるで似て無いから、赤の他人としか思えないんだよなぁ。


『ようやく口を開いたわね。まさか妾の事が認識できていないんじゃと心配したわ』


 そう言って魔王が右手にはめている指輪を外しって、あれって魔道具なのか!

 外した瞬間、光ったと思ったら髪色と顔つきが変わり、ルミィの大人バージョンって感じになったわ。それに魔力の感じもガラッと変わり、これもルミィに近いものになったね。

 となると、あれは姿だけでなく魔力の感じまで偽装できる魔道具って事か。わたしも持ってない特殊な奴だなぁ、誰が作ったんだろ?


『で、妾に歯向かうとか、どういうつもり?』

『だってその人は私のマスターなんだから、盗ろうとしないでよ!』

『マスターね。気持ちは分かったけど、声を荒げるのは恥ずかしい事よ。まったく、妾の娘だったら』

『あーっもう! お母さんはいつもそうやって――』


 ルミィがわたしと魔王の間に来て、魔王を睨みながら口論しだしたけど、うん、完全に親子喧嘩一歩手前……というかしだした感じ。それと気のせいか、ルミィの口調がだんだんと少し幼い感じになってるけど、これは母親の前だからかな?

 そう言えば今世のわたしって親子喧嘩に兄妹喧嘩、というか喧嘩自体してないかも……敵には容赦しないけど。まぁ無理に喧嘩する必要も無いから良いんだけど。





 しばし二人の口喧嘩を見てたけど、なんというかよくある理由が原因なのね。

 ルミィもお年頃って事なのか、お見合いが発生したようで、それが嫌で家出したとかなんとか。

 といっても、婚姻を結ぶというより眷属を増やす、もしくは眷属になるって意味合いが強いみたいね。こういう考えは種族毎の特徴みたいな感じかな。


『まったく、妾まで恥ずかしくなるから、いったん落ち着きなさい』

『また子ども扱いする! だからお母さんは!』

『やれやれね、親の心子知らずとでも言った方が良いのかしら』

『え?』


 少し苦笑いした後、ルミィのお母さんがルミィをぎゅーっとしたけど、やっぱそうよね。


『急に居なくなって、妾がどれだけ心配したのか、分かっているのかしら?』

『心配、してくれたの?』

『するに決まってるわよ。娘が大事じゃない親なんて、いるわけないじゃない』

『……ごめん、なさい』


 そう言って、今度はルミィの方からもぎゅーっとしだしたみたい。

 いやはやいやはや


「ベタだけど、わたしはこういうの結構好き」

「私も。仲良い家族って良い、よね」

「だねぇ。まぁこれで、わたし達はこの魔王さんと戦うことは出来なくなっちゃったけどね。とはいえ、もともと戦わずに逃げるも選択肢にあったから問題ないけど」


 この国の住民だったら少し悩んだかもだけど、違うので割とあっさり。こういう所が他国に冷たいって感じに繋がるのかなぁ、とはちょっと思ったけど。


「しっかしこうなると、お母様にもいろいろと相談した方が良いかなぁ」

「ルミィちゃんの家族も移住してもらうため、かな?」

「そそ。この国を離れられない理由が無ければ、正直うちの国に居た方が色々と安全だろうし」


 ルミィのお母さんってのもあるけど、さっきの勇者とのやり取りから、明らかにあの国が一方的に攻めてるようなものだからなぁ。

 明確な非がルミィのお母さん側にあるならわからんでもないけど、そういうのも無さそうだからなおさらだわ。


「でもなぁ」

「あらあら、どうしたのかしら?」

「んっと、これって完全にわたしの我儘みたいなものだから、この国とレグラスとの関係を左右する感じになりそうなので、お願いしても良いのかなぁっていう葛藤が……って、お母様!?」

「は~い、ユキちゃんのお母さんですよ~」


 腕を組んでう~んって考えてたら、いつの間にやらお母様が後ろからぎゅーっとしてきたんですけど!?

 気配を一切感じなかったのもそうだけど、いったいどうしてここに居るんですか!?

 よし、少し呆れ顔で横に控えているシズクさんに聞いてみよう。


「えーっと、シズクさん、これってどういう?」

「私は止めたのですけど、サユリ様が少し暴走しまして」

「だってしょうがないじゃない。ユキちゃん達が見ず知らずの国どころか、魔王という謎の存在に挑むとか、心配するに決まってるじゃない」

「はぁ……それでも一旦は納得したはずですが」

「そこは私の勘ね! ユキちゃん達だけじゃ危ない、みたいなものが」

「勘というより、私からすると親バカ発動に見えたのですけど……」

「そんなことはないわよ? でもそう言ったら、シズクだって心配してたわよね~?」

「そ、そうですけど……」


 ほんと仲が良いなぁ、お母様とシズクさん。

 まぁあれね、結局のとこ二人揃って過保護の親バカ発動したので来ちゃいました! って状況なわけね。

 こういうのってなんていうか、ウザいとは一切思わないけど、ちょっと過保護すぎる感じがして照れ臭いわ。大事にされまくりというのはナカナカ照れるのです。


 それはさておき、これで話は早く済みそうだわ。魔道具による会話より、実際に会って話した方が良いだろうしね。

 まぁお母様が、ちょーっとだけルミィのお母さんに対し睨みをきかせてるけど……。さっきの自分にモノになれ発言、聞こえてたのね。

魔王だけど良いお母さん

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